OVA
別表記:オーブイエー
OVAは、ソフト販売を目的としたアニメ作品だ。テレビ放映や劇場公開を前提とせず、ソフトのフォーマットでのみ流通する。OVAには主に3つのパターンがある。まず、オリジナル企画の作品化だ。テレビで放映するには内容が過激だったり、時間が短かったりする場合は、OVAになることが多かった。「天使のたまご」「トップをねらえ!」などはこのパターンである。これらの作品は、オリジナル脚本によって制作されており、監督や脚本家の作家性が全面的に押し出されている。当初からメディアミックスを前提として、OVAと漫画連載が同時進行していたヘッドギア原作の「機動警察パトレイバー」もこのパターンだ。
次に、人気アニメーションのスピンオフとして、OVAが企画される形式だ。「名探偵コナン」「ハイキュー!!」「銀魂」「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」「新テニスの王子様」などはここにあてはまる。これらの作品は、テレビ放映が好評で、数々のメディア展開がなされていった。劇場版や関連グッズも大きな経済効果を上げている。そのような状況を受けて、ビジネスの一環としてOVA企画が通った。同時に、OVAにはファンサービスの一面もある。テレビでは消化できなかったエピソードや、実験的な脚本はOVAにまわされる。いつもと違う作風を楽しめるのも、OVAのメリットだろう。
そして、人気のコミック、ゲームなどをOVAにするパターンである。「ジョジョの奇妙な冒険」第3部はこれにあたる。90年代から00年代の漫画作品に多く見られるパターンであり、原作に人気はあるものの、さまざまな事情でテレビ放映ができなかったときに企画された。
ちなみに、OVAととてもよく似た形式に「oad」が挙げられる。oadは「オリジナル・アニメーション・ディスク(original animation disc)」の略で、販促目的で作られるdvdのことだ。「進撃の巨人」などで採用されたマーケティングであり、単行本の特典としてoadはついてくる。oadは例外的に、後に配信されることもあるものの、原則的には特別版の単行本を購入するしか視聴方法はない。そのため、人気作品のoadは中古市場でプレミアム価格がついている。
OVAとよく似た言葉に「ovf」がある。これは「オープン仮想化フォーマット(open virtualization format)」の略称であり、別々の仮想化ソフトで仮想マシンのイメージ・ファイルをやりとりするための標準規格だ。アニメ用語ではなく、OVAとはまったく関連性のない単語である。
日本におけるOVAの歴史は古い。そのきっかけになったのは、70年代に起こった国産のアニメブームだといわれている。当時は「機動戦士ガンダム」「宇宙戦艦ヤマト」といったテレビ作品が大ヒットを記録し、アニメという文化の評価が高まっていた。それまでアニメは子供向けのジャンルだったものの、情報量の多いSF作品が量産されたことで、「大人の見るアニメ」という新しい市場が確立されていく。そのような状況下で、1980年に入り、VHSの普及が進んでいく。これにより、テレビ放映だけでなく、「アニメをビデオ化して販売する」というビジネスモデルが成立するようになった。
アニメブームとビデオの一般化により、誕生した文化がOVAだったといえるだろう。日本初のOVA作品は諸説あるものの、1983年の「ダロス」とする意見が多い。ダロスはスタジオぴえろ制作、押井守監督によるSFアニメだ。原作は鳥海永行が務め、共同監督でもあったものの、クレジットはされていない。「ダロス」の主なあらすじは、近未来における、地球政府と月面開拓民の軋轢である。巨大な謎の構造物「ダロス」を物語の軸に据えながら、戦争や差別といった普遍的なテーマが描かれていく。
「ダロス」は決して、大きな商業的成功を収めたわけではなかった。しかし、押井守の手腕は評価され、以降のOVA文化で重要な役割を担っていく。「天使のたまご」「御先祖様万々歳!」などの監督作には、カルト的なファンも多い。OVAをクリエイターの実験の場とし、テレビでは通りにくいアイデアを存分に試したのは押井の功績である。そして、押井に続く形で、OVA市場をターゲットにした若いクリエイターが次々に現れた。
初期のガイナックスは1988年の「トップをねらえ!」で評価を確立させ、その後の劇場版につなげている。1995年の「神秘の世界エルハザード」はテレビアニメやゲームと同時進行でプロジェクトが展開され、深い世界観に没入するファンが続出した。さらに、1988年の「バブルガムクライシス」のように、わずか22歳のアニメーターを監督に抜擢するなどの挑戦的な試みもOVA業界ではさかんに行われていく。
OVA発展の歴史の中で、無視できないジャンルとなったのは「ヤンキーもの」と「アダルトアニメ」だった。いずれも、レンタルビデオの普及によって、実写作品で成功を収めたジャンルである。1980年代後半からレンタルビデオ店の数が急増すると、消費者は高額でビデオ作品を購入する負担がなくなっていった。安価なビデオ作品を気軽に楽しめるよう、実写ではヤンキーものやアダルト作品が好まれるようになった。いずれも風紀の面から、テレビでは放映しにくかったジャンルでもあった。
