硫黄島航空基地とは? わかりやすく解説

硫黄島航空基地

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/26 04:15 UTC 版)

硫黄島飛行場
硫黄島航空基地の空中写真(2022年)
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
IATA: IWO - ICAO: RJAW
概要
国・地域 日本
所在地 東京都小笠原村硫黄島
種類 軍用飛行場
所有者 防衛省
運営者 海上自衛隊
運用時間 24時間
開設 1968年6月26日(暫定)
1970年5月9日(硫黄島飛行場)
所在部隊 海上自衛隊硫黄島航空基地隊
航空自衛隊硫黄島基地隊
標高 113 m (370 ft)
座標 北緯24度47分12秒 東経141度19分27秒 / 北緯24.78667度 東経141.32417度 / 24.78667; 141.32417
地図
IWO/RJAW
IWO/RJAW
空港の位置
滑走路
方向 長さ×幅 (m) 表面
07/25 2,650×60 アスファルト
リスト
空港の一覧
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硫黄島航空基地(いおうとうこうくうきち)とは、東京都小笠原村硫黄島内にある硫黄島飛行場海上自衛隊の硫黄島航空基地隊と航空自衛隊の硫黄島分屯基地が運営・統制する実態を表す通称[1]

概要

飛行場運営者は海上自衛隊であるが、基地の名称は用いておらず[1]、所在の部隊は厚木基地第4航空群隷下の「硫黄島航空基地隊」である。航空自衛隊の航空機もこの飛行場を使用するが、航空自衛隊における名称は「硫黄島分屯基地」であり入間基地の分屯基地として扱われる。が、これらの飛行場施設はアメリカ海軍硫黄島通信所ともされている。陸上自衛隊不発弾処理の人員を派遣している。

基地にある滑走路は2,650×60mの1本のみだが、2,650×30mの平行誘導路が、トラブルによる主滑走路閉鎖時に離着陸の可能な緊急滑走路として整備されている。

海上自衛隊は、航空基地施設の維持および飛来する航空機に対する航空管制・給油・救難(救難活動に小笠原諸島の急患輸送も含まれる、第21航空群第21航空隊硫黄島航空分遣隊担当)・司法警察業務(警務隊担当)・売店や食堂の受け持ち、航空自衛隊は硫黄島における飛行訓練の統制や後方支援業務などを担当している。他には、医官が常駐し(海上、航空自衛隊からそれぞれ派遣)、海上自衛隊の救難機に航空自衛隊の医官が添乗して、父島母島の急患救急搬送を行なうなど、共同して小笠原諸島の医療活動に当たっている。また、硫黄島駐留部隊には直接関係ないが、毎年夏に、海上自衛隊掃海部隊が、硫黄島近海で実機雷敷設・実爆掃海訓練を行っている。

航空自衛隊は主に訓練用の航空基地として使用しており、本土から各種実験飛行、戦闘機部隊が飛来して演習などを行っている。その他に後方支援業務(補給)として入間基地から本島や南鳥島への輸送機の運用もおこなっている。

陸上自衛隊は、太平洋戦争中の不発砲弾処理などの爆発物処理を数名の隊員で行なっている。

また、北関東防衛局(防衛省)の職員が施設整備工事を担当している。施設の一部は、日米地位協定による合意により、駐留軍(米軍)に提供が可能であり、硫黄島通信所として、日本本土(厚木横田基地)における夜間離着陸訓練(NLP)を含む陸上空母離着陸訓練(FCLP:Field Carrier Landing Practis)の実施による騒音負担軽減のため、米軍艦載機によるFCLPが実施されることがある。このFCLPは1991年から開始され、硫黄島運用困難時三沢、横田、厚木、岩国で代替運用されるとしている。

会計検査院の2020年度決算検査報告では、飛行場に新設された戦術航法装置が2年間に渡り運用されていないことが指摘された[2]

硫黄島航空基地付近の空中写真。(1978年撮影の6枚を合成作成)国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成

