太地町 捕鯨文化にまつわるエピソード

太地町

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/29 06:54 UTC 版)

捕鯨文化にまつわるエピソード

大背美流れ

おおせみながれ。1878年(明治11年)暮れ、アメリカなどの列強による鯨の乱獲などの影響で、漁師は近年にない不漁による経済難から、荒天の中、鯨捕り(古式捕鯨)に出漁して遭難し、一度に100余名が死亡・行方不明となった惨事。この件により労働力を失った太地は、一気に疲弊、古式捕鯨は事実上壊滅し、後に近代捕鯨へと切り替わるきっかけとなった[4][46]

腹びれイルカ

2006年に見つかった、世界に一頭しかいない、ほぼ完全な形をした腹びれを持つハンドウイルカ(生年不明-2013年)。

イルカ追い込み漁に関する議論

反捕鯨団体の議論とその対策

2009年8月22日、太地町でのイルカ追い込み漁を批判的に描いたドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』が公開された。太地町側は科学的根拠に基づいておらず[47]、町の歴史や誇りを傷つける不当な行為であると映画を批判した[48]。また、反捕鯨団体「シーシェパード」が活動家を常駐させており、漁業の妨害行為を行っている[49]。和歌山県の仁坂吉伸知事はシーシェパードの挑発に乗らず、冷静に対応する漁民の姿勢を称賛した[50]。シーシェパードは、器物損壊・暴行事件などの違法行為も起こしており[51][52]、太地町側は反捕鯨団体の活動に備えるため臨時交番を開設し、違法行為を取り締まる姿勢を見せている[53][54][55]。また和歌山県警と第5管区海上保安本部は反捕鯨団体の違法行為に対応するため合同で訓練を実施している[56]

駐日米大使によるイルカ追い込み漁反対声明

キャロライン・ケネディ駐日米大使が2014年1月18日にイルカ追い込み漁について「アメリカ政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています。」とツイッターに書き込みを行い[57]、日本では大きな反発を呼んだ[7][58][独自研究?]

日本語のインターネットでは、「外国人が日本の文化に口出しをするな」、「牛や豚、魚を殺すことは冷酷ではないんですか?」、「私はクジラを食べませんが、他国の文化は尊重すべきです」、「日本の文化への敬意を欠いている」などのケネディへの怒りの反応が多数あった[58][7][59]

在日米大使館のシェイ報道官は、「ケネディ大使は米国内から追い込み漁に反対する何百というツイート(書き込み)を受け取り、自分のツイッターに書き込むことを決めた」と事情を説明した[7]。米政府は2009年には、追い込み漁が「イルカの生息数不足を招く」こと(実際は太地町の漁獲ではそういう科学的な事実は無いが)などを理由にして、漁を「支持しない」立場を取るようになっており[7]、ハーフ米国務省副報道官は1月21日、(ケネディ大使のツイートは個人的意見かという推測があったため[60])「米政府の長年の見解を表現したものだ」とし、「生物資源の持続可能性と道義性の両面で懸念している」と表明した[61][独自研究?]

テンプル大日本校のクリーブランド准教授は、ケネディ大使はイルカ漁を取り上げることで、日本に対する他国からの懸念についてもっと日本が配慮する必要があることを日本に伝えたかったのではないかとの見解を示した[7]

大使の声明への反論

ケネディ大使のツイート(書き込み)には日本からすぐに、また、官民から多くの反論(反応)があった。菅義偉官房長官は速やかに談話を公表し、「イルカを含む鯨類は重要な資源であり、科学的根拠に基づき、持続的に利用すべきと考えている。また、イルカ漁業は我が国の伝統的な漁業のひとつで、法令に基づき適切に実施されていると考えている。また、イルカは国際捕鯨委員会(IWC)の管理対象外であり、各国が自国の責任で管理を実施することにしている」[60]と米政府に理解を求める見解を出した[62][7]

