検察の捜査における問題点
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「陸山会事件」の記事における「検察の捜査における問題点」の解説
リーク問題 鈴木宗男衆議院議員は2010年1月12日、自らのブログに、石川に「あなたの方で情報提供しているのか。サービスしているのか」と聞き、石川が「そんなことはしていません。ただ検事に供述した話が、そのまま新聞の『 』(カギ括弧)で使われています。検察がリーク(漏洩)したとしか思えません。ひどい話です」と答えたと書いている。その上で、鈴木は、『新聞では「関係者」となっている。その関係者は、石川代議士か検察官のどちらかである。石川代議士は明確に否定している。だとするなら、もう一方の当事者である検察に行き着くことになる』とし、『私自身の8年前のメディアバッシングを想い出しながら、権力側のリーク、世論誘導、国策捜査は、私の時でやめてもらいたい、私で最後にしてほしいとつくづく思う』と検察及びマスコミを批判した。1月15日に東京地検特捜部が石川を逮捕したことについては、「証拠隠滅の恐れもないのになぜ身柄をとる必要があるのか。異常としか言えない」「このまま民主党政権が続けば自分たちがどうなるかわからないから暴走したのだろう。鳩山政権つぶしだと受け止めている」と検察の行為を批判した。 石川議員女性秘書取調べ問題 週刊朝日は2010年2月12日号で「子ども“人質”に女性秘書『恫喝』10時間」という記事が掲載された。それによると、1月26日に東京地検特捜部検事・民野健治が石川の女性秘書を事情聴取に呼び出したが、10時間もの取調べに及んだことや幼い子供と連絡を取れないまま、圧迫質問を受け続けて難聴になったという内容になっている。女性秘書には、3歳と5歳の子どもがおり、取り調べ途中、保育園へ二人を迎えに行く時間が迫っているため、「必ず戻ってくるから、子どもを迎えに行かせてほしい」「せめて電話だけでもかけさせてほしい」と懇願したが聞き入れられず、この時、検事は「何言っちゃってんの?そんなに人生、甘くないでしょ?」と発言したという。また、どこからか入手して来た彼女の子どもの写真をパソコンで見せて、「母親が逮捕されたら子どもたちはどう思うか」と恫喝したという。 東京地検は事実無根として同誌の山口一臣編集長あてに抗議文を送ったことを明らかにした。検察当局が捜査関連記事で出版元に抗議するのは異例である。 元秘書3人の供述調書 2010年1月に大久保は供述調書を5通とられた。しかし、その作成者は同年9月に大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件で証拠改ざん罪で逮捕された前田恒彦であり、検察事務官を立ち合わせないまま、供述調書が作成されていたことが判明した。検察は供述調書5通の証拠申請を撤回した。 さらに、2011年6月30日付に元秘書2人への捜査段階の取り調べが「威迫ともいうべき心理的圧迫や小沢氏の不起訴という利益誘導があった」と認定され、検察側が証拠請求した38通の捜査段階の元秘書2人の供述調書の内12通の任意性が否定されて一部不採用が決定した。任意性が否定された調書には政治資金収支報告書の虚偽記載について大久保や小沢に報告して了承を得たとする調書も含まれていた。 一方で小沢一郎公判の指定弁護士は大久保ら元秘書3人の捜査段階の供述調書の証拠申請していたが、供述調書の大部分の任意性が否定されて一部不採用が決定した。 虚偽捜査報告書問題 石川は再聴取の際に持ち込んだICレコーダーで録音をしていたが、その際に実際にはなかったやり取りが捜査報告書に記載されていた。更に、起訴相当議決を行った東京第5検察審査会へ提出された捜査報告書では、田代政弘が作成した報告書を評価した特捜部副部長が作成した報告書について当時の東京地検特捜部長・佐久間達哉が記載部分にアンダーラインを引いたり、供述内容を書き加えたりされていたことが報道された。 この捜査報告書が小沢の起訴議決にもつながったとされ、弁護側は強制起訴の無効を主張したが、東京地方裁判所は2012年4月26日の小沢への判決で「検察審査会に提出された証拠は裁判所の中で証拠能力を否定すれば」強制起訴自体は有効とした。しかし、この判決の中で、「検察官が、公判において証人となる可能性の高い重要な人物に対し、任意性に疑いのある方法で取り調べて供述調書を作成し、その取調状況について事実に反する内容の捜査報告書を作成した上で、これらを検察審査会に送付するなどということは、あってはならないことである」「本件の審理経過等に照らせば、本件においては事実に反する内容の捜査報告書が作成された理由経緯等の詳細や原因の究明等については、検察庁等において、十分調査等の上で対応がなされることが相当であるというべきである」と、検察を厳しく批判した。 田代は「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」から虚偽有印公文書作成・行使と偽証の容疑で2012年1月12日に告発された。さらに同会は、2012年6月27日に陸山会事件の捜査に関わった佐久間、木村匡良、大鶴基成、齋藤隆博、吉田正喜、堺徹の各検事を検察審査会に対する偽計業務妨害や虚偽有印公文書作成・行使、犯人隠避などで告発した。 最高検察庁は2012年5月までに「記憶が混同した」と繰り返す田代の証言を全面採用、また当時の上司らも「虚偽とは知らなかった」と説明したことを理由に、不起訴とする方針を採用したが、4月26日の判決での裁判所からの厳しい検察批判や、市民団体による連続した告発、さらに後述する報告書のネット流出問題などで処分はずれ込んだ。この再聴取に関しては、田代検事が「石川議員の捜査段階の供述を維持させるよう一部幹部から指示された」と述べていたことが報道されている。 2012年5月2日夜よりネット上に供述録とされるもの、及び調書とされるものの2文書が投稿され、告発団体代表のもとにメールで通知が送られたことで発覚した。 この虚偽捜査報告書について、流出で事実を知った当時の法務大臣・小川敏夫が、検察が田代個人の記憶違いとして幕引きを図っているのはおかしいとして、再調査指示の指揮権発動を当時の内閣総理大臣・野田佳彦に相談したが認められなかった。小川はインタビューで、この件が理由に解任された旨をほのめかしている。 2012年6月27日、田代に嫌疑不十分の不起訴処分とした上で減給処分、他の検察幹部に嫌疑なしの不起訴処分とした上で戒告処分が出た。田代は同日に辞職した。さらに監督責任を問われた当時の東京地方検察庁検事正・岩村修二検事が厳重注意処分を、当時の東京地方検察庁特捜部長の佐久間が、戒告の懲戒処分を受けるなどした。 上記のように、検察の調査はあくまで『田代検事個人の記憶違いによる過失』としているが、産経は、司法修習生時代に親しい仲だった男性弁護士の弁として「今回の問題は、上から言われたことをきちっとやったことで起きたのだろう」と田代の人柄から『検察の組織的犯行』を匂わす記事を載せている。 市民団体は、この不起訴処分を受けて、7月2日に検事総長・笠間治雄以下6名の最高検・東京高検・東京地検幹部を犯人隠避で刑事告発、さらに、不起訴処分とともに記者に配布された最高検調査報告書そのものが犯人隠避に当たるとしてさらなる追加告発と検察審査会に申し立てを明言した。 2013年4月19日に東京第一検察審査会は田代元検事の不起訴不当を、元上司について不起訴相当をそれぞれ議決し、4月22日に発表された。検察は田代元検事に対して再度捜査を行ったが、7月31日に不起訴処分とした。
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