【SS-N-27】(えすえすえぬにじゅうなな)
P-900/3M54E/3M14AE/91RE/3M51"Klub".
NATOコード:SS-N-27 Sizzler
旧ソ連/ロシアのNovator設計局が設計・開発した巡航ミサイル。
Kh-55「グラナート」(SS-N-21)対地巡航ミサイルをベースに、1985年から開発が始まり、2001年に配備を開始している。
本ミサイルには対艦、対地、対潜の3タイプが存在し、水上発射型は「Klub-N」、水中発射型は「Klub-S」、陸上発射型は「Klub-M」と呼ばれている。
このほか、空中発射型の「Klub-A」も存在する。
各タイプとも口径は533mmに統一されており、あらゆる魚雷発射管を使用することができる。
水上発射型は3S14E VLSか3R14 UKSK VLSから、潜水艦発射型は533mm魚雷発射管から発射される。
なお、最近の中国海軍向けキロ級には、本ミサイルの発射が可能になっている636M型(改キロ型)が引き渡されている。
また、インド海軍向けに開発されたタルワー級フリゲート及び発展型のシヴァリク級フリゲートには3M54用VLS1基(8セル)が搭載されている。
スペックデータ
- 3M54E
全長:8.22m
発射重量:2,300kg
弾頭重量:200kg
弾頭:HE
射程:220km
エンジン:固体燃料ロケットモーター
誘導方式:INS+GLONASS(中間)/アクティブレーダー誘導(最終)
- 3M54E1
全長:6.2m
弾頭重量:400kg
発射重量:1,780kg
弾頭:HE
射程:300km
- 3M54AE
全長:7.90m
直径:53.3cm
発射重量:1,950kg
弾頭重量:200kg
射程:300km
飛翔速度:マッハ0.7/マッハ2.0(終末時)
飛翔高度:5~10m
- 3M14TE
全長:8.9m
直径:0.645m
重量:3,205kg
弾頭重量:450kg
弾頭:HE 射程:約300km
- 3M14E
全長:6.20m
直径:53.3m
発射重量:1,770kg
弾頭重量:450kg
射程:300km
飛翔速度:マッハ0.7
飛翔高度:5~10m
弾頭:HE
- 3M14AE:
全長:7.90m
直径:53.3cm
発射重量:1,950kg
射程:300km
弾頭重量:200kg
飛翔速度:マッハ0.7(終末時マッハ2.0)
飛翔高度:5~10m
- 91RE1
全長:8m
直径:533mm
発射重量:2,050kg
射程:50km
弾頭:MTT短魚雷
射程:約50km
発射方式:魚雷発射管
- 91RTE2
全長:6.5m
直径:0.645m
発射重量:1,300kg
弾頭重量:385kg
弾頭:MTT短魚雷
射程:約40km
主なバリエーション
- 3M54E:
潜水艦の魚雷発射管から発射される対艦型。
発射は150mより浅い深度で行われ、海面に到達すると主翼を展開、固体燃料ロケットブースターで初期加速を行いながら上昇する。
中間誘導はINS+GLONASS(ロシア版GPS)で、高度10~15mを亜音速(マッハ0.8)の速度で巡航し、ターゲットの30~40kmの地点で再上昇して終端誘導に切り替わる。
終末誘導はアクティブレーダー誘導で、使用されるアクティブ/パッシブの複合シーカーは最大60kmのレンジを持つ(あくまで最大であり、実際はそれよりも短い)。
超音速突入モードの場合、敵の迎撃を回避する為に目標手前20kmの地点で、固体燃料ロケットブースター付きの先端部分『ダート』が分離し、ターボジェットエンジンを載せた胴体を投棄する(もちろん胴体を分離投棄せずに、そのまま亜音速で突入させることも可能である)。
ダートを固体燃料ロケットブースターで海面スレスレの3~5mの高度で超音速(マッハ2.9)まで加速し、低空高速で突入させる為に迎撃は非常に難しくなる。
バリエーションとして、ダートを省略し弾頭重量と射程を増やした輸出用の「3M54E1」や、Su-27系列に搭載可能な空対艦ミサイル型の「3M54AE」、地対艦ミサイル型の「3M43AE1」といったバリエーションがある。
- 3M14TE/3M14AE/3M14E:
空対地・艦対地型。空対地型はMiG-29系列の戦闘機に搭載される。
アメリカ製のBGM-109「トマホーク」に似た外見を持つ為『トマホークスキー』という愛称がある。
しかし、BGM-109とは違い地形追従飛行は不可能で、弾道飛行して目標に着弾する。
3M14AEは空中発射型、3M14TEはVLS発射型、3M14Eは潜水艦発射型で誘導はGLONASSのみと思われる(未確認)。
性能もトマホークと比較するとかなり劣悪だという印象を受けるが、それは『トマホーク』が突出して優れているからであり、本ミサイルが特別低性能というわけではない。
- 91RE1:
SS-N-16(RPK-6「ヴォドパド」)の後継として開発された対潜ミサイル。
3M54シリーズと同様、150mより浅い深度で魚雷発射管から発射され、15ノットで海面へと上昇する。
海面に達すると固体燃料ロケットブースターに点火し、弾道飛行して目標上空に到達。