安倍晋三首相はCNNのインタビューに応じ、「古来続いている漁で、彼らの文化、慣習として、生活のためだということを理解してもらいたい」、また、「それぞれの国、地域には、祖先から伝わるさまざまな生き方、慣習、文化がある。当然そうしたものは尊重されるべきだと思うが、同時にさまざまな批判があることも承知している」、そして、「漁の仕方も相当工夫されていると聞いている。漁も漁獲方法も厳格に管理されている」などと述べた[63][59]

イルカ追い込み漁が唯一行われている当地、太地町の三軒一高町長は、地元の漁師たちは漁業権を行使しているだけだと述べたうえで、絶滅の危機にある動物を捕獲しているわけではないとし、「われわれは住民を批判から守る必要がある」と述べ、更に、シー・シェパードは資金集めや宣伝のために追い込み漁を利用していると非難の声をあげた[64]

映像ジャーナリストで和歌山大学特任のサイモン・ワーン助教(オーストラリア出身)は「本当に生命を守るとは、(『ザ・コーヴ』のような)センセーショナルな映像を作って流すことでない。生き物に感謝して生かされていることに感謝すること。太地にはそういう文化が伝わっている」、また、「捕鯨は太地で連綿と受け継がれてきた技術。油を取って捨てるようなことはせず、必要数だけを捕り、全ての部位を使い無駄にしない。太地の捕鯨こそ、環境に配慮した持続可能な漁」と話している[65]

尚、当のケネディ大使はこういった賛否両論について、論争が行われるのは健全なことであるとコメントしている[66]

日本政府の閣議決定

2014年2月25日、日本政府は閣議で、アメリカのケネディ駐日大使が反対している日本のイルカ漁に関し、「わが国の伝統的な漁業の一つであり、法令に基づき適切に実施されている」との答弁書を決定した。内容は「政府はイルカを含む鯨類は重要な水産資源で、科学的根拠に基づき持続的に利用すべきだ」と記したうえで、「引き続きイルカ漁業に対する国際的理解を得られるように努力していく」とした[8]

住民の水銀濃度

食物連鎖によってメチル水銀がクジラ、イルカなどの海洋哺乳動物で濃縮されることが知られている。2010年、太地町からの要請を受けて、環境省の国立水俣病総合研究センターは、毛髪水銀濃度測定によるメチル水銀摂取状況および健康の影響に関する調査を実施した。国内14地域と比べ、毛髪水銀濃度は明らかに高く、世界保健機関 (WHO) の安全基準値を上回る者も43人いた。クジラ類の摂取との関連性が示唆されたが、健康への影響そのものは認められなかった。その後、2012年にも調査を行い、所長の安倍重一が健康に問題ない旨の宣言を行った。センターは引き続き、胎児への影響を含めて調査を続ける方針である。

脚注

[脚注の使い方]



