日本産業規格
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適合性
製品がJISの要求を満足していることをJISに適合しているといい、適合していることを適合性 (conformance) という。製造者や輸入者が製品のJISへの適合性を取引者や需要者に示す手段として、第三者による認証 (certification)、第二者による確認、および第一者自己適合宣言の三つがある。
認証
2005年10月1日から施行された改正法のもとでは、製品のJISへの適合性を登録認証機関が認証する。製造者または輸入者は、登録認証機関に認証を申請し、登録認証機関による審査を受ける。適合性の認証を受けた製品には、JISマークを表示することができる。
自己適合宣言
自己適合宣言の指針はJIS Q 1000 適合性評価—製品規格への自己適合宣言指針に定められている。
規格票
JISの内容は規格票という文書にあらわされる。
規格票の発行は、その「出版に関しては、規格の適正かつ網羅的な普及の観点から、あらゆる規格について需要に応じ一元的に販売できる体制を整えることが必要である」ことから[5]、日本規格協会 (JSA)に委託されている。2009 (平成21)年度においては、規格票とJISハンドブックの販売によるJSAへの収入は、1,574,901,508円であった[6]。
規格票の様式はJIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法 (Rules for the layout and drafting of Japanese Industrial Standards) というJISに規定されている。
JISハンドブック
JSAは、複数の規格票を分野ごとにまとめた縮刷版をJISハンドブックとして発行している。JISハンドブックは、多くの規格について、規格票の冒頭に記されたまえがきや末尾に付された解説を収録していない。また、一部の規格については、本文の一部を収録していない。JISハンドブックの各巻は1年から3年に1度改訂される。
規格番号
部門記号 | 部門 |
---|---|
A | 土木及び建築 |
B | 一般機械 |
C | 電子機器及び電気機械 |
D | 自動車 |
E | 鉄道 |
F | 船舶 |
G | 鉄鋼 |
H | 非鉄金属 |
K | 化学 |
L | 繊維 |
M | 鉱山 |
P | パルプ及び紙 |
Q | 管理システム |
R | 窯業 |
S | 日用品 |
T | 医療安全用具 |
W | 航空 |
X | 情報処理 |
Y | サービス |
Z | その他 |
個々のJISは規格番号によって識別できる。例えば、JIS B 0001は規格番号の一つである。
規格番号のうち、「JIS」のつぎのローマ字1文字は、部門記号と呼ばれ、JISの部門をあらわす。現在、表に示す20の部門がある。
部門記号に続く数字は、各部門で一意な番号である。かつて、番号はもっぱら4桁だった。現在、国際規格と一致または対応するJISについては、国際規格の番号とJISの番号を同じにしておくことが便利であるので、国際規格が5桁の番号を持つ場合には、それに合わせた5桁の番号が用いられるようになっている。ISO/IEC 17000を翻訳したJIS Q 17000 適合性評価—用語及び一般原則はその例である。また、「電子機器及び電気機械」部門において、一部の規格の規格番号がIEC規格に対応した5桁のものに変更された(日本工業標準調査会 2004)。
大きな規格は第1部、第2部といった部 (part) に分かれていて、部ごとに制定、改正などがおこなわれ、部ごとに規格票が発行される。部を識別するために枝番号が用いられる。番号の後にハイフンおよび枝番号を記載する。つぎは、枝番号を使用した例である。
- JIS B 0002-1 製図—ねじ及びねじ部品—第1部: 通則
- JIS B 0002-2 製図—ねじ及びねじ部品—第2部: ねじインサート
- JIS B 0002-3 製図—ねじ及びねじ部品—第3部: 簡略図示方法
文書においてJISが規格番号によって参照されている場合、通常、読者がその文書を読んでいる時点での最新版が参照されていると考える。特定の版を参照したいときには、規格番号の後にコロンおよび制定または改正の年を西暦で記載する。例えば、JIS B 0001の2000年改正版を参照したいときは、JIS B 0001:2000と書く。
1995年以前のJISでは、枝番号が用いられていなかった。現在では番号および枝番号を区切るために用いられているハイフンは、かつては番号および年を区切るために用いられていた。例えば、JIS B 0001は1958年にJIS B 0001-1958として制定された。
注釈
- ^ JIS全体を指すときは複数形のsを付けてStandardsとし、個々の規格を指すときはsを付けずにStandardとする。
- ^ JISのSは英語 Standards の頭文字であって規格を意味するので、「JIS規格」という表現は冗長であり、これを誤りとする人もある(RAS症候群)。ただしこの表現は、JISC、JSAおよびNHKのサイトでも一部用いられている。
