自民党から選挙資金として河井夫妻に支給された1億5000万円
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「河井夫妻選挙違反事件」の記事における「自民党から選挙資金として河井夫妻に支給された1億5000万円」の解説
河井案里が当選した2019年7月の参議院選挙では、自民党から河井夫妻に対して、1億5000万円が資金提供されていたことが分かっている。2021年5月には、二階幹事長が関与を否定する発言をしたのを契機に、1億5000万円についての発言が自民党の要職から相次いだ。誰がどのように通常よりも極端に多い選挙資金を用意したのか、誰も説明しない事態が続いている。 2020年1月23日に発売された「週刊文春」が、2019年7月の参議院選挙の前に、河井夫妻陣営に自民党本部から合計1億5000万円が振り込まれていたなどを報じ、判明した。溝手顕正への支給額は1500万円で河井陣営の1/10だった。同日のBS日テレの番組で自民党下村博文(番組放送当時 選挙対策委員長、2019年7月参議院選挙当時 自民党憲法改正推進本部長)は、「自民党本部(からの振り込み)ということであれば、幹事長、あるいは総裁の判断ということになる」と指摘。自身は当時は自民党憲法改正推進本部長だったこともあり「特定はできない。それ以外かもしれないし、どこの指示かは分からない」とした上で「でもそういうレベルだ」、通常は都道府県連を通すとし「候補者に直接党本部が政治資金を含んで選挙活動費を振り込むのはあり得ない話だ」と説明した。 2020年6月20日、自民党本部が河井夫妻議員に支給した1億5000万円のうち1億2000万円は、税金を原資とする政党交付金だったことが明らかになった。河井夫妻議員がそれぞれ支部長を務めた2つの自民党支部は広島県選管へ出した報告書で使い道や金額を示していないことも判明した。 2020年9月8日、告示された自民党総裁選の共同記者会見で菅義偉(当時 内閣官房長官)は、1億5000万円の使途の調査について「総裁になれば責任を持って対応したい」と約束。 2020年12月8日、菅義偉首相(自民党総裁)は、自民党本部が計1億5000万円を河井夫妻議員に支出したことについて、「支部の党勢拡大などのために、党内で定めた基準と手続きにしたがって、党本部から適切に交付されたもの」とした。 2021年3月3日、菅義偉首相(自民党総裁)が参院予算委員会で「資金の詳細は検察当局に押収された関係書類が返還され次第、党で監査する(党の公認会計士がチェックする)」と述べた。 2021年5月17日、自民党二階俊博幹事長は記者会見で、河井夫妻公職選挙法違反事件で買収の原資となったとの指摘がある自民党本部からの1億5000万円に関し「その支出について、私は関与していない」と述べた。記者会見に同席した自民党林幹雄幹事長代理が、2019年当時の自民党選挙対策委員長だった甘利明衆議院議員が広島選挙区を担当していたと説明を補足した。 2021年5月18日、自民党税制調査会長甘利明(元 自民党選挙対策委員長)は1億5千万円の支出について「私は1ミリも関与しておりません。もっと正確に言えば1ミクロンも関わっていません」と関与を全面的に否定し「全く、承知をしておりません」と明言、支出については事件後の報道で知ったといい、選挙当時は把握していなかった、選挙対策委員長としての担務を「選挙区の公認調整について関わっている」と説明 し、林幹雄幹事長代理による説明と真っ向から対立した。また、同日の記者会見で二階俊博幹事長は「全般の責任は私にあるが、個別選挙区の戦略や支援方針はそれぞれの担当で行っている」と改めて説明した。甘利の1億5000万円の使途の説明責任について記者団に問われた二階への質疑に割って入る形で林幹雄は、「いろいろ(二階)幹事長も発言しているんだから根掘り葉掘り、あまり党の内部のことまで踏み込まないでもらいたい」記者団に反発した。同日、共産党志位和夫委員長は会見で「自分は関係ないという発言は無責任だ。二階氏の責任で(事実を)明らかにする必要がある」と強く求めた。 同日、自民党広島県支部連合会会長岸田文雄(自民党前政調会長)は二階と甘利の泥仕合を受けて「送金に誰が関与したかではなく、金が何に使われたかだ」「1億5000万円を出したその後、それを何に使ったか、これを明らかにしてもらいたい。我々が申し入れをした論点と、昨日(17日)から騒ぎになっている論点、これはちょっとずれている」とし、自民党広島県支部連合会の要望は1億5000万円の使途の説明だと指摘し、「(自民党執行部が)早く説明をして自民党に対する疑念を払拭する必要がある」と強調した。自民党広島県支部連合会会長代理の中本隆志(広島県議会議長)は、記者団に「広島県民をこれほど侮辱した言葉はない」「幹事長である人間が関係ないはずがない」と二階に発言の撤回を要求、「参議院・(広島)再選挙、敗北の一番の原因は、河井事件と1億5000万円だったということを胸に止めて、みなさんの前で説明をしなければいけない」と語気を強めた。