法律に基づく変化
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「2009年アメリカ復興・再投資法」の記事における「法律に基づく変化」の解説
議会予算局は2009年10月に、2008年と2009年の赤字額(それぞれ4600億ドルと1兆4100億ドル)の変化の理由を報告した。議会予算局は、ARRAの結果として2009年に赤字額が2000億ドル増加したと見積もった。減税と追加歳出がほぼ半々であるが、ARRAの影響を受けた経済からの歳入への影響については含めていない。 2010年2月12日に、経済報告を定期的に発行している労働統計局は、2000年以降の月ごとの失業数のデータを発表した。民主党全国委員会のプロジェクトを組織しているコミュニティである、オーガナイジング・フォー・アメリカ(英語版) (OFA) は、2007年12月以降の労働統計局のデータを示した表を準備した。OFAはこの表を用いて、「ARRAの結果として、失業数はARRAの開始される前である1年前に比べればわずかである」と主張した。一方で、失業というのは不況の初期には常に増加するものであり、政府が景気刺激策を行っても行わなくても自然に減少するものであって、OFAが示した表はミスリーディングである、と主張する者もいた。 景気刺激策の主な正当化として、オバマ政権と民主党の支持者たちは2009年1月に、ARRAがあった場合となかった場合の推定した失業率を示す表を発表した。このグラフは、もしARRAが制定されていなければ失業率は9パーセントを超えていたであろうことを示し、一方でARRAが制定されれば8パーセントを超えることはないとした。ARRAが制定された後、実際の失業率は2009年2月に8パーセントを超え、2009年5月に9パーセントを超え、2009年10月には10パーセントを超えた。2011年6月には失業率は9.2パーセントであったが、ARRAが制定されていた時の推定失業率は7パーセント未満であった。しかし民主党支持者たちは、これはARRAが計画された時点のいかなる推計よりも実際の景気後退がかなり大きなものであったことを結果的に明らかになったことが理由であると主張した。 2009年3月の全米企業エコノミスト協会(英語版)による産業調査によれば、2009年2月に制定された法律による財政出動を検討した協会所属のエコノミストのうち70.6パーセントは、財政出動は景気後退を短縮させるのに中程度から強い影響を持っていたと推計し、29.4パーセントは影響が少ないかほとんど影響がなかったと見積もった。景気刺激策の各要素のうちで、全米エコノミスト協会がもっとも効果的であったと推定したものは、社会基盤投資、失業給付の延長、個人減税であるTemplate:Citation broken。 景気刺激策実施の1年後、ムーディーズやグローバル・インサイト(英語版)のようないくつかの独立系経済関連企業は、景気刺激策により160万人から180万人分の雇用が維持または創出されたと見積もり、景気刺激策が完了するまでの間に250万人分の雇用への影響があると予測した。議会予算局はこれらの推計は保守的であるとみなしている。議会予算局は、2009年第4四半期で210万人の雇用を維持したと自身の持つモデルに基づいて見積もり、経済を最大3.5パーセント加速させ、失業率を最大2.1パーセント押し下げたとしている。議会予算局は、2010年には景気刺激策はさらに大きな効果を持つと推計している。議会予算局はまた、「報告された雇用件数のうち、どれだけが景気刺激策無しでも存在していたかを推計するのは不可能である」とした。2010年第1四半期に関する議会予算局の報告書では、雇用の創出が280万人分、GDPの増加が4.2パーセントとプラスの効果が維持されていることを示した。一方で、ウェスタンオンタリオ大学の経済学者ティモシー・コンリーと、オハイオ州立大学の経済学者ビル・デューパーは、州レベルの変化を用いて推計し、景気刺激策により45万人分の政府機関の雇用を維持または創出した一方で、民間の100万人分の職を喪失させあるいは創出を妨害したとし、総計では職を減らしたとした。コンリーとデューパーの分析は、一見して統計的に見当違いの分析であるとして批判されている。他の研究者たちは、景気刺激策の雇用への影響について有意に肯定的な結論に至っている。連邦準備制度の経済学者ダン・ウィルソンは、似たような方法論を指摘されている誤りを犯さずに用いたが、「ARRAによる歳出は最初の年に約200万人分、2011年3月までに300万人分以上の雇用を創出または維持した」と推計した。 議会予算局は同様に、法律の長期的な影響分析を評価した。2014年以降、この景気刺激策は経済を0から0.2パーセント減速させると見積もっている。一方でどの時期にも雇用に対してはマイナスの影響を持たないと推計されている。 2011年にアメリカ合衆国商務省は、以前に出していた推計の見直しを行った。経済学者のディーン・ベイカー(英語版)は 見直されたデータによれば、リーマン・ショック後の半年において我々が以前認識していたよりもさらに急速に経済が落ち込んでいたことを示している。