途中棄権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 22:28 UTC 版)
「東京箱根間往復大学駅伝競走」の記事における「途中棄権」の解説
競技者が競技中にケガや疾病などによって走行困難となり歩行、立ち止まり、横臥などの行動に移った場合で、本人がなお競技続行の意思をもっている場合にも、運営管理車に同乗の競技運営委員、走路管理員、監督またはコーチの三者の合意によって競技を中止させることができる(内規第17条第1項)。競技中止の通告は、大会の競技運営委員が当該走者に対して赤旗を挙げて示す、という手順で行われる。 競技者が走行困難となり競技中止・途中棄権となった場合、その区間の前区間までの記録は公式に認められるが、次区間からはオープン参加として繰り上げ出発し以後走行そのものは許されるが記録は公式に認められない(内規第17条第2項)。 大会史上、計11大会で延べ15チームが途中棄権している。 過去の各大会での途中棄権・各区での途中棄権 途中棄権した学校大会学校名(区間/原因)第25回(1949年)神奈川師範学校(3区) 第34回(1958年)横浜市立大学(9区) 第52回(1976年)青山学院大学(10区/脱水症状による痙攣) 第71回(1995年)順天堂大学(10区/左足疲労骨折) 第72回(1996年)神奈川大学(4区/左足疲労骨折)山梨学院大学(4区/右アキレス腱損傷) 第77回(2001年)東海大学(2区/体調不良) 第78回(2002年)法政大学(2区/右足アキレス腱損傷および脹脛肉離れ) 第84回(2008年)順天堂大学(5区/脱水症状による低血糖症)=大学として2度目大東文化大学(9区/脱水症状による痙攣)東海大学(10区/京急蒲田駅踏切での右足首捻挫による靱帯損傷)=大学として2度目 第85回(2009年)城西大学(8区/低血糖症による痙攣) 第89回(2013年)城西大学(5区/低体温症及び脱水症)=大学として2度目中央大学(5区/低体温症及び脱水症) 第90回(2014年)山梨学院大学(2区/右足腓骨疲労骨折)=大学として2度目 区間別の棄権回数区間件数発生回次1区000 00 - 2区003 第77回第78回第90回 3区001 第25回 4区002 第72回(2校) 5区003 第84回第89回(2校) 6区000 00 - 7区000 00 - 8区001 第85回 9区002 第34回第84回 10区003 第52回第71回第84回 途中棄権は1970年代までの50回以上行われた大会の中で3件しか発生していなかった。しかし第71回(1995年)に19年ぶりの途中棄権が順天堂大によりなされて以降、第90回までの20年間で延べ12件の途中棄権が発生している。この20年の間には同一大会での複数校による途中棄権も3度発生している。しかし第91回 (2015年) 以降は途中棄権は1度も発生していない。 同一大会での途中棄権校の数が最も多かったのは3校が棄権した第84回(順天堂大、大東文化大、東海大)である。また第72回(神奈川大、山梨学院大)、第89回(城西大、中央大)では2校が棄権している。 同一大会の同一区間での複数校による途中棄権は、これまでに第72回(4区、神奈川大と山梨学院大)、第89回(5区、城西大と中央大)の2度生じている。 過去2度の途中棄権をしている大学は、順天堂大(第71回、第84回)、東海大(第77回、第84回)、城西大(第85回、第89回)、山梨学院大(第72回、第90回)の4校である。 これまでの計11大会で発生している途中棄権のうち、第71回以降では2年続けて途中棄権が発生するケースが4度生じている(第71回と第72回(2校)、第77回と第78回、第84回(3校)と第85回、第89回(2校)と第90回)。 早い段階での途中棄権については、第77回では東海大が、翌年の第78回では法政大が、第90回大会では山梨学院大が、それぞれ第2区で途中棄権している。最も短い距離での棄権は2区7.3km過ぎ地点での棄権となった第78回の法政大である。 ゴール間近での途中棄権については、往路では第84回の順天堂大が5区の芦ノ湖ゴールまで残り500mの地点で棄権している。復路では第52回の青山学院大が10区のゴールまで残り150mの地点で棄権している。 前年優勝校による途中棄権は、これまで2度生じている。第72回の山梨学院大、第84回の順天堂大である。 これまで途中棄権が最も多い区間は、過去3チームが棄権している2区、5区及び10区である。一方、まだ途中棄権が発生していないのは1区、6区及び7区である。 途中棄権した大学は以降の区間でオープン参加の扱いとなるが、棄権した以降の区間で参考記録ではあるが区間1位の公式記録を上回るタイムを記録したケースが2度生じている。第85回9区での城西大(復路8区で棄権)、第89回8区での中央大(往路5区で棄権)であるが、いずれの場合も参考記録扱いのため区間賞とはならなかった。ただし、かつては個人記録および一部のチーム記録(往路で途中棄権した場合は復路のチーム記録のみ)が公認されたことがある。第72回の7区と9区の神奈川大(往路4区で棄権)、10区の山梨学院大(往路4区で棄権)が途中棄権した以降の区間で区間賞を獲得している。 5区、10区以外で途中棄権した場合、次の区間のスタート時間は大会規定により繰り上げスタートと同様の扱いとなっているが、交通事情を考慮し、審判主任の裁定によりそのスタート時間を早める場合もある。第72回の4区で神奈川大と山梨学院大が途中棄権した際は、本来は小田原中継所を1位で通過した早稲田大から20分差でスタートとなるが、交通渋滞を考慮して、最後尾(13番手)の東洋大が1位から10分03秒後にタスキリレーを行った1分後に両校が一斉スタートとなった。第78回の2区で法政大学が途中棄権した際は、本来は戸塚中継所を1位で通過した山梨学院大から10分差でスタートとなるが、最下位(14位)の東海大が1位から4分00秒後にタスキリレーを行ったと同時にスタートとなった。 棄権には至らないものの故障や体調不良によるブレーキの事例が例年生じている。チーム競技である駅伝の特性上、体調を崩したり故障箇所を抱えている場合であっても、選手は「タスキをつなぎたい」と思うがゆえに無理を押して走行を続けようとし、監督も棄権は良しとしない傾向が見られる。この場合、指揮官としても止めがたい側面もあるが、場合によっては選手生命にも影響を及ぼしかねないため、途中棄権についての判断の是非は重要課題となっている。 途中棄権を回避するには、コンディションの悪い選手のエントリーからの除外、区間エントリー時での補欠選手との交代といった方策がある。また、エントリー数が20チームに増加した第79回(2003年)からは、本番までのチームマネジメントに余裕を与えるよう配慮がなされている。しかし本番直前の時期に調整不足や体調不良であった場合でも、その選手がそれまで良い成績を記録していたりチームのまとめ役だったりすると、本人が強い責任を感じている傾向にある上、監督としてもチーム事情を考慮した上で強行出場させてしまうケースがまま散見され、途中棄権の解消には至っていない。2012年(第88回)大会の東京農業大学5区の選手の様にエントリー締切後に不調を訴えるも、選手が交代できない事案もある。この選手は中盤以降はジョギングほどのペースまで速度が落ちながらも、1位のフィニッシュから約40分後に無事に完走した。 近年は特に、脱水症状による途中棄権や足が止まってしまうケースが増える傾向にある。
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