陸軍軍服の種類
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「軍服 (イギリス)」の記事における「陸軍軍服の種類」の解説
英国陸軍の服装規定は1950年代に整理され、15種類に分類された。現在では14種類が定められている。 Full Dress 19世紀半ばに採用されたデザインを原型とし、20世紀初頭までに数回の小改正があったが、それ以降ほとんど変わっていない。軍装が常装や戦闘服等に分化する以前からの軍服である。現在では王室騎兵隊(Household Cavalry)、近衛師団(Guard Division)、王立騎馬砲兵(Royal Horse Artillery)の将兵及び各連隊の軍楽隊のみが公式な儀式の際着用する。但し、王立戦車連隊のように20世紀以降に新設された連隊には制定されておらず、軍楽隊もNo.1 dressを着用する。 色や形は連隊によって異なる。例えば、近衛歩兵連隊は服と袖のボタン数及び配列、帽子の羽根飾りが連隊毎に異なり、連隊の識別ポイントになっている。王立騎馬砲兵連隊には棺を乗せた馬車を引く任務があるため、国葬の際にその華麗な正装を見ることが出来る。 乗馬正装のライフガーズ。 トゥルーピング・ザ・カラーのライフガーズ連隊軍楽隊 正装用外套を着用したライフガーズ。 トゥルーピング・ザ・カラーのブルーズ・アンド・ロイヤルズ連隊 ブルーズ・アンド・ロイヤルズ連隊軍楽隊長 正装用外套を着用したブルーズ・アンド・ロイヤルズ連隊 近衛歩兵連隊の軍楽隊 。連隊毎に帽子の飾り羽が異なる。 ドラム隊長に先導されるグレナディアガーズ軍楽隊 スコッツガーズ軍楽隊。後方にウェルシュガーズドラム隊が続いている。 ウェルシュガーズドラム隊。 バッキンガム宮殿の衛兵交代式における正装のグレナディアガーズ。 正装用外套を着用したグレナディアガーズ。 コールドストリームガーズの連隊長代理と下馬正装のライフガード連隊員 コールドストリームガーズ連隊の上級下士官 正装の王立騎馬砲兵(Royal Horse Artillery) 正装に外套を着用した王立騎馬砲兵 一般歩兵連隊(プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊)のドラム隊に先導される軍楽隊。 プリンセス・オブ・ウェールズ・ロイヤル連隊軍楽隊。ドラム手と肩の部分が異なり、かつての一般歩兵の正装とほぼ同じである。 一般歩兵連隊のドラム隊(デューク・オブ・ウエリントン連隊(Duke of Wellington's Regiment)) ロイヤル・ウェールズ連隊(Royal Regiment of Wales)のゴートメジャー No.1 dress 20世紀初頭から内地警備用のパトロールドレスとして使用された服装で、1950年代に準正装として採用された。雨蓋のある胸ポケットが付いた立襟のチュニックが基本となっているが、将官はダブルのフロックコートである。色はライフル連隊が上下濃緑色である以外は基本的に紺色で、スコットランド連隊の一部はタータンチェックのキルト、軽騎兵は赤のズボンを着用する。Full Dress を着用しない将兵は最上級の正装としても使用する。そのため、勲章や記章を持っている将兵は、略綬の上に正規の勲章類を装着できるようにしている。 士官学校の行事における各種No.1 dress後方は陸軍士官候補生と馬上のスコットランド連隊将校。手前の左2人は陸軍将官で、その後に従っている2人の副官は砲兵士官と海軍士官。海軍士官はBlue No 1A Dressを着用。 ヨークシャー連隊(Yorkshire Regiment)のカーネル・イン・チーフ(Colonel-in-Chief)ヨーク公・アンドルー王子と連隊長(少将)、ノース・ヨークシャー州知事及び陸軍大将 No.1 dress のウースターシャー・アンド・シャーウッド・フォレスターズ(Worcestershire and Sherwood Foresters) デューク・オブ・ウエリントン連隊の連隊長用No.1 dress を着用した陸軍少将 エディンバラ城を警備する、No.1 dressのロイヤル・スコットランド連隊(Royal Regiment of Scotland)兵士。 No.2 dress カーキ色の背広型で、常温用の常装。19世紀末、海外での戦闘服として採用された。襟は立襟から折襟へと変化し、第一次世界大戦頃には将校用は開襟の背広型になったが、下士官・兵は第二次世界大戦まで折襟だった。