かにくい‐ざる〔かにくひ‐〕【×蟹食猿】
サルの正常行動(カニクイザル)
観察者がいない状態では、観察される姿勢は座位であることが多く、立位は稀である。座位の状態で飼育室内をキョロキョロ見回す行動、前・後肢を主体とした毛づくろい( セルフグルーミング) 、餌などの咀嚼あるいは舌先で口腔内を探る動作、前肢指先でのケージ内および格子の汚れ取り様動作、充足的発声( ホワー、フィーンなど) 、欠伸( あくび) などが観察される。時に頭部を丸めて膝を抱え込むような姿勢を示し、うたた寝状態が観察されることもある。また、立位の状態で飲水・摂餌行動、探索行動、四肢で立ち跳躍するように体を上下する行動、挾体のスライド、天井格子を掴んでの左右または前後に体を動かす動作、座位位置の移動等が観察される。
隣接あるいは対面するケージ内の動物に対して意識を示す場合、飼育・観察者などが入室した場合あるいは周囲環境からの騒音などがある場合などの被刺激状況にあっては、比較的軽度で短時間で終息する警戒・威嚇あるいは逃避行動を示す。警戒・威嚇行動で、座位状態のままで上体を乗り出す動作あるいは四肢での身構え、ならびに鋭い眼つきでの注視、開口、歯を見せないチューイングおよび体位変換、ケージの揺さぶり行動、ケージ内のうろつき回り、および弱くて短い警戒・威嚇的発声( ガルル、ゴホゴホ) などが観察される。警戒・逃避行動としては全身緊張と同時に、立ち上がり・後退あるいは天井格子に掴まる姿勢で、眼を見開いた様な注視、歯を見せるあるいは唇を尖らしたチューイング、逃避的発声( キーキー、キャルル)
などが観察される。
上記の警戒・威嚇および逃避行動は、個々の動物の馴化の程度および取扱い状況によって異なり、投与・採血など直接動物に触れる処置を行う際には過度の興奮状態を示し、これらの行動が強まる。過度の興奮状態では、攻撃および逃避行動が観察され、それらの行動はそれぞれ前述の警戒・威嚇および警戒・逃避行動に類似するが、警戒する対象が消失しても、発現した警戒行動あるいはその他の警戒行動が暫時継続して観察される点で異なる。過度の興奮により警戒・威嚇行動が強まると、四肢での堅固な身構え、全身を使った激しいケージの揺さぶり、鋭い眼つきでの注視、開口、咬みつきおよび掴みかかり行動、反射的跳躍、連続的で強い警戒・威嚇発声( ガルル、ゴボゴボ、ギャルル) などの攻撃的行動が観察され、動物によっては恐怖の余り自咬などの自虐的行動が観察されることもある。
一方、過度の興奮による逃避的行動として、立ち上がり、後退してケージ後面に背を着けるあるいはケージ上隅にしがみついた状態で体位変換をすることなく、眼を見開くような注視、歯のぶつかる音が聞こえる程激しいチューイング、連続的逃避発声( キーキー、キャルル、キャッキャッ) などが観察される。さらに全身緊張と同時に、動物が床に伏せ全く動かなくなる状態( 降参状態) 、また、大便失禁あるいは尿失禁を認めることもある。さらに警戒の対象が消失しても、興奮あるいは緊張状態が存続し、外部の様子見的動作に似た上体の前後移動、体位変換、ケージ内での回転運動などが持続的に観察されることがある。
その他の行動・症状として、偏食、拒食、咳、しゃっくり、いびき、発汗および月経等が観察できる。
蟹食猿
カニクイザル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/14 01:54 UTC 版)
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カニクイザル | |||||||||||||||||||||||||||
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カニクイザル Macaca fascicularis
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保全状況評価[1][2] | |||||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ![]()
ワシントン条約附属書II
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Macaca fascicularis (Raffles, 1821)[1][3][4] |
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和名 | |||||||||||||||||||||||||||
カニクイザル[4] | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Crab-eating macaque[3][4] |
カニクイザル (蟹食猿) (Macaca fascicularis) は、哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類される霊長類。
分布
インド(ニコバル諸島)、インドネシア、カンボジア、タイ王国、バングラデシュ、ブルネイ、マレーシア、ミャンマー、ベトナム、ラオス[1]。人為的な導入により香港やイリアンジャヤ、パラオ、モーリシャス、サモアなどに定着している[5]。
模式標本の産地(模式産地)は、スマトラ島[3]。アカゲザルと分布の境目では交雑しており、正確な分布の境界は不明[1]。
形態
亜種によっても異なるが、大人の個体で体長38-55cm、尾の長さは40-65cmになる。体重はオスで5-9kg、メスで3-6kg。尾は長い[4]。頭頂部の体毛が房状に伸長する個体もいる[4]。種小名fascicularisは「房状の」の意で、頭頂部の体毛に由来すると考えられている[4]。灰褐色や暗褐色・黄褐色などの体毛で被われる[4]。
分類
本種の学名としてMacaca irusが用いられることもあったが、裸名とされる[4]。
以下の亜種の分類は、Groves(2005)に従う[3]。分布はIUCN(2020)に従う[1]。
- Macaca fascicularis fascicularis (Raffles, 1821)
- インドネシア(ジャワ島、スマトラ島、バリ島、ボルネオ島、小スンダ列島)、マレーシア
- Macaca fascicularis atriceps Kloss, 1919
