経産省の提案
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「Mitsubishi SpaceJet」の記事における「経産省の提案」の解説
MRJ計画の発端は、2002年に経済産業省が発表した30席から50席クラスの小型ジェット機開発案「環境適応型高性能小型航空機」(同時発案に50人程度の小型航空機用ジェットエンジン開発「環境適応型小型航空機エンジン」)で、開発について機体メーカー3社(三菱重工業、川崎重工業、富士重工業)に提案を求めた。 YS-11以来の完全な日本国産の旅客機となったが、YS-11と大きく違うのは、同機がターボプロップエンジンによるプロペラ機であるのに対し、噴射式のターボファンエンジン搭載の機体としている点である。その背景には、1990年代半ばのリージョナル・ジェット(RJ)革命がある。1990年代後半、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが小型のRJを多数発表した。客室の騒音が少なく速達性に優れるジェット機は、中小エアラインに注目され、販売数を急速に伸ばした。アメリカのエアラインではパイロットユニオンがパイロットの雇用確保の為に一定数以上の50席以下の航空機を保有することをエアラインに要求しているため、RJを使わざるを得ないという理由も有る。RJの保有割合はエアラインによって異なる。 RJの成功により、同クラスのターボプロップ旅客機の販売数は急減、これらを生産していた欧米6社の内、4社が2000年代初めまでに旅客機事業から撤退する事態となった。このため当時(2000年代初頭)はターボプロップ機市場が凋落する一方、RJ市場は今後も拡大の見込みが大きく、日本にも参入の余地があると考えられた。その後、2000年代後半になると原油価格が高騰し、燃費性能に優れたターボプロップ旅客機が再評価されるようになった。ターボプロップ機は同サイズのRJと比較して30%程度燃費性能に優れ、この時期燃費にシビアにならざるを得なくなった各エアラインに支持され、販売数を回復させつつあった。 MRJ計画では、主題の通り環境面に配慮することが第一義とされ、機体は最先端の複合材料を多用して軽量化、空気抵抗を減らして高性能化、プロペラ機との比較でネックとなっていた燃費効率においても、従来型より格段の燃費向上で運航経費を大幅に削減し、比較では遜色のないレベルを実現した。また、最新の情報技術をふんだんに取り入れた操縦システムを採用して、操縦を容易にするものとした(下記HUDを参照のこと)。開発期間は2003年度から5年間、開発費は500億円を予定し、その半分を国が補助するとした。 この提案にいち早く注目した三菱重工業(以下「三菱」と略)は、同年秋には10人程度の調査チームをアメリカに派遣し、市場調査を開始した。 2003年4月7日、経済産業省はプロジェクトの窓口となる新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)においてメーカーを招いての説明会を行い、4月末を締切として希望者を募集した。 計画案を提出したのは三菱のみで、5月29日に三菱を主契約企業として、富士重工業と日本航空機開発協会(JADC)が協力することとなった。富士重工は主翼など10%を請け負った。機体開発に関しては宇宙航空研究開発機構(JAXA)と東北大学が協力する。経産省は2003年(平成15年)度予算に10億円を獲得した。なお、「環境適応型小型航空機エンジン」はIHIが受注している。 三菱は同年秋に概案作りを開始した結果、競合機との差別化を図るために特徴を盛り込むこととした。 ヘッドアップディスプレイ(HUD)の採用 強化型対地接近警報装置(EGPWS) 航空交通警報装置、衝突防止装置の搭載 3次元CADの試作デモによりコスト削減 計画では、「これらの新技術を2004年までに開発し、2005年までに試験を行う」「機体は2004年までに概観作りと勉強、2005年に構想図、次いで新技術の結果を受けた計画図、2006年までに製造図面を起こし、同年より機体の試作、組立に入る」「2007年に試作機をロールアウトさせ初飛行、2008年にかけて試験飛行を行い、2009年に型式証明を取得する」「それまでに受注活動を行い、09年までにローンチカスタマーを確保できない場合は量産しない」とした。また、2005年度に市場調査に基づく中間評価を行うとした。 2003年10月29日から11月2日まで開催された静岡空港航空フェアで、三菱は初めて「MJ」(三菱ジェット)縮小スケールモデルを展示し、意気込みを表した。 JAXAでは以下の新技術を開発、支援するとした。 人に優しい新世代コックピット技術 安全かつ軽量な機体設計に必要な超音速フラッタ解析技術 さらに静かな機体を目指す空力騒音予測、低減技術 燃費削減に寄与する抵抗低減および予測手法 最新の高い安全基準に適合する客室設計技術 空力最適化に貢献する多機能風洞試験技術(PSP及びPIV適用、HLD試験技術) 空力最適化に用いる高精度CFD解析技術 重量・コスト低減を目指す構造実用化技術 経済産業省は2004年(平成16年)度予算に30億円、2005年(平成17年)度予算に40億9000万円を獲得し、開発を支援した。 2004年10月に横浜で開催された国際航空宇宙展(JA2004)で、三菱は「環境適応型高性能小型航空機」の名前で、座席配列を左右4列としたキャビン・モックアップを展示した。これはエアラインに対する市場調査の結果によるもので、胴体直径はエンブラエル170よりも小さいにもかかわらず、機内の天井高および横幅は大きい。この頃、座席数は30-50席、あるいは60席とされ、構想の大型化が示唆された。
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