- ^ 令和元年7月1日厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省令第4号による改正で、「日本工業規格への適合性の認証に関する省令」より改題。
- ^ なお平成13年の省庁再編の際には、行政組織の減量・効率化の観点から工業技術院(当時)の付属機関であったJISCなどの位置づけが問題になったが、中央省庁等改革大綱(1999 (平成11)年1月26日 中央省庁等改革推進本部決定)で「通商産業省の工業技術院標準実施部門について、一部民間で対応できない規格作成等を除き、民間移譲する。」とされた。その結果、規格制定部門については経済産業省産業技術環境局に移管することになり(通商産業省『通商産業省組織の移管先一覧』(2000 (平成12)年12月)19-20頁参照)、国営による国家標準化事業を維持することになった。
- ^ ただし、同報告書の作成について検討した日本工業標準調査会21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会(第6回)〔2000 (平成12)年5月10日〕で、山田肇委員から「著作権の話に関して、『著作権を原案作成団体に残す』ことの意義が印税を渡せるようにするということであれば、その効果は非常にわずかであろう」との指摘がなされた。
- ^ なおこの委員会の委員には、著作権法を含めた知的財産法専攻の研究者、法曹実務家等の有識者は加わっていない。『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(2000 (平成12)年5月29日)58頁参照。
- ^ ただし、国際規格 (ISO/IEC) を基礎としてJIS原案を作成する場合について、JISCは「JISに採用する場合は国際機関に対する事前許諾及びロイヤリティは原則として必要ありません」と説明している。経済産業省産業技術環境局工業標準調査室・一般財団法人日本規格協会規格開発ユニット規格管理グループ標準チーム『JIS等原案作成マニュアル』(平成29年4月版)6頁参照。
- ^ 日本工業標準調査会「JISの制定等のプロセス<図の説明>」参照
- ^ なお増田優通商産業省工業技術院標準部長(当時)は日本工業標準調査会21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会(第5回)(平成12年4月6日)で「カナダは日本と状況が似ており独立行政法人であるSCCが権限を持っている」と説明しているが、SCC(カナダ標準委員会)のSenior program officer and managerのGary C. Hysert=Marc Archambaultは、SCCは政府機関ではなく、政府から運営も、政策も、手続も独立した機関であると述べている (Harvey Schock, Harvey E. Schock, Accreditation practices for inspections, tests, and laboratories, ASTM Committee, 1989, p. 104.)。
- ^ 経済産業省のJISの著作権に関する見解の妥当性を疑問視するものとして、南亮一、「教えて!著作権 第1回 著作権とは? 著作物を利用する,とは?」『情報管理』 2010年 53巻 7号 p.381-395, doi:10.1241/johokanri.53.381
- ^ なお日本政府は2009 (平成21)年度に、JISCが加盟するISOに148百万円を(経済産業省産業技術環境局基準認証政策課「行政事業レビューシート 国際標準化機構分担金」(2010 (平成22)年8月31日))、IECに81百万円を(経済産業省産業技術環境局基準認証政策課「行政事業レビューシート 国際電気標準会議分担金」(2010 (平成22)年8月31日))、それぞれ分担金として一般会計から支出した。
出典
- ^ 昭和13年3月30日法律第41号。現行の航空機製造事業法(昭和27年7月16日法律第237号)ではない。
- ^ “今後の基準認証の在り方”. 経済産業省 (2017年7月21日). 2019年7月1日閲覧。
- ^ a b c “JIS法改正(産業標準化法)”. 経済産業省. 2018年12月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月2日閲覧。
- ^ “JISと国際規格との整合化について”. 日本産業標準調査会. 2020年2月4日閲覧。
- ^ 日本工業標準調査会『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(平成12年5月29日)45頁
- ^ 財団法人日本規格協会「平成21年度収支計算書」
- ^ 旧JISマーク認定工場の皆様へ! 日本規格協会
- ^ JISマーク表示制度
- ^ 404 Blog Not Found:Unicode - JISマークは一文字!
