テーブルトークRPG 日本における歴史

テーブルトークRPG

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/20 17:49 UTC 版)

日本における歴史

黎明期

日本におけるテーブルトークRPGの始まりは、1970年代後半に求められる。原宿キディランドなどの玩具店や模型店で、日本国外製の原語のTRPGが輸入販売されるようになり、それをプレイする人々が初期のユーザーとなった。元々はアメリカの大学生の遊びから生まれたゲームであるため、ルールは全て英語で書かれており、それを読めなければゲームを始めることすらできなかった。しかし、彼らは次第にゲームの翻訳・翻案、さらには自作まで行うようになる。

日本ではテーブルトークRPGよりも一足先にボードシミュレーションゲームが紹介されており、1980年代前半にはファン層も確立され、日本語のゲームや日本語の専門誌もいくつか出版されていた。[要出典]TACTICS』『シミュレイター』などの当時のボードシミュレーションゲーム雑誌では、「ボードシミュレーションゲームの兄弟のようなゲーム」として日本国外のRPGならびにその周辺の状況がたびたび紹介されている。1982年5月1日発売の『TACTICS』3号にロールプレイングゲーム『ドンキーコマンド』[22]が掲載される。『ドンキーコマンド』はコマンド隊員をキャラクターとして作成し、秘密基地に潜入。爆破や奪取任務を行う1人プレイ用のルールであった[注 3]

日本語で書かれたTRPG製品が商業ベースで発売されるようになったのは1983年で、この年に多摩豊により『エンタープライズ』がツクダホビーから発売されている。また、同年にはツクダホビーやバンダイから、ロールプレイングゲームの要素を持つボードゲームが日本人のゲームデザイナーにより多数発売された(ツクダホビー『クラッシャージョウ』、バンダイ『元禄忍者伝』など)。1984年には日本人作による初の本格的なテーブルトークRPGである『ローズ・トゥ・ロード』(門倉直人著、ツクダホビー発売)が発売された。また、同年には日本国外製TRPGの初の日本語翻訳製品となる『トラベラー』がホビージャパンより発売されている。その後、1985年には『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(新和)、1986年には『クトゥルフの呼び声』(ホビージャパン)と、著名な日本国外作品の日本語翻訳版発売の流れが続き、後のブーム(繁盛期)の端緒を開いた。

日本語のTRPG製品が発売されていった1980年代前半は、コンピュータRPGが日本のパソコンゲームファンに注目されだした時期でもある。『ログイン』『Beep』などのコンピューターゲーム誌では「『ウィザードリィ』や『ウルティマ』の元となったゲーム」として、『D&D』等の紹介が始まり、コンピュータゲームをきっかけにテーブルトークRPGに興味を持つ、という流れを作り出した。なお、コンピューターゲーム誌では、コンピューターRPGに対しての「ボードRPG」という造語が盛んに用いられていた。

1980年代後半に入ると、パソコンゲーム雑誌『コンプティーク』(角川書店)誌上に、『D&D』のシステムを用いた『ロードス島戦記』のリプレイが掲載された。その後、リプレイを原案とした小説版『ロードス島戦記』が発表され大きな反響を呼び、漫画やOVA、パソコン用ゲームなど、いわゆるマルチメディア展開を見せ、日本におけるテーブルトークRPG普及に一役買うことになる。

ソード・ワールドRPGの成功とテーブルトークRPGブーム到来

1989年に『ソード・ワールドRPG』が富士見書房から発売されると、特に中高生を中心とした低年齢層にも広く普及した[23]

『ソード・ワールドRPG』が大きく普及した理由は、

  • 書店で入手しやすい文庫本の形だったこと(それまでのシステムやサプリメントなどのテーブルトークRPG関連商品の多くは、ボードゲームメーカーによるボックス型のものが多く、価格も3500 - 5000円と高めの商品が主流であった)。
  • 『ロードス島戦記』と同じ世界で、違う大陸を扱っていた(出版社、システムは異なる)。
  • メディアミックス展開(雑誌でのリプレイ連載、関連した冒険小説やシナリオの出版、TVゲーム化など)。
  • 日本の環境に合ったルール(キャラクターは複数のスキルを持っていて、「魔法も使える戦士」等を容易に表現でき、また、作成したばかりのキャラクターや少人数でのパーティでも冒険ができた)。

などが挙げられる。

こうして、テーブルトークRPGの一大ブームが訪れた。角川書店富士見書房からはRPG関連書籍が数多く出版された。RPGを元にした小説作品である『ドラゴンランス戦記』(富士見書房より翻訳刊行)や『ロードス島戦記』(角川書店)は日本のファンタジー小説の裾野を広げた[24]

ブームの終焉・冬の時代突入とその後

ところが、こうしたブームは、1990年代半ばに落ち込んでしまうこととなる。これを俗に、「TRPG冬の時代」と呼ぶ。停滞していった原因は、ブームに乗じた粗製濫造と作品の質の低下、『マジック:ザ・ギャザリング』を初めとするトレーディングカードゲームの台頭、主要なファン年齢層の就職・進学に伴う離脱などが、よく挙げられている。

2001年、長らく冬眠状態だった『ソード・ワールドRPG』リプレイの新シリーズがスタートし、翌2002年には、『ナイトウィザード』の初版、『アルシャード』の初版、『ダンジョンズ&ドラゴンズ第3版』といった、その後も展開が継続していった人気システムが相次いで出版され、本格的に復調傾向を見せ始める。