第二次世界大戦期に後述する常装・戦闘服装兼用のNo.5 dress が導入され一時は廃止されていたが、現在では宮殿以外のパレードや儀式でも使用される準礼装としても使われている。そのため、勲章や記章を持っている将兵は、略綬の上に正規の勲章類を装着できるようにしている。 No.2 dress で行進するロイヤル・アングリアン連隊(Royal Anglian Regiment) No.2 dressを着用した空挺部隊曹長。 No.2 dressを着用した特殊部隊支援群の兵士 No.2 dress No.3 dress 温暖地域用の正装。白の上下で、上着はNo.1 dress と同様の雨蓋のある胸ポケットが付いた立襟のチュニック。 No.4 dress 将校専用の温暖地域用背広型制服。No.2 dress と同型だが、色は淡色となっている。 No.4 dressを着用した陸軍大将 No.5 dress (Battledress/BD) 第二次世界大戦期にイギリスおよびイギリス植民地ならびに英連邦王国諸国で制定された、当時としては本格的な戦闘服であった。常装としても用いられることを企図しており、一時はNo.2 dress をも代替し、戦後はイギリス連邦諸国をはじめアルゼンチンやベルギーなどの国外にも広まった。しかし、「万能」を謳っていながらも、実際にはイギリス本土・北欧南部の過ごしやすい気候に合わせていたため、南ヨーロッパのような日射量の多い温暖地および東南アジア・太平洋諸島のような熱帯域や、あるいは朝鮮半島のような高地・寒冷地には向かなかった。結局、どのような環境においても中途半端なものとなってしまっており、1950年代を経て1961年に廃止された。これにより、No.2 dress が常温域用の常装として復活する。 No.5 dress (Desert combat dress) 1990年代初頭の湾岸戦争期に導入された現代的な迷彩服で、基本的にはNo.9 dress に砂漠地域用の迷彩を施したものである。欠番となっていたNo.5に挿入されていた形式だが、2011年の新型戦闘服の導入に伴い、No.9 dress とともに廃止された。 No.6 dress ブッシュジャケット型で淡色の上着。ワイシャツの着用は省かれる場合もある。温暖地域用常装で、No.2 dress と同様にパレードや儀式でも使用される。 No.7 dress 温暖地域用の半袖シャツ。 No.8 dress 常温域用戦闘服。 湾岸戦争におけるスタッフォードシャー連隊(Staffordshire Regiment) アフガニスタンにおける高射砲兵(第12砲兵連隊(12th Regiment Royal Artillery)) 縮小前のデューク・オブ・ウエリントン連隊 ヨークシャー連隊第3大隊 デューク・オブ・ウエリントン(3rd Bn Yorkshire Regiment(Duke of Wellington's)) ヨークシャー連隊第2大隊 グリーン・ハワーズ(2nd Battalion Yorkshire Regiment(Green Howards))の軍曹 ヨークシャー連隊第2大隊 グリーン・ハワーズの中尉と軍曹 アフガニスタンにおけるヨークシャー連隊第2大隊 グリーン・ハワーズ 地雷処理中の工兵 No.9 dress ジャングル向けのオーソドックスな迷彩が施された熱帯域用戦闘服。砂漠向けの迷彩戦闘服であるNo.5 dress (Desert combat dress) とともに、2011年に廃止された。 No.10 dress 常温域用メスドレス。ブラックタイ相当の会食服。色は連隊毎に異なっており、連隊の Full Dress に概ね準じている。 No.11 dress 熱帯域用メスドレス。No.10 dress の上着を白にした服装。ウェストコートは省略される。 No.12 dress 乗車服や調理服等の特殊服装。 No.13 dress 常温域用略装。シャツはNo.2 dress と共用で、上着の代わりにプルオーバーのセーターが付属する。 ケンブリッジ公爵ウィリアム王子とキャサリン・ミドルトンの結婚式パレードのリハーサルに於ける兵士。 No.14 dress 温暖地域用略装。おおむねNo.13 dress に準じるが、肘の位置までのシャツの袖まくり、もしくは半袖シャツの着用が認められている。セーターは省略される。 No.15 dress ロイヤル・スコットランド連隊の将校もしくは上級曹長の常装で、準礼装として用いられる。トルーズ(英語版)と呼ばれるタータン・チェック柄の長ズボンと、グレンガリー帽を特徴とする。
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