- ^ 2009年7月・2009年8月のログを参照。
- ^ 和久井理子『技術標準をめぐる法システム―企業間協力と競争,独禁法と特許法の交錯』(商事法務、2010年 ISBN 4785717912)258-259頁参照
- ^ 「日本工業規格等に関する著作権の取扱方針について」(平成14年3月28日 日本工業標準調査会標準部会議決・平成14年4月24日適合性評価部会議決)2頁
- ^ “JISの入手閲覧方法”. 日本産業標準調査会. 2021年3月13日閲覧。
- ^ ISO の知的財産権保護に関する指針及び方針(理事会決議42/1996 で承認)〔GUIDELINES AND POLICIES FOR THE PROTECTION OF ISO’s INTELLECTUAL PROPERTY (as approved under Council resolution 42/1996)〕
- ^ 日本工業標準調査会『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書』(2000 (平成12)年5月29日)53頁(表1 主要国の国家標準化機関と政府との関係について)
- ^ 高柳誠一・田中正躬・松本隆太郎「座談会【国際標準化100年を記念して】」経済産業ジャーナル No.426(2006年10月号)13頁参照
- ^ a b 鳥澤孝之, 「国家規格の著作権保護に関する考察 -民間団体が関与した日本工業規格の制定を中心に-」『知財管理』 59巻 7号 2009年 p.793-805, 日本知的財産協会, ISSN 1340-847X。
- ^ 国立国会図書館「リサーチ・ナビ JIS規格 国立国会図書館での利用 ▼複写」(2017年8月2日);日本図書館協会著作権委員会編『図書館サービスと著作権 改訂第3版』〔図書館員選書・10〕(日本図書館協会、2007年)22-24頁
- ^ 経済産業省産業技術環境局基準認証ユニット(江藤学編)『標準化実務入門(試作版)』(平成22年7月)185頁〔長谷亮輔執筆〕。ただし、経済産業省がJIS規格本文を全文複写により提供している図書館等に対して、著作権侵害等の警告などを行った例はない。
- ^ 最高裁判所大法廷昭和32年12月28日判決(昭和30年(れ)第3号)
- ^ 通商産業省工業技術院標準部編『平成9年版 工業標準化法解説』(通商産業調査会出版部、平成9年)63頁
- ^ 日本規格協会編『JISハンドブック2010 56 標準化』(日本規格協会、2010年)1026頁
- ^ 山中豊「事業仕分けと標準化」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.85 (2010-03) 2-3頁
- ^ 加戸守行『著作権法逐条講義 五訂新版』(著作権情報センター、平成18年)136頁
- ^ 高橋茂「情報技術標準化についての私見」情報処理学会 情報規格調査会 NEWSLETTER No.39 (1998-09) 4-7頁
- ^ 日本工業標準調査会標準会議21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会事務局「『21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告書案』に対する意見募集の結果について 頂いた御意見及び御意見に対する対応」(平成12年6月)4-7頁〔吉木健提出〕
- ^ 江藤学「産業政策としての標準化」日本知財学会誌 Vol.4 No.1 (2007.12) 15頁
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