競輪選手のペナルティ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/14 09:12 UTC 版)
競輪選手は男女ともレース中、競技規則に抵触するとペナルティとして違反点(正式には『競走違反点』)が課される。内訳は、「走行注意」では2点が、「重大走行注意」では10点が、「失格」では30点が、それぞれ課される。これは抵触した回数ごとに加算されるため、同一レースで複数回付けられることもあり、一人で「失格」を2つ以上与えられることもある。これら違反点を短期間に繰り返し受けると、特に男子は級班別審査(格付け)においてもマイナス点が与えられ降格の可能性が高くなるほか、降格はない女子でも特別競走で出走除外されてしまうこともあるなど、不利な状況となる。 累積違反点数が直近4か月間(なお、点数は毎月スライドする)で90点以上に達した場合には、関係団体(実際は日本競輪選手会)から訓練への参加通知が届き、「特別指導訓練」に参加しなければならなくなる。実施場所は日本サイクルスポーツセンターで期間は4泊5日、受講費を自腹で支払い当訓練に強制参加させられる。その内容は競走参加中と同様に携帯電話や電子機器の持ち込みが不可(預かり)となり、飲酒も厳禁で、決められた時間や範囲以外の外出も禁止になる。 さらに、直近4か月間の累積違反点数が120点以上になると、JKAの規程により『あっせんをしない処置』(以下「あっせん処置」)という処罰の対象となる場合もあり、適用されると基本的に120点以上が1か月、150点以上が2か月、180点以上が3か月、といった間で出場へのあっせんが行なわれないことになり、これは一定期間実戦から遠ざかることをそのまま意味している。なお競走における失格についても内容によってはこの措置が適用されることもある。競輪公式サイト「KEIRIN.JP」でも、毎月2回(上旬と中旬)『あっせんをしない処置に係る違反点数累積状況』として違反点数ワーストの順で90点以上の選手を公表している。 これとは別に、競走における失格の内容やドーピング違反のほか、逮捕されるなど私生活において特に悪質な行為に及んだと判断された選手については『あっせん停止』という厳罰が下される。これは最短1か月からの期間で長いものとなると1年間という処分を受けることとなるが、あっせん停止にあたる事象を行なった選手について後日正式な処分が下るまで緊急にあっせんを止めたほうが適切と判断された場合には『あっせん保留』の措置が下される。特に現状ではドーピングに対する処分は非常に厳しくなっており、ドーピングが発覚した伊藤成紀(90期)は日本アンチ・ドーピング機構より2018年7月から4年間の資格停止処分を下された。 このほか、あっせん停止期間が過ぎた後もKEIRINグランプリなど特別競輪への参加や、追加あっせんを受ける権利などが一定期間取り消される。さらに、特に違反点数を累積させた選手やあっせん停止に処された選手については「お寺行き」と呼ばれる特別な訓練が課せられる。これは競輪の公式ホームページでは明らかにされていないものの、上述した漫画『ギャンブルレーサー』などで詳しい描写がなされているほか、チャリロト公式ホームページでも語られているなどしており、事実上公然のものとなっている。この「お寺行き」が命じられた場合には、京都府宇治市の黄檗宗大本山の萬福寺まで赴き、山内の施設において5泊6日の厳しい禅寺の修行を済ませなければならない。交通費も含めて自腹での参加であり、また期間中は座禅を組まされたり周辺の掃除などを課せられるため練習は全く行えないことから、選手からも恐れられている。 特別訓練やあっせん処置およびあっせん停止などの処分対象になると、その間の収入が途絶えてしまう。また、練習不足の他にもレース勘の維持などという面や、体調管理にも悪影響を与えるため、競走への復帰後もしばらくの間は成績下降などの「後遺症」が表れることも少なくない。なお特別指導訓練の対象選手は、その累積違反点数と共に一定期間毎に競輪公式サイト「KEIRIN.JP」にて一覧で公表されており、あっせん停止の対象選手についてはJKAが広報などで公示する。 その他にも、競走参加中における競輪場からのペナルティもあり、レース毎に「規定時間」(スタートから第一周回のホームストレッチラインまでのタイム で計測)が設けられており、第一周回のホームストレッチライン通過時にこれを超過すると「タイムオーバー」となり賞金は50%カットされる。その他、無断欠場による費用請求、レースでの失格による契約解除による強制欠場、中長期のあっせん停止または拒否などもあり、特に無断欠場や悪質失格を起こした場合はJKAに報告され、改めて全体的な処分が検討されることになる。 なお、これらとは別に日本競輪選手会が問題を起こした選手に対し、自粛欠場を要請する形で独自のペナルティを課すこともある(『SS11』、『松本整』の項目も参照)。 2021年10月よりTIPSTAR DOME CHIBAで行われている250競走「PIST6」においては、通常の競走と同様に失格、重大走行注意、走行注意のペナルティが与えられることがあるが、通常の競走とは競走形態、ルール、使用機材などが異なることから、PIST6においては罰金を支払う形(厳密には賞金ないし特別手当の減額)となっており、PIST6におけるペナルティは競輪の級班別審査には影響しない。
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