SUV
「SUV」とは・「SUV」の意味
SUVとは、アウトドアやスポーツにおける利便性を考慮して作られた、多目的車のことである。セダンやクーペといった自動車のボディタイプによる分類の1ジャンルでもある。SUVは、スポーツカー並みの走行性能と、ミニバンの使い勝手の良さを併せ持った車だ。利便性やデザイン性に優れ、車種自体も種類が多いことから、近年注目を集めている。かつては車といえばセダンであった。現在(2022年時点)では、各自動車メーカーはセダンよりもSUVの開発に注力している。トヨタ自動車株式会社を例にするなら、2022年1月の時点でのSUV取扱数は10種類。取扱SUVの一覧は以下のとおりである。
車名 ボディサイズ
ライズ コンパクトSUV
ヤリス クロス ンパクトSUV
カローラ クロス コンパクトSUV
C-HR コンパクトSUV
RAV4 ミドルサイズSUV
ハリアー ミドルサイズSUV
ハイラックス フルサイズSUV
ランドクルーザー プラド ミドルサイズSUV
RAV4 PHV ミドルサイズSUV
ランドクルーザー フルサイズSUV
トヨタが10種類ものSUV車を市場に投入しているのは、それだけ幅広くSUVが受け入れられていることの証左ともいえるだろう。事実、SUV車は「女子に人気のSUV」「中高年に人気のSUV」などの特集が組まれることも多い。なお、SUVタイプの車は、悪路走行やトルクが必要な場所での走行に優れているものが少なくない。車種によっては、街中や都会での乗車よりも、田舎やアウトドアでの利用において真価を発揮するものもある。
SUV誕生の歴史には諸説ある。1910年から1930年の間に発売されていたフォードの自動車に「デポハック」と呼ばれる高屋根が付いたモデルが現在のSUVの元になったという説。あるいは、第二次世界大戦で用いられたジープなどが民間に払い下げられ、SUVの原型になったという説。1960年代に登場した着脱式のシェル(ハードトップ)を持ったライトトラック(ピックアップトラック)がSUVの元になったという説などである。しかしながら、どの説も決め手に欠き、具体的な起源は不明のままである。
SUVはあくまで多目的車であるため、分類のための決まった定義があるわけではない。ただし、各メーカーには、共通したSUVの様式がある。まず、車体に対してタイヤのサイズが大きいことだ。タイヤは大型化するほど扁平率が低くなり、タイヤにたわみやシワが起きにくくなる。剛性があがり、悪路走破性が向上するとされている。だが、SUVにおけるタイヤのほとんどは、オフロードを想定して作られているものではない。本当にオフロードをSUVで走りたいときはタイヤを事前に交換するべきだろう。
次にハッチバックであることだ。もちろん、これも決まり事があるわけではないが、各社共通している。ハッチバックとは、車の後部に設けられた跳ね上げ式、もしくは横開き式の扉のこと。あるいは、ハッチバックを設置した車種のことを指す。ハッチバックタイプの車は、アウトドアやレジャー用の荷物が積みやすい、といったメリットを持つ。乗車スペースと荷物スペースの区別がなく、車内スペースの自由な使い方が可能になる。例えば、後部座席を倒してフルフラット状態にし、車中泊を楽しむといった使い方も考えられるだろう。
SUVは4WDであるというイメージを持たれがちな車である。確かに、スポーツタイプでアウトドアなどを意識した車なので4WDタイプは多いが、必ずしも4WDだけが生産されているわけではない。各自動車メーカーのラインアップを見ても、2WD車と4WD車の双方を載せている。販売比率は2WDの方が高い。2WD車は、車を軽量に作ることができ、燃費や乗り心地に優れているため、街乗りを前提とした車の作成に向いているからだ。ランドクルーザーのようなクロスカントリータイプは、街乗りでの乗り心地をそれほど重視していないため、4WDが主流となっている。
SUVのメリットには次のようなものがある。SUVは最低地上高が高めに設定されているだけでなく、タイヤが大きく設定されているため、ボディ下面を傷つける心配があまりない。悪路・段差・傾斜などで安心して走行できるだろう。運転者のアイポイントが高くなるので遠くまで視界がよい。遠くまで視界が見渡せると、障害物などが見つけやすくなるので、事故の確立も下がる。さらに、車高が高いので車内空間が広く、積載量が大きい。
