カニクイザルとは? わかりやすく解説

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かにくい‐ざる〔かにくひ‐〕【×蟹食猿】


サルの正常行動(カニクイザル)

マーモセットの様な小型比較表情少なく四肢生活主体行動をとるものと、カニクイザル、アカゲザルヒヒどの様に、中型表情比較的豊かで、状況により前・後肢を使い分ける行動をとるものと大きく2 つ分けられるまた、個々動物馴化調教) の程度によって、行動大きく影響を受けるため、特に後者サルでは個体差大きい。サル外部状況変化には非常に敏感で、常に警戒怠らないまた、社会家族) を有する動物でもあり、優先順位などによる特徴的行動(Social behavior)を示すが、個別飼育状態では、それらの行動対象観察者であることが多い。以下に、カニクイザルを想定した常行動について記述する。以下に示した常行動は、アカゲザルとも共通する部分が多いと考えられる。しかし、後に述べるように、ヒヒおよびマーモセットでは、その身体の大きさ生活形態馴化程度などにより、必ずしも該当し得ない
観察者がいない状態では、観察される姿勢座位であることが多く立位は稀である。座位の状態で飼育室内をキョロキョロ見回す行動前・後肢を主体とした毛づくろい( セルフグルーミング) 、餌などの咀嚼あるいは舌先口腔内を探る動作前肢指先でのケージ内および格子汚れ取り様動作充足的発声( ホワー、フィーンなど) 、欠伸( あくび) などが観察される時に頭部丸めて膝を抱え込むような姿勢示しうたた寝状態が観察されることもある。また、立位の状態で飲水摂餌行動探索行動四肢で立ち跳躍するように体を上下する行動、挾体のスライド天井格子掴んで左右または前後に体を動かす動作座位位置移動等が観察される
隣接あるいは対面するケージ内の動物に対して意識を示す場合飼育・観察者などが入室し場合あるいは周囲環境からの騒音などがある場合などの被刺激状況にあっては比較軽度短時間終息する警戒威嚇あるいは逃避行動を示す。警戒威嚇行動で、座位状態のままで上体乗り出す動作あるいは四肢での身構えならびに鋭い眼つきでの注視開口、歯を見せないチューイングおよび体位変換ケージ揺さぶり行動ケージ内のうろつき回り、および弱くて短い警戒威嚇的発声ガルルゴホゴホ) などが観察される警戒逃避行動としては全身緊張同時に立ち上がり後退あるいは天井格子掴まる姿勢で、眼を見開いた様な注視、歯を見せるあるいは唇を尖らしたチューイング逃避発声キーキーキャルル
などが観察される
上記警戒威嚇および逃避行動は、個々動物馴化程度および取扱い状況によって異なり投与採血など直接動物触れ処置を行う際には過度興奮状態を示し、これらの行動が強まる。過度興奮状態では、攻撃および逃避行動が観察され、それらの行動それぞれ前述警戒威嚇および警戒逃避行動に類似するが、警戒する対象消失しても、発現し警戒行動あるいはその他の警戒行動暫時継続して観察される点で異なる。過度興奮により警戒威嚇行動が強まると、四肢での堅固な身構え全身使った激しケージ揺さぶり、鋭い眼つきでの注視開口、咬みつきおよび掴みかかり行動反射的跳躍連続的で強い警戒威嚇発声ガルルゴボゴボギャルル) などの攻撃的行動観察され動物によっては恐怖余り自咬などの自虐的行動観察されることもある。
一方過度興奮による逃避行動として、立ち上がり後退してケージ後面に背を着けるあるいはケージ上隅にしがみついた状態で体位変換をすることなく、眼を見開くような注視、歯のぶつかる音が聞こえる程激しチューイング連続的逃避発声キーキーキャルルキャッキャッ) などが観察される。さらに全身緊張同時に動物が床に伏せ全く動かなくなる状態( 降参状態) 、また、大便失禁あるいは尿失禁認めることもある。さらに警戒対象消失しても、興奮あるいは緊張状態存続し外部様子見動作似た上体前後移動体位変換ケージ内での回転運動などが持続的に観察されることがある
その他の行動症状として、偏食拒食、咳、しゃっくり、いびき、発汗および月経等が観察できる

蟹食猿

読み方:カニクイザル(kanikuizaru)

