水
★1a.水が多すぎて飲めない。
『百喩経』「喉を渇かした者が水を見た喩」 愚かな男がいた。喉が渇いたので、炎天下に水を求めて辛頭(インダス)河までやって来た。しかし男は、河を見つめるだけで水を飲もうとしない。傍らの人が問うた。「君は喉が渇いているのに、なぜ飲まないのか?」。愚かな男は答えた。「こんなにたくさんの水は、とても飲めない」。
『今昔物語集』巻5-11 5百人の商人が道を誤って深山に迷いこみ、3日も水が飲めず死に瀕する。同行する沙弥が「諸仏如来よ。私の脳を水に変えて商人たちを救い給え」と祈り、大岩に頭を打ちつける。流れ出る血は水に変り、商人たちの命を救う。
『出エジプト記』第7章 イスラエルの民は、エジプトで奴隷状態におかれていた。モーセがイスラエルの民をエジプトから救い出そうと、ファラオに交渉し、それが神の意志であることを示すために、ナイル川を杖で打って血に変える。エジプト人は川の水が飲めなくなる。しかしファラオは、イスラエルの民がエジプトから出て行くことを許さなかった。
『大般涅槃経』(40巻本)「梵行品」 ガンジス河の畔に、5百もの餓鬼が住んでいた。彼らには河の水が火の流れと見えるので、飲むことができず、喉の渇きに苦しんで喚いていた。仏陀が、「君たちの悪業が心を転倒させ、水を火と錯覚させているのだ」と教え、餓鬼たちは水を飲めるようになった。
★2a.水をしりぞける。
『北野天神縁起』 亡き菅丞相の霊が雷電となって都を襲い、比叡山の尊意贈僧正が3度の勅宣をこうむって、比叡山から内裏へ参ずる。その時、鴨川の洪水が去りのいて、陸地を通るごとくに僧正の車は進んだ。
『西遊記』百回本第43回 黒水河を乗っ取った妖怪を孫悟空たちが退治し、河神を助ける。河神は礼を述べ、幅10里の黒水河を渡る三蔵一行のために、阻水の術で上流をせき止める。川下の水はたちまち干上がって1すじの大路ができ、その上を三蔵一行は歩いて西岸に着く。
『ヨシュア記』第3章 イスラエルの祭司たちが神との契約の箱をかかげ、ヨルダン川へ足を踏み入れると、川上から流れ下る水は壁のごとく立ち、海へ流れこむ水は断たれた。民は干上がった川床を渡り、エリコへ向かった。
*海の水を干上がらせる・海の水を2つに分ける→〔海〕3a・3b。
『ウェストカー・パピルスの物語』(古代エジプト) スネフル王陛下が、美しい娘たちに池で船遊びをさせ、それを見て気晴らしとする。1人の娘が、耳飾りの宝石を水に落としてしまう。首席典礼司祭ジャジャエムアンクが呪文を唱え、池の水の半分を、他の半分の上に重ねる。彼は池の底の宝石を取って、娘に返してやる。
『大智度論』巻12 仏が比丘たちとともに王舎城へ行く途中、大きな水があった。仏は水上に坐具を敷いてすわり、「禅定に入って心が自在の境地を得るならば、大きな水を地とすることができる。水の中には地の成分があるからである」と説いた。
*オリオンが海上を歩く→〔海〕5の『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第4章。
*イエスが湖上を歩く→〔湖〕2の『マタイによる福音書』第14章。
『二人兄弟の物語』(古代エジプト) 弟バタの死を知った兄アヌプは、糸杉の下から弟の心臓を捜し出し、きれいな水の入った鉢に心臓を入れる。心臓が水を吸い取るとバタの死体が動き出す。アヌプはバタに水を飲ませ、心臓は再びバタの身体に収まって、バタは蘇生する。
『命の水』(グリム)KHM97 王が重病になり、3人兄弟の王子たちが「命の水」を取りに行く。「命の水」は、魔法にかけられた城の中庭の井戸から湧き出ている。長男と次男は失敗するが、末子が、城にいたお姫様を魔法から解放し、「命の水」を得て、王は病気から回復する〔*長男と次男は、「命の水」を海水とすりかえて、末子を罪に落とそうとする〕→〔道〕1d。
『古事記』中巻 ヤマトタケルは伊吹山で大氷雨に打たれ、なかば意識を失った。彼は伊吹山を下り、玉倉部(たまくらべ)の清水まで来て休み、ようやく回復した。それで、その清水を名づけて「居寤(いさめ)の清水」という〔*『日本書紀』巻7景行天皇40年是歳では、水を飲んで正気に戻ったので、その泉を「居醒泉(ゐさめがゐ)」という、と記す〕。
ヤマトタケルと毒蛇の伝説 ヤマトタケルは伊吹山に住む強盗を征伐に行った時、毒蛇に噛まれた。彼は山を下り、醒ヶ井の綺麗な湧き水で傷を冷やして、どうやらこうやら良くなった。しかし結局その傷が原因で、ヤマトタケルは伊勢の能煩野で亡くなった(滋賀県東浅井郡浅井町内保)。
『今昔物語集』巻27-5 背丈3尺ほどの翁が、夜な夜な来て人の顔をなでる。捕らえると、翁は「我は水の精ぞ」と言って、盥の水の中へ落ち入る。翁は水となって溶け、盥の水かさは増して、ふちからこぼれた。
『今昔物語集』巻28-39 腹の中に寸白(サナダムシ)を持った女が、結婚して男児を産んだ。男児は成人して、信濃守となる。彼は赴任して最初の歓迎の宴席で、胡桃をすり入れた酒を飲まされた。寸白の化身である彼は、たちまち水となって流れ失せた。
*女が水を飲んで、生まれた男児→〔口〕1の『捜神記』巻11-33。
*人造人間であることが暴露されると、溶け失せてしまう→〔人造人間〕1の『撰集抄』巻5-15。
『本当の話』(ルキアノス) 「驢馬の脛」と称する海の女どもが、旅人を捕らえて餌食にしていた(*→〔女護が島〕6)。「私」はかれらの正体を知り、女主人(おんなあるじ)を縛った。たちまち女主人は水と化した。「私」は試しに剣を水の中に突き刺してみる。水は血に変わった。
*→〔百〕1の『長谷雄草子』(御伽草子)・〔雪女〕2aの『雪女房』(昔話)。
★5c.液体人間。
『美女と液体人間』(本多猪四郎) 南太平洋上で水爆実験の放射能を浴びた男が、皮膚を失い、体細胞が液状化してしまった。彼は東京に現れ、次々と人間を包み込んで溶解し吸収する。融合した液体は、また自在に分裂して、幾体もの液体人間になる。警察の科学班が強力な火焔放射器を用いて、液体人間たちを焼き殺す。しかし将来、人類が放射能汚染で全滅したら、次に地球を支配するのは、彼ら液体人間かもしれない。
★6.水に吸い込まれる女。
『播磨国風土記』賀毛の郡条布の里 ある時、1人の乙女が井の水を汲もうとして、するすると吸われて水中に沈んで行った。それゆえ、その地は「条布(すふ)の里」と名づけられた。
★7.水遁の術。
『和漢三才図会』巻第7・人倫類「游偵(しのびのもの)」 大明(たいみん)に冷謙という者があった。大倉庫に忍び入り、捕らえられた彼は、飲み水を役人に求めた。瓶に入れた水が持って来られると、彼は瓶の中に跳び入り、瓶を撲(う)ち破って、破片とともに姿をくらました。これが水遁である。
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