- Khram Yai島
- Macaca fascicularis aureus (E. Geoffroy, 1831)
- タイ王国中西部、バングラデシュ南部、ミャンマー、ラオス
- Macaca fascicularis condorensis Kloss, 1926
- ベトナム南岸のCon Son島
- Macaca fascicularis fuscus (Miller, 1903)
- Simeulue島
- Macaca fascicularis karimondjawae Sody, 1949
- Karimunjawa島、Kemujan島?
- Macaca fascicularis lasiae (Lyon, 1916)
- Lasia島
- Macaca fascicularis philippensis (I. Geoffroy, 1843)
- フィリピン
- Macaca fascicularis tua Kellogg, 1944
- Maratua島
- Macaca fascicularis umbrosus (Miller, 1902)
- ニコバル諸島[1]
アカゲザルと交雑し、ミナミブタオザルMacaca nemestrinaとの交雑個体も報告されている[1]。
生態
社会性を有する動物で、通常5-60頭の群れを作って生活する。その群れには通常2-5頭のオスが含まれる。群れの大きさは餌の豊富さなどに依存し、群れでのランクは成熟したオスがメスより上位となる。
メスの妊娠期間は167-193日で、子ザルの出生時の体重は約350g。はじめは黒い体毛であるが、数ヶ月の間に生え変わり、最終的に赤茶色の体毛となる。
食性は雑食で、植物の果実や種子を主な餌としているが、それ以外にも植物の葉、花、根、小鳥、トカゲ、カエル、魚などさまざまな動植物を捕食しており、海岸やマングローブ林に生息する個体はカニ類も食べる。それが名前の由来とされているが、カニ類のみを食べるわけではない[4]。
天敵としてトラ、ヒョウ、ウンピョウ、フィリピンワシ、ワニ、アミメニシキヘビがいる。
人間との関係
顎関節の形態などヒトに類似する点が多く、また同一条件での飼育が可能であるため[6]、形態的な研究や投薬研究の際の実験動物として用いられることがある。[7]前述したように実験動物として用いられることがあるほか、宇宙飛行のテスト動物として宇宙船に搭乗させられる(宇宙に行ったサルを参照)。
各地で導入、野生化したカニクイザルが農作物に被害を与える事例も発生しており、世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている。また、カニクイザルはエボラウイルスやエムポックス、Bウイルス感染症の媒介者として知られる[要出典]。
インドネシアのバリ島や、タイ王国のロブリ(サーン・プラカーン寺院)などのように一部の地域では信仰の対象とされることもある[8]。東南アジアでは寺院や公園などにすみついたサル類(テンプル・モンキー)がみられ、その多く(特に人里周辺)は本種とされる[8]。インドネシアのバリ島・ジャワ島のパンガンダラン自然保護区、シンガポール、ロブリの例では、生息地の1970年代以降の経済発展に伴い観光客も含めた餌付けなどが盛んになりこれらの地域での個体数が増加したと考えられている[8]。タイのロブリーという町に住むカニクイザルには、人間の髪の毛をデンタルフロス代わりに用いるものがいて、その行為は親から子に伝えられる。
分布は非常に広く、生息数が多いため絶滅のおそれは低いと考えられてきた[1]。一方で後述する理由により生息数は減少していたにもかかわらず、生息数が多いとみなされていたことから関心が向けられなかったり保護対策などが行われておらず将来的にさらに生息数が激減することが示唆されている[1]。食用やスポーツハンティングとしての狩猟、実験動物としての採集、害獣としての駆除などにより生息数は減少している[1]。1977年に、霊長目単位でワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]。
- M. f. fascicularis、M. f. condorensis、M. f. umbrosus
- VULNERABLE (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
- M. f. atriceps、M. f. aureus、M. f. fuscus、M. f. karimondjawae、M. f. lasiae、M. f. tua
- DATA DEFICIENT (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
- M. f. philippensis
- NEAR THREATENED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
日本では2005年4月に、特定外来生物に指定されている(同年6月に施行)[9]。
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m Eudey, A. et al., 2020. Macaca fascicularis (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T12551A195354635. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T12551A195354635.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis atriceps. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39769A17985276. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39769A17985276.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis aurea (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39770A195342602. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39770A195342602.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis condorensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39785A17985464. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39785A17985464.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Eudey, A. et al., 2020. Macaca fascicularis fascicularis. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39768A17985511. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39768A17985511.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis fusca (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39786A195344878. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39786A195344878.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis karimondjawae. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39787A17985418. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39787A17985418.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis lasiae. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39788A17985441. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39788A17985441.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2008. Macaca fascicularis philippensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T40788A10354490. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T40788A10354490.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis tua. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39790A17985395. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39790A17985395.en. Downloaded on 14 August 2021.
- Kumara, H.N. et al., 2021. Macaca fascicularis umbrosa. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T39791A17985345. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T39791A17985345.en. Downloaded on 14 August 2021.
- ^ a b UNEP (2021). Macaca fascicularis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 14/08/2021]
- ^ a b c d Colin P. Groves, "Order Primates,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 111 - 184.
- ^ a b c d e f g h i 岩本光雄「サルの分類名(その1:マカク)」『霊長類研究』第1巻 1号、日本霊長類学会、1987年、45 - 54頁。
- ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7。
- ^ 千葉夏未(2007)「卵巣摘出カニクイザル下顎頭の形態学的変化に関する研究」東北大学歯学雑誌 26(2), p.37
- ^ “遺伝学的・微生物学的に統御された健康なサル類の管理システムの構築”. tprc.nibiohn.go.jp. 2020年1月15日閲覧。
- ^ a b c 渡邊邦夫 「東南アジアのテンプル・モンキー タイ,インドネシアを中心とした地域における餌付けカニクイザルの個体数変動」『人と自然』第27巻、兵庫県立人と自然の博物館、2016年、53-62頁。
- ^ 特定外来生物等一覧・ 特定外来生物一覧(指定時期ごと)(環境省 ・2021年8月14日に利用)
関連項目
カニクイザル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 04:33 UTC 版)
Animal Behaviour誌に掲載された論文によると、ケンブリッジ大学の学生がカニクイザルはセックスの代償としてオスが毛づくろいを行う。この報告では、オスがメスの毛繕いに費やす時間と、相手のメスが相手と性交を行う積極性には相関関係が示されている。
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