車体が大きいため、SUVは車前面に大きくクラッシャブルゾーンを作ることができる。万が一の事故のときでも安心だ。地面に対して座席が高いことも安全性の向上に一役買っている。事故などの際に、衝突車や障害物に挟まれる可能性が低くなるからだ。頭上空間も十分にスペースがあるので、事故で車体上面が変形しても頭や首を守りやすい。
一方で次のようなデメリットも存在する。最低地上高だけでなく車高自体が高いため、重心が安定しづらい。ハンドルを切った際に横ブレがしやすくなる。大きな車体や大型のタイヤの採用はSUVの重量を大きくする。それだけでなく、空気抵抗を受けやすくしてしまう。そのため、SUVが快適に走行するためには、トルクの高い排気量の大きなエンジンが必用だ。これらは燃費悪化の原因となりかねない。また、乗員の安全性は高いものの、衝突相手の安全性までもが高いわけではない。小型車や軽量の車両にぶつかってしまうと、質量の違いや重心の違いから、相手に致命的なダメージを与える場合がある。運転するには細心の注意が必要である。
「SUV」の読み方
SUVは「スポーツ・ユーティリティー・ビークル(Sport Utility Vehicle)」あるいは「エスユーブイ」と読む。SUVとの呼称が自動車区分の1つとして公式に呼ばれるようになったのは1980年頃である。だが、その呼称が一般化したとは言えなかった。なお、SUVを日本語に訳すと「スポーツ用多目的車」となる。そのため、SUVを「スポーツ用多目的車」と読む場合もある。しかし、元となる「Sport Utility Vehicle」には「多目的」という意味の言葉はない。なぜ多目的という言葉が付け加えられたかは不明である。「SUV」の熟語・言い回し
コンパクトSUVとは
SUVは用途によって、クロスカントリー・クロスオーバーの2つに分類できる。さらにクロスオーバーSUVはサイズによって、フルサイズSUV・ミドルSUV・コンパクトSUV・軽SUVの3つに分けられている。コンパクトSUVはその分類の1つだ。
コンパクトSUVには厳密な定義があるわけではない。しかし、一般的に全長4,000mmから4,500mmのクロスオーバーSUV車がコンパクトSUVであるとされている。コンパクトSUVの魅力は、その取り回しの良さであろう。SUV特有の車高からくる見晴らしの良さと合わさって、快適な運転がしやすくなっている。コンパクトカーや軽自動車のノウハウをいかして、街乗りでも快適に調整されている車種が少なくない。なお、ミドルサイズSUVは全長4,500mm以上5,000mm未満、フルサイズSUVは全長5,000mm以上の物を指す。どちらも分類に明確な定義があるわけではない。また、軽SUVは日本の規定によって、軽自動車に分類されるSUVの総称である。
クロスオーバーSUVとは
クロスオーバーSUVとは、SUVの一種であるクロスカントリーから(ラダー)フレーム構造を無くし、一般のセダンなどと同じモノコックボディ構造を採用したもの。なお、クロスカントリーはオフロード走ることを前提にしたSUV。走破性を重視した構造になっている。例えば、衝撃吸収性を高めるため、比較的ストロークが長いサスペンションや、車体裏の保護材が備えられていることが多い。また、急こう配の斜面でも十分なトルクが得られるように副変速機(サブトランスミッション)を用いる場合もある。
モノコック構造の採用は多くの恩恵をSUVに与えた。例えば、車体重量の軽量化による燃費軽減、騒音や振動の低減、車内空間の確保や衝突安全性能の向上などである。街乗りでも扱いやすい、安定した走行性能と安全性を持った車として、広く認知されることになった。これによってクロスオーバーSUVは、趣味性と実用性を兼ね備えたモデルとして、SUV人気をけん引する車種となった。ただし、モノコックボディは不整地などの使用には向かない。補強をしないまま不整地で長期間利用するとボディが歪んでくるからだ。しかし、一般的な舗装道路を走る上では、多少道が荒れていても問題を起こすことはまずない。
エス‐ユー‐ブイ【SUV】
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