  1. ^ 古式捕鯨発祥の地、太地町公式ホームページ”. 2012年3月19日閲覧。
  2. ^ a b 紀南地方-太地町 くじら捕りの歴史和歌山県ガイドブックWEB
  3. ^ 環太平洋地域の鯨文化 秋道智彌(国立民族学博物館・民族文化研究部)著 季刊 環境情報誌 ネイチャーインタフェイス 第2号 2001/03/31 ISBN 4901581015 2013年1月21日閲覧。
  4. ^ a b 太地町の歴史と文化を探る 大背美流れ(おおせみながれ)
  5. ^ 「日本の動物記」毎日新聞社 122頁 動力は小型焼玉エンジン
  6. ^ a b c d e 第10章 変容する鯨類資源の利用実態 -和歌山県太地町の小規模沿岸捕鯨業を事例として- Archived 2014年3月2日, at the Wayback Machine.遠藤愛子(海洋政策研究財団政策研究グループ)。松本博之編『海洋環境保全の人類学』,国立民族学博物館調査報告 97 : 237―267(2011)。
  7. ^ a b c d e f g “ケネディ大使発言:イルカ漁でツイッターに 広がる波紋”. 毎日新聞. (2014年1月24日). オリジナルの2014年1月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140124080602/http://mainichi.jp/select/news/20140124k0000e040190000c.html 2015年8月24日閲覧。 
  8. ^ a b 「イルカ漁は適切」政府が答弁書を決定 「わが国の伝統的な漁業」 MSN産経ニュース 2014.2.25
  9. ^ 町章 くじらの町太地町公式ホームページ
  10. ^ 太地町ってこんな町イラストマップ (PDF) 太地町
  11. ^ 太地町史, 493頁
  12. ^ 「イルカ漁は残酷か」平凡社 伴野準一 48頁
  13. ^ 「イルカ 小型鯨類の保全生物学」 粕谷俊雄著 119頁
  14. ^ 「イルカ漁は残酷か」50頁
  15. ^ 阪神間の“今”を探そう♪阪神間クチコミ情報サイト-阪神ナウ!-
  16. ^ この展示の年代に関しては1935年及び1937年説もある、ゴンドウクジラ属#日本における展示飼育も参照。
  17. ^ 「イルカ漁は残酷か」55頁
  18. ^ 「イルカ漁は残酷か」69-84頁
  19. ^ 太地町の歩み”. 太地町公式ホームページ. 2019年5月19日閲覧。
  20. ^ クジラ牧場、開設に向け調査 太地町2013年03月09日更新 - AGARA紀伊民報
  21. ^ 「一緒に泳げる」クジラ牧場 和歌山・太地町に構想中 47NEWS(よんななニュース)2012/05/01
  22. ^ 太地町地域強靱化計画”. 2018年9月13日閲覧。
  23. ^ 森浦湾鯨の海構想概要 太地町くじらと自然公園の町づくり協議会(森浦湾鯨の海構想と魅力ある町づくり)
  24. ^ “追い込み漁の太地イルカ、半数は海外に輸出”. (2015年6月8日). http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H0Y_Y5A600C1000000/ 2015年7月11日閲覧。 
  25. ^ 同期間に太地以外から輸出された小型鯨類の例(2004年に救助され、鴨川シーワールドで飼育され、2012年、鴨川から米国サンディエゴに輸出されたマゴンドウのアルゴ(Argo)の記事)Pilot whale arrives at SeaWorld from Japan | L.A. NOW | Los Angeles TimesMarch 19, 2012
  26. ^ Compiled From Kyodo, Staff Report (2009年10月15日). “Australian town embraces Taiji again , Broome reverses suspension of sister-city status”. The Japan Times. オリジナルの2013年4月22日時点におけるアーカイブ。. http://megalodon.jp/2013-0422-0211-27/www.japantimes.co.jp/news/2009/10/15/news/australian-town-embraces-taiji-again/ 2013年4月22日閲覧。 
  27. ^ “太地町とデンマーク・クラクスヴィーク、捕鯨めぐり姉妹都市提携”. TBS News. (2018年1月25日). http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3273350.html 2018年1月28日閲覧。 
  28. ^ [1]立教大学
  29. ^ 燈明崎の燈明台きのくに風景讃歌
  30. ^ イベント情報太地町
  31. ^ わかやま新報 » Blog Archive » 【AR】活動拠点をNYに 書画家・田中太山さん2015年06月12日 わかやま新報
  32. ^ 太地町観光大使 田中大山氏
  33. ^ 『巨鯨の海』 (伊東潤 著) | 著者は語る - 週刊文春WEB2013.06.02 2015年7月12日閲覧
