贍部洲とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > デジタル大辞泉 > 贍部洲の意味・解説 

せんぶ‐しゅう〔‐シウ〕【×贍部×洲】

読み方:せんぶしゅう

閻浮提(えんぶだい)


閻浮提

(贍部洲 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/24 01:14 UTC 版)

閻浮提(えんぶだい、サンスクリット語: जम्बुद्वीपJambudvīpa)とは、古代インドの世界観における人間が住む大陸。

インドの伝統的な世界はメール山を中心とするが、その四方に大陸(島)があってその一つとする説と、メール山の周りに同心円状に大陸が並び、その中心にあたる大陸とする説がある。仏教では須弥山の周囲にある4つの大陸(四大洲)の1つ。

サンスクリットではジャンブドヴィーパといい、文字通りには「ジャンブ(ムラサキフトモモ英語版)の島」を意味する[1]。「ジャンブ」は「ジャンブー」と伸ばされることもある[1]。閻浮提はその音訳である。

叙事詩とプラーナ

アショーカ王の小法勅に見えるジャンブディーパシ(=ジャンブドヴィーパ)はインドを意味する[2]

マハーバーラタ』巻6によると、メール山の周辺には4つの島があり、そのひとつがジャンブドヴィーパである(他の3つはバドラーシュヴァ、ケートゥマーラ、ウッタラクル[注 1][4]。ジャンブドヴィーパはウサギに似た形をしている[4]。東西方向に6つの山脈が走り、その一番南のものがヒマヴァット(ヒマラヤ山脈)である。山脈によって世界は南北7つのヴァルシャに別れ、その一番南のものがバーラタヴァルシャ(インド亜大陸)である[4]

プラーナ文献ではメール山の東西南北に4つの島があり、南の島をジャンブドヴィーパとするものと、メール山を中心として同心円状に7つの島があって、その一番内側がジャンブドヴィーパとするもの(たとえば『マールカンデーヤ・プラーナ』54[5])がある。

ジャンブドヴィーパのうちヒマラヤから南の部分、すなわちインド亜大陸をバーラタヴァルシャと呼ぶが、インドの文献では時にジャンブドヴィーパとバーラタヴァルシャを区別せずに使用することがある[2]

ジャイナ教

ジャイナ教では世界は下界・中界・上界の三界からなり、うち中界は円筒形をしている。中心にメール山があって、その周りを同心円状に15の島が取り巻いている。中央の島がジャンブドヴィーパである。ジャンブドヴィーパは東西に走る6つの山脈によって南北7つの黄帯(クシェートラ)に分けられ、その南端のものがバーラタ・クシェートラである[6]

仏教における閻浮提

四大洲のうち、南に位置する三角形の大陸をジャンブドヴィーパ(閻浮提)と呼ぶ。玄奘以降の新訳では贍部洲(せんぶしゅう)と訳される。また、南方にあることから、南閻浮提(なんえんぶだい)、南贍部洲(なんせんぶしゅう)ともされる。

大きな森があり、そこに閻浮(Jambu)樹と呼ばれる常緑の大きな木があることから閻浮提とよばれる。インドの地をモデルにしたもので、雪山(Himavat、せつせん)という山の頂にアナヴァタプタ(Anavatapta)という名前の池(阿耨達池: あのくだっち)があり、四方に大きな川が流れる。その後、現在人間が住む世界を指すようになった。

東にはヴィデーハという名前の大陸(Pūrvavidehadvīpa、弗婆提: ほつばだい、東勝身洲: とうしょうしんしゅう)、西にはゴーダーニーヤという名前の大陸(Aparagodānīyadvīpa、瞿陀尼: くだに、西牛貨洲: さいごけしゅう)、北方にはクルという名前の大陸(Uttarakurudvīpa、鬱単越: うったんおつ、北倶盧洲: ほっくるしゅう)がある。

脚注

注釈

  1. ^ ウッタラクルという名前はすでに『アイタレーヤ・ブラーフマナ』に見えるが、島ではなくヒマラヤの北の土地を指す[3]

出典

  1. ^ a b Monier-Williams, Monier (1899) [1872]. “jambu-dvīpa”. A Sanskrit-English Dictionary (2nd ed.). Oxford: Clarendon Press. p. 412 
  2. ^ a b Sircar, D.C. (1960). Geography of Ancient and Medieval India. Motilal Banarsidass. p. 6. https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.532598/page/n15/mode/2up 
  3. ^ Rigveda Brahmanas: The Aitareya and Kauṣītaki Brāhmaṇas of the Rigveda. Harvard Oriental Series. 25. translated by Arthur Berriedale Keith. Harvard University Press. (1920). p. 331. https://archive.org/details/rigvedabrahmana00keitgoog/page/330/mode/2up 
  4. ^ a b c The Mahabharata: Book 6: Bhishma Parva, Section VI, https://www.sacred-texts.com/hin/m06/m06006.htm 
  5. ^ The Markandeya Purana: Canto LIV - The description of Jambudvīpa, https://www.wisdomlib.org/hinduism/book/the-markandeya-purana/d/doc117101.html 
  6. ^ 渡辺研二『ジャイナ教:非所有・非暴力・非殺生―その教義と実生活』論創社、2005年、156-158頁。ISBN 4846003132 

関連項目



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「贍部洲」の関連用語

贍部洲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



贍部洲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの閻浮提 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS