競輪選手の収入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:12 UTC 版)
選手の収入は、その殆どが、出走したレースでの着順に応じて支払われる賞金と手当である。なお、KEIRIN.JPなどで公表されている獲得賞金額は、本賞金のほか、副賞や手当も含んだ額となっており、特別競走における選考用賞金額とは異なる。 現在は全ての着順で賞金が支払われるが、1951年3月に制度が改正されるまでは下位の着順では賞金は支払われなかった。そのため当時の選手らは賞金が貰えなかったレースのことを『無賃乗車』と呼んだ(石田雄彦の項目にも同様の記載がある)。 2021年10月から開始した250競走「PIST6」(TIPSTAR DOME CHIBAで開催)においては、決勝戦以外のレースでは1 - 3着の上位3名までしか賞金は出ず、決勝戦以外のレースにおける4着以下の選手は賞金の代わりに特別手当(額はレースにより異なる)が支給されるのみとなっている。 賞金額については、2015年度より全ての競輪場およびグレードにおいて統一されている。現在の賞金額は、2019年10月、2021年4月、2022年4月と段階的に全てのレースで増額されている。2021年4月時点で、最高はKEIRINグランプリ1着の1億830万円、最低はA級3班チャレンジレース初日予選およびL級1班(ガールズケイリン)予選(初日・二日目とも)の7着36,000円である。なお、同着の場合は、複数合算した上で等分され支給される(2名が1着同着の場合は、1着賞金と2着賞金を合算し、それを等分した金額となる)。また、この賞金は途中棄権した場合には9着賞金(棄権が自分1人の場合)から20%がカットされ、失格となった場合にはそのレースの賞金は支払われないことになっている。 約款により、開催が初日に急遽中止となった場合は、その開催で実施予定であったS級戦、A級戦、L級戦(ガールズケイリン)におけるそれぞれの総賞金の30%が、出場各選手に対し均等に支払われるが、仮に1レースでも実施していれば、同じく約款により、総賞金の75%以上が支払われる。但し、前もって中止が決まった場合は支払われない。 賞金とは別に支給される各種手当については様々あるが、レースに出走すれば、レース毎に「日当」と呼ばれる「正選手手当」26,000円と「競走参加手当」5,000円合わせて31,000円が(失格や棄権となっても)必ず支給される。これに加えて、レース中に雨や雪が降れば「天候不良による特別出走手当」(俗に言う「雨天敢闘賞」)3,000円、モーニング競輪に出走すれば「モーニング競輪手当」1,000円、ナイター競輪に出走すれば「ナイター手当」3,000円、ミッドナイト競輪に出走すれば「ミッドナイト競輪手当」11,000円、正月三が日(実際には年末年始の特定開催となる)に出走すれば「(通称)正月手当」なども、それぞれ支給される。また、自宅から競走に参加した競輪場までの「交通費」も別途支給される(但し自転車などの配送料は自己負担)。この他、先頭誘導員資格を持つ選手がレースで先頭誘導員を務めれば、その都度誘導員手当も支給される。 各競輪場ごとに設定されているバンクレコード(各レース1着選手による残り半周のタイムの最速記録)を更新した選手に対しては、記録を達成した当日に主催者(開催執務委員長)から敢闘賞が与えられることがある。例えば2014年に小田原のバンクレコードを更新したボティシャーに対しては2万3000円が支給されたほか、2022年7月24日に自身が持っていた佐世保のバンクレコードを更新した中川誠一郎にも即日贈呈された。また、タイ記録でも敢闘賞が贈られることがあり、2015年と2017年の深谷知広(川崎)には1万5000円が支給された。 これらの賞金・手当は、原則として窓口で選手個々に帰宅時に現金で支給される。そのため開催最終日には窓口に札束が大量に並べられることも珍しくなく、実際に2019年の寬仁親王牌で優勝した村上博幸は、窓口で受け取った3000万円ほどの賞金を丸々鞄に詰め込んで帰宅の途についた(スーツケース1個あれば1億円が収まる)ほか、かつて吉岡稔真も雑誌の企画で植木通彦と対談した際、自宅近くで行われている競輪祭において「いつも賞金の札束をそのまま車のトランクに積んで帰っている」と語った。ただし、高額の現金を持ち帰るのは強盗等の危険も伴うため、選手が希望すれば、一部を現金で受け取り残金を銀行振込とすることも可能となっている。なお、PIST6が行われているTIPSTAR DOME CHIBAでは、賞金・手当・交通費などは窓口で現金の手渡しは行わず、後日選手の銀行口座に全額とも振込されることになっている(そのため、帰宅するまで1円たりとも手にすることはできない)。 2014年度までの賞金制度では売り上げ減少を受けて賞金支給額が低ランクの競輪場が年ごとに増加していたことから、この影響から選手全体の賞金総額も過去と比べて大きく減少している。特に2017年は2007年以降の過去10年間で最低となる235億1,123万円であったが、2018年は236億2,511万円となり10年以上ぶりで増加となり、さらに2019年は10月以降全てのレースで賞金の増額が行われたこともあり247億1,581万円と、2014年当時の水準にまで回復した。 選手個人の年間平均取得額は、2010年までは1,000万円以上あったが、2011年は東日本大震災を受けての被災地支援競輪において収益拠出額を増加させる方針から大幅に減額され888万円となったほか、同年の年間獲得賞金額1,000万円以上の選手は782人に留まり、過去30年間で最低となった(最多は1998年の3,196人)。ただ、2012年以降は再び上昇基調が続いており、2019年の平均取得額は10,402,280円となり、2010年以来1,000万円の大台に乗せた。男子は、最上位のS級S班9人だけは平均1億462万円である一方、最下位のA級3班では平均642万円(いずれも2019年)であり、上下間の格差は大きい。女子は選手数が総体的に少ないこともあり平均646万円。また、2019年の1年間では、1億円以上を獲得した者が5人、1,000万円以上を獲得した選手は852人でこれも800人台は2010年以来であった。2018年7月にデビューした113期(男子)・114期(女子)からは別個でデビュー年の下期(7月 - 12月)における賞金取得額上位10人が公表されており、113期が藤根俊貴の646万円、114期が佐藤水菜の562万円、115期は坂井洋の825万円、116期は吉岡詩織の467万円であった。 このほか、オリンピックでは、アトランタ大会から自転車競技にプロである競輪選手の参加が認められたこともあり、当初は大会毎に選手の中から代表を選び、その代表選手はオリンピック開催の数か月前から通常の競走を欠場した上で合宿を行っていた。だが、現在では、新田祐大や脇本雄太、小林優香や太田りゆなど日本自転車競技連盟より強化指定選手として指定された選手はオリンピックでのメダル獲得を目標に競輪よりも自転車競技に重点を置いて世界選手権やワールドカップなど海外のレースに積極的に参戦しており(ほかに海外合宿なども実施)、これらの選手に対しては、金額等は不明ながら同様に一定の収入補償を得ているとみられる。また、特に大会でメダルを獲得した場合は補償と共に報奨金も支給され、アトランタ大会で銅メダルを獲得した十文字貴信には5,000万円が、アテネ大会で銀メダルを獲得した長塚智広・井上昌己・伏見俊昭には各人に4,000万円が、北京大会で銅メダルを獲得した永井清史には4,300万円が、JKAなどからそれぞれ支給された。 なお、選手は獲得賞金の約1割を選手会に支払うことになっており、その中から選手会運営費、全選手の年金や退職金が捻出されている。さらに賞金とは別に、選手は1走ごとに1万500円を選手会に納めることになっており、その内訳は7500円が退職金に、残りが年金などの共済金に充てられている。 かつては、20年以上選手を務め上げれば引退する際に約2000万円の退職金が支払われ、またそれとは別に獲得賞金の一部を原資とした年間約120万円の年金が15年間支払われていたが、売上額がピーク時から1/3程度にまで落ち込んだ現状では年金などの積立金は元本割れしているとされ、年金は2010年度から支給停止となり、また退職金も2014年時点で今後約20%カット予定とされた。 選手は、個人でスポンサーを募ることも認められている。自転車関連のメーカーから現物支給を受けるケースや、レース時に着用するユニフォームにロゴを掲載する代わりにスポンサー料を受け取るケースなど形態は様々(ユニフォーム広告#その他も参照)。なお、スポンサー付きユニフォームを使用する選手は、当該開催で使用する可能性のある色全てのユニフォームを自ら競輪場に持ち込む必要がある。
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