カルヴァンの思想とは? わかりやすく解説

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カルヴァンの思想

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 03:54 UTC 版)

ヨーロッパにおける政教分離の歴史」の記事における「カルヴァンの思想」の解説

カルヴァン神学信仰義認聖書中主義をはじめルターツヴィングリのそれから受け継いだ部分が多い。そうしたなかで、カルヴァンの思想を特徴づけるのは、徹底した神中主義救霊予定説である。カルヴァン教理においては、神の栄光、神への祈り服従がつねに強調されるルターにおいては力点人間苦悩置かれるのに対しカルヴァンではあくまでも自身置かれるのであるカルヴァンによれば、神を認識することこそが人生主要目的なのであり、それによって自己認識するのである神の像似せて創造され人間は、本来的には神の栄光輝き受けている。自由意志をもった人間は、それによって永遠の生命を得ることも可能であったはずなのに、アダム原罪犯して以来、その自由意志によって神に反逆し、罪に陥って人間あり方堕落した。この堕落から救済されるためには、人はイエス・キリストにおいて再創造されなくてはならない人間の罪の身代わりとして地上送られ神の子イエスつらなることによって、我々は値なくして救われることができるのである。 神は憐れみによってイエス世に送ったが、これはすべての人間赦すためではなく恩恵浴することができるのはその一部だけである。人は神の意志により、ある者は永遠救いに、ある者は永遠滅び定められる。これはもっぱら神が自由に決定する領域属し、しかも神はあらかじめこれを定めていると説く。これが、カルヴァン唱える予定説である。では、こうした神の選び絶対的自由を前にして、人はただ絶望するしかないのか。カルヴァン決してそうではないと説く。なぜなら、神の憐れみは無限であり、それは人々にとっては無限の恵み恩寵)であり、神を信じて我々に説かれている神の教え受け入れ、こうしてキリストと一体となった信徒は自らが選ばれていることをもはや疑わないからである(信仰義認)。そして、神は救われるはずのない者まで選びだして救おうとするのである人間善き行いも、神の憐れみ強く信じるときにこそ、選びのしるしとなる。そうして、人間日々の生活営み信仰を介して聖化されていく。人生の目的は神は知り、神に栄光帰して従い祈り捧げることにある。それぞれの各個人が営む職業も神が定めたところなのであり、あらゆる職業が「天職」である。それが「召命」である以上、これに精励しなければならないものであり(職業召命観)、一方でこの考え職業における聖俗区別否定につながるのであるカルヴァンは、再洗礼派との論争のなかで、「神のことばが述べ伝えられて、聖礼典執行されるところに教会存在するそれ以外何が必要なのか」と述べている。この世完全無欠な教会などないと考えカルヴァンは、ルターとは異なり最初から目に見える制度的な教会必要性認めた。そして、ルター教会というものの中味カトリックと同様、洗礼受けたすべての者の集まりであるとしたのに対しカルヴァンはそうではなく信仰告白し善き生活を営む信徒集まり」と考え、より狭いものとしてこれをとらえた。そこで、教会の構成員は真の信仰善き道徳との厳し実践者たることが義務けられる牧師神の言葉説き公教要理教えて聖礼典をおこなう存在であり、聖礼典洗礼と聖餐式2つで、信徒信仰をより強固にすることを助ける。聖餐式に関しては、カルヴァンルター共在説ともツヴィングリ象徴説とも異なり、いわばその中間的な立場とっていた。つまり、イエスパンと葡萄酒のなかに実在するが、それは「霊的に実在するという理解である。 信徒日常生活監視し、これを正しく導き信徒相互紛争調停するのは聖職者ではなく長老」と称される俗人であり、貧者救済俗人の「執事」に任される長老教会制)。道徳的に瑕疵(かし)のある信徒は、聖餐式への参加行い改められるまで禁止され行状のとくに悪い者に対して破門もある。それのみならず、世俗権力者からの処罰甘受しなければならない。カルヴァンの思想は社会生活全般宗教一色染め上げようという指向をもち、その意図彼の国家観にも現れている。カルヴァンは、アウグスティヌスの「神の国」「地の国」の考え方影響を受け、教会国家権力の差異と非類似性からいって、「霊的王国」と「政治的王国」は常に区別しなければならないとした。 カルヴァン政治思想には2つきわだった特徴がある。1つ教会世俗権力から独立させること、もう1つ世俗権力教会目的への奉仕をさせることである。彼は教権と俗という「二本の剣」は分離不可の関係ではあるが、明確に弁別されるべきであると述べたカルヴァンアウグスティヌス従い教会を神によって定められた独自の権威を持つものと考えこの世には「見え教会」と「見えない教会」があるという。見えない教会正し信徒作る精神的な共同体で、時間空間制約受けない見え教会信徒集まって儀礼礼拝説教が行われる場所で、この見え教会においては成員すべてが必ずしも完全な信仰有しているわけではない。そのため、見え教会成員すべてを完全な信仰に導くために規律を必要とし、内部政治が必要とされるほか、教会幹部道徳を含む世俗問題に対して判決下せる。 一方世俗権力担い手である国家は、神の地上代理人にして下僕であるとカルヴァン考える。為政者は、信仰正し実践保って人民の安全と財産守り正義を行わなければならない。そして、このような為政者対し人民絶対的に服従しなければならない服従免除されるのは、為政者神の命令にそむいた場合限られる国家とは真の宗教正し信仰広めるためのものだと考えたカルヴァンは、政治権力に「三位一体説」という教会にとって最も重要な教義認めさせる一方世俗司法機関における世俗的な裁判官権限高めた。カルヴァンの思想のうち、無抵抗については彼の死後現実ユグノー弾圧への対応として、理不尽な支配に対して抵抗してもよいというモナルコマキ政治理論登場した。それと同様にカルヴァンの思想にある非寛容妥協許さない部分も、カルヴァン主義深刻なコンフェッショナリズム後述)に直面するうちに動揺し、そのなかから寛容論が起こってくる。 カルヴァン彼の一派は、新旧両方から異端とされたミカエル・セルヴェトゥスミシェル・セルヴェ)をジュネーヴ当局火刑処したことに、公然と賛意表している。カルヴァンは、国家による異端者弾圧容認し場合によっては支持さえしたのである

※この「カルヴァンの思想」の解説は、「ヨーロッパにおける政教分離の歴史」の解説の一部です。
「カルヴァンの思想」を含む「ヨーロッパにおける政教分離の歴史」の記事については、「ヨーロッパにおける政教分離の歴史」の概要を参照ください。

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