科学的な金縛りの理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 21:43 UTC 版)
睡眠障害のひとつであるナルコレプシーは、睡眠発作、脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚の4つの症状から構成される。このうち、睡眠麻痺、入眠時幻覚は人々が金縛りと呼んでいる現象と同一のものと考えられ、健常者でも一定の条件で発生する。睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり、レム睡眠では目が覚醒時と同様の早さで動き、姿勢を維持する筋活動が極端に低下する。通常、人は寝入ると1時間程度のノンレム睡眠を経てからレム睡眠に移行するが、ナルコレプシー患者には覚醒状態から直接レム睡眠に移行する入眠時レム睡眠という睡眠パターンがあり、この時に睡眠麻痺、入眠時幻覚を体験するという。 入眠時幻覚は通常夢見体験として感じられる主観体験が、覚醒状態の意識と連続して感じられるために発生すると説明されている。金縛りがナルコレプシーと同様の生理でおきるとするならば、夢見体験が不十分な脳の活性化によって起きる仮想体験であるのに対し、金縛りの入眠時幻覚は脳の活性が高い状態で起きる完成度の高い仮想体験と言える。また、金縛りに伴う恐怖感は、レム睡眠中に活性化する扁桃体によって喚起されると考えられる。 金縛りは、普段余り運動しない者が突然運動を行った場合などに起こりやすくなる。特に有酸素運動は金縛りを誘発しやすい。過酷な有酸素運動をしているスポーツ選手の中には、毎日のように金縛りに掛かる者も多い。また、旅行の移動中や宿泊地での金縛りも多い。これは、移動によって身体が疲弊しているのに対し、環境の変化などにより脳が興奮していることが影響している。その他、ストレスや肉体疲労が金縛りを引き起こすこと、体質的に金縛りに掛かりやすい(特に寝入りの悪い人)、事前に「このホテルは(幽霊が)出るらしいよ」などという噂話を聞く、就寝前に交感神経を刺激する行為を行う(例えば寝る直前に暗い部屋でスマートフォンの明るい画面を見続けた後に入眠しようとする)など、様々な理由がある。現在は金縛りの研究も進んでおり、閉眼型の金縛りは睡眠中に何度も起こすようなストレスを与えることで人工的に作り出すことも可能である。 レム睡眠時は脱力が起き、仰向け時に舌が下がり上気道を塞ぐため息苦しくなる。横向き寝の時は起こらない。
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