SS-N-19とは? わかりやすく解説

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【SS-N-19】(えすえすえぬじゅうきゅう)

ロシア名:P-700グラニート(Granit)」
NATOコード:SS-N-19「シップレック

SS-N-12後継として1970年代前半にP-70(SS-N-7「スターブライト」)およびP-50「マラヒート(SS-N-9サイレーン』)」との置換目指し開発され1980年ごろに配備されソ連製世界最大級の艦対艦ミサイル

射程は700km、推進装置は「固体ロケット・ラムジェット統合推進システム」(固体ロケット超音速まで加速した後、ラムジェット切り替えて巡航する)で速度時速1,600km、発射重量は6,980kg。
弾頭は750kgのHEもしくは核出力500kt(TNT換算)級の核弾頭装備可能と、西側の代表艦対艦ミサイルであるハープーンエグゾセ大きく上回る破壊力を持つ。
誘導方式は、指令更新慣性誘導終端誘導IR又はアクティブレーダー誘導
どちらかと言えば爆弾抱いた無人ジェット機体当たりさせる、と表現した方がわかりやすいかもしれない

開発に当たり、旧ソ連1970年代末期に実用化した全地球規模海洋監視衛星システムレゲンダ」と連動して運用する事を前提にしており、当然、目標捕捉並びに誘導も「レゲンダ」に依存している。
この為それまでソ連長距離対艦ミサイルのように航空機による中間誘導の必要が無くなった
この他特徴としては相互データリンク装置装備されていることである。
複数ミサイル同時発射され場合データリンクによって1基が探査役として高高度飛行し残り探知避けるため低空飛行する
探査役のミサイル撃墜され場合低空飛行している1基が新たな探査役となる。

ただし、その重量容積問題から搭載艦艇大型艦艇のみに限られ、現在配備されているのはアドミラル・クズネツォフ級空母(VLS12基)、キーロフ級原子力ミサイル重巡洋艦傾斜VLS 20基)、オスカーⅠ/Ⅱ級攻撃原潜水中発射舷側傾斜発射管24基)のみである。

後継として、潜水艦発射前提小型化して重量抑えミサイル中間誘導簡略化可能にしたP-800オーニクスSS-N-27)」が開発されており、グラニープロジェクト885「ヤーセン」)級原子力潜水艦搭載され予定である。

スペックデータ

全長:10.5m
直径:88cm
翼幅:2.6m
発射重量:6,980kg
射程:550km
速度:1,600km/h(時速
飛行高度:20km(巡航時)
推進方式固体推進射出)+ラムジェット巡航
推進装置:KR-93ターボジェットエンジン
弾頭核弾頭(500kt)または HE(750kg)
誘導方式指令更新慣性誘導/アクティブレーダー/IR


P-700 (ミサイル)

(SS-N-19 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/24 18:59 UTC 版)

P-700 (SS-N-19)
P-700「グラニート」(SS-N-19)弾体。西側諸国では長らくP-500(SS-N-12)のような形状だと考えられていたが、クルスク沈没事件で海中から引揚げられた際に真の姿が判明した。
種類 長射程対艦ミサイル
製造国 ソビエト連邦
性能諸元
ミサイル直径 0.85 m
ミサイル全長 10 m
ミサイル重量 6,980 kg
弾頭 500 kt核弾頭 または
750 kg通常HE
射程 700 km (核弾頭型)
550 km (通常弾型)
推進方式 固体燃料ロケット・ブースター+ラムジェット・サステナー
誘導方式 中途航程: INS指令
終末航程: IRHARH
飛翔速度 マッハ2.5
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P-700「グラニート」 (ロシア語: П-700 «Гранит»ペー・スィミソート・グラニート)は、ソビエト連邦で開発された長射程型の対艦ミサイル。愛称は「御影石」の意味。

西側諸国においては、アメリカ国防総省(DoD)識別番号としてはSS-N-19NATOコードネームでは「シップレック」(英語で「難破船」の意味)と呼ばれた。

開発

P-700は、チェロメイ設計局(現機械製造科学生産連合)によって、1970年代から、前任のP-70「アメチスト」(SS-N-7「スターブライト」)およびP-120「マラヒート」(SS-N-9「サイレーン」)との置換を目指して開発が開始された。前任の2つのタイプのミサイルは射程が短く、仮想敵であるアメリカ海軍空母機動部隊の対潜・対空防御能力が年々向上するにつれて、その戦術的価値が減少しつつあり、その長距離射程化が求められた。そのため、射程の延伸、強力な弾頭の搭載などのため、重量が7トンにも達する巨大なミサイルとなり、推進システムや誘導機構にそれまでに無いシステムが多く導入された。

特色

キーロフ級ミサイル巡洋艦「フルンゼ」のP-700垂直発射機(右側)

