技法面での特徴とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 技法面での特徴の意味・解説 

技法面での特徴

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 02:24 UTC 版)

時をかける少女 (1983年の映画)」の記事における「技法面での特徴」の解説

オープニングの「A MOVIE」の字幕前に出る、「ひとが現実よりも理想の愛を知ったとき、それはひとにとって、幸福なだろうか不幸なだろうか?」という言葉は、筒井原作にも剣持脚本にもない大林自身撮影台本1頁書き記したもの。 巻頭シークエンススキー場の後、汽車に乗って平野を走る場面でモノクロ画面風景一部ずつからカラーになるという技法は、フランス映画悲しみよこんにちは』からで珍しくないが、画面中央だけがカラーで端がモノクロという技法はこの映画最初ともいわれる。 このシーン時計屋の男として出演する大林盟友高林陽一8ミリ映画すばらし蒸気機関車』の中から、幾つかのカット使用する案があったが流れた列車の窓から見え菜の花畑黄色タオル敷き詰めたもの。走る列車ミニチュアでの撮影予定していたが機材トラブルNGとなり、スタッフ電車中吊り広告SLやまぐち号広告写真を見つけ、急遽同列車が走る西日本旅客鉄道山口線徳佐駅近くSL走行撮影し、後に日本アルプス雪山合成した菜の花畑見て芳山和子が「季節という時間がゆっくり動いてゆくのは分かるみたい」と話し多感故にタイムリープする能力を持つことが宿命づけられた少女予感させる。この菜の花畑ショットは、彼女たち教室の壁にカレンダーとして掛けられている。 瀬戸内海沿岸尾道市竹原市舞台だが、クライマックスでの合成の海(波)を除き、海が背景写りこんでいない。これは意図的な演出大林は「『転校生』日向尾道であったとすれば『時をかける少女』日陰尾道です。常に画面に陰と日向があって、その境目揺らめく陽炎のような、つまりトワイライトゾーン原田知世置いて、彼女の心のゆらめき感じさせよう計算してます。テンポ抑えて我慢我慢で、カメラ寄りたくても寄らずです。最初の方の知世高柳君が下校途中二人で歩く3カットなどは、今(1983年当時)の映画テンポないと思います。あの歩き方スリリング感じてくれる人は最後まで乗れるだろうし、そこで置いてけぼりを喰っちゃうと、最後まで、これはどういう映画じゃということになる。このシーンの引きの絵でじっくり見せるというテンポは、それだけこだわってみたんです。キス人形から日本人形移って地震見せシーン苦労しました。今、『ポルターガイスト』なんてのもあるから、どんな派手な地震見せて誰も驚かない。じゃ、一番密やかなところで地震見せられないか、というところからキス人形アイデア浮かんだんです。しかもキス人形媒介として、高柳君と尾美君の間で揺れ動く彼女の心情も描くことが出来る。尾美君屋上知世匂いのするハンカチを顔にかけて泣くシーン海野十三感性です。別に醤油屋の息子大学受験諦めてという生活のリアリティ描いたわけじゃなくて、あれは絵空事の話で、絵空事花も実もあるリアリティでやっただけです」などと述べている。 また「二本続けて舞台尾道持って行ったのはやっぱり匂いです。匂いというのは映画に移らない一番不便なものですから、映像喚起力はまず匂いから始まる。この映像かかわっている時は、こういう匂いがしたとか。匂い感性デリケートになっている時じゃないと感じませんから、悪臭別にしてね。その匂い感情描けるのは、唯一音楽ですね。今度のは音楽、つまり劇伴をやろうと思ったわけです。冒頭のモノクロ・シーンの劇伴は『駅馬車』を手本したものです」 「最初モノトーンいきたい思っていました阪本キャメラマンが相当がんばって高感度フィルム使って減感現像するとか、かなりフィルムをいじり回してます。それでああいう、色が褪せていく、その分だけ記憶甦るという世界作り出せたと思います」などと述べている。 タイムスリップシーンはどう撮るか頭を悩ませ部分当時は『トロン』のコンピュータグラフィックス話題呼んでいたが、大林はそれでは魂のリリシズムならないファッションとしてSFになってしまうとできるだけSF的な絵は避けたい考えた。それでデジタルコンピュータグラフィックス的な絵で飾るのではなく古いアルバムパラパラめくっていくような感じ残像の中で垣間見え景色によって時をかけていく、いつか見た懐かし風景でないと、このドラマ成立しないこの方法を思いつくまで苦労してタイムスリップシーン250撮りモータードライブスチールカメラコマ撮り撮ったロケハン段階から1メートルごとにシャッターを押す方法。「おそらく世界で初めスチールカメラタイムスリップ撮ったSF映画」と大林話している。それまで抑えていた映像テクニックが、ここで奔流のように一気噴出しコマ撮りアニメーション合成多重露光ソラリゼーションなど、二重三重絡み合い、魔的映像現出させた。しかしこれらの特殊効果テクニックは、本作20年上前自主映画時代から大林根幹を成す手法であった11年後未来部分は原作にはないオリジナルで、公開当時から賛否両論あった。原作では和子深町別れで話は終わるが、大林描こうとした愛の運命物語にとっては、再び巡り来る(べき)愛の邂逅はどうしても欠くことの出来ないシーンであった哀切溢れ二人別れシーンでは、巧妙なカット割り和子深町視線一度交えさせず、11年後再会初め同一フレームの中で和子深町視線が交わる。この視線やりとりは、コンプトン・ベネット監督の『フォーサイト家の女』(1949年)のラストシーン引用エロール・フリングリア・ガースンやりとり大林は大好きで、少年時代学校廊下真似をしていた。 去って行く深町遠近感がグーッと引き伸ばされるように歪む、被写体フレームサイズ変わらないのに背景だけが動いていくという撮影技法(ドリーバック・ズームアップ)は、アルフレッド・ヒッチコックが『めまい』で発明してその後多く映画CMテレビドラマ使われるようになったもので、英語では『めまい』のタイトルそのままvertigo Shots(めまいショット)」、あるいは「Dolly zoom」「The 'Trombone' Shot」などと呼ぶようであるが、日本では大林がこれを初め使用し「逆ズーム」と命名したという。大林は「『めまい』の頃は、子供だった故で、あれーと思ったが、それっきりこの手法に意識的に出会ったのはロジェ・ヴァディムの『獲物の分け前』のラストで、ジェーン・フォンダがひとり生きる部屋シーンで床がスルスル奇妙に伸び続けた。これをキャメラマン長野重一発見し1970年マンダムCM阪本善尚使用したのが、日本初めての例。私が"逆ズーム"と命名して、その後数々CM使用した『時をかける少女』では阪本キャメラマン設計の逆ズーム装置使用して幻想的な画面効果を得ることができた」と話している。

※この「技法面での特徴」の解説は、「時をかける少女 (1983年の映画)」の解説の一部です。
「技法面での特徴」を含む「時をかける少女 (1983年の映画)」の記事については、「時をかける少女 (1983年の映画)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「技法面での特徴」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「技法面での特徴」の関連用語

技法面での特徴のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



技法面での特徴のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの時をかける少女 (1983年の映画) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS