太地いさな組合とは? わかりやすく解説

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太地いさな組合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/28 08:07 UTC 版)

太地いさな組合(たいじいさなくみあい)とは、和歌山県太地町の太地町漁業協同組合に所属する分野別の組合。小型鯨類の追い込み漁をすることで知られる、追い込み漁業共同体[1]。一部に勇魚組合とも報道[2]。「いさな」(勇魚)とは奈良時代から続くクジラの古い呼び名[3][注釈 1]。近年は反捕鯨団体シーシェパードなどに連日のデモや撮影をされながら漁業を行う[4][5]


  1. ^ 万葉集#捕鯨も参照。
  2. ^ 太地に限らず、日本は6-9千年前の縄文時代(中・新石器時代)から小型鯨類を食し、遅くとも5千年前にはイルカ漁もしていた[10]。また、大きなクジラについては、沿岸に迷い込んだ、弱った「寄り鯨」を獲っていたと、推測されている[6][11]
  3. ^ これ以前は個人らが助け合いながら獲っていた[6]
  4. ^ 「てんと船」の由来について、海洋政策研究財団・政策研究グループの遠藤愛子は2つの説を紹介した。一つは「1913年に太地の小型捕鯨船の一部の船に発動機が据えられ、これらの船は、「走ること天を渡る程早い」というところからテント船(天渡船)とよばれた」というもの[15]。もう一つは、「江戸時代の末期から明治中期頃までに、五枚板造りの船が「てんとう」とよばれ明治期になって広く沿岸に普及されており、この型の船を使ってゴンドウが捕獲されていたので、その名で呼ばれるようになった」というものである[15]
  5. ^ 1983年に県知事許可漁業になり、資源管理が行われた[8]
  6. ^ 1988年は商業捕鯨モラトリアムが発行した年である[19]。遠藤は、「モラトリアム以降、全国的な鯨肉供給量減少に伴い、これまで安価であった小型鯨類は、大型鯨類の代替品として消費地市場においてその商品価値が高くなり高級嗜好品化した」と説明する[19]
  7. ^ 2006年より、漁期の始まりがこれまでの10月から9月開始に変更された[20]
  8. ^ 4月以降のゴンドウを地元では"麦刈りゴンドウ"と呼ぶ[20]
  9. ^ 太地町ではマゴンドウの刺身が人気があると調査された[21][22]
  10. ^ オキゴンドウは捕獲が難しい[23]。主に飼育用[23]。飼育用小型鯨類のうち最も商業的価値が高い[24]
  11. ^ 太地町ではイルカはスジイルカの腹肉のみが消費される[25]。これの理由はスジイルカが捕獲が容易であり、供給が豊富だったから地域の食習慣に根付いたと聞き取り調査されている[25]。地元では「真イルカ」と呼ばれる[25]
  12. ^ カマイルカは2007年1月より新規捕獲枠に入れられた[8]。主に飼育用であり[25]、また、カマイルカの捕獲は従来の漁網では難しいため、専用の漁網が必要となる[24]
  13. ^ 太地町漁業協同組合によると、太地での小型捕鯨業は、本来ミンククジラを捕るのが主流だったが、国際捕鯨委員会 (IWC) の捕獲制限により捕獲が禁止されたため、IWC管理対象外のツチクジラゴンドウクジラなどを獲るだけになったと説明する[26]
  14. ^ 漁師の表現では「知恵比べになる」という。
  15. ^ デンマークの自治領・フェロー諸島で行われている頚髄及び頚椎周囲の血管叢を切断する方法[31]。捕殺時間が短く、作業者の安全性も高いとされた[31]
  16. ^ ノルウェーの捕鯨研究者(博士)のアルネ・ビョルグは、(2010年までには)太地の漁師は迅速に屠殺するよう努力していると、作家のC・W・ニコルに説明した[33]
  17. ^ オスに比べて、若いメスの個体が調教しやすいためとされる[24]。また、求められる条件が厳しいため、水族館は慢性的に供給不足となっている[24]
  18. ^ 突きん棒漁は、手投げの銛で突きとる漁で、追い込み漁と共に、各都道府県知事の許可の下に行われる[34]。小型捕鯨は、捕鯨砲を積んだ小型捕鯨船による漁であり、農水大臣の許可を受けて行われる[34]。突きん棒は追い込み漁より効率が悪いとされ、太地では29隻が許可を受けているが通常3隻のみ従事し、捕鯨砲を積んだ小型捕鯨は2隻の船で行う[34]
  19. ^ 太地町漁業協同組合の地元市場への年間漁獲量は1,760トンであり、うち海産ほ乳類は234トンで、全体の13%を占める[7]
  20. ^ 南氷洋・北洋捕鯨の全盛期には、約400人の太地町民が捕鯨産業に従事し、また、1960年代前半の南氷洋捕鯨従事者が支払う税金は、町税収入のおよそ60%に達した[35]
  21. ^ シーシェパードの嫌がらせの始まりは2003年まで遡ることができるが[46]、2003年以後は南氷洋の日本の調査捕鯨妨害に傾注し、再び太地に戻ってくるのは、映画『コーブ』の後の2010年である[47]
