長期間の使用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/08 15:31 UTC 版)
1960年代以降、抗うつ薬の服用はうつ病の長期的転帰を悪化させるという報告がある。 1990年、アメリカ国立精神衛生研究所(英語版)は、うつ病に関する全国調査で抗うつ薬(イミプラミン)、偽薬、心理療法(2種類)を比較し、18ヶ月後の健康維持率について、心理療法(認知療法)を受けた患者群が最高(30%)、抗うつ薬を服用した患者群が最低(19%)と報告している。 1998年、世界保健機関(WHO)は、うつ病のスクリーニングの意義に関する研究を世界15都市で実施し、12ヵ月後の転帰について、抗うつ薬を服用した患者群は薬物療法を受けなかった患者群に比べて健康状態が悪いと報告している。 抗うつ薬の治療効果は一般的に薬物治療が終了すると続かず、結果として再発率が高い。31のプラセボ対照の抗うつ薬の試験の最近のメタアナリシスでは、研究期間のほとんどは1年であり、抗うつ薬に反応していた18%の患者が服薬中に再発したのに対し、抗うつ薬を偽薬に切り替えた場合41%であったことを見出した。アメリカ精神医学会のガイドラインは、症状の消失後、4〜5か月の抗うつ薬による継続治療を推奨している。うつ病エピソードの既往歴のある患者に対して、英国精神薬理学会の2000年の抗うつ薬によるうつ病治療のガイドラインは、最低でも6カ月から長くて5年あるいは無期限の抗うつ薬の継続を推奨している。 2年間の追跡では抗うつ薬を継続的に使用した約60%が再発しており、認知療法を受け薬を中止していた場合に、再発率の有意な低下が見られた。 5年の追跡によれば、1年以上薬剤を使用した患者群では再発率は23%で、6か月-12か月間使用した患者群との違いはなかった。さらに、治療上の利益は治療過程の間に漸減した。急性期の治療における薬物療法の使用後の残遺期における心理療法を伴う方法が、いくつかの試験によって提案されている。 抗うつ薬による治療を受けた再発性のうつ病患者40人で、再発した場合を除き抗うつ薬の投与を止めた場合の再発率は、2年後時点で臨床管理群(20人)では80%に対し認知行動療法群(20人)では25%、6年後時点で臨床管理群では90%に対し認知行動療法群では60%であった。 試験では偽薬へと急速に切り替えられており、重度の離脱症状を起こす可能性があることから、試験に欠陥がある可能性があり、維持療法には疑問が呈され、抗うつ薬を用いなくとも再発率は上昇しないことが示唆される。一方で、平均8.5ヶ月間の抗うつ薬による治療を受けた後の、うつ病やパニック障害の再発リスクは、2週間以上かけて徐々中止するよりも、7日以内に急速に中止した場合のほうが低いという研究結果がある。
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