OVA界隈も、実写作品の流れに便乗する形でヤンキーものやアダルト作品に力を注いでいく。数々のヤンキー漫画がOVAでアニメ化され、「湘南爆走族」というヒットも生み出した。アダルトアニメでは「くりいむレモン」がキラーコンテンツになったほか、社会倫理から大きく逸脱した作風の商品が男性消費者から支持されていった。
ただし、OVAが巨大市場になった1990年代では、かつてのような作家性重視の傾向は弱まっていく。原作付きのアニメが増えていき、既存シリーズの続編で安定した収益を狙うスタジオが中心になっていった。OVAの市場が衰退し始めたのは、1990年代後半から2000年代前半にかけてである。この頃になると地方局がアニメ作品の受け皿になり、OVAを制作する必然性が薄れていった。また、コアなアニメファンを狙った深夜帯のアニメ作品も増えていき、OVAの需要は下がり始める。
2000年代以降は、「深夜帯でアニメを放映し、ファングッズとしてソフトを購入してもらう」というビジネスモデルが浸透していった。いわゆる深夜アニメは、ソフトの宣伝の場になっていく。そのため、購入するまで内容を確認できないOVAに、アニメファンは興味を失うようになっていった。2010年代になると、映像コンテンツ全体がweb配信に移行していく。動画サイトやサブスクリプションによって、安価で視聴できるアニメ作品が大半になった。視聴するまでに費用も手間もかかるOVAには、スタジオも力を割かなくなっていった。
それでも、OVAという文化自体がなくなったわけではない。80〜90年代に比べると本数は減ったものの、2020年代以降もOVAの生産は行われている。たとえば、アニメシリーズをソフト化する際、テレビ放映されなかったエピソードをOVAとしてリリースする商法がある。消費者はソフト購入の特典としてOVAを楽しむ形だ。また、海外の市場に向けて、あえてOVAで作品を発表したプロジェクトもあった。「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」は日本以上に、海外で出荷されたOVAである。
そのほかにも、子供向けアニメや教育アニメもOVAの一種だといえるだろう。防災や社会問題への意識を喚起させるような教材アニメも、行政をターゲットとして作られ続けている。
「OVA」とは・「OVA」の意味
「OVA(オーブイエー)」とは「オリジナル・ビデオ・アニメーション(original video animation)」の略称であり、dvdやブルーレイであっても用いられる言葉である。OVAは、ソフト販売を目的としたアニメ作品だ。テレビ放映や劇場公開を前提とせず、ソフトのフォーマットでのみ流通する。OVAには主に3つのパターンがある。まず、オリジナル企画の作品化だ。テレビで放映するには内容が過激だったり、時間が短かったりする場合は、OVAになることが多かった。「天使のたまご」「トップをねらえ!」などはこのパターンである。これらの作品は、オリジナル脚本によって制作されており、監督や脚本家の作家性が全面的に押し出されている。当初からメディアミックスを前提として、OVAと漫画連載が同時進行していたヘッドギア原作の「機動警察パトレイバー」もこのパターンだ。
次に、人気アニメーションのスピンオフとして、OVAが企画される形式だ。「名探偵コナン」「ハイキュー!!」「銀魂」「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」「新テニスの王子様」などはここにあてはまる。これらの作品は、テレビ放映が好評で、数々のメディア展開がなされていった。劇場版や関連グッズも大きな経済効果を上げている。そのような状況を受けて、ビジネスの一環としてOVA企画が通った。同時に、OVAにはファンサービスの一面もある。テレビでは消化できなかったエピソードや、実験的な脚本はOVAにまわされる。いつもと違う作風を楽しめるのも、OVAのメリットだろう。
そして、人気のコミック、ゲームなどをOVAにするパターンである。「ジョジョの奇妙な冒険」第3部はこれにあたる。90年代から00年代の漫画作品に多く見られるパターンであり、原作に人気はあるものの、さまざまな事情でテレビ放映ができなかったときに企画された。
ちなみに、OVAととてもよく似た形式に「oad」が挙げられる。oadは「オリジナル・アニメーション・ディスク(original animation disc)」の略で、販促目的で作られるdvdのことだ。「進撃の巨人」などで採用されたマーケティングであり、単行本の特典としてoadはついてくる。oadは例外的に、後に配信されることもあるものの、原則的には特別版の単行本を購入するしか視聴方法はない。そのため、人気作品のoadは中古市場でプレミアム価格がついている。
OVAとよく似た言葉に「ovf」がある。これは「オープン仮想化フォーマット(open virtualization format)」の略称であり、別々の仮想化ソフトで仮想マシンのイメージ・ファイルをやりとりするための標準規格だ。アニメ用語ではなく、OVAとはまったく関連性のない単語である。