立憲民主党安住淳国会対策委員長は「誰も関わっていないことはありえない」と指摘し、「幹事長と選対委員長が責任をなすりつけている姿は、政権政党としてはあり得ないと私どもは思っていますので追及していきたい」「資金の原資は公金、政党交付金であり、自民党に説明責任を果たすよう求めていく」と1億5000万の支給に誰が関与したのか説明責任を果たすよう求めた。共産党穀田恵二国会対策委員長は記者会見で、「誰が資金の振り込みを指示したのか、はっきりさせるべきだ。こうした問題について不問に付したり、責任のなすりつけ合いをすること自体に自民党の体質があらわれている」と批判した。林幹雄幹事長代理は18日に電話で甘利明に「他意はなかった」と陳謝した。 2021年5月21日、自民党世耕弘成参議院幹事長は記者会見で「二階幹事長はその後、発言を補足して最終的に資金の出納についての責任は自分にあると言っていると思う。一義的に説明責任は党本部にあり、党本部の責任者は幹事長ということだ」と指摘した。一方で「この1億5000万円は、収支を報告しなければならないことが前提になっており、そういう金が買収に使われるなどということはありえない」と述べた。 2021年5月24日、林幹雄幹事長代理は、当時の甘利明選挙対策委員長が関わっていたと17日に説明していたことに「(甘利明は)公認問題、選挙区調整、県連との対応が主で、実際に交付金支出に関しては関与していない」と述べ発言撤回し、選挙前の各種調査や党内の基準に基づいて重点地区を決め、党内手続きを経て組織決定したものに対して資金を支出していると説明し「個別の誰が、とかそういうことではない」と河井夫妻への支出1億5000万円の決定は組織としての判断だったと説明した。それを踏まえて記者団から「(党本部から河井夫妻への1億5000万円の支出の)組織決定をした責任者は誰か」と問われた二階は、「総裁と幹事長だ。党全体のことをやっているのは総裁や幹事長なので、当然そういうことだ」と述べ、責任は当時の総裁だった安倍晋三前首相と二階自身にあると説明した。その後も記者団から質問が続き、「1億5000万円についても支出を決めた責任があるのか?」という記者の質問に二階は「党の組織上の責任は総裁と幹事長にある」と答えた。「1億5000万円の支出経緯に関与していないのか?」という記者の質問に二階は「何回もそう言っている」と答え、記者から二階に「二階幹事長は(支出経緯に)関与していないのか?」と再度確認した質問に林幹雄幹事長代理が割って入り「党務全般の責任、最終責任は幹事長が負っている」と述べ、支出の最終的な責任者は当時も幹事長を務めていた二階だったと説明した。 2021年5月25日午前、記者会見で記者から二階への「1億5000万円の提供を主導したのは幹事長なのか?安倍元総裁なのか?」という質問に林が割って入り「昨日話したことが全てです」と遮り、二階は1億5000万円についての質問に25日は回答しなかった。午後、記者会見で自民党広島県連合会中本隆志会長代理(広島県議会議長)が二階の24日の記者会見を受けて、「誰もが分かっていた当然のことを言っただけ。そこから先を、お話し頂きたい」二階俊博幹事長と当時総裁だった安倍晋三前首相らに対して「そろって出てこられて説明するのが一番いい。一刻も早く県民、国民の前で説明してもらいたい」「(捜査当局による資料の)押収部分は別として、分かるところだけでも説明してもらいたい」と訴えた。同25日、安倍は自身の関与について問われ、何も答えず無言で国会を立ち去った。 2021年5月31日、記者会見で自民党二階俊博幹事長に記者団が安倍晋三前総裁の説明責任を問うたが、林幹雄幹事長代理が割って入り「先週までに話した通りだ。ご理解ください」と遮った。再度質問した記者から幹事長としての見解を求められた二階幹事長は、林幹雄幹事長代理を1億5000円提供問題の「専門家」と呼んだ上で「専門家(林幹雄幹事長代理)が述べた通りだ」と質問に正面から答えず、安倍元総裁への言及を避けた。 2021年6月2日、立憲民主党、共産党、国民民主党の野党3党の国会対策委員長は国会内で会談し、安倍晋三元首相、二階幹事長に国会説明を求めることで一致した。自民党国会対策委員長森山裕、立憲民主党国会対策委員長安住淳は国会内で会談した。安住は河井案里陣営に対する自民党本部の1億5000円の資金投入を巡り、安倍晋三前総裁と二階俊博幹事長の国会での説明を求めたところ、森山はその場で拒否すると伝えた。会談後、安住は「自民党は誰の指示で金を流したか一切事実を明らかにしていない。国民には疑惑を隠していると映るだろう」と批判した。 2021年6月7日、自民党林幹雄幹事長代理が記者会見で、河井克行元法相と案里元参院議員による大規模買収事件を担当する弁護士が、検察に押収された書類の返還を請求したことを明らかにした。林幹事長代理は、河井夫妻の政党支部に党本部から提供された1億5000万円が買収目的で使われなかったことを証明するためだと説明した。
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