シリーズの概要と舞台について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 08:25 UTC 版)
「サイレントヒル」の記事における「シリーズの概要と舞台について」の解説
アメリカの北東部にある架空の観光地「サイレントヒル」は、観光の要であるトルーカ湖を中央部に有する閑静な田舎町である。湖の北岸は遊園地などがある町の中心「ペイルヴィル地区」だが、湖の南岸「サウスヴェイル地区」は寂しい住宅街となっている。隣接した町として、「ブラマ」「シェパードグレン」がある。通常の状態では、濃霧に包まれた美しい町で、寂れてはいるものの住人もそれなりに存在する。しかし、主人公たちが迷い込んだそれは人気のないゴーストタウンと化しており、町内に本来あるはずの道が崩落し消失、或いは閉鎖されている。また、季節外れの雪が降ったり、異形の怪物が徘徊していたりと(作品によって程度に差は見られる)、現実世界と微妙にズレた異界であり、表世界と呼ばれている。実はその土地は古くから不可思議な力を持っており、心に闇を抱いた者を異世界へと引き込むことがあるゆえである。 「表世界」は霧に包まれたゴーストタウンだが、時として血と錆にまみれた暗くグロテスクな「裏世界」へと変貌することがある。その世界は、そこかしこを異形の怪物が徘徊する、屋内はもちろん、屋外であるはずの場所が辺り一面暗闇に包まれている、地面や壁であるはずの部分が金網一枚を隔てその先に闇が広がっている、得体の知れない人型の肉塊が無造作に吊るされている、などが主で他にも様々な変異がある。「表世界」が「霧・雪」の白色を基調としているのに対し、「裏世界」は「血・錆」の赤色や「影・闇」の黒色を基調として構成されており、これらはストーリーにおける重要な設定の暗喩でもある。主人公たちは「表世界」と「裏世界」を行き来しながら目的を達成し、町を脱出することになる。 作品独自の恐怖はいたるところで工夫を凝らし表現されている。カメラアングルをわざと傾けて死角を作りプレイヤーが見にくいように映す(視点の不安定さにより無意識的に不安感を与える意図もある)、画面にノイズエフェクトが常にかかっている(これは制作過程でのシステム上の不都合を逆に利用したもの。ちなみにノイズはオン・オフ可能であり、大抵隠し要素である)、怪物が接近するとラジオから不穏なノイズが鳴りだす等、斬新な恐怖の演出がグラフィックや音響やシステムに組み込まれている。 シリーズ第1作『サイレントヒル』は、カプコンが発売した『バイオハザード』の大ヒットによってホラーゲームが定着したことで、コナミによって企画された。スティーヴン・キングの小説をホラーゲーム化するというプロジェクトをスタートさせるが、諸事情により頓挫し、オリジナルタイトルとして開発された。『バイオハザードシリーズ』は、漏洩したウイルスによる感染等の科学的な背景、そしてプレイヤーを驚かせるような仕掛けやハプニング等、いわゆる「動」の恐怖を追求している。それに対して本作は舞台設定こそ同じアメリカであるものの、その背景に科学的な裏づけのない、人智を超越した神秘学や宗教的な要素を持つなど、同じホラー系アクションでも全くテーマが異なる。また、懐中電灯の明かりを頼りにした限られた視界、言葉で言い表せないような嫌悪感、陰鬱とした雰囲気など、言わば「静」の恐怖感を主としており、ジャパニーズ・ホラーのような演出が多く使用されている。中でもシリーズ第1作は、アメリカの大手ゲームサイト「GameTrailers.com」が選んだ「最も怖いホラーゲームランキング」で1位を獲得している。また、ストーリー面でも単なる勧善懲悪ではなく、アレッサ、マリア、クローディア、ウォルターなど敵として対峙する存在はみな悲惨な人生を送った末に心が歪んだり、その最期も報われないものとなっている、登場するクリーチャーも発生した背景に深い理由があったり、マルチエンディングのいずれもハッピーエンドとは言えないものになっているなど、恐怖の中に哀切が含まれていることも特徴である(ストーリーが地続きの続編であっても、過去作の最も明るいエンディングから続いているケースは少ない)。 人物相関や作中の文献から『サイレントヒル(以下『1』)』『サイレントヒル2(以下『2』)』『サイレントヒル3(以下『3』)』『サイレントヒル4 ザ・ルーム(以下『4』)』『サイレントヒル ゼロ(以下『ゼロ』)』『サイレントヒル ホームカミング(以下『ホームカミング』)』『サイレントヒル ダウンプア(以下『ダウンプア』)』『サイレントヒル アーケード(以下『アーケード版』)』にそれぞれ物語の連続性が見られる。特に『1』と『3』、『2』と『4』は相互に関連し合っている。 以下、その例 『3』には『1』に登場したハリー、アレッサ、シェリル、リサが登場する。特にハリーは主人公の父親、アレッサはストーリーのキーパーソンという重要な役割を担う。その他にもアレッサの母親ダリアの名前が『3』『4』に登場する。 『3』の主人公ヘザーは、『1』のキーパーソンであるアレッサとシェリルの生まれ変わりである。 『3』の事件の首謀者、クローディアはアレッサの幼なじみである。 『4』のキーパーソンであるウォルターの名前が、『2』に先駆けて登場する。 『2』の主人公ジェイムスの父親フランクが、『4』に登場する。また、『4』では主人公ヘンリーがジェイムスの末路を示唆するコメントをする。 『2』に名前が登場した看護婦レイチェルの部屋を『4』で探索できる。 『2』と『3』にはストーリー上の繋がりは見受けられないが、舞台がサイレントヒルのトルーカ湖南岸「ペイルヴェイル地区」であることが共通している。また、『2』のヒロイン、マリアの正体を示唆する文章を読める他、ヘザーがジェイムスの残留思念の様なものを感じ取っている描写がある。 『4』におけるキーパーソンの一人、ジョセフが書いた記事が、『3』に先駆けて登場する。 『2』でジェイムスが体内に神を宿していたり特殊な能力を持っている訳でもない一般人であるにも関わらず、みずから作り出した異世界に取り込まれたのは、『1』での一連の事件の影響でサイレントヒルに宿る神の力が強まったからである。 『1』に登場した教団の司祭服、『2』に登場した三角頭の服装は、『3』に登場する神の使者ヴァルティエルの服装が由来である。 『2』では教団が登場しない一方で、『1』『3』『4』では語られなかったサイレントヒルの歴史や教団の原形となる土着信仰の詳細を知ることができる。 『1』『3』『4』では教団がストーリー上のヴィラン(敵対者)であり、いずれも主人公が神の復活を阻止する。 『4』のキーパーソン、ウォルターに「302号室自体が母親」であると吹き込んだのは、『1』の黒幕、ダリアであり、この一言が後に連続殺人事件へと発展した。 『1』『4』では第三者が作り出した異世界が舞台であるのに対し、『2』では主人公自身が作り出した異世界が舞台となっており、『3』では両方の要素を含んでいる。 『1』『2』『3』『4』『ゼロ』のいずれも、「家族」がストーリー上のテーマになっている。 『1』と『4』はストーリー上の繋がりが少ないが、アレッサとダリアの名前が『4』に登場する。 『アーケード版』は『2』で登場したトルーカ湖南岸の「サウスヴェイル地区」が舞台で、『2』のメモ「湖の伝承」に登場する「リトル・バロネス号」の失踪事件が『アーケード版』の事件の重要な鍵を握っていて、『アーケード版』の主人公の一人エリックは失踪したリトル・バロネス号の船長の子孫である。
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