  22. ^ 野村はこの脅迫をエコテロリズムだとしている[53]
  1. ^ 遠藤愛子 2011, p. 259
  2. ^ 「腹びれ」持つイルカ発見 研究プロジェクト立ち上げへ 先祖返りか 太地町で 2006年11月7日付 Minamikisyu web press≪南紀州新聞・熊野新聞≫
  3. ^ NHKスペシャル - 番組の流れ - Yahoo!テレビ.Gガイド (テレビ番組表)
  4. ^ a b 平成23年6月NHK近畿地方放送番組審議会(議事概要)(PDF) 『平成24年3月NHK近畿地方放送番組審議会(議事概要)』
  5. ^ a b イルカ漁に抗議するため和歌山県太地町に居座るシー・シェパードの悪質な行動を記録した写真がネットで拡散中 2014.02.03 BuzzNewsJapan
  6. ^ a b c d 太地町の歴史と文化を探る太地町
  7. ^ a b c d 遠藤愛子 2011, p. 240
  8. ^ a b c d e f g h i j k 遠藤愛子 2011, p. 241
  9. ^ 「イルカ 小型鯨類の保全生物学」 粕谷俊雄著 119頁
  10. ^ 研究と活動:第4回 「日本海捕鯨の起源と発達」 『2004年度 日本海学講座』 2004年11月6日、金沢医科大学教授・平口哲夫、日本海学推進機構web
  11. ^ 野村康 2013, p. 103
  12. ^ 捕鯨の歴史 日本捕鯨協会
  13. ^ a b c d 遠藤愛子 2011, p. 239
  14. ^ a b 宇仁義和「NHKアーカイブス保存映像の文化人類族学的調査の可能性」(PDF)『北海道民族学= Hokkaido journal of ethnology』第10号、北海道民族学会、2014年、77-86頁、ISSN 1881-0047国立国会図書館書誌ID:025476498 
  15. ^ a b 遠藤愛子 2011, p. 265
  16. ^ 『くじらの町太地 今昔写真集』,太地町公民館編, P116
  17. ^ 「イルカ 小型鯨類の保全生物学」, P120, 粕谷俊雄
  18. ^ 『イルカを食べちゃダメですか?』,p117, 関口 雄祐
  19. ^ a b 遠藤愛子 2011, p. 238
  20. ^ a b c d e f g h i j k l m 遠藤愛子 2011, p. 243
  21. ^ 遠藤愛子 2011, p. 249
  22. ^ 浜口2009, 17頁
  23. ^ a b 遠藤愛子 2011, p. 248
  24. ^ a b c d e f g h 遠藤愛子 2011, p. 252
  25. ^ a b c d 遠藤愛子 2011, p. 245
  26. ^ 太地の漁業と捕鯨 太地町漁業協同組合公式ホームページ
  27. ^ a b c d e f g 遠藤愛子 2011, p. 242
  28. ^ a b c 2013-9-1和歌山太地町の追い込み漁解禁 - MSN産経west
  29. ^ 和歌山・太地のイルカ漁期終了 2011/02/26 17:06、47NEWS(よんななニュース)、共同通信
  30. ^ 鯨の追込み漁、鯨の解体、太地港だより
  31. ^ a b c 鯨類捕殺方法の改善について 太地町漁業協同組合
  32. ^ 野村康 2013, p. 100
  33. ^ C・W・ニコル02 Ⅰ-1-1 捕鯨をめぐる世界の人々の感情』(レポート) 1巻、国際常民文化研究機構・神奈川大学日本常民文化研究所、2010年、5-16頁。hdl:10487/12014https://kanagawa-u.repo.nii.ac.jp/records/9812 
  34. ^ a b c d e f 野村康 2013, p. 95
  35. ^ 浜口2009,21頁
  36. ^ a b 広報たいじ8月号3頁、2011年8月 No.324 - 太地町
  37. ^ 被災地に懐かしの鯨料理を 和歌山・太地の漁師ら - 東日本大震災2011年6月17日 asahi.com(朝日新聞社)
  38. ^ NHKスペシャル-クジラと生きるNHK
  39. ^ 太地町公民館 | NHKスペシャル TVでた蔵
  40. ^ a b ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成23年5月 太地の捕鯨 2011年5月 和歌山県ホームページ
  41. ^ 平成23年6月NHK中央放送番組審議会(議事概要)(PDF) 『平成24年3月NHK中央放送番組審議会(議事概要)』
  42. ^ 平成23年6月NHK中部地方放送番組審議会(議事概要)(PDF) 『平成24年3月NHK中部地方放送番組審議会(議事概要)』
