Tu-142とは? わかりやすく解説

Tu-142 (航空機)

(Tu-142 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/20 13:25 UTC 版)

Tu-142 / Ту-142

Tu-142MZ

  • クイビシェフ第18工場[1]
  • タガンログ第86工場[1]
  • 運用者
  • 初飛行:1968年7月18日[2]
  • 生産数:102機[3]
  • 生産開始:1968年[4]
  • 退役:2017年(インド海軍)[5]
  • 運用状況:現役(ロシア海軍)
  • 原型機Tu-95

Tu-142ロシア語: Ту-142)は、ソビエト連邦ツポレフ設計局が開発したターボプロップ対潜哨戒機。ツポレフ設計局のターボプロップ式戦略爆撃機であるTu-95を原型機としており、主翼下に2重反転プロペラを装着した4発のターボプロップエンジンを搭載する。強力な機体持ち上げ力と高効率飛行能力はTu-95から受け継がれており、空中給油なしで30時間の飛行継続が可能である[2]

NATOコードネームベアF(Bear F)と呼称される。

運用史

1950年代後半、アメリカ合衆国は射程1,800キロメートル以上の潜水艦発射弾道ミサイルであるUGM-27 ポラリスを開発[6]、1960年7月20日に原子力潜水艦ジョージ・ワシントン」(USS George Washington, SSBN-598)からの発射試験に成功していた[7]

ソビエト連邦海軍では対潜哨戒機としてIl-38を運用していたが、長大な航続距離を有する対潜哨戒機の必要性が高まり[1]、ツポレフ設計局でTu-95の機体フレームを活用して1963年から製作が開始された[3]。試作初号機は1968年7月18日にジュコーフスキー飛行場で初飛行し[8][9]、1970年からソ連海軍での実用試験が行われ、1972年にTu-142として配備を開始[3]、12月に初期作戦能力(IOC)を獲得した[10]

Tu-142はクイビシェフ(現サマーラ)の第18工場で1968年から1972年にかけて18機が生産された後、1970年代初頭にタガンログの第86工場へ生産を移すこととなり、第18工場で生産された最終号機を基にして1975年から生産が開始された[1][11]。第86工場では1994年に最終号機がロールアウトし、26年にわたるTu-142の生産は終了した[4][12]

機体構成

機体

原型機のTu-95から大幅な設計変更が加えられており、胴体がコックピット直後の前方胴体に1.78メートルのプラグを挿入して延長され、方向舵の弦長も30センチメートル増やし、胴体延長に伴う方向安定性の変化に対応している[2]

主翼も設計変更され、キャンバーが増されてわずかにスーパークリティカル翼に近い翼断面になっている。これにより、翼弦長が増し、フラップが二重隙間式に変更されている[2]

アビオニクス

中央胴体の兵器倉下側に大型レドームが追加され、ベルクト95洋上捜索レーダーを搭載。1978年生産機からはコルシュン洋上レーダーに変更されている[1]。音響探知用ソノブイは胴体後部に収容部があり、その位置の下面に投下扉が設置されている[2]

採用国と配備部隊

Tu-142はロシアのほか、インドでも採用され、以下の部隊に配備された[3]

ロシア
1991年のソビエト連邦崩壊に伴い、ソビエト連邦海軍からTu-142飛行隊を継承。ソビエト連邦から独立したウクライナ領内に残された機体は、1994年に発効した第一次戦略兵器削減条約(START I)によって解体された[13]
インド
インドでは1981年に長距離海洋哨戒機導入の検討を始め、ソビエト連邦はTu-142の新造機ではなく中古機のインド海軍向け改修を提案[14]。インド側は大型機のため、配備基地の滑走路延長と補強が必要になることから難色を示し、Il-38中古機3機のインド向け改修機を要請したが却下され、1984年12月に8機のTu-142購入契約が締結された[14]
インド海軍航空隊英語版の乗員訓練は1987年12月から12か月間にわたってリガに派遣して実施された。派遣人員はパイロットとオブザーバー40名、技術士官16名、水兵128名となっていた[14]
インド海軍向けTu-142の引き渡しは1988年3月30日から行われ、10月末までに全8機がインドに到着した[14]。なお、インド海軍航空隊では2017年3月27日に全機退役し、後継機としてアメリカP-8I ネプチューンを導入している[5]