景気刺激策が実施された直後の2009年第2四半期に経済の落ち込みは止まった。この後4四半期に渡ってかなりの成長が続いた。2010年末から2011年初めにかけて、景気刺激策の効果が薄れ始めた影響により成長は再び鈍化し始めた。言い換えれば、見直されたデータによって示された成長のパターンは、景気刺激策が功を奏したことを明らかにしている。主な問題は、景気刺激策の規模が充分に大きくなく、経済が本来の成長力に戻るまで十分な期間にわたって刺激を続けることができなかったということである。 と述べた。 民主党議会選挙運動委員会(英語版)は、ARRAに反対しておきながら自分の選挙区ではARRAによる景気対策の成果を自分の手柄と主張した、共和党の議員を「偽善の殿堂」と称する一覧にして公開した。2011年9月現在、民主党議会選挙運動委員会は128人の共和党下院議員をこの一覧に載せている。ニューズウィークは、公式には景気刺激策では雇用は創出されないと論じていた共和党議員の多くが、この景気刺激策で雇用が創出されることを理由として自分たちの選挙区に景気刺激策を行うように求める手紙を書いていたと報じた。 この景気刺激策は、規模が小さすぎると批判されてきた。2010年7月、40人の有名な経済学者が、失業を減らすためにさらに拡大した景気刺激策を求める声明を発表した。彼らはまた、赤字の削減が優先であるという見方に疑問を投げかけた。「需要の慢性的で基本的な不足に対処せずに赤字の削減を最初の目標とすることは、1930年代の過ちとまったく同じである」 2010年7月にホワイトハウスの大統領経済諮問委員会は、景気刺激策により「2010年第2四半期の時点で250案人分から360万人分の雇用が維持または創出された」と推計した。その時点で、景気刺激策による支出額は合計2570億ドル、減税額は2230億ドルであった。2011年7月に大統領経済諮問委員会は2011年第1四半期時点の推計を行い、ARRAはそれを実施していなかった場合に比べると240万人分から360万人分の職を維持または創出したとした。この時点での支出額と減税額は合計6660億ドルであった。単純な数学的計算をすれば、ARRAは1人の雇用のために185,000ドルから278,000ドルを納税者に負担させたと批判者は報告したが、この計算はこの結果として得られた恒久的な社会基盤のことは考慮に入れていない。 2010年8月に、共和党上院議員のトム・コバーン(英語版)とジョン・マケインは、ARRAの支出による「もっとも無駄なプロジェクト」として100のプロジェクトを記した報告書を発行した。この2人が疑念を示したプロジェクトへの支出の総額は約150億ドルで、これは全体の8620億ドルに対して2パーセント以下であった。この2人は、景気刺激策は経済に良い効果があったと認めたが、雇用創出の点で最大の効果を得ることに失敗したと批判した。CNNは、この2人が指摘した異議は不明確な一部の事業について大まかな概要を示したもので、ジャーナリストたちはいくつかの点で彼らが誤った印象を抱いていると指摘した、と述べている。 ARRAの主な目的の1つでまた約束でもあったこととして、雇用を創出する多くのすぐに取り掛かれる事業に着手するということがあった。しかしながら、これらのプロジェクトのうちかなりの数、特に社会基盤に関連するものの大半については、実現までには多くの人が期待していたよりも長い時間がかかった。これはおおむね、こうした事業に関わる法的な手続きに基づくものであった[要出典]。 アメリカ機会税額控除制度(英語版)や勤労所得税額控除に関連するものを含めてこの法律に基づく税額控除のいくつかは、2010年減税・失業保険・雇用創出法(英語版)に基づきさらに2年間延長された。 2011年11月に、議会予算局はこの法律に関する以前の報告書を更新した。議会予算局は「2010年末には雇用への効果は減退し始め、2011年を通じて続いている」と述べた。にも拘らず、2011年第3四半期に議会予算局はこの法律でフルタイム相当の雇用を50万人分から330万人分増加させたと推計した。法律の第1513章では、この法律の影響についての報告書は四半期ごとに発行されるとしていたが、最後に発行された報告書は2011年第2四半期についてのものであった。2012年12月の時点で、アメリカ人の58.6パーセントが雇用中である。 2013年に、リーズン・ファウンデーション(英語版)はARRAの結果についての研究を行った。調査対象となった8,381の企業のうち、23パーセントのみが新しい労働者を雇用して事業が完了した時点までそれを維持していた。調査対象企業の41パーセントはまったく労働者を雇わなかった。30パーセントは政府からの資金支出が無くなるとすべての労働者をレイオフした。こうした結果は、労働者をまったく雇わなかったり雇った労働者を最後まで保持しなかったりした企業のことを考慮に入れていないという点で、過去の雇用創出数の推計に疑問を投げかけるものとなった。
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