  43. ^ 【ETV特集】「鯨の町に生きる」2011/7/24(日)夜10時NHK
  44. ^ a b テレビ関連ニュース:シーシェパードの長期滞在、イルカ漁への非難...漁師たちの思いとは?最終更新 2011/02/05 テレビドガッチ
  45. ^ 【The Cove上映】劇場に行く前にかならずこれを見てください「太陽の町 黒潮とクジラと」:イザ!2010/07/03、佐々木正明(産経新聞社記者)『Cool Cool Japan !!!』
  46. ^ 国際的批判を懸念 太地町いさな組合 反捕鯨団体とトラブル 2003年10月18日付掲載記事 『紀伊民報AGARA』web
  47. ^ a b c 野村康 2013, p. 96
  48. ^ 反捕鯨団体想定し警備訓練 和歌山県警と海保2013年08月10日更新 紀伊民報
  49. ^ 太地町における反捕鯨問題対策広報誌『和歌山の警察2013』19ページ、和歌山県警察。2013年3月発行。
  50. ^ 日本のイルカ猟 2009.8.21 WIRED.jp
  51. ^ 日本のイルカ猟(2) 2009.8.21 WIRED.jp
  52. ^ イルカ漁告発映画『The Cove』と『わんぱくフリッパー』 | 町山智浩 | コラム&ブログ 2009年08月19日 ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
  53. ^ 野村康 2013, p. 97
  54. ^ 平和・自立・調和の日本をつくるために(183) 《新・森田実の政治日誌》 [新連載]和歌山県太地町民への反捕鯨団体(とくにシーシェパード)による筆舌に尽くしがたい嫌がらせと漁業への妨害をやめさせなければならない/反捕鯨団体の嫌がらせ、生活妨害から太地町民を守るための国民運動を呼びかけます!!(その1) 2011.3.11 (その5) 森田実の言わねばならぬ【183】 (※1/4)
  55. ^ 平和・自立・調和の日本をつくるために(188) 《新・森田実の政治日誌》 和歌山県太地町民への反捕鯨団体(とくにシーシェパード)による筆舌に尽くしがたい嫌がらせと漁業への妨害をやめさせなければならない/反捕鯨団体の嫌がらせ、生活妨害から太地町民を守るための国民運動を呼びかけます!!(その2) 2011.3.12 (その5)森田実の言わねばならぬ【188】 (※2/4)
  56. ^ 平和・自立・調和の日本をつくるために(192) 《新・森田実の政治日誌》 和歌山県太地町民への反捕鯨団体(とくにシーシェパード)による筆舌に尽くしがたい嫌がらせと漁業への妨害をやめさせなければならない/反捕鯨団体の嫌がらせ、生活妨害から太地町民を守るための国民運動を呼びかけます!!(その3) 2011.3.13 (その4)森田実の言わねばならぬ【192】 (※3/4)
  57. ^ 平和・自立・調和の日本をつくるために(194) 《新・森田実の政治日誌》 和歌山県太地町民への反捕鯨団体(とくにシーシェパード)による筆舌に尽くしがたい嫌がらせと漁業への妨害をやめさせなければならない/反捕鯨団体の嫌がらせ、生活妨害から太地町民を守るための国民運動を呼びかけます!!(その4)太地町漁業協同組合の要望を実現しよう!! 2011.3.14 (その2) 森田実の言わねばならぬ【194】 (※4/4)
  58. ^ 太地町を視察 民主党の捕鯨対策議員協 AGARA紀伊民報 2012年06月05日更新
  59. ^ 広報たいじ3月号2頁、2014年3月1日 - 太地町
  60. ^ 参議院会議録情報 第177回国会 法務委員会 第3号 平成二十三年三月二十四日(木曜日)
  61. ^ 第177回国会 農林水産委員会 第13号 平成23年5月31日(火曜日)[1]
  62. ^ 反捕鯨団体の活動に対して毅然たる取締りを求める意見書 平成23年9月28日 和議第15号
  63. ^ イルカ漁等に対する和歌山県の見解 和歌山県ホームページ
  64. ^ 田中, 俊之 (2012年1月22日). “捕鯨の町にはびこる「暴力活動家」 禁止区域侵入、脅迫状…”. MSN産経west: p. 4. オリジナルの2013年2月1日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20130201065243/http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/120122/waf12012212000009-n4.htm 2021年8月3日閲覧。 
  65. ^ 日本のイルカ漁「適切に実施」 答弁書を閣議決定2014/2/25 日本経済新聞
  66. ^ 反捕鯨団体の監視いまも 和歌山・太地町、漁師ら困惑遠藤雄司 2014年3月17日 朝日新聞デジタル


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