オナガザル科サル

学名 Macaca fascicularis


カニクイザル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/14 01:54 UTC 版)

カニクイザル
カニクイザル Macaca fascicularis
保全状況評価[1][2]
ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 霊長目 Primates
: オナガザル科 Cercopithecidae
: マカク属 Macaca
: カニクイザル M. fascicularis
学名
Macaca fascicularis
(Raffles, 1821)[1][3][4]
和名
カニクイザル[4]
英名
Crab-eating macaque[3][4]

カニクイザル (蟹食猿) (Macaca fascicularis) は、哺乳綱霊長目オナガザル科マカク属に分類される霊長類。

分布

インドニコバル諸島)、インドネシアカンボジアタイ王国バングラデシュブルネイマレーシアミャンマーベトナムラオス[1]。人為的な導入により香港イリアンジャヤパラオモーリシャスサモアなどに定着している[5]

模式標本の産地(模式産地)は、スマトラ島[3]アカゲザルと分布の境目では交雑しており、正確な分布の境界は不明[1]

形態

亜種によっても異なるが、大人の個体で体長38-55cm、尾の長さは40-65cmになる。体重はオスで5-9kg、メスで3-6kg。尾は長い[4]。頭頂部の体毛が房状に伸長する個体もいる[4]。種小名fascicularisは「房状の」の意で、頭頂部の体毛に由来すると考えられている[4]。灰褐色や暗褐色・黄褐色などの体毛で被われる[4]

分類

本種の学名としてMacaca irusが用いられることもあったが、裸名とされる[4]

以下の亜種の分類は、Groves(2005)に従う[3]。分布はIUCN(2020)に従う[1]

Macaca fascicularis fascicularis (Raffles, 1821)
インドネシア(ジャワ島、スマトラ島、バリ島、ボルネオ島、小スンダ列島)、マレーシア
Macaca fascicularis atriceps Kloss, 1919
Khram Yai島
Macaca fascicularis aureus (E. Geoffroy, 1831)
タイ王国中西部、バングラデシュ南部、ミャンマー、ラオス
Macaca fascicularis condorensis Kloss, 1926
ベトナム南岸のCon Son島
Macaca fascicularis fuscus (Miller, 1903)
Simeulue島
Macaca fascicularis karimondjawae Sody, 1949
Karimunjawa島、Kemujan島?
Macaca fascicularis lasiae (Lyon, 1916)
Lasia島
Macaca fascicularis philippensis (I. Geoffroy, 1843)
フィリピン
Macaca fascicularis tua Kellogg, 1944
Maratua島
Macaca fascicularis umbrosus (Miller, 1902)
ニコバル諸島[1]

アカゲザルと交雑し、ミナミブタオザルMacaca nemestrinaとの交雑個体も報告されている[1]

生態

社会性を有する動物で、通常5-60頭の群れを作って生活する。その群れには通常2-5頭のオスが含まれる。群れの大きさは餌の豊富さなどに依存し、群れでのランクは成熟したオスがメスより上位となる。

メスの妊娠期間は167-193日で、子ザルの出生時の体重は約350g。はじめは黒い体毛であるが、数ヶ月の間に生え変わり、最終的に赤茶色の体毛となる。

食性は雑食で、植物の果実種子を主な餌としているが、それ以外にも植物の葉、花、根、小鳥、トカゲカエルなどさまざまな動植物を捕食しており、海岸やマングローブ林に生息する個体はカニ類も食べる。それが名前の由来とされているが、カニ類のみを食べるわけではない[4]

天敵としてトラヒョウウンピョウフィリピンワシワニアミメニシキヘビがいる。

人間との関係

顎関節の形態などヒトに類似する点が多く、また同一条件での飼育が可能であるため[6]、形態的な研究や投薬研究の際の実験動物として用いられることがある。[7]前述したように実験動物として用いられることがあるほか、宇宙飛行のテスト動物として宇宙船に搭乗させられる(宇宙に行ったサルを参照)。

各地で導入、野生化したカニクイザルが農作物に被害を与える事例も発生しており、世界の侵略的外来種ワースト100に選定されている。また、カニクイザルはエボラウイルスエムポックスBウイルス感染症媒介者として知られる[要出典]

