科学的な背景
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 05:06 UTC 版)
倍音は、数学者のマラン・メルセンヌによって1636年に発見された。 1753年、ダニエル・ベルヌーイは、波動方程式の解として三角関数を想定することにより、弦の振動は基本周波数とその整数倍の周波数の成分(倍音)の重ね合わせとして表せることを発見した。 この概念は、19世紀の数学者ジョゼフ・フーリエの見出したフーリエ級数によって体系的に理論化された。フーリエ級数とは、周期関数 f ( t ) {\displaystyle f(t)} を正弦波(三角関数)の重ね合わせとして表現するものであり、オイラーの公式を用いれば以下のように表現できる。なお、 T {\displaystyle T} は f ( t ) {\displaystyle f(t)} の周期であり、 f ( t − T ) = f ( t ) {\displaystyle f(t-T)=f(t)} を満たす。 f ( t ) = ∑ n = − ∞ ∞ c n e 2 n π i t / T = c 0 + 2 ∑ n = 1 ∞ | c n | cos ( 2 n π t / T + arg c n ) {\displaystyle f(t)=\sum _{n=-\infty }^{\infty }c_{n}e^{2n\pi it/T}=c_{0}+2\sum _{n=1}^{\infty }|c_{n}|\cos(2n\pi t/T+\arg c_{n})} ただし、 c n = 1 T ∫ − T / 2 T / 2 f ( t ) e − 2 n π i t / T d t {\displaystyle c_{n}={\frac {1}{T}}\int _{-T/2}^{T/2}f(t)e^{-2n\pi it/T}dt} とする。 第1の式は、周波数 f = n / T {\displaystyle f=n/T} の正弦波 e 2 n π i t / T = cos ( 2 n π t / T ) + i sin ( 2 n π t / T ) {\displaystyle e^{2n\pi it/T}=\cos(2n\pi t/T)+i\sin(2n\pi t/T)} を c n {\displaystyle c_{n}} 倍したものを全ての整数 n {\displaystyle n} に関して重ね合わせると元の波動 f ( t ) {\displaystyle f(t)} に等しくなることを意味している(なお、 c n {\displaystyle c_{n}} の値は一般には複素数であり、その絶対値が各倍音の振幅となって現れ、偏角が各倍音の位相のずれとなって現れる。虚数成分は n {\displaystyle n} の正負を足し合わせると消えてしまう。右の式ではその点を考慮して、実数のみによって表示している)。 ここで、n = ± 1 のものが基音であり、その周波数は f = 1 / T {\displaystyle f=1/T} である。 次に、n = ± 2 に対応するものを考えると、その周波数は n / T = 2 / T = 2 f {\displaystyle n/T=2/T=2f} であり、これは基音の第「2倍」音になる。同様に、n = ± 3, ± 4, ± 5…についても、その周波数はそれぞれ 3f, 4f, 5fになる。このようにして、周期的な波形を持つ音は基音と倍音の重ね合わせとして表せることが保証されている。 ただし、この手法では基本周波数が既知であることが仮定されるほか、倍音以外の上音を含むと正常に検出できないなどの欠点があるため、実際の音声処理ではフーリエ級数を発展させたフーリエ変換と呼ばれる手法が利用されている。ただし、フーリエ変換にも実用上の難点が多いため、実際には離散フーリエ変換、短時間フーリエ変換などといった手法が使用されている(詳細は各項を参照)。
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