日本におけるOVAの歴史は古い。そのきっかけになったのは、70年代に起こった国産のアニメブームだといわれている。当時は「機動戦士ガンダム」「宇宙戦艦ヤマト」といったテレビ作品が大ヒットを記録し、アニメという文化の評価が高まっていた。それまでアニメは子供向けのジャンルだったものの、情報量の多いSF作品が量産されたことで、「大人の見るアニメ」という新しい市場が確立されていく。そのような状況下で、1980年に入り、VHSの普及が進んでいく。これにより、テレビ放映だけでなく、「アニメをビデオ化して販売する」というビジネスモデルが成立するようになった。
アニメブームとビデオの一般化により、誕生した文化がOVAだったといえるだろう。日本初のOVA作品は諸説あるものの、1983年の「ダロス」とする意見が多い。ダロスはスタジオぴえろ制作、押井守監督によるSFアニメだ。原作は鳥海永行が務め、共同監督でもあったものの、クレジットはされていない。「ダロス」の主なあらすじは、近未来における、地球政府と月面開拓民の軋轢である。巨大な謎の構造物「ダロス」を物語の軸に据えながら、戦争や差別といった普遍的なテーマが描かれていく。
「ダロス」は決して、大きな商業的成功を収めたわけではなかった。しかし、押井守の手腕は評価され、以降のOVA文化で重要な役割を担っていく。「天使のたまご」「御先祖様万々歳!」などの監督作には、カルト的なファンも多い。OVAをクリエイターの実験の場とし、テレビでは通りにくいアイデアを存分に試したのは押井の功績である。そして、押井に続く形で、OVA市場をターゲットにした若いクリエイターが次々に現れた。
初期のガイナックスは1988年の「トップをねらえ!」で評価を確立させ、その後の劇場版につなげている。1995年の「神秘の世界エルハザード」はテレビアニメやゲームと同時進行でプロジェクトが展開され、深い世界観に没入するファンが続出した。さらに、1988年の「バブルガムクライシス」のように、わずか22歳のアニメーターを監督に抜擢するなどの挑戦的な試みもOVA業界ではさかんに行われていく。
OVA発展の歴史の中で、無視できないジャンルとなったのは「ヤンキーもの」と「アダルトアニメ」だった。いずれも、レンタルビデオの普及によって、実写作品で成功を収めたジャンルである。1980年代後半からレンタルビデオ店の数が急増すると、消費者は高額でビデオ作品を購入する負担がなくなっていった。安価なビデオ作品を気軽に楽しめるよう、実写ではヤンキーものやアダルト作品が好まれるようになった。いずれも風紀の面から、テレビでは放映しにくかったジャンルでもあった。
OVA界隈も、実写作品の流れに便乗する形でヤンキーものやアダルト作品に力を注いでいく。数々のヤンキー漫画がOVAでアニメ化され、「湘南爆走族」というヒットも生み出した。アダルトアニメでは「くりいむレモン」がキラーコンテンツになったほか、社会倫理から大きく逸脱した作風の商品が男性消費者から支持されていった。
ただし、OVAが巨大市場になった1990年代では、かつてのような作家性重視の傾向は弱まっていく。原作付きのアニメが増えていき、既存シリーズの続編で安定した収益を狙うスタジオが中心になっていった。OVAの市場が衰退し始めたのは、1990年代後半から2000年代前半にかけてである。この頃になると地方局がアニメ作品の受け皿になり、OVAを制作する必然性が薄れていった。また、コアなアニメファンを狙った深夜帯のアニメ作品も増えていき、OVAの需要は下がり始める。
2000年代以降は、「深夜帯でアニメを放映し、ファングッズとしてソフトを購入してもらう」というビジネスモデルが浸透していった。いわゆる深夜アニメは、ソフトの宣伝の場になっていく。そのため、購入するまで内容を確認できないOVAに、アニメファンは興味を失うようになっていった。2010年代になると、映像コンテンツ全体がweb配信に移行していく。動画サイトやサブスクリプションによって、安価で視聴できるアニメ作品が大半になった。視聴するまでに費用も手間もかかるOVAには、スタジオも力を割かなくなっていった。
それでも、OVAという文化自体がなくなったわけではない。80〜90年代に比べると本数は減ったものの、2020年代以降もOVAの生産は行われている。たとえば、アニメシリーズをソフト化する際、テレビ放映されなかったエピソードをOVAとしてリリースする商法がある。消費者はソフト購入の特典としてOVAを楽しむ形だ。また、海外の市場に向けて、あえてOVAで作品を発表したプロジェクトもあった。「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」は日本以上に、海外で出荷されたOVAである。
そのほかにも、子供向けアニメや教育アニメもOVAの一種だといえるだろう。防災や社会問題への意識を喚起させるような教材アニメも、行政をターゲットとして作られ続けている。
オー‐ブイ‐エー【OVA】
読み方:おーぶいえー
《original video animation》テレビ放映や映画公開用ではなく、セルビデオ向けに制作されたアニメーション作品の通称。オリジナルビデオアニメーション。
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