インドネシアのバリ島や、タイ王国のロブリ(サーン・プラカーン寺院)などのように一部の地域では信仰の対象とされることもある[8]。東南アジアでは寺院や公園などにすみついたサル類(テンプル・モンキー)がみられ、その多く(特に人里周辺)は本種とされる[8]。インドネシアのバリ島・ジャワ島のパンガンダラン自然保護区、シンガポール、ロブリの例では、生息地の1970年代以降の経済発展に伴い観光客も含めた餌付けなどが盛んになりこれらの地域での個体数が増加したと考えられている[8]。タイのロブリーという町に住むカニクイザルには、人間の髪の毛をデンタルフロス代わりに用いるものがいて、その行為は親から子に伝えられる。

分布は非常に広く、生息数が多いため絶滅のおそれは低いと考えられてきた[1]。一方で後述する理由により生息数は減少していたにもかかわらず、生息数が多いとみなされていたことから関心が向けられなかったり保護対策などが行われておらず将来的にさらに生息数が激減することが示唆されている[1]。食用やスポーツハンティングとしての狩猟、実験動物としての採集、害獣としての駆除などにより生息数は減少している[1]。1977年に、霊長目単位でワシントン条約附属書IIに掲載されている[2]

M. f. fascicularisM. f. condorensisM. f. umbrosus
VULNERABLE (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
M. f. atricepsM. f. aureusM. f. fuscusM. f. karimondjawaeM. f. lasiaeM. f. tua
DATA DEFICIENT (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]
M. f. philippensis
NEAR THREATENED (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))[1]

日本では2005年4月に、特定外来生物に指定されている(同年6月に施行)[9]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Eudey, A. et al., 2020. Macaca fascicularis (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T12551A195354635. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-2.RLTS.T12551A195354635.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis atriceps. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39769A17985276. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39769A17985276.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis aurea (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39770A195342602. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39770A195342602.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis condorensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39785A17985464. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39785A17985464.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Eudey, A. et al., 2020. Macaca fascicularis fascicularis. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39768A17985511. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39768A17985511.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis fusca (errata version published in 2021). The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39786A195344878. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39786A195344878.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis karimondjawae. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39787A17985418. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39787A17985418.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis lasiae. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39788A17985441. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39788A17985441.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2008. Macaca fascicularis philippensis. The IUCN Red List of Threatened Species 2008: e.T40788A10354490. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2008.RLTS.T40788A10354490.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Ong, P. & Richardson, M. 2020. Macaca fascicularis tua. The IUCN Red List of Threatened Species 2020: e.T39790A17985395. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2020-3.RLTS.T39790A17985395.en. Downloaded on 14 August 2021.
    Kumara, H.N. et al., 2021. Macaca fascicularis umbrosa. The IUCN Red List of Threatened Species 2021: e.T39791A17985345. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2021-1.RLTS.T39791A17985345.en. Downloaded on 14 August 2021.
  2. ^ a b UNEP (2021). Macaca fascicularis. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 14/08/2021]
  3. ^ a b c d Colin P. Groves, "Order Primates,". Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 111 - 184.
  4. ^ a b c d e f g h i 岩本光雄「サルの分類名(その1:マカク)」『霊長類研究』第1巻 1号、日本霊長類学会、1987年、45 - 54頁。
  5. ^ 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日。ISBN 978-4-582-54241-7 
  6. ^ 千葉夏未(2007)「卵巣摘出カニクイザル下顎頭の形態学的変化に関する研究」東北大学歯学雑誌 26(2), p.37
  7. ^ 遺伝学的・微生物学的に統御された健康なサル類の管理システムの構築”. tprc.nibiohn.go.jp. 2020年1月15日閲覧。
  8. ^ a b c 渡邊邦夫東南アジアのテンプル・モンキー タイ,インドネシアを中心とした地域における餌付けカニクイザルの個体数変動」『人と自然』第27巻、兵庫県立人と自然の博物館、2016年、53-62頁。
  9. ^ 特定外来生物等一覧特定外来生物一覧(指定時期ごと)環境省 ・2021年8月14日に利用)

関連項目


カニクイザル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/24 04:33 UTC 版)

動物の売春」の記事における「カニクイザル」の解説

Animal Behaviour誌に掲載され論文によると、ケンブリッジ大学学生がカニクイザルはセックス代償としてオス毛づくろいを行う。この報告では、オスメス毛繕い費やす時間と、相手メス相手性交を行う積極性には相関関係示されている。

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