マヂカルラブリーのネタに対する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 18:14 UTC 版)
「M-1グランプリ2020」の記事における「マヂカルラブリーのネタに対する議論」の解説
最終決戦においてマヂカルラブリーが披露したネタは「野田クリスタルがほぼ無言で舞台を動き回り、それに村上がツッコミを入れる」という異色のものであったことから、放送直後から「あのネタは漫才なのか」という漫才論争がインターネット上で発生した。 論争が起こった背景について、コラムニストの木村隆志は「2019年の最終決戦が過去最高レベルと言われるほどに笑いを集めたのに対し、その反動とも言えるマイナスのギャップが発生した」「『M-1グランプリ』という番組・イベントが持つ凄みから、賛否両論の分母の大きさが他の番組の数倍あり、共通の話題として書き込まれやすい」「視聴者側からは批判対象を探し出し、誹謗中傷など個人攻撃できる心理が働いている」「ネットメディアがページビューを稼ぐためにそうした批判を集めて、記事化し、そこからさらに批判が増加する負のスパイラルに陥っている」という4つの点を挙げた。また、社会学者の太田省一は「マヂカルラブリーの芸風は万人受けを狙ったものではないマニアックなネタが多い」として、「世代を問わず多くの人が見るM-1で、マヂカルラブリーのネタを「面白くない」と思った人は一定数いた。それが「あれは漫才なのか」という疑問となって噴き出した。「あれは漫才なのか」という疑問は、マヂカルラブリーのネタが自分の好みではなかった視聴者の不満の表現にすぎないとも言える」と分析している。 SNSやネットニュースで話題となったことで、多くの芸人がテレビやラジオ番組、SNSなどで「漫才論争」について言及し、ほとんどの芸人がマヂカルラブリーのネタについて「あれは漫才だ」と述べている。以下がその例。 立川志らく 2020年12月20日のTwitterで「初戦ではマジカルラブリーは低評価だった。これは間違いなくおいでやすこががダントツで優勝するな、と思った。しかし決戦で野田クリスタル氏の動き。思わず喜劇と言ってしまった。漫才の戦いで喜劇に票を入れていいのかという葛藤があった。でも相方の村上氏の喋りは漫才。優勝おめでとう」と評した。 サンドウィッチマン 富澤たけしは2020年12月22日のブログで「マヂカルラブリーの、決勝の決勝でほぼ喋らずに転がってるネタをやる勇気は凄い。一歩間違えば大惨事になる可能性もあるネタ」とネタを賞賛した上で、「主催者側が漫才じゃないと判断したら失格にすればいいわけで、『点数をお願いします』と言われた以上、審査員は漫才として審査する。各審査員は自分の中の漫才の解釈の枠で点数や1番を決める。漫才は色んな形があっていいし、だからこそ新しい形が産まれ、進化していくんだと思います」とコメントしている。 伊達みきおも2020年12月21日のブログで「センターマイクに向かって舞台袖から出てきて『どうも』と始まれば、それは漫才。漫才と言うのは…みたいな、そんな難しいもんなんかない。おもしろければそれで良し」と持論を述べている。 塙宣之(ナイツ) 自身の公式YouTubeチャンネルで、「漫才か漫才じゃないかは、はっきり言って、僕が言うことじゃなくて。漫才の定義なんかないですからね」と述べ、「自分たち(ナイツ)が1番訳分からない漫才やってますからね。めちゃくちゃ面白ければ全然良いと思っていて」と語り、野田クリスタルについて「俺なんかはやっぱり、やりたいボケではあるんだよね、ああいうのは。俺もいろいろ言われてきてるし、怒られてきてるという歴史があるから、みんなやらないんだよね」「昔、『M-1グランプリ』で僕も訳分からない漫才ばっかりやってた時期があって。そのとき、会場がめちゃくちゃウケたんですけど、落とされまして。そのときの審査員に聞いたら、『だって漫才じゃないじゃん』って言われたんですよ」と振り返り、「あらためて、『なんでもいいじゃん、面白ければ』って思わせてくれたな。マヂカルラブリーは」と称賛した。 かまいたち 自身のYouTubeチャンネルで、山内が「ネットで、“漫才の定義”みたいなのがトレンドになってたんですよ。『あれは漫才じゃない。どうなんだ』とか。こと『M-1』に関して言うと、会場で1番ウケた人が優勝すべき大会だと思う。会場にはいなかったですけど、お客さんの笑い声聞く限り、間違いなくマヂカルラブリーさんが会場で大爆発してウケてたので、全然なんの異論もない優勝だと思う」と述べ、濱家も「ホンマに『それって漫才なん?』とか言い出したら、訳分からなくなるから。とにかく面白い漫才を4分、っていう話やから」と語っている。 博多大吉(博多華丸・大吉) 2020年12月23日のラジオ番組『たまむすび』で、「結論から言うと漫才でしょうね。漫才だと思いますよ」と述べ、「(漫才には)定義がない、自己申告なんですよね。