萌え4コマ
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1990年代末に萌えを重点とした4コマ漫画が増え始め、この様な作品は一般的に萌え4コマと呼ばれている。1999年に『電撃大王』で連載されたあずまきよひこ『あずまんが大王』が大ヒットし、また同じ年に成人向け美少女漫画誌の主力作家である後藤羽矢子が『まんがライフ』において初の一般向け作品でありストーリー4コマ漫画となる『どきどき姉弟ライフ』を発表、さらに『スポコミ』(前身は『月刊まんがパロ野球ニュース』)が休刊した後に、同じ雑誌コードを引き継いだ青年向け4コマ誌『まんがくらぶオリジナル』が創刊するなどの出来事が起こっている。このことから、1999年はいわゆる「おたく文化」の4コマ漫画界への流入が本格的に始まった年であり、後の萌え4コマ流行の礎の一つとなっていった。 ここに分類される基準は萌え要素の有無である。原則的に従来の4コマ漫画よりも絵に重点が置かれていること、登場人物の大半が美少女でありなおかつ萌え絵に属する(=主に男性に好まれる)絵柄であることが特徴に挙げられる。それ以外は一概にくくれる要素を持っているわけではないが、萌え4コマというフォーマットの性格上、キャラクターの個性がネタにされることが多く、小ボケの連続により話が進んでいくことが多い。4コマ目でオチを付けることは必須条件ではないため、ストーリー4コマの特徴を含む作品も多い。総じて4コマ目のオチが淡白になる傾向があり、中には4コマ目でオチがなく次の4コマへ向けての「承」や「転」に当たる展開が延々と続くものすら存在する。これは、オチのインパクトよりも、萌えキャラのキャラクター性が重視されているからである。なお、いわゆる「脱力系4コマ漫画」(例・「らき☆すた」、「ゆるめいつ」など)も作品全体の雰囲気がゆるく脱力系で進行するという意味で前者と同様「ゆるい作品」と表現されることが多いが、後者は原則4コマ目で落とす展開の連続で作られているため、前者と後者の「オチ」の性質は似て非なるものと言える。萌え4コマやそれを原作としたアニメなどによくみられる、萌え系の表現を重視して日常生活の描写を中心とした作風のコンテンツをさす用語としては、空気系というタームもある。植田まさしは自身が「実体のあるものを仕掛けにしたアイデア」をオチに使うことを明かした上で、萌え4コマの「空気オチ」の傾向について「具体的なオチへの期待感がないんですよ。結局それはキャラクターに頼っているということで、キャラ頼りの漫画って長続きしないと思うんです」と厳しく批評している。 また、ストーリー漫画やライトノベル、美少女ゲームのイラストレーター出身の作家も多く、これらの分野から受けた影響から感動的な展開やいわゆる「泣き」の設定を取り入れる作品も少なくない。ドタバタラブコメディのような作品の手法を応用した終始ハイテンションで突っ走る作品も存在するが、画風などの特性においては萌え4コマと共通しており、同種として括られているのが通常である。 萌え4コマの元祖を特定することは難しく、万人が納得する一つの作品に絞り込むことはできていない。萌えるかどうかは作品だけでなく読者側の問題でもあり、伝統的な4コマ作品でも受け手次第で萌えることは可能といえる。 萌え4コマ専門誌の先駆者は『まんがタイムきらら』(2002年創刊)だと言われるが、その母体は複数ある。 OLなど女性を主なターゲットとした4コマ雑誌 - 『まんがタイムジャンボ』(1990年代初頭から存在、独立創刊は1995年)、『まんがタイムラブリー』(1995年創刊)などここですでに萌え4コマの萌芽が見られる。これらは伝統的な4コマの体裁を取りつつキャラクター重視、絵柄も重要な要素となり、少女漫画家の流入もあった。萌え4コマとしての資質を充分に備えていた。2000年代後半になると逆に『ジャンボ』などが『きらら』系の影響を受けて男性向け、萌え系中心へシフトしている。 青年誌などに掲載されている4コマ漫画 - 青年雑誌4コマ出身の代表格ももせたまみは萌え系4コマが流行し始める数年前から他者に先駆けて描いており、2010年代後半でも萌え4コマの第一人者として活躍している。 成人向け美少女漫画誌の箸休めとして掲載される4コマ漫画 - 樹るうやみやさかたかし、新条るるらといった作家がここから輩出されている。 ゲームパロディ4コマ - 新声社・エニックス・双葉社などが刊行したものも源流の一つに数えられる。キャラクターが中心であることは言うまでもなく、画風も2000年代以降の萌え4コマ同様、ストーリー漫画並みの描き込みが見られる作品もある。 なお、同人誌界で活躍している作家が4コマ漫画業界に多数参入してくるようになったきっかけも萌え4コマの流行と『きらら』の創刊であると考えられているが、それ以前から4コマ漫画誌でデビューを果たしていた胡桃ちの・青木光恵・さんりようこらと言った作家も元々はと言えば同人誌活動をしていて、後に漫画家としてデビューした作家である。 萌え4コマ専門誌2000年代前半 - 半ばに相次いで創刊したが、上記の『まんがタイムきらら』シリーズを除いて長続きしないものが多かった。2004年には5誌が創刊したが、翌年までに『まんがタイムきららMAX』以外は休刊に追い込まれた。(双葉社『もえよん』は13号まで発刊、『COMICぎゅっと!』は3号、『コミックメガミマガジン』は2号、『まんが学園4年生』は1号のみ)-その後、2006年9月に一迅社から『まんが4コマKINGSぱれっと』が創刊された。2008年には姉妹誌『まんがぱれっとLite』が創刊されたが、2011年4月より2誌体制をやめて両誌を統合(『Lite』を廃刊)、『まんが4コマぱれっと』と改題した。 他にも、2003年には竹書房から一般誌と萌え4コマ誌の折衷型雑誌として『まんがライフMOMO』が創刊している。折衷型は永らく『MOMO』独自のポジションであったが、2000年代後期からは芳文社刊の『まんがタイムジャンボ』や『スペシャル』などの青年4コマ誌が追随するようになり、同じ竹書房刊の『まんがくらぶオリジナル』なども創刊当初の誌面構成に近い内容に回帰する形でこれに追随するようになっていった。同時に一般4コマ誌全体においても萌え4コマの掲載比率が年を追う毎に高まり、単に「萌え」というひとつのジャンルに留まらず「4コマ雑誌界全体における新人作家発掘の場」としての役割も担うこととなっていたった。 2010年頃からは各社ともリスクの高い新雑誌の創刊を避け、既存4コマ誌の萌え系化やWeb4コマサイトによる公開といった方針が取られる傾向にある。そのような中で芳文社の『まんがタイムラブリー』も従来の女性向け4コマ誌からの脱却が図られ、2011年2月発行の3月号より従来の萌え4コマ世代と同じか、それよりもさらに若い漫画好き世代をターゲットとしたストーリー4コマ雑誌としてリニューアルされた。 作品自体の性質から、購読者層の男女比率は圧倒的に男性が多く、一般的な4コマ誌では概ね半々であるが『きらら』や『ぱれっと』系統では男女比が9:1〜8:2にものぼる。折衷タイプにおいても『MOMO』では7:3で男性読者の方が多く、『ジャンボ』でも同様の傾向が見られる。 萌え4コマは他ジャンルからの批判、偏見も少なくなく、『週刊少年ジャンプ』の連載作『バクマン。』作中で批判されたり、『ビッグコミックスピリッツ』の『気まぐれコンセプト』作中で批判されたこともあった。
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