2000年代後半以降は、ルールブック、サプリメントリプレイ、アクセサリなどのTRPG関連製品が毎月10点程度は発売されるような状況となり(関連小説や定期刊行物を含めればさらに増える)、回復・安定したとみられる。TRPGは「冬の時代」を挟んで、他のサブカルチャーメディアへの露出・連携が弱まったため、若い世代への広範な普及が見られたかつての状況にまでは至っていないようである。

2000年代終盤から2010年代初頭にかけて、ニコニコ動画などの動画サイトに『アイドルマスターシリーズ』や『東方Project』のキャラクターを用いた初心者向け解説動画やリプレイ動画などが投稿されるようになり、中でも2012年頃から『クトゥルフ神話TRPG』関連動画の投稿数が急増した。これに伴い『クトゥルフ神話TRPG』基本ルールブックの増版ペースも上がり[25]、2015年6月で第20刷となっている[26]。『クトゥルフ神話TRPG』関連動画の急増は、2012年4月よりテレビアニメが放送された『這いよれ! ニャル子さん』の影響と見る向きもある[27]


注釈

  1. ^ 「実を言えばD&Dこそ世界最初のロールプレイング・ゲームにして、このジャンルのゲームを生み出した元祖なのだ。」 ロブ・ハインソーアンディ・コリンズジェームズ・ワイアット「ロールプレイング・ゲームとは」『ダンジョンズ&ドラゴンズ 基本ルールブック 第4版プレイヤーズ・ハンドブック』ホビージャパン、2008年12月、6頁。ISBN 978-4-89425-779-5
  2. ^ ただし、アメリカでは1980年に「DragonQuest」という(紙の)RPGが発売されており、日本のドラゴンクエストと商標権問題になった。詳細は該当記事を参照。
  3. ^ ただし、デザイナー本人は掲載誌『TACTICS』3号にて「ロールプレイングゲームと題されているが、そのようになっていない」と断り書きをしている。
  4. ^ 『ログ・ホライズンTRPGリプレイ ごちそうキッチンと病の典災』(ISBN 978-4-04-729929-0)、『クトゥルフ神話TRPGリプレイ るるいえあんてぃーく』(ISBN 978-4047262393)等。

出典

  1. ^ a b c d 菊池たけし/F.E.A.R『アリアンロッドRPG 2E ルールブック①』富士見書房、2011年、14-15頁 ISBN 978-4-8291-4631-6
  2. ^ 多摩豊「注釈」『次世代RPGはこーなる!』電撃ゲーム文庫、1995年8月、200頁。ISBN 4-07-303456-1
  3. ^ Kim, John. “"Narrative" or "Tabletop" RPGs”. 2017年9月19日閲覧。
  4. ^ 近藤 1987, p. 31.
  5. ^ a b ゲイリー・ガイギャックス『ロールプレイング・ゲームの達人』教養文庫、1989年、18頁 ISBN 4-390-11312-7
  6. ^ 『新英和中辞典』研究社
  7. ^ 『ケンブリッジ英英辞典』ケンブリッジユニバーシティプレス
  8. ^ 小太刀右京トワイライトガンスモークエンターブレイン、2014年、20頁 ISBN 978-4-04-729263-5
  9. ^ 小太刀右京『なぜなに未来侵略 テーブルトークRPG編』新紀元社、2016年、20頁 ISBN 978-4-7753-1412-8
  10. ^ スティーブ・ジャクソン『ガープス・ベーシック 完訳版』富士見書房、1999年、15-16頁 ISBN 4-8291-7409-9
  11. ^ 佐脇洋平、グループSNE『ガープスがよくわかる本』角川スニーカー・G文庫、1994年、63-64頁 ISBN 4-04-461403-2
  12. ^ スティーブ・ジャクソン『ガープス・ベーシック 完訳版』富士見書房、1999年、232-233頁 ISBN 4-8291-7409-9
  13. ^ スティーブ・ジャクソン『ガープス・ベーシック 完訳版』富士見書房、1999年、11頁より ISBN 4-8291-7409-9
  14. ^ 山北篤、スペース・ワン・ゼロ『パワープレイ』ホビージャパン、1991年、4-9頁 ISBN 4-938461-56-0
  15. ^ a b 安田 2006, p. 5.
  16. ^ 伏見健二・広野一光『ウィザードリィⅤのすべて』JICC出版局、1993年、36頁 ISBN 4-7966-0552-5
  17. ^ 友野詳『バカバカRPGを語る』新紀元社、2007年、10頁 ISBN 978-4-7753-0541-6
  18. ^ 遥遠志、蟷螂社『パワープレイでわかるRPG入門』ホビージャパン、1994年、10-13頁 ISBN 4-89425-050-0
  19. ^ ロブ・ハインソー、アンディ・コリンズ、ジェームズ・ワイアット『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版 基本ルールブック プレイヤーズ・ハンドブック』ホビージャパン、2008年、7頁 ISBN 4-89425-798-X
  20. ^ 安田 2006, p. 244.
  21. ^ 友野詳『バカバカRPGを語る』新紀元社、2007年、10頁 ISBN 978-4-7753-0541-6
  22. ^ 『TACTICS』3号表紙
  23. ^ 清松みゆき『ソード・ワールドRPG完全版』富士見書房、1996年、314頁 ISBN 4-8291-7306-8
  24. ^ 安田 2006, p. 7.
  25. ^ https://twitter.com/Howard_P_L/status/192406878138015744
  26. ^ https://twitter.com/LOGiN_TRPG/status/611836848411836416
  27. ^ ニコ動のTRPG動画4万本を大調査! ネットでアナログゲームが復活!? - ASCII.jp




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