生産設備の配置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 00:23 UTC 版)
「オペレーション・マネジメント」の記事における「生産設備の配置」の解説
生産設備の配置検討には、技術的な側面と組織的な側面がある。技術的な側面としては、生産能力の測定や分割、配置、アウトソーシング、プロセス技術、ファクトリーオートメーション、質と量のトレードオフ等が挙げられる。一方、組織的な側面としては、労働者のスキルや責任範囲の明確化、作業班の編成、働くインセンティブ、情報管理等が挙げられる。 生産計画は、プッシュ型とプル型に大別でき、ジャストインタイム生産方式はプル型に含まれる。プル型では在庫レベルに応じた生産計画を立てるのに対して、プッシュ型では需要(予測、または、現在の注文量)に応じた生産計画を立てる。生産設備そのものは、プッシュ型生産計画にもプル型生産計画にも使用可能であり、生産活動が注文前であればプル型であるし、注文後であればプッシュ型であると言える。 プル型生産管理に関する在庫管理の分野では、フォード・ハリスが考案した経済的発注量(EOQ)を元に、様々な手法が考案された。この中には、動的ロットサイズモデル(英語版)やニュースベンダーモデル(英語版)、ベースストックモデル(英語版)、固定時間モデルなどが含まれる。これらのモデルは、通常の在庫の他、需要変動に備えるための予備の在庫を計算するためにも使われる。また、経済的生産量(EPQ)は、在庫が即時に補充されることを仮定するEOQとは異なり、一定の速度で在庫が補充されることを仮定している。 ジョセフ・オルリッキーを始めとするIBMの研究者たちは、プッシュ型の在庫管理と生産計画を考案した。これは、資材所要量計画(MRP)として知られるようになった。MRPでは、マスター生産計画(MPS)と部品表(BOM)を元に、必要な資材の調達計画が出力される。従って、MRPは注文と生産の両方を管理するツールであると言える。 MPSは、需要追従と生産量の平準化という相反する要素を含む問題に対する解と見なせる。MPS問題に対しては、以下のような解法モデルが提案されている。 解析的モデル 最適化モデル(線型計画法や整数計画問題など) ヒューリスティクス MRPは、大まかには、Sum(異なる注文の合計)、Split(ロット割)、Shift(リードタイムに合わせた時間管理)の3Sで表現できる。MRPのデータ処理を確実に行うためには、入力データの標準化が欠かせない。MRPでは、稼働率やリードタイムを固定値とする必要があったが、MRP2やERP、生産スケジューラ(英語版)(APS)といった後継ソフトでは、これらの問題は解決されている。 工程作成や製造装置と部品の決定といった分野では、オペレーションズ・リサーチの研究成果が重要な役割を果たした。 一方、リーン生産方式は、第二次世界大戦後から1970年代にかけて、トヨタ自動車で開発された。大野耐一と豊田佐吉によるジャストインタイム生産方式と自働化の2つのアイディアを基礎とし、ムダを取り除くことを主眼とする(通常はPDCAサイクルが適用される)。リーン生産方式には、以下に挙げる要素も含まれる。 平準化:生産活動の均等化。MPSと最終組立工程の立案時に、ロットサイズを小さくして組立時間を均すとともに、繰り返し作業が多くなるように組立工程を並び替える。理想的には、完全に平準化された場合、スループットはタクトタイムの逆数となる。量の平準化以外にも、段取り作業の時間を削減してモデルミックス生産を目的とする場合もある。標準的な平準化ツールは、平準化ボックス(英語版)である。 キャパシティバッファ:ジャストインタイム生産方式は、ダウンタイムゼロを理想とするが、現実的ではない。トヨタ自動車では、余剰の仕掛品を持つよりも、余剰のキャパシティで対処することが好まれる。 段取り作業の時間削減:モデルミックス生産にあたっては、外的内的なセットアップが必要となる。内的なセットアップ(ダイの交換など)は生産設備を停止して行う作業であるのに対して、外的なセットアップ(ダイの移動など)は生産設備が稼働中に行える作業である。 多能工化:トヨタ自動車では、自働化と同等に重要視され、社員は、ローテーションを通して、複数の作業を習得した。これは、生産の柔軟性と全体的な視点の養成、飽きの防止につながった。 生産設備の配置:U型ラインやセル生産はリーン生産方式の基本であり、労働者の移動距離の最小化や労働効率の向上、柔軟な生産体制に寄与する。 トヨタ自動車の成功に追随するため、多くのツールが生み出された。その中でも、カンバンは特に普及した。カンバンには、再発注カンバンや警告カンバン、三角カンバンなどの発展形もあるが、典型的なカンバンは以下の特徴を備える。 部品はカンバンがついたコンテナに入れられる。 後工程がカンバンを前工程に渡す。後工程は、カンバンを渡してから、生産を始める。 前工程は、カンバンを受け取った順に部品を製造し、製造した部品を入れたコンテナにカンバンを取り付ける。 また、2カード式のカンバンは、以下のように働く。 後工程が生産カンバンを参照し、生産品を決める。 必要な部品が準備されていれば、引取りカンバンを外して使う。部品がなければ、別の生産カンバンを参照する。 工程が終わると、生産品に仕掛けカンバンを取り付ける。 定期的に、引取りカンバンを持って行き、前工程から部品を引き取る。その際、前工程が取り付けた仕掛けカンバンと引取りカンバンを交換する。 生産システム内のカンバンの数は、管理者によって定められ、常に一定である。従って、カンバンを導入することにより、リトルの法則の到着率を一定にして、リードタイムをコントロールできるため、仕掛品の数をコントロールできるのである。 トヨタ自動車において、トヨタ生産方式とは、単なる生産手段ではなく、生産活動に関する哲学であり、以下に挙げるアイディアも含まれる。 シングル段取り(SMED):段取り作業にかかる時間を削減する。 バリューストリームマップ(英語版):現状分析と計画のための可視化方法 ロットサイズの縮小 時間バッチの除去 ランクオーダークラスタリング:セル生産方式のために、生産設備と製品をグループ分けするアルゴリズム シングルポイント工程:伝統的プッシュ型生産計画の反対 複数工程担当:一人の作業員が複数の生産設備や工程を担当する。 ポカヨケ:リーン生産方式において、ミス(ポカ)を避ける(ヨケる)工夫や仕組み 5S:使用した道具を所定の場所に保管して、作業スペースと道具を管理し、決められた手順を維持することによって、効率性と有効性のために作業環境を維持する。 バックラッシュ会計:製品が完成するまで、材料費のコスト計上を遅らせる。 より広い視点では、ジャストインタイム生産方式には、製品の標準化とモジュール化やグループ化技術、総合的設備管理、所掌範囲の拡大、動機付け、フラットな組織、部品メーカーの評価、などが含まれる。 高度に自動化された生産設備では、生産計画と情報収集は制御システムで行われるが、システムのデッドロックによる生産ロスを避けるように注意するべきである。 プロジェクト・プロダクション・マネジメント(英語版)は、投資プロジェクトを生産システムとみなすことによって、オペレーション・マネジメントの手法を適用する方法である。キャパシティと時間管理、在庫管理を組み合わせることにより、オペレーション・マネジメントの各種管理手法や平準化の原則が適用される。
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