沿革

  • 1968年昭和43年)6月26日 - アメリカ軍から返還されたことにより、自衛隊による飛行場の運用を開始[3]。海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊を設置。
  • 1970年(昭和45年)5月9日 - 飛行場につき、硫黄島飛行場として運用を開始[4]
  • 1975年(昭和50年)10月10日 - 海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊による飛行場管制業務を開始[5]
  • 1982年(昭和57年)3月27日 - 海上自衛隊が硫黄島救難飛行隊を新編。
  • 1984年(昭和59年)1月26日 - 航空自衛隊が硫黄島基地隊を新編。
  • 1986年(昭和61年)9月25日 - 海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊による進入管制業務を開始[6]
  • 1991年平成03年)6月26日 - 航空基地の施設の一部を、硫黄島通信所として提供する[7]
  • 1992年(平成04年)
    • 3月31日 - 航空自衛隊が臨時無人機運用隊を新編。
    • 4月10日 - 海上自衛隊硫黄島航空基地分遣隊が硫黄島航空基地隊に改編される。
  • 1994年(平成06年)3月31日 - 航空自衛隊が無人機運用隊を新編。
  • 1997年(平成09年)3月31日 - 航空自衛隊が無人機運用隊を廃止。
  • 2003年(平成15年)10月1日 - 海上自衛隊硫黄島航空基地隊によるターミナル・レーダー管制業務および着陸誘導管制業務を開始[8]
  • 2007年(平成19年)11月21日 - 硫黄島の名称変更に伴い、15時(UTC)に飛行場名:Iwoto、呼び名:Iwoへ名称変更。
  • 2008年(平成20年)3月26日 - 海上自衛隊体制移行による部隊再編に伴い硫黄島救難飛行隊は、第21航空群第73航空隊の硫黄島航空分遣隊に改編。
  • 2018年(平成30年)4月2日 - 第73航空隊の廃止に伴い、硫黄島航空分遣隊が第21航空隊隷下に編成替え[9][10]
  • 2022年(令和04年)3月1日 - 海上自衛隊警務隊の改編により、横須賀地方警務隊硫黄島警務分遣隊が硫黄島警務班に改編[11]

※現在、硫黄島航空基地隊は厚木航空基地第4航空群隷下にある[1]

民間航空機の緊急着陸

硫黄島は、東京とマリアナ諸島グアム島サイパン島を結ぶ民間航空路下に存在することから、民間機を含む緊急避難用としても用いられており、自衛隊の専用飛行場にもかかわらず、国際航空運送協会3レターコード(IWO)が設定されている。

実際に航空会社旅客機による緊急着陸が起きた事例として、

ギャラリー

脚注

  1. ^ a b c 自衛隊法施行令(昭和29年政令第179号第32条に基づく)海上自衛隊訓令第47号(航空基地隊の編制に関する訓令第1章第1条)航空基地隊(甲)は、鹿屋航空基地、八戸航空基地、厚木航空基地、那覇航空基地、館山航空基地、大村航空基地、岩国航空基地、下総航空基地、徳島航空基地、小月航空基地とされ、航空基地隊(乙)である硫黄島航空基地隊は、厚木航空基地の部隊とされている。
  2. ^ 国のムダ遣いなど次々と 寸法違う大量無線機・稼働できぬ航空設備…:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2021年11月5日). 2021年11月5日閲覧。
  3. ^ 同日、防衛施設庁告示第9号「小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律第十二条第一項の規定に基づき国が使用する土地を指定する件」
  4. ^ 同日、防衛庁告示第94号
  5. ^ 同年10月3日運輸省告示第457号
  6. ^ 同年7月31日、運輸省告示第348号
  7. ^ 同年6月27日、防衛施設庁告示第6号
  8. ^ 同年8月7日国土交通省告示第1161号
  9. ^ 館山航空基地HP トピック
  10. ^ 館山航空基地HP 編成
  11. ^ 「3自衛隊が部隊改編」朝雲新聞(2022年4月28日付)
  12. ^ “エンジン不調のチェジュ航空機 硫黄島に足止め4日目” (日本語). 聯合ニュース. (2016年3月7日). http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2016/03/07/0200000000AJP20160307004500882.HTML 2016年6月14日閲覧。 {{cite news}}: CS1メンテナンス: 認識できない言語 (カテゴリ)