『漫才です』と行ったら漫才。コントといったらコントですよ。あとはそれをお客さんが見て、漫才かコントかを決めるだけじゃないかな」と語っている。 見取り図 自身のYouTubeチャンネルで、盛山が「最終決戦の3組が終わった後、結果出るまでのCM中、舞台裏で3組(マヂカルラブリー、おいでやすこが、見取り図)が輪になって、お互い讃え合った」と振り返り、「ツイッターのリプを見たら、『漫才だったのは見取り図だけです』とか揉めてる人がおって。ぜひ皆さん、揉めないでください」と呼びかけ、「正直、漫才をしてないコンビなんて1組もいなかったですから。全組漫才ですよ」と述べた。また、リリーが「逆に言ったら、違うことを探したすごさやからな」と語ると、盛山は「そうそう。マイクの前でただ面白いことをする。それが『M-1』のルールですから。どんな組み合わせ、どんな順番でも優勝はマヂラブさんですよ、最終決戦は。そこは揺るぎない。芸人全員、満場一致で納得していますから」と力説した。 松嶋尚美 2020年12月24日の『バイキングMORE』で、「こういうコンテストに予選落ちしてたくらいのグループの私が言うんやけども、コントだと思う。スタンドマイクがあって、スタンドマイクを中心にやらないとピンマイクを主で使うようじゃやっぱり…」と述べた。 おぎやはぎ 2020年12月25日のラジオ番組『おぎやはぎのメガネびいき』で矢作兼は「みんな真面目だね」と述べ、小木博明も「プロの審査員が決めているんだから」と“論争”になること自体に疑問を呈した。また、矢作は「優勝したからこそ、論争になるわけじゃん?5位とかだったら論争にならない。マヂカルラブリーが時代を変えたな」と評した。 松本人志(ダウンタウン) 2020年12月27日の『ワイドナショー』で、「漫才の定義は基本的にないんですよ。定義はないんですけど、定義をあえて設けることでその定義を裏切ることが漫才なんですよ。定義をあえて作るんですが、これは破るための定義なんですよ。それでも最終的にはルールはちょっとあるんですよ。小道具を使わないとか」と持論を述べ、「今回のマヂカルのことで言うと、あまり例えがいいのか分からないですけど、野球の大一番の時にピッチャーが消える魔球を投げたみたいな話なんですよ」と例え、「われわれプロは『すごいな』『ここで魔球を投げてくる』と思うんですけど、にわかプロ野球ファンなんかは『あれは卑怯だ』『あそこで魔球投げるかね』『真剣勝負せえや』みたいな意見が出てくるんですよ。これは一生交わらない。交わらないからこそ、われわれは飯が食えていける」と語っている。 オール巨人(オール阪神・巨人) 2020年12月29日のブログで、マヂカルラブリーのネタについて「今までとは違った形の漫才」「説明突っ込み?の村上君は良い声してるし、上手いです!」と評した。また、「あの時、僕は審査員の一番端で、アクリル板が何枚か重なってて、野田君はセンターマイクから離れるので少し声が聞きづらいかった」と記している。 また、『Voice』2021年3⽉号のインタビューで、「僕らは漫才を始めて46年目になりますけど、時代の流れを感じるのは、視覚を重視した漫才に変わっていること。漫才師がネタをする場はもちろんテレビもありますが、ほかに営業先や劇場、それから昔はラジオがありました。ラジオは音しか聴こえないから、たとえば相方の(オール)阪神君の肩を僕が「何しとんねん」と叩いたら、彼が「人の肩を叩くな」と言葉を補っていた。マヂカルラブリーみたいに、野田君が動き回って台詞が少ないネタだと、ラジオでは伝わらないでしょうね。でも、ラジオ向きのネタちゃうからといって、もちろん駄目なわけではない。漫才も「変化」しているんです。「退化」しているとは思わないし、「進化」しているかも僕にはわからない。少なくとも、新しい形の漫才に変わってきているのでしょう」と語っている。 太田光(爆笑問題) 2022年1月23日の『日曜日の初耳学』で、林修から『M-1グランプリ』で起こった漫才論争について話を振られた際、「俺から言わせれば漫才の歴史なんてたかだか戦後。伝統芸でもなんでもないんですよ。落語、講談、浪曲は伝統があって形がありますよ。それに入れなかったのが漫才。色物のひとつでしかない」「さらにその伝統はぶち壊された訳ですよ。いわゆる、バランスの悪い漫才なんですよ。ツービート、B&B、ザ・ぼんち、のりおよしお師匠、誰一人バランスの良い漫才いない。それまでの定番の漫才を全部壊した素人芸だったから、我々が食いついたんです」と語り、その上で「今、視聴者が『漫才とはこうあるべき』と決めちゃっているのがあるかもしれない。視聴者は形にこだわるんですよ。ツッコミはこうしなきゃいけない。ボケはこうだって。学問になっちゃった」と持論を述べた。。
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