目標上空に到達するとブースターを投棄し、パラシュートで魚雷を着水させて目標へ向かわせる。
バリエーションとして水上発射用に軽量化した91RTE2が存在する。
- 3M51:
空中発射型。
Su-32、Tu-142、Tu-22M、Tu-160に搭載可能といわれているが、詳細は不明。
主な搭載艦
- ラーダ型潜水艦
- 636型潜水艦「改キロ級」
- ヤーセン型潜水艦
- シヴァリク級フリゲート
- シンドゥゴーシュ級潜水艦
- タルワー級フリゲート
- ステレグシュチィ級コルベット
- ゲパルト級フリゲート(2番艦「ダゲスタン」に搭載)
クラブ (ミサイル)
(SS-N-27 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/16 13:44 UTC 版)
Kalibr | |
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An export variant of the missile
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種類 | |
原開発国 | ロシア |
運用史 | |
配備期間 | 1994年 |
配備先 | See Operators |
関連戦争・紛争 | |
開発史 | |
製造業者 | ノヴァトール設計局, KTRV, MKB Fakel, NPO Mash, Raduga, NPO Zvezda Strela (Orenburg) |
製造期間 | 1994年 - 現在 |
諸元 | |
重量 | Varies on variant, from 1,300 kg-1,780 kg-2,300 kg |
全長 | Varies on variant, from 6.2 m to 8.9 m |
直径 | 0.533 m |
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最大高度 | 50–150 m AGL 20 m over water[4] |
精度 | 3 m (Club-S/Kalibr-PL)[7] |
弾頭 | 400–500 kg 通常弾頭 、水素爆弾[4][5][6] |
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エンジン | ロケット#多段式ロケット 固体燃料ロケット, ターボジェットエンジン 3M-54/E/TE/E1/TE1, -14/E/TE, 固体燃料ロケット 91RE1/RTE2 |
最大高度 | 1,000 m |
誘導方式 | 慣性誘導とアクティブ・レーダー・ホーミング、人工衛星によるDSMAC |
発射
プラットフォーム |
水上艦艇, 潜水艦, コンテナ, 航空機, TEL |

クラブ(ロシア語: Клуб)あるいは3M-54 カリブル(3M-54 Kalibr、ロシア語: Калибр)、艦船発射型はNATOコードネーム:SS-N-27 シズラー(SS-N-27 Sizzler)あるいはSS-N-30Aは、ロシア連邦のノヴァトール設計局が開発した巡航ミサイルファミリーである。
“Клуб”とは、社交・親睦団体、及びその場としての「クラブ」の意。 Калибрは、「口径」(英語のcaliber)の意。NATO名の“sizzler”は、「焼けるような音を立てるもの」「非常に暑い日」の意味である。
概要

クラブはロシアの前身であるソビエト連邦時代の1985年頃から開発され、MAKS-93で発表された。
クラブファミリーは使用するミサイル、発射プラットホームが多岐にわたる。このシステムを搭載していれば組み合わせ次第で多用途に使えることはこのシステムの特長の一つである。
この巡航ミサイルは、水上艦、潜水艦、航空機から発射でき、対艦、対潜水艦、陸上攻撃用のバリエーションがある。一部のバージョンには第2の推進段階があり、標的への最終段階の接近での超音速スプリントは、標的の防御システムの反応時間を短くして迎撃を困難にする。クラブには、指定されたミサイルの輸出バージョンがある。
発射プラットホームにより、それぞれ
- 潜水艦発射型:Club-S
- 水上発射型:Club-N
- 陸上発射型:Club-M
と区別される。
水上艦艇発射型は3S14 UKSK VLSから、潜水艦発射型は533mm魚雷発射管から発射される。ミサイル径は基本的に全て533mmとなっている。
シリア内戦[1]や2022年ロシアのウクライナ侵攻[3]でロシア海軍により実戦投入された。
ミサイル
対艦型
- エンジン:固体燃料ブースター+ターボジェット
3M54E
- 全長:8.22m
- 発射重量:2300kg
- 弾頭重量:200kg
- 弾頭:HE
- 射程:約300km超
- このミサイルの最大の特長は、命中までのプロセスにある。このミサイルは発射後亜音速で飛行するが、目標の手前20kmほどで先端部を切り離し、これが超音速で敵艦に向かっていく。この事から本ミサイルは超音速対艦ミサイルと呼ばれる事があるが、射程220kmのうち敵艦手前までの200kmは亜音速巡航なので超音速ミサイルとは厳密には言えない。迎撃困難と言われる。
3M54E1
- 全長:6.2m
- 発射重量:1780kg
- 弾頭重量:400kg
- 弾頭:榴弾(HE)
- 射程:約300km
- クラブシリーズの対艦ミサイルで、輸出されているものは本ミサイルである。本ミサイルは上記の3M54Eと違い、完全な亜音速巡航ミサイルである。このため、中華人民共和国やインドに輸出されているクラブを超音速対艦ミサイルとして報道しているのは間違いだと言える。
対地型
- エンジン:固体燃料ブースター+ターボジェット
3M14TE
- 垂直発射型
- 全長:8.9m
- 直径:0.645m
- 重量:3205kg
- 弾頭重量:450kg
- 弾頭:HE
- 射程:約2000-2500km
- 当初、アメリカ合衆国製巡航ミサイルトマホーク (ミサイル)に比べ劣った性能であり、射程が300km程度しかなく地形追従能力も持たないと思われていたが、シリア内戦において2015年、ロシア軍のカスピ小艦隊より反政府勢力に向け発射され[1]、イラン領空を通過後シリア領内に着弾したことから、その射程が最低でも1500kmを超え且つ地形追従も可能で、トマホークと同等もしくはそれ以上の性能を持っていたことが確認された。これは旧ソ連時代から続く、西側諸国による東側諸国の兵器に対する偏見と、ミサイル技術管理レジュームにより、輸出型の本ミサイルの射程が意図的に300kmに抑えられていることが本国仕様でも同様だと思われていたためである。
3M14E
- 魚雷発射管型
- 全長:6.2m
- 直径:0.533m
- 重量:1770kg
- 弾頭重量:450kg
- 弾頭:HE
- 射程:670km超
- シリア内乱において2015年[1]、黒海艦隊所属のキロ型潜水艦2隻により地中海からシリア領内に向け発射された。最遠方の目標距離は670kmであり最低でも670kmを超える射程を持つことが確認された。
対潜型
- エンジン:固体燃料ブースター+ターボジェット
91RE1
- 魚雷発射管型
- 全長:7.65m
- 直径:0.533m
- 発射重量:2100kg
- 弾頭重量:385kg
- 弾頭:MTT短魚雷
- 射程:約50km
- これまで旧ソ連・ロシア海軍で使用されていたRPK-6/7(SS-N-15/16)対潜ミサイルを代替するもので、今後のロシア海軍の魚雷発射管から発射する対潜ミサイルのスタンダードとなる予定である。
91RTE2
- 水上艦VLS発射型
- 全長:8.9m
- 直径:0.645m
- 発射重量:3105kg
- 弾頭重量:385kg
- 弾頭:MTT短魚雷
- 射程:約40km
採用国
搭載艦
- 潜水艦
- 水上戦闘艦
- シヴァリク級フリゲート
- タルワー級フリゲート
- カモルタ級コルベット
- ステレグシュチイ級フリゲート
- グレミャーシュチイ級フリゲート
- アドミラル・ゴルシコフ級フリゲート
- アドミラル・グリゴロヴィチ級フリゲート
- キーロフ級ミサイル巡洋艦(3番艦の近代化改装により3S14 UKSK垂直発射機が搭載される予定)
参考資料
- 『軍事研究』2011年11月号
脚注
- ^ a b c d “ロシア、シリア空爆で新鋭兵器アピール 武器輸出の増加狙い 高精度巡航ミサイル「カリブル」など”. 産経新聞ニュース. (2015年12月21日)
- ^ “動画:ロシア軍、黒海から巡航ミサイルを発射”. AFPBB. (2022年3月27日) 2022年3月30日閲覧。
- ^ a b “ロシア、米欧の武器を破壊と主張 ウクライナにミサイル攻撃”. ロイター. (2022年4月27日)
- ^ a b “Game changer: Russian sub-launched cruise missiles bring strategic effect” (pdf). Jane's Information Group. 2022年3月30日閲覧。
- ^ “صواريخ روسية غيرت مفهوم المعركة وأخافت العالم” [Russian missiles changed the concept of the battle frightened the world] (アラビア語). YouTube. 2021年12月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年3月30日閲覧。
- ^ “ЦАМТО / Новости / Сводка боевых действий ВКС России в Сирии за 8 декабря”. armstrade.org. 2019年2月18日閲覧。
- ^ “Kalibr-PL”. www.deagel.com. 2019年2月18日閲覧。
関連項目
- SS-N-27のページへのリンク