諸家の評価Ⅰ
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少年期の作品を多数含む第1句集『無灯艦隊』は、言語表現の可能性の極北に立つ17文字の文学世界であり、ジャンルを超えて文学界へ衝撃を与えた。 1988(昭和63)年、西川徹郎初の読本『秋桜COSMOS別冊 西川徹郎の世界』(秋桜発行所)に前記の吉本隆明の評論「西川徹郞さんの俳句」と共に多数の作家や評論家が寄稿した。同書に宮澤賢治研究の第一人者菅谷規矩雄は、賢治以降に現れた少年詩人の言葉に触れた戦慄を隠さず、「死者の棲むところに─西川徹郎小論」を寄稿し、「ことばが韻律に執する理由はただひとつ─リズムとは、詩の発生の現前(プレザンス)にほかならない。この発生の瞬間‥‥というスリルをふくまなければ、俳句も短歌も、むろん現代詩も、韻律として存在する理由はない。」と詩表現の本質を論述した。2007(平成19)年、宮澤賢治研究の先駆者的評論家、明治学院大学名誉教授天沢退二郞は、『現代詩手帖』11月号に『無灯艦隊』について論評し、「無灯」の意味を明らかとした。1988(昭和63)年、第1回現代俳句協会新人賞受賞者宮入聖は本格的作家論「蓮華逍遙─西川徹郎論」百枚を執筆し、1995(平成7)年、現代俳句の論客谷口愼也が『虚構の現実─西川徹郎論』(書肆茜屋)を書下ろし、西川徹郎の〈反季反定型〉の理念は有季定型の相対化であると論評した。2002(平成14)年、評論家研生英午は同書に「空(くう)の谺─実存俳句の行方」を寄稿し、西川徹郎を「夭折したフランスの天才レーモン・ラディゲの『肉体の悪魔』の再来」(『星月の惨劇─西川徹郎の世界』、書肆茜屋)と評し「詩聖西川徹郎」と称んだ。同年、哲学者梅原猛は、同書に於いて西川徹郎のエッセイ集『無灯艦隊ノート』をボードレールの散文詩に喩えて絶賛した。2004(平成16)年、法政大学教授小笠原賢二は、吉田一穂と共に西川徹郎を「言語表現の極北に立つ詩人」と賞賛し、『極北の詩精神─西川徹郎論』(書肆茜屋)を刊行した。2009(平成21)年、日本大学名誉教授で泉鏡花研究の第一人者笠原伸夫は『銀河と地獄─西川徹郎論』(茜屋書店)で西川徹郞を「現代俳句のアヴァンギャルド」「西川徹郎は異形の天才である。西川徹郎の方法は原則、俳句形式への断絶と連続という背理的な形での自負に貫かれている。一言でいえば反俳句の俳句─反伝統の伝統である」と論評した。2010(平成22)年、作家森村誠一は西川徹郎文學館で幾度も講演し、講演録『青春の永遠性─西川徹郎の世界』(茜屋書店)を刊行し、後記に「西川俳句は、日本の文学遺産」、芭蕉の〈蕉句〉に比肩し西川俳句を〈凄句〉、西川短歌を〈凄歌〉と呼称し、「生死の境界を超えた永遠の絶唱である」と賞賛した。同年、「読売新聞」書評委員を務めていた東北大学名誉教授・日本哲学会元会長の野家啓一は、この書に推理作家森村誠一と前衛俳句作家西川徹郎との出会いの絶景を見、5月16日付「読売新聞」に「寺山修司の『田園に死す』の再来」等と紹介した。同年、文藝評論家小林孝吉は『銀河の光 修羅の闇─西川徹郎の俳句宇宙』(茜屋書店)を刊行、西川徹郎をダンテやドストエフスキー、宮澤賢治等と共に西川文学を掲げてその未出現宇宙の輝きを論じ、「世界文学」と呼んだ。 1984(昭和59)年、第3句集『家族の肖像』の解説で、詩人で、美術評論家鶴岡善久は、「従来の新興俳句、前衛俳句がついに到達しえなった一極地をこの句集は占めている」と述べた。又、鈴木六林男は「恐怖の詩才の出現」を語り、「これは全く独自の西川徹郎の世界だ」と述べた。(『西川徹朗研究』第二集) 西川徹郎の第1句集『無灯艦隊』は、1974(昭和49)年の初版刊行より既に半世紀を経たが、現在もその衝撃や反響は続いている。2019(令和元)年、『ランボー全詩集』翻訳者である作家鈴木創士は、西川徹郎を〈天才少年詩人〉と称び、西川文学を「驚くべき17文字の遺書である。」「今までこのような感慨を覚えたのは、ランボーを措いて他にはない。」(2019年4月6日付「図書新聞」)と絶賛の評言を述べ、同年、日本哲学界の第一人者で東北大学名誉教授野家啓一は、十七文字の中の物語性に着目し、世界の哲学と西川文学の比較論を為す画期的批評を展開した。同年、ノートルダム清心女子大学教授綾目広治は、西川文学を『惨劇のファンタジー 西川徹郎十七文字の世界藝術』(茜屋書店)を刊行し、西川徹郎の17文字の藝術を世界の思想哲学と対峙させて論じた。2021(令和3)年、武蔵大学名誉教授で日本比較文学会元会長私市保彦は、「西川俳句はむしろフランスのシュールレアリズムに先行していた」「絵画としてのシュールレアリズムはむろんのこと(西川徹郞の俳句は)アンドレ・ブルトンが例示した詩よりはるかにシュールレアリズム的である。」(『西川徹郎研究』第2集、茜屋書店)と論評した。同年、ペーター研究の第一人者で愛知大学元教授の英文学者伊藤勳は、「週刊読書人」(2015年6月12日付)に発表した『修羅と永遠─西川徹郞論集成』の書評を評論集『谿聲山花』(2021年、『論創社』)に収録し、西川徹郞の第一句集『無灯艦隊』収載の少年期の代表作「男根担ぎ佛壇峠を越えにけり」を「眞如を洞徹する傑作」と論評した。劇作家澤村修治は、「図書新聞」(2015年5月23日付)に『修羅と永遠ー西川徹郎論集成』を評し、西川徹朗の十代の日の<青春短歌>も含めて「日本戦後文学の異形峰として聳えている」と絶賛した。 「銀河系通信」ブログ版の復活 2020(令和2)年「銀河系通信」は2006年第19号刊行以来、暫く休刊の体勢に在ったが、西川徹郎&西川徹郎記念文學館ホームページ「西川徹郎公式サイト」の開設と共に2010年1月「銀河系通信ブログ版」(発信人/西川徹郞・斎藤冬海)として復活し、大雪山系に連なる極北の地新城峠より弛まず〈17文字の銀河系〉〈17文字の世界藝術〉の詩と文学と思想哲学の永遠性を探求し続けている。
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