外部リンク

座標: 北緯24度46分47秒 東経141度19分30秒 / 北緯24.779663度 東経141.325014度 / 24.779663; 141.325014


硫黄島航空基地

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/30 16:32 UTC 版)

硫黄島 (東京都)」の記事における「硫黄島航空基地」の解説

詳細は「硫黄島航空基地」を参照 硫黄島航空基地(いおうとうこうくうきち)は、海上自衛隊管理する軍用飛行場で、海上自衛隊航空管制及び基地の施設管理等のために硫黄島航空基地隊航空集団第4航空群)を、救難及び小笠原諸島等の急患輸送のために第21航空隊硫黄島分遣隊航空集団第21航空群)を置いている。 航空自衛隊は、訓練機飛行統制後方支援のため、硫黄島基地隊中部航空方面隊)を置いており、実験機戦闘機訓練基地として使用している。航空自衛隊における名称は、硫黄島分屯基地いおうとうぶんとんきち)。入間基地の分屯基地という扱いとされている。 陸上自衛隊は、太平洋戦争時硫黄島残され不発弾処理するため、各師団持ち回り人員2名を派遣していた。危険性少ないものは島内保管場所一時保管したまとめて爆破処理し危険なものは随時処理している。 基地にある滑走路は2650 m×60 mの1本のみだが、2650 m×30 mの平行誘導路が、トラブルによる主滑走路閉鎖時に離着陸可能な緊急滑走路として整備されている。 自衛隊員等が常駐していることから硫黄島有人島となっているが、所在する海上自衛隊員は神奈川県綾瀬市航空自衛隊員は埼玉県狭山市それぞれ住民登録しており、硫黄島のある東京都小笠原村ではない。 周囲有人島存在しないため、硫黄島通信所にてアメリカ海軍空母艦載機による陸上空母離着陸訓練 (FCLP; Field Carrier Landing Practice) および夜間離着陸訓練 (NLP; Night Landing Practice)(タッチアンドゴーが行われているほか、航空自衛隊各種実験飛行戦闘機移動訓練といった、日本列島では実施困難な用途にも使用できる貴重な拠点であるほか、国内唯一陸・海・空の3自衛隊統合的作戦演習可能な場所でもある。防衛大学校および防衛医科大学校学生等が本島見学する場合は、航空自衛隊KC-767搭乗する硫黄島は、東京都グアム島を結ぶ民間航空路下に存在することから、民間機を含む緊急避難用としても用いられており、自衛隊専用飛行場にもかかわらず国際航空運送協会3レターコード設定されている。 実際に2003年3月30日にはグアム仙台行きのコンチネンタル航空931便(ボーイング737)がエンジン片方停止により、2014年11月9日には関西国際空港グアム行きデルタ航空294便(ボーイング757-200)が左エンジン不具合によりそれぞれ緊急着陸している。2016年3月4日には、ソウル/仁川発、サイパン行きチェジュ航空3402便(ボーイング737-800)が右エンジン不具合により緊急着陸した。 硫黄島の戦いにおける戦没者慰霊訪問の為、チャーター機羽田空港から、若しくはグアム国際空港から航行することがある小笠原諸島から列島本土へ患者緊急搬送時には当該基地海上自衛隊UH-60Jヘリコプターから海上自衛隊航空自衛隊または海上保安庁輸送機へと乗り換え搬送実施する場合がある。 現在小笠原村からの緊急患輸送US-2運用都合上困難のため、全て硫黄島経由ヘリ海自ないし空自輸送機により行われている。

※この「硫黄島航空基地」の解説は、「硫黄島 (東京都)」の解説の一部です。
「硫黄島航空基地」を含む「硫黄島 (東京都)」の記事については、「硫黄島 (東京都)」の概要を参照ください。

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