  34. ^ 浅見光彦の家 - 中村俊介氏主演『鯨の哭く海』 10月13日放映! 浅見光彦倶楽部
  35. ^ <ドラマ名作選>『浅見光彦シリーズ24 鯨の哭く海』 BSフジ
  36. ^ 連続テレビ小説 風見鶏 | NHK名作選(動画・静止画) | NHKアーカイブス2015年7月12日閲覧
  37. ^ 「クジラ映画」佐々木芽生さん 国際ドキュメンタリー祭最優秀企画賞受賞 「ザ・コーヴ」への疑問がきっかけ 2015年11月3日 産経新聞
  38. ^ Filmmaker plans more balanced documentary on Taiji's dolphin hunt May 22, 2015
  39. ^ マスコミ試写会のご案内 合同会社八木フィルム(水産ジャーナリストの会公表),(PDF), 2015-8-7閲覧
  40. ^ 「シー・シェパード、ひどい」 モントリオール映画祭、日本人女性監督の反捕鯨「反証」作品に熱い反響”. 産経ニュース. 株式会社産経デジタル (2015年9月5日). 2015年9月23日閲覧。
  41. ^ a b 「シー・シェパード、ひどい」 モントリオール映画祭、日本人女性監督の反捕鯨「反証」作品に熱い反響 (2)”. 産経ニュース. 株式会社産経デジタル (2015年9月5日). 2015年9月23日閲覧。
  42. ^ 2009films DocuWest, 2015-8-7閲覧
  43. ^ town of sun, the black tide and whales IMDB-VIDEO
  44. ^ さゞなみ : 作品情報 - 映画.com2015年6月12日閲覧
  45. ^ 「コーヴ」公開に合わせ邦画上映 クジラ漁の記録映画 - 47NEWS(よんななニュース)2010/08/14 共同通信
  46. ^ NHK 知る楽 歴史は眠らない 2009 08/09月 第1回 大国に翻弄された町 8月4日九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門・理学部地球惑星科学科 吉田茂生web
  47. ^ 米映画『ザ・コーヴ』、アカデミー賞受賞に太地町反発 写真2枚2010年03月09日 国際ニュース:AFPBB News
  48. ^ イルカ漁等に対する和歌山県の見解(米映画『ザ・コーヴ』についてどのように考えるか) 和歌山県ホームページ
  49. ^ シー・シェパードが妨害宣言 和歌山・太地町に送り込んでくる活動家はリピーターより初参加組 - MSN産経west1ページ2ページ 2013.12.14
  50. ^ ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成23年5月 太地の捕鯨 和歌山県ホームページ]
  51. ^ 太地町における反捕鯨問題対策広報誌『和歌山の警察2013』19ページ、和歌山県警察。2013年3月発行。
  52. ^ 反捕鯨団体想定し警備訓練 和歌山県警と海保 AGARA紀伊民報 2013年08月10日更新
  53. ^ シー・シェパード妨害許さぬ クジラの町・太地に臨時交番2013.8.24 MSN産経west
  54. ^ ケネディ駐日米大使のつぶやきにイルカの町が“鯨撃” 「漁を守り続ける」強い思い - 政治・社会 ZAKZAK 2014.02.10
  55. ^ 捕鯨トラブルで対策本部 和歌山・太地町に臨時交番 日本経済新聞 2011/7/20
  56. ^ クジラ漁を前に県警と海保が合同訓練、違法行為に対応 太地町 AGARA紀伊民報 2012年08月08日更新
  57. ^ キャロライン・ケネディ駐日米国大使のツイート(424405149730107393)
  58. ^ a b ケネディ氏「イルカ漁は非人道的」に反発の声 安倍首相Facebookにも飛び火、盛り上がる J-cast
  59. ^ a b 安倍首相がイルカ漁を擁護、米CNNインタビュー 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News2014年01月26日 15:27 発信地:東京
  60. ^ a b ケネディ大使の「イルカ漁批判ツイート」 米政府見解でなく実は「個人的意見」の可能性2014/1/20 : J-CASTニュース
  61. ^ 日本のイルカ漁に米が懸念表明 「大使は政府の見解示した」日本経済新聞 2014/1/22
  62. ^ 「イルカ漁反対」と水産庁前で抗議=ケネディ発言受け市民ら(時事ドットコム)
  63. ^ イルカ追い込み漁:CNNに安倍首相「古来から…理解を」 毎日新聞 2014年01月25日 10時39分(最終更新 01月25日 11時29分)
  64. ^ CNN.co.jp : イルカ漁批判、日本側が反論 - (2/2)2014.01.21 Tue posted at 18:47 JST
  65. ^ ニュース和歌山-2014年2月8日1面 イルカ漁の真実 世界へ 映像ジャーナリスト サイモン・ワーンさん 太地の捕鯨 偏見正し文化保存 ニュース和歌山株式会社
  66. ^ 朝日新聞-2014年1月23日「イルカ漁懸念ツイート「政策示すこと大事」」


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