特別司法警察職員とは? わかりやすく解説

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とくべつ‐しほうけいさつしょくいん〔‐シハフケイサツシヨクヰン〕【特別司法警察職員】

読み方:とくべつしほうけいさつしょくいん

特定の専門分野において犯罪事件捜査にあたるため、一定の権限付与され司法警察職員海上保安官皇宮護衛官自衛隊警務官麻薬取締官労働基準監督官など。→一般司法警察職員


特別司法警察職員

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/03 02:53 UTC 版)

特別司法警察職員(とくべつしほうけいさつしょくいん)とは、「森林、鉄道その他特別の事項について司法警察職員として職務を行うべき者」(刑事訴訟法第190条)をいう。水産庁漁業監督官皇宮護衛官自衛隊警務官麻薬取締官労働基準監督官等、「特定の法律の違反」を対象とするものが多数を占めるが、刑事訴訟法上はこれに限定されず、海上保安官(海上保安庁法第31条)のように「保有権限は基本的に警察官一般司法警察職員)と変わらないが、司法警察権の行使が可能な領域(エリア)が限定されたもの」も存在する。また、民間人も特別司法警察職員として指定されうる[注 1]。犯罪捜査ができるため、捜査に係る刑事手続きや逮捕捜索差押送検等を行う権限がある。

一般司法警察職員との相違

原則として、特別司法警察職員が捜査をしている事件を一般の警察官が捜査できないということはなく、警察も同じ事件を合同で捜査したり独自に捜査したりすることもある[注 2]

なお特別な例外として、下記のとおり、特別司法警察職員である海上保安官は対応が可能とされる一方、一般司法警察職員である警察官では対応ができないとされるものも存在する。

海上保安官は、公海における海賊船舶海賊放送を行う船舶などを、領海の外であっても臨検できる権限[注 3]のほか、これらに乗船している者を逮捕する権限、船内にある財産を押収する権限、自国法令に違反したと信ずるに足る理由のある外国籍の船舶を追跡する権限(海洋法に関する国際連合条約第105条・第107条・第109条・第111条)を保有している。

これらの行使主体が「(軍及び)海上を管轄する法執行機関」に限られる(同条約第107条、第109条第4項、第110条第3項ないし第5項、第111条第5項参照)理由は「公海上の秩序を維持するための条約規定の執行」であることに由来する。そのため、日本の現行法制下では、警察庁ないし都道府県警察(これらは「日本国内(主に陸上)の法秩序維持を想定した法執行機関」であり、公海上の法執行は法制度上も装備上も想定されていない)に所属する警察官は、別途法令の規定によりこれらの組織(警察庁・都道府県警察)にこれらへの対処に必要な措置を実施する権限が付与されない限り、この権限を行使できないこととされている[1]

特別司法警察職員にも、一般司法警察職員と同様に司法警察員司法巡査との区別がある。

一覧

刑事訴訟法第190条の規定に基づく法律として、個別の根拠法によるもののほか、司法警察職員等指定応急措置法昭和23年法律第234号)第1条が追認する大正12年勅令第528号「司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件」によって指定されている。

大正12年勅令第528号によるもの

  • 林野庁
    • 森林管理局
      • 森林管理局職員(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第4号)
  • 北海道
    • 総合振興局・振興局
      • 公有林野の事務を担当する北海道吏員(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第7号)
  • 民間
    • 大型船舶[注 4]
      • 船長(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第6条第1項)
      • 甲板部、機関部及び事務部の海員中その各部において職掌の上位にある者(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第6条第2項)

個別法によるもの

廃止された特別司法警察職員

  • 帝室林野局の廃止のため
    • 帝室林野局出仕(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第1号及び第9号)
  • 宮内省廃止のため
    • 猟場管守の事務を担当する宮内省出仕・宮内省職員(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第2号及び第10号)
  • 国鉄分割民営化のため
    • 日本国有鉄道職員(旧運輸省所管)
      • 日本国有鉄道の駅長・車掌区長・自動車区長・駅の助役・車掌区の助役・自動車区の助役・車掌区の支区長・自動車区の支区長・車掌たる運輸事務官、鉄道手及び雇員(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第5号及び第12号)
      • 鉄道公安職員[注 6](国有鉄道に於ける旅客公衆の秩序維持又は荷物事故防止の事務を担当するもの)(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第5号・12号及び鉄道公安職員の職務に関する法律)
    • 営団綾瀬駅長など国鉄駅長の職務を行うもの。
  • 制度廃止のため
    • 北海道庁
      • 北海道庁の営林区署勤務の地方技官及び地方事務官(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第6号)
      • 北海道庁河川監守たる地方事務官(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第13号)
    • 府県警察部
      • 経済監視官たる地方事務官(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第8号の2)
      • 経済監視官補たる地方事務官(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件 第3条第14号)
    • 経済安定本部
      • 経済査察官(昭和22年勅令193号「経済安定本部令」)
  • 根拠法が消滅したため
  • 専売公社民営化のため
  • 郵政民営化のため
    • 郵政省郵政事業庁日本郵政公社
      • 郵政監察官日本郵政公社法 第63条第3項) - 郵政監察官は捜査権限及び逮捕状を含む令状の請求権・検察官に対して被疑者および事件を送致する権限(身柄送検および書類送検のいずれもなし得る)を有するが、自身のみで逮捕状を執行する権限はもたず、郵政監察官が逮捕状を執行する必要があると判断するときは、一般司法警察職員に逮捕させ(この「させ」は使役であることから、逮捕状執行の要否を判断するのは郵政監察官の権限であり、この場合の一般司法警察職員は逮捕の「執行機関」となる。そのため、用語の用法としては一般司法警察職員への逮捕の「依頼」・「要請」というよりは「指示」に近いニュアンスを持っている)、その上で司法警察員として一般司法警察職員から引致を受ける形を採る(日本郵政公社法第63条第4項ないし第5項)。ただし、現行犯逮捕は単独で可能であり、この場合においては、被疑者を留置する必要があると思料するときはこれを最寄りの留置施設に留置するだけでよい(同条第6項)。

脚注

注釈

  1. ^ 遠洋区域、近海区域又は沿海区域を航行する総噸数20噸以上の船舶の船長など。大正12年勅令第528号(司法警察官吏及司法警察官吏ノ職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ関スル件)第6条参照。
  2. ^ それぞれが独自捜査をする場合は管轄・手柄争いが生じる事もある
  3. ^ 海洋法に関する国際連合条約第110条。この臨検を行う主体は、軍艦(3項)、軍用航空機(4項)、政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別されることのできるその他の船舶又は航空機で正当な権限を有するもの(5項)である。 なお海上保安庁法は、海上保安庁の船舶(航空機)について「番号及び他の船舶(航空機)と明らかに識別し得るような標識を附」さなければならず、船舶の場合は、併せて「国旗及び海上保安庁の旗を掲げなければならない」と定め、この条約上の要件を担保している(4条2項・3項)。
  4. ^ 遠洋区域、近海区域又は沿海区域を航行する総トン数20トン以上の船舶。また、復員又は掃海に従事する船舶についても準用。
  5. ^ 警察官職務執行法海上保安庁法準用される。自衛隊法第89・90・91・92・93条及び海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第8条。
  6. ^ 厳密には「職務に関して刑事訴訟法の一部準用を受ける日本国有鉄道職員」であり、「刑事訴訟法上の司法警察職員」ではない・詳細は当該項目を参照

出典

  1. ^ 海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律第5条
  2. ^ 出典-『自衛隊VS米軍・もし戦わば』

関連項目

外部リンク


特別司法警察職員

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 09:10 UTC 版)

司法警察員」の記事における「特別司法警察職員」の解説

特別司法警察職員の階級においては陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊の各警務官三等上の陸曹海曹空曹の曹階級上の者が司法警察員、士の階級では陸士長海士長空士長以下の者が司法巡査指定される海上保安庁においては法律により海上保安官海上保安官補が指定されているものの、現在では海上保安官補が空位補職されている者がいない状態)となっており、事実上海上保安官のみで構成されている。そのため階級において警察官自衛隊警務官との均衡崩れているようにも見えるが、現実には一等海上保安士以上の者が司法警察員二等海上保安士および三等海上保安士の者が司法巡査として運用されている。 また、海上保安官以外の民間においても、遠洋区域近海区域又は沿海区域航行する総トン数20トン上の船舶船長は、他の一定の海員と共に特別司法警察職員に指定されている(司法警察職員指定応急措置法(昭和23年法律234号)第1条及び司法警察官吏司法警察官吏職務ヲ行フヘキ者ノ指定等ニ關スル件 (大正12年勅令528号))。但し、船長のみが司法警察員海員司法巡査として職務を行う。

※この「特別司法警察職員」の解説は、「司法警察員」の解説の一部です。
「特別司法警察職員」を含む「司法警察員」の記事については、「司法警察員」の概要を参照ください。

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