グラニートは、その巨大さによって、西側ではほとんど例を見ないような特異な機軸を含むことが可能であった。

推進

P-50やP-70がロケットエンジンのみで推進していたのに対し、P-700ではロケット推進は一種の固体ロケットブースターであり、それで加速してラムジェットエンジンが動作可能な速度になった後は、ラムジェットエンジンにより巡航する。詳細には、それが多段式ではなく一体化されたインテグラル・ロケット・ラムジェット (integral rocket ramjet、IRR) である。弾頭も、高性能通常炸薬によるHE弾頭(500 kg)もしくは核出力500 kt(TNT換算)相当の核弾頭を搭載することで、核弾頭の搭載で戦略兵器としての性格も帯びることになった。

誘導

P-700以前のソ連製長距離対艦ミサイルは、発射後に航空機(Ka-25Tu-95など)によって中間誘導してやらなければ、その長射程を生かすことは出来なかった。しかし、米海軍空母戦闘機の能力が向上するにつれ、航空機による中間誘導は、有効性に疑問が持たれるようになっていった。

この問題を解決するため、ソ連海軍は、グラニートの開発に当たり、1960年代初頭から開発が始まっていた偵察衛星による全地球規模の海洋情報収集システム「レゲンダ」を利用した。このシステムとの連携により、グラニートは、それまでのソ連の長距離対艦ミサイルのように航空機による中間誘導が不要となり、戦術的な脆弱性が減じられた。なお、グラニートの設計に当たったチェロメイ設計局は、「レゲンダ」システム開発にも参加しており、センサー用衛星も同時並行で設計していた。

1970年代末より運用を開始したレゲンダは、フォークランド紛争(1982年)において、英軍の動向を逐一監視し、有用性を示した(当時の西側は、そのような事は知らず、冷戦後に判明した)。

グラニートは複数発の同時発射が原則だが、発射されたミサイルは「編隊」を組み、ミサイルのうち1基が「編隊長」となり、他のミサイルを「率いて」目標に向かう。「編隊長」が攻撃を受けたり故障したり、何らかの理由で墜落したら、他のミサイルが自動的に指揮を引き継いで目標に向かう。

こうした700kmもの長大な射程は、発射母体となる水上艦や潜水艦の探知能力を大きく超えており、これらの艦艇はこのミサイルを単独では運用できない。各個艦の外部にあるセンサーや情報と統合されなければまったく運用できないのであり、統合運用ドクトリンに回帰することになった。

発射機

ミサイルの巨大さのため、発射機は専用のVLS(垂直発射機)が用意されたが、あまりにミサイルが長大であるため大型艦でも船体内に収めるのが容易でなく、前方へ約45度傾けて全高を抑制している。また、コスト削減のため潜水艦用に設計されたシステムをそのまま水上艦にも流用しているが、これにより発射前にVLSへの注水が必要で、キーロフ級では発射態勢での機動性に大きな悪影響を及ぼしているとされる。

早すぎた重長距離対艦ミサイル

このミサイルは、(ソ連を核空爆可能な)米海軍の空母機動部隊に(空母艦載機に先に撃沈されるのを回避するため)長射程(重弾頭)対艦ミサイルの飽和攻撃で対抗するという、冷戦期ソ連海軍のドクトリンのいわば最終的な帰結であったということができる。しかし同時に、このような重量級のミサイルは運用母体を厳しく選ぶことになるだけでなく、高度な自律捜索のための編隊長ミサイルの高高度飛行と隠密性のための僚機の低空飛行や、当時の技術で衛星運用が多数必要など「前進観測機不要にするための凝り過ぎた誘導システム」の総運用コストは著しく高いものになってしまった。「ミサイル飛行中に目標が動く」という問題は現代でも長射程対艦ミサイルが抱える問題といえよう。

ほぼ同時期に開発され、射程や弾頭搭載量でよく似通っているアメリカのトマホーク対艦ミサイル(TASM)の場合は、総重量は5分の1(約1.4t)、射程450km、HE弾頭450kgとP-700に比べ小型で、大型の翼によって小さいながら長距離飛行可能であったが、GPS供用以前の設計で、TERCOM地形照合航法装置は平面な海上では使えず、衛星中間指令誘導未搭載など、誘導に問題があり対地型と対象的に短期間で退役になっている。

こうして長距離対艦ミサイルの分野はあとに続かないでいたが、21世紀になると技術の発展により3M22 ツィルコンLRASM東風-21Dなどの新世代の長距離対艦ミサイルが登場するようになった。

搭載艦

参考文献

  • Polutov Andrey V.「ソ連/ロシア巡洋艦建造史(第19回)」『世界の艦船』第712号、海人社、2009年10月、110-115頁、NAID 40016800609 

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、P-700 (ミサイル)に関するメディアがあります。



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