残存している研究
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 15:43 UTC 版)
『平面の釣合について』(英語版)(2巻)(Περὶ ἐπιπέδων ἱσορροπιῶν) 本書では、第1巻で7つの公理に基づく15の提議、第2巻で10の提議が示されている。この研究でアルキメデスはてこの原理であるトルクについて説明し、「大きさは、質量と相互的に比例した距離に均衡する」と述べた。 また、三角形、平行四辺形、放物線など多くの幾何学図形の面積と重心を求める法則を用いた。 『円周の測定』(英語版)または『円の計測』 (Κύκλου μέτρησις) 本書では、サモスのコノンの元で学ぶペルーシオンのドシセオス(Dositheus of Pelusium) との通信という形式を取り、3つの短い提議が示されている。2つ目の提議では、円周率は223⁄71と22⁄7の間にあることを示し、特に後ろの分数は中世そして現代に至るまで円周率の近似値として用いられている。 『螺旋について』 (Περὶ ἑλίκων) 本書における28の提議もまたドシセオスに宛てたものであり、アルキメデスのらせん(代数螺旋)についての定義を示す。これは、一定の角速度で回転しながら定速度で遠ざかる点の軌跡について述べられ、これは極座標系 (r, θ)において 実数 a と bを用いる以下の等式で説明される。 r = a + b θ {\displaystyle \,r=a+b\theta } これは、ギリシア数学において動く点の軌跡がつくる曲線に対する考察の初期の例に当たる。 『球と円柱について』(Περὶ σφαίρας καὶ κυλίνδρου) これもドシセオス宛ての形式を取り、アルキメデスは彼自身が最も誇る帰結である球とそれに外接する同じ半径 rの円筒の間にある関係を述べている。両者の体積はそれぞれ、球が4⁄3πr3、円筒が2πr3となり、表面積はそれぞれ球が4πr2、円筒が上下の平面を含み6πr2となる。この結果から、球の体積と表面積は常に円筒の2⁄3になる。 『円錐と球体について』または『円錐状体と球状体について』 (Περὶ κωνοειδέων καὶ σϕαιοειδέων, On Conoids and Spheroids) 本書にはドシセオスに向けた32の提議があり、この中でアルキメデスは円錐、球、放物線を切り取った際の、断面の面積や体積を計算する方法を示している。 『浮体の原理』(英語版)(2巻) (Περὶ τῶν ἐπιπλεόντων σωμάτων) 第1巻では、アルキメデスは流体が重心のまわりに集まって球状で均衡する様を説明した。これは、地球が丸いというエラトステネスなど当時のギリシア天文学者らの説明を理論化する目的があった可能性がある。ただし彼はあらゆる物質が球体を成す落下点を想定しており、物質自らの重力によって集まるような状況は想定していない。 第2巻では、彼は放物線の切片が均衡する状態を計算しており、そのうちいくつかは氷山のように下部は水中にありながら上部が水上に出ているものを扱っており、これは船体を想定したものとみなされる。そして、浮力についてのアルキメデスの原理が考察され、以下のように述べられている。 Any body wholly or partially immersed in a fluid experiences an upthrust equal to, but opposite in sense to, the weight of the fluid displaced.訳:どのような物体であっても全体、または一部が液体に浸かっているとき、その物体が置き換えた体積と同じだけの液体が持つ質量と同じだけの力が、方向を逆にして、物体を押し上げる。 『放物線の求積』(英語版) (Τετραγωνισμὸς παραβολῆς) 本書もドシセオスへ24の提議を行う通信形式で、アルキメデスは放物線を直線で区切った部分の面積が、直線と平行な線を接線とする点と2つの交点でつくる三角形の面積の4⁄3倍になることを証明した。これは比1⁄4の等比級数(en)を用いて求められた。 『ストマッキオン』または『アルキメデスの小筥』 (英語版)(Στομάχιον, Ὀστομάχιον) これはタングラムに近い切断パズルであり、後にアルキメデス・パリンプセストとして詳しく説明された。本書にてアルキメデスは、正方形に組み立てられる14個のピースの形状を示した。これを研究していたスタンフォード大学博士のリヴィエル・ネッツは2003年に、アルキメデスはこの14個のピースを用いて正方形を組み立てる際に、果たして何通りの組み合わせがあるかを問題にしていたと発表し、それは17,152通りあると見込んだ。ただし、回転や反射など対称となるものを除くとそれは536通りとなる。このパズルは、組合せ数学の初歩的な例に当たる。 このパズルの名称「ストマッキオン」ははっきり判っていないが、古代ギリシア語で喉もしくは食道を意味する希: στόμαχοςが語源と推測される。アウソニウスはこれを、骨(希: ὀστέον、osteon)と戦闘(希: μάχη、machē)の合成語「Ostomachion」だと言った。「ストマッキオン」は別名にて「Loculus of Archimedes or Archimedes' Box」(アルキメデスの小筥)とも呼ばれる。 『牛の問題』 (Archimedes' cattle problem) この原稿は1773年にドイツのウルフェンビュッテル(en)にあるヘルツォーク・アウグスト図書館で、ゴットホルト・エフライム・レッシングが発見した、エラトステネスとアレクサンドリアの数学者に宛てた44行の詩の形式で纏められている。アルキメデスは太陽神ヘーリオスが持つ牛の群れが果たして何頭なのか、ディオファントス方程式の整数解を求める問題として提示した。この設問は1880年にA. Amthorが初めて解き、その数は7.760271×10206544という非常に大きなものとなった。 『砂の計算』または『砂の計算者』 (Ψαμμίτης) この本はアルキメデスが天文学について述べた、確認されている唯一の資料である。この著作でアルキメデスは宇宙空間を埋め尽くすのに、何個の砂粒が必要かという計算に挑んでいる。当時のギリシャ人は、宇宙は地球を中心にした有限の球(天球)であると考えていたので、「宇宙の大きさ」は太陽や月までの距離の計算と同じく、仮想ではない現実的な設問であった。当時のギリシャ数字ではミリアド(万)より大きい数字表記がなく、1億(1万の1万倍)までしか数えられなかったので、アルキメデスは自分で大きな数を表記する方法を考案し、必要な砂粒の個数は1051 を超えないと計算した。本著の序文でアルキメデスは天文学者である父「フィディアス (Phidias)」について触れている。 『方法』または『方法論』 (Περὶ μηχανικῶν θεωρημάτων πρὸς Ἐρατοσθένη ἔφοδος) 本書は、1906年に発見されたアルキメデス・パリンプセストによって存在が知られ、アルキメデスが得た数学的帰結に至る、知られていなかった洞察の過程についての情報を得ることができた。ここでは無限小を用いて、どのように面を無数の小片に分けて面積や量を求めるかという方法を示した。ただし、彼自身はこの方法が厳密さに欠けた箇所があると考えた模様で、結論を得るために取り尽くし法を考案したと思われる。本書は『牛の問題』同様、アレクサンドリアのエラトステネスに宛てたものとして書かれている。
※この「残存している研究」の解説は、「アルキメデス」の解説の一部です。
「残存している研究」を含む「アルキメデス」の記事については、「アルキメデス」の概要を参照ください。
- 残存している研究のページへのリンク