ロングレール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/26 21:38 UTC 版)
一方、定尺レール(工場出荷時の標準で25 m)を溶接して繋いだレールもある。このうち、全長200 m以上のレールをロングレールという。継ぎ目を減らすことで保守作業の省力化や、騒音・振動対策で乗り心地の向上が目指せる。2014年(平成26年)には新日鐵住金八幡製鉄所が長さ150 mのレールを出荷する体制を整えており、溶接する労力の低減やロングレール化した際の精度の向上を目指す動きも見られる。 ロングレールの中央部(不動区間)は枕木に固く締結し、枕木の周囲にバラストを十分に敷き詰めることで気温変化によるレール方向の伸縮は抑え込まれており、常にレール内部には応力(軸力)が発生している。しかし、端部(可動区間)は、温度変化により定尺レールよりも大きく伸縮するため、通常の突合せ継目ではなく、伸縮継目が用いられる。枕木への締結力や枕木の周囲に敷き詰められたバラストの量、レール温度の管理などが十分でないと、猛暑時のレールがぐにゃりと曲がる事故(座屈)や、極寒時の収縮によりレールが破断する事故が発生することもある。これらは前述のロングレールの不動区間が温度変化によりレール方向に伸縮する軸力に耐えきれなくなった時に発生する。 ロングレール区間では、初期の頃は伸縮継手を軌道回路の区分前後に設置し、通常のレール間を絶縁継目でつないで軌道回路を絶縁分割するが、1970年に強力な接着剤をレールと継目板の間に接着して、レールの軸力と列車衝撃強度に耐えるとともに、電気絶縁性能を十分に持たせた接着絶縁レールを用いて軌道回路を絶縁分割する方式が採用されている。この方式には、最初の頃は湿式法が採用されていたが、1年未満で接着部が剥離する損傷が発生したため、1984年にエポキシ樹脂をプレート状に予備成型した固定接着剤をレールと継目板の間に圧着して加熱する乾式法が現在において採用されている。最近ではレールのボルト穴の空隙部に接着剤を充填して、レールと継目板の間の接着層内にテフロンシートを介在させることで、継目板からの接着剤の剥離と継目板の腐食を防止するともに、電気絶縁性能を更に上げた改良形の乾式法が採用されつつある。この方式では、レールのウィークポイントである絶縁継目が無くなりかつ、軌道回路ごとに絶縁付き伸縮継手を挿入する必要がなくなるのが採用するメリットである。 日本でのロングレールは東海道新幹線で本格的に採用され、その後在来線や私鉄の幹線にも導入が進んでいる。 なお、溶接後の処理が甘いか、長期間の使用により、もともと継ぎ目だった部分からジョイント音が聞こえてくる。また、ロングレールの長さには限度があるため、継ぎ目を全くなくすことは出来ない。またロングレールは万能ではなく急カーブのあるところへの敷設はレールの偏摩耗の観点から適当ではなく、とくに半径300 m未満のカーブ区間ではレール自身の弾性で反発が強くなるため使用には適さない。このことから急カーブの区間は定尺レールが使用される。
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