『ストマキオン』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/20 09:30 UTC 版)
「アルキメデス・パリンプセスト」の記事における「『ストマキオン』」の解説
Heibergの時代には、面積、体積、重心についての問題を解くためのアルキメデスの見事な不可分の使用に多くの注意が向けられた。パリンプセストの中で子どものパズルを扱っているように見える問題の『ストマキオン』についてはあまり注目されていなかった。スタンフォード大学のReviel Netzは、アルキメデスがパズルを解く、つまりピースを箱に戻す「方法の数」を議論したと主張している。そのようなピースが特定されていないこと、ピースをひっくり返してもよいかどうかなどの配置の規則が不明であること、盤面に疑問点があることなどが挙げられている。 ここで図示される盤面は、Netzによっても示されているように、Heinrich Suterにより2倍と同等(イコール)が容易に混同されているアラビア語の先の尖っていないテキストを翻訳する際に提案されたものである。Suterは少なくとも重要な点で誤植をしている。辺と対角線の長さを同等とし、この場合、盤面が長方形にはならない。しかし、正方形の対角線が直交するように、直角三角形の存在は、『ストマキオン』の最初の命題を即時的なものにする。むしろ、最初の命題は(タングラムのように)2つの正方形が並んで構成された盤面を設定する。Suterによる盤面とこのコデックスの盤面の調和は、1926年3月にリチャード・オールダムによりNatureに発表され、その年のストマキオン流行に火をつけた。 現代の組合せ数学を用いると、Suterの盤面のピースを配置して正方形を作り直しひっくり返せるようにする数は17,152であり、ピースをひっくり返さないようにするとその数が64とかなり少なくなることが分かった。Suterの盤面には角度が鋭くなっている部分があり、作るのが難しく、尖った点を持つピースをひっくり返してしまうと、プレイするのに支障をきたすことがある。コデックスの盤面は(タングラムと同様)ピースの詰め方に3つの方法がある。2つの単位正方形を横に並べる、2つの単位正方形を上下に並べる、2の平方根の辺を持つ1つの正方形である。しかし、これらの詰め方で重要なのは、ソクラテスがプラトンのMenoで奴隷の少年に考えさせたように、直角二等辺三角形を作ることである。ソクラテスは回想による知識について主張しており、ここではパターン認識と記憶が解の数よりも適切であるように見える。コデックスの盤面は、ソクラテスの議論の拡張として7×7の正方形のグリッドで見つけることができ、これは、2の平方根の有利近似を与える横直径数の反復的構築を示唆している。 パリンプセストの断片的状態は多くの疑問を残している。しかし、アルキメデスがコデックスの盤面よりもSuterの盤面を用いた場合、それは間違いなく謎に加えられるだろう。ただし、Netzが正しいのならば、これは古代ギリシアの組合せ数学の分野で最も洗練された著作であった可能性がある。アルキメデスがSuterの盤面を使用し、ピースは裏返すことが許されていた、もしくはSuterの盤面の統計は無関係である。
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