型式

Tu-142 ベアF
長距離海洋哨戒型。ベルクト95洋上捜索レーダーを搭載[15]
Tu-142 ベアF Mod1
機首下面航法用レーダー廃止型[15]
Tu-142M ベアF Mod2
対潜作戦能力向上型。海洋捜索レーダーをコルシュン3/4に換装、胴体上面に衛星通信用アンテナ追加[15]
Tu-142M ベアF Mod3
対潜作戦能力向上型。MADブームを胴体最後部から垂直尾翼後縁上端に移設[15]
Tu-142MK ベアF Mod4
前方監視赤外線装置を含む複合センサー搭載型。胴体後部機関砲ターレット下部防御用電子妨害装置アンテナ追加[15]
Tu-142MK-E ベアF Mod4
Tu-142MKのインド向け輸出型[15]
Tu-142MZ ベアF Mod4
搭載電子機器能力向上型。エンジンをNK-12MPに換装[15]
Tu-142MZ-C ベアF
Tu-142MZの貨物輸送型[15]
Tu-142MZ-K ベアF
Tu-142MZ-Cの別名[15]
Tu-142MR ベアJ
潜水艦無線通信中継機型。ベアF Mod4の機体フレームを活用[15]
Tu-142 ベアG
情報収集・電子戦型。空軍向けのTu-95Kと同型[15]
Tu-142K ベアH
巡航ミサイル母機型。空軍向けのTu-95MSと同型[15]
Tu-142LL
ターボファンエンジン試験用飛行試験機。初期生産機から2機改造[15]

性能諸元(Tu-142M/MK)

出典: 青木・2020年[2]

諸元

性能

  • 最大速度: 855 km/h (462 kn)
  • 巡航速度: 735 km/h (397 kn)
  • 航続距離: 13,800 km (7,500 nmi)
  • 実用上昇限度: 11,000 m (36,000 ft)


使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

武装

脚注

出典

  1. 1 2 3 4 5 世界の傑作機・2005年 P.34-P.37
  2. 1 2 3 4 5 6 青木・2020年 P.48-P.51
  3. 1 2 3 4 青木・2020年 P.78-P.81
  4. 1 2 Friedman 2006, p. 164.
  5. 1 2 Indian Navy bids farewell to TU-142M aircraft after 29 years of service (英語). Hindustan Times (2017年3月30日). 2022年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月15日閲覧。
  6. Spinardi 1994, pp. 35, 57.
  7. Submarine Chronology (英語). Chief of Naval Operations. Submarine Warfare Division (2001年3月3日). 2012年10月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年12月22日閲覧。
  8. Gordon, Miller & Rigmant 1998, p. 53.
  9. Gordon & Davison 2006, p. 44.
  10. Eden 2004, p. 488.
  11. Gordon, Miller & Rigmant 1998, p. 55.
  12. Gordon, Miller & Rigmant 1998, p. 62
  13. “Ukraine dismantles Tu-142 aircraft”. Ukrayinska Pravda. (2004年7月26日). オリジナルの2014年8月21日時点におけるアーカイブ。 2011年9月26日閲覧。
  14. 1 2 3 4 The Naval Air Arm (英語). Indian Navy. 2012年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年9月23日閲覧。
  15. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 青木・2020年 P.52-P.5
  16. 1 2 3 4 5 6 青木・2020年 P.64-P.65

参考文献

  • Spinardi, Graham (1994). From Polaris to Trident: the Development of US Fleet Ballistic Missile Technology. Cambridge, UK: Cambridge University Press. ISBN 978-0-521-41357-2 
  • Gordon, Yefim; Miller, Jay; Rigmant, Vladimir (1998). Tupolev Tu-95/-142 "Bear": Russia's Intercontinental-range Heavy Bomber. Aerofax. Hinckley, UK: Midland Publishing. ISBN 978-1-85780-046-3 
  • Gordon, Yefim; Davison, Peter (2006). Tupolev Tu-95 Bear. Warbird Tech. 43. North Branch, Minnesota: Specialty Press. ISBN 978-1-58007-102-4 
  • Friedman, Norman (2006). The Naval Institute Guide to World Naval Weapon Systems. Annapolis, Maryland: Naval Institute Press. ISBN 978-1-55750-262-9 
  • 『世界の傑作機 No110 ツポレフTu-95/-142 ベア』 文林堂 2005年7月5日 ISBN 4-89319-125-X
  • 青木謙知 『世界の名機シリーズ Tu-95/-142 ベア』 イカロス出版 2020年5月30日 ISBN 978-4-8022-0826-0

Tu-142

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 02:15 UTC 版)

Tu-95 (航空機)」の記事における「Tu-142」の解説

海軍向け対潜哨戒機型胴体前部わずかに延長主翼形状変更燃料タンクインテグラルタンク化、フラップ変更などが行われた。初期型滑走路への接地圧低下狙って片側12輪の主脚持っていたが、後期型では普通の片側4輪のものに戻された。ベルクート捜索レーダー電子情報収集機能搭載NATOコードネームベアF

※この「Tu-142」の解説は、「Tu-95 (航空機)」の解説の一部です。
「Tu-142」を含む「Tu-95 (航空機)」の記事については、「Tu-95 (航空機)」の概要を参照ください。

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