走出去戦略の事例
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走出去戦略の事例として主なものに以下のものがある。 年月投資主体投資対象国投資対象企業結果2004年8月 上海電気集団 日本 池貝 2001年に民事再生法を申請した、元東証・大証上場企業の工作機械メーカーである池貝は上海電気集団から第三者割当増資を受け、経営再建を図る。買収金額4.8億円、20億円を資金援助。 2005年5月 聯想集団 アメリカ IBMのパソコン部門 IBMパソコン事業をすべて買収推定買収金額17億5000万ドル。 2005年5月 CNOOC アメリカ ユノカル 185億ドルの買収提案、失敗。 2005年7月 南京汽車 イギリス MGローバー 経営破綻したMGローバーを推定5000万UKポンドで買収。 2005年10月 CNOOC カザフスタン ペトロカザフスタン(en) 41億8000万ドルで買収、日量15万バレル。 2007年5月 中国投資有限責任公司(CIC) アメリカ ブラックストーン・グループ 30億ドルの出資。 2007年12月 中国投資有限責任公司 アメリカ モルガン・スタンレー サブプライム・ローンによる巨額の損失で苦しむモルガン・スタンレーに50億ドル出資。 2008年9月 中聯重科 イタリア Cifa 買収し、世界最大のコンクリート機械メーカーに。 2009年2月 中国鋁業 オーストラリア リオ・ティント 195億ドルの出資の計画も6月に契約破棄され、失敗。 2009年2月 湖南華菱鋼鉄集団 オーストラリア フォーテスキュー・メタルズ・グループ 鉄鉱石が目的出資比率16.5%投資額5億5800万AUD 2009年4月 中国五鉱集団(zh) オーストラリア Ozミネラルズ(en) 亜鉛など金属が目的出資比率 NA 投資額13億8600万AUD 2009年5月 中国有色鉱業集団 オーストラリア ライナス レアアースが目的出資比率51.6%投資額2億5200万AUD 2009年6月 蘇寧電器 日本 ラオックス ラオックスは蘇寧電器の傘下に入り、経営再建を図る。 2009年6月 四川騰中重工機械 アメリカ GM・ハマーブランド ハマーブランドの譲渡に暫定合意し、10月正規に合意後、交渉も、中国商務部が2010年2月24日までに買収計画を却下、四川騰中は新しい方法で買収を模索とのこと。 2009年6月 有色金属華東地質勘査局 オーストラリア アラフラ・リソーシズ レアアースが目的出資比率25%投資額2294万AUD 2009年7月 西北有色地質勘査局 オーストラリア メリディアン・リソーシズ 亜鉛が目的出資比率15%投資額1050万AUD 2009年8月 兗州煤業(zh) オーストラリア フェリックス・リソーシズ 石炭が目的出資比率100%投資額35億AUD 2009年9月 広東核電集団 オーストラリア エナジー・メタルズ ウランが目的出資比率70%投資額8360万AUD 2010年4月 比亜迪汽車(BYD) 日本 オギハラ BYDがオギハラの群馬県館林市にある工場を買収。オギハラのハイレベルの金型技術獲得が目的。 2010年7月 山東如意科技集団有限公司 日本 レナウン レナウンは山東如意科技集団有限公司から第三者割当増資約40億円を受け、山東如意科技集団有限公司の傘下に入り、経営再建を図る。 2010年8月 浙江吉利控股集団 スウェーデン ボルボ・カーズ フォード・モーターより買収。浙江吉利は8月2日、現金13億ドルを支払い、買収関連で証券2億ドルを発行。 2010年12月 中国航空工業集団 アメリカ コンチネンタル・モータース テレダインより買収。 表外にも中国の三大国有石油企業(中国石油天然気集団公司(CNPC、子会社に中国石油天然気(ペトロチャイナ))、中国石油化工(Sinopec、子会社に中国石油化工集団公司(シノペック))、中国海洋石油総公司(CNOOC)は旧ソ連諸国(ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャンなど)、中東(イラク、イラン、サウジアラビア、シリアなど)、アフリカ諸国(エジプト、スーダン、リビア、アルジェリア、ナイジェリア、アンゴラなど)、北中南米(メキシコ、カナダ、ベネズエラ、エクアドル、ブラジルなど)に多くの利権獲得をしている。 中国企業による対外投資は、それまでは発展途上国などの資源分野に集中していたが、先進国の先端技術やブランドをもつ企業に広がってきた。例えば、安邦保険集団がニューヨークの最高級ホテルであるウォルドルフ=アストリアを買収した例、TCL集団がテレビのRCAやスマートフォンのBlackBerryなどのブランドを取得した例、大連万達集団がレジェンダリー・ピクチャーズやAMCシアターズなどアメリカの映画業界を買収した例、中国化工集団がイタリアの高級タイヤの会社であるピレリやスイスの農薬大手企業のシンジェンタを買収した例、紫光集団や華潤集団が米国のマイクロン・テクノロジーやウェスタン・デジタルとフェアチャイルドセミコンダクターなど半導体大手に対して出資を持ちかけた例、テンセントがライアットゲームズなど欧米のゲーム大手を買収した例、アメリカ電機大手のゼネラル・エレクトリックの家電部門を海爾集団が買収した例、吉利汽車と海航集団や美的集団がドイツの自動車大手ダイムラーとドイツ銀行や産業用ロボット大手クーカの筆頭株主になった例などが挙げられる。 日本でも中国の政府系ファンドとされるOD05オムニバスチャイナトリーティによってトヨタ自動車など200社前後もの日本企業の大量株取得が起きており、東芝は家電事業を美的集団や海信集団に買収され、日本の製造業で戦後最大の経営破綻をしたタカタも中国企業の米国子会社を通じて買収され、事実上の国策企業だったジャパンディスプレイは中国と台湾の企業連合による買収を受け入れ、IBMのPC事業を買収した聯想集団はNECや富士通ともPC事業で統合するなど技術力を持つ日本企業への投資も進んでる。日本の技術力に興味を持つ胡錦濤指導部や「産業の高度化」を国策に掲げる習近平指導部の意向も働いているとされる。 中国商務省によると、2015年の中国企業の対外直接投資額(金融を除く)は、1180億ドル(約14兆円)となり、前年比で15パーセント増加し、過去最高を記録した。足元の国際経済の減速が続く中、それでも対外投資の拡大に動く背景には、技術力やブランド力を高めないと、成長維持がおぼつかないとの危機感があるとされる。企業買収の専門サイトディーロジックによると、2015年の中国企業による外国企業の買収案件は約600件であり、金額は計1123億ドルで、2014年を5割以上も上回って過去最高であった。中国経済の伸びが鈍るなかで、企業は国外でも利益をあげることの必要性を意識している。元安傾向が続くなか、「さらなる下落の前に買おうとする心理も働いている」との分析もある。また、中国企業の外国企業の買収の特徴として、現地市場での経験や販売ルートをより早く確実に手に入れようと、業界の常識を上回る買収金額を示すことがある。
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