アルキメデス・パリンプセストとは? わかりやすく解説

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アルキメデス・パリンプセスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/20 09:30 UTC 版)

アルキメデス・パリンプセスト』は、羊皮紙写本パリンプセストである。元々はシュラクサイのアルキメデスやその他の著者の作品のギリシア語写本であった。10世紀のビザンツ(東ローマ)帝国で、テッサロニキのギリシア正教の元大主教レオン・マテマティコス英語版(数学者レオン)による数学研究の復興時に作成を依頼されたものである。この写本は1204年のコンスタンティノープル陥落後、第4回十字軍の騎士団に持ち去られたのち、13世紀にパレスチナの修道士により、テキストがキリスト教の宗教的作品で上書きされた[1]。元の文は完全には消えておらず、大部分を見ることができると、1915年にヨハン・ハイベア英語版により発表された[2]。この写本はイスタンブルのギリシア正教会の図書館に保存されていたが、ギリシア人虐殺に続く激動の時代において図書館が避難する最中、1922年に行方不明になった。写本は70年以上にわたり隠され、価値を高めるために偽造者によりページの一部に絵が加えられた。これらの捏造された絵の下にあるテキストや以前は読むことができなかった文は、1998年から2008年にかけて行われた紫外線赤外線、可視光線、レーキングライトおよびX線による画像の科学的・学術的な研究により明らかとなった。全ての画像とメタデータ付きの学術的な校正を経た文字起こし版は、現在Archimedes Digital Palimpsest(下記の外部リンク参照)のウェブサイトで自由に利用できるようになっており、OPenn[3]や他のウェブサイトでもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスCC-BYのもと、利用できるように提供されている[4][5]


  1. ^ Bergmann, Uwe. “X-Ray Fluorescence Imaging of the Archimedes Palimpsest: A Technical Summary (PDF)”. 2013年9月29日閲覧。
  2. ^ a b c d The Archimedes Palimpsest Project. “The History of the Archimedes Manuscript”. 2020年5月閲覧。
  3. ^ The Archimedes Palimpsest”. University of Pennsylvania Libraries. 2016年8月1日閲覧。 “"All materials on OPenn are in the public domain or released under Creative Commons licenses as Free Cultural Works"”
  4. ^ Reading Between the Lines, Smithsonian Magazine”. 2009年3月31日閲覧。
  5. ^ archimedespalimpsest”. 2009年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月閲覧。 “"This data is released for use under a Creative Commons license, with attribution"”
  6. ^ a b c Morelle, Rebecca (2007年4月26日). “Text Reveals More Ancient Secrets”. BBC News. オリジナルの2009年2月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090219230234/http://news.bbc.co.uk/1/hi/technology/6591221.stm 2009年3月31日閲覧。 
  7. ^ Editions of Archimedes' Work”. Brown University Library. 2007年8月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月23日閲覧。
  8. ^ a b c Schulz, Matthias (2007年6月22日). “Revolutionary? Authentic? Stolen? The Story of the Archimedes Manuscript”. Der Spiegel. 2020年5月閲覧。
  9. ^ NOVA – Official Website – Inside the Archimedes Palimpsest”. 2020年5月閲覧。
  10. ^ Archimedes Palimpsest – Press Release”. 2020年5月閲覧。
  11. ^ Hisrhfield, Alan (2009). Eureka Man. Walker & Co, NY. p. 187. ISBN 9780802719799. https://books.google.com/?id=zbcfLoZKDl8C&printsec=frontcover&dq=eureka+man#v=snippet&q=bezos&f=false 2013年9月29日閲覧。 
  12. ^ Reviel Netz, William Noel and Nigel Wilson. The Archimedes Palimpsest, Vol. 1. Catalogue and Commentary; Vol. 2. Images and Transcriptions, Cambridge University press, 2011.
  13. ^ Woods, Heather Rock (2005年5月19日). “Placed under X-ray gaze, Archimedes manuscript yields secrets lost to time”. 2016年2月8日閲覧。
  14. ^ Carey, C. et al., "Fragments of Hyperides’ Against Diondas from the Archimedes Palimpsest", "Inhaltsverzeichnis", Zeitschrift für Papyrologie und Epigraphik, vol. 165, pp. 1–19. Retrieved 2009-10-11.
  15. ^ The Digital Archimedes Palimpsest Released, Dot Porter, The Stoa Consortium, October 29, 2008. Retrieved 2013-12-29.
  16. ^ Archimedes Palimpsest. https://books.google.com/?id=_zX8OG3QoF4C&printsec=frontcover 2009年3月31日閲覧。 
  17. ^ Eureka! 1,000-year-old text by Greek maths genius Archimedes goes on display Daily Mail, October 18, 2011.
  18. ^ Glassed-in DNA makes the ultimate time capsule”. New Scientist (2015年2月15日). 2020年5月閲覧。
  19. ^ R. Chiaradonna, M. Rashed, D. Sedley and N. Tchernetska, A rediscovered Categories commentary, Oxford Studies in Ancient Philosophy 44:129-194 (2013); Porphyry is the preferred attribution see p. 134, 137.


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アルキメデス・パリンプセスト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 15:43 UTC 版)

アルキメデス」の記事における「アルキメデス・パリンプセスト」の解説

詳細は「アルキメデス・パリンプセスト」を参照 最も近年発見されアルキメデス著作は『アルキメデス・パリンプセスト』である。1906年デンマーク人教授ヨハン・ルーズヴィー・ハイベア(en)がコンスタンティノープル1229年完成した174ページ山羊皮紙の祈りの書調査した際、それがパリンプセスト一度書かれ文字インクを削るなどの方法消し別な文字上書きされたもの)であることを発見した調査結果山羊皮紙にかつて書かれていた文章は、それまで知られていなかったアルキメデス提議10世紀写したものと判明した数百コンスタンティノープル修道院図書館所蔵されていたこのパリンプセスト1920年代民間売り出され1998年10月29日にはニューヨーククリスティーズ競売掛けられ匿名落札者200ドル入手したその後落札者写本情報データ化するため素粒子物理学者など多様な解読協力者集め解読プロジェクト始めた。彼らは画像を撮るため、本の背の糊を取り除き解体し礼拝時にろうそく使用したため付着したろうも取り除き断片を元の場所にあてがった。そしてさまざまに波長変えた光を紙にあて画像合成し金箔おおわれている部分については蛍光X線分析行いインク含まれる成分分布調べた。 このパリンプセストは、唯一のオリジナルであるギリシア語書かれた『浮体原理』を含む7つ論文写されていた。ここには、既に失われてしまったスーダ辞典参照した『方法』についての唯一の情報があり、『ストマッキオン』も以前には発見されていなかった切断パズルがより完成度が高い解説つきで見つかった。他の4つ『平面の釣合について』『螺旋について』円周の測定』『球と円柱について』である。合わせてヒュペレイデスの演説アリストテレス文章注釈書発見された。このパリンプセストは現在メリーランド州ボルチモアウォルターズ美術館保管され隠され文字全貌明かそうと、紫外線X線照射など先端技術用いた研究が行われている。

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