広い範囲を覆う仮説としてのゲーム脳
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 18:44 UTC 版)
「ゲーム脳」の記事における「広い範囲を覆う仮説としてのゲーム脳」の解説
テレビや新聞などのマスメディアにおいては、少年および若者による凶悪犯罪事件が発生し、その犯人が過去や日常においてゲームを所持、または遊んでいたと判明した場合、しばしば森にインタビューを求めたうえでゲーム脳について言及し「犯行の原因がテレビゲームによるゲーム脳ではないか」と報じられることがある。 マスメディアの報道においてゲーム脳が取り上げられるケースは、凶悪な事件に限らない。JR福知山線脱線事故が起こった翌日、森は夕刊フジのインタビューで後の救助活動にて遺体で発見された運転士が「過去に乗務において3度のミスを犯していたこと」「事故寸前に総合司令所が運転士を呼びかけたが応答がなかったこと」の二点を理由に「注意力が散漫」「大事な場面で倫理的な行動がとれず、キレやすい」という特徴にあてはめ、「ゲーム脳の疑いがある」との見解を示した。この見解は当日の一面記事の見出しとなった。 これらの報道のほか、森は著書や講演において、若者のファッションの流行、マナーや言動の乱れなど、その他の行動などについても述べており、以下のような事象についても「すべてゲーム脳ないし何らかの脳の異変が原因で理性や羞恥心などを失っているためである」と述べている。 若い女性が電車の中で化粧をする行為 若者が電車のドア近くの床に座り込む行為 若者がチャラチャラしたもの(ストラップやアクセサリなど)をファッションとしてたくさん身につける行為 若者がお尻を半分出す行為(いわゆる男性の「腰パン」、女性の「ローライズパンツ」のことと思われる) 若者のカップルが人前で抱き合ったり、キスをしたりする行為 若者が定職に就かない(フリーターになる)こと 森の友人の息子が飼っていたカブトムシが死んだ際に、「パパ、電池を交換したらいいよ」と話したこと「カブトムシと電池」の話は、まだテレビゲームが存在せずカブトムシが販売されるようになったばかりの1970年頃には既に存在している。現に1974年の国会でも問題として挙がっており、都会に住む子供の自然との隔たりを問題として提示するエピソードとして、しばしば用いられていた。なお、電池で動くカブトムシのおもちゃは実際に売られている。 こういった話は、現在ではジョーク的な都市伝説として知られている。 「電池を交換すれば動く」のほかに「ぜんまいを巻けば動く」というバージョンもあり、井上陽水の『ゼンマイじかけのカブト虫』(1974年)という歌にも歌われている。なお、ぜんまいで動くカブトムシのおもちゃは実際に売られている。 森がある学校で講演を行った際に、生徒に「僕はゲームの中では彼女ができるけど、現実の世界では女の子と話すことができない。どうしたらいいのか?」と質問されたこと さらに、文部科学省の調べによる近年の高校生の学力低下についても、ゲームやITが原因としている。 北海道大学医学部教授の澤口俊之は、講談社のウェブサイト「Web現代」で、女性が人前で平気で下着を見せるというようなこと(当時の女性の間で流行していたローライズパンツを履いた状態で座ると、股上が浅いために腰から「見せパン」が見える状態、および、アウターに見えるデザインのブラジャーである「見せブラ」のことを指している)を羞恥心の欠如と考え、前頭前野の働きが鈍っているのではないだろうかという仮説を立てたが、ゲーム脳が原因であるとは述べていない。 また、『ゲーム脳の恐怖』のまえがきでは2001年開催のテレビゲームショーを訪れた際、「中学生風の女の子が、左右に立派な白い羽をつけたエンジェルの格好をして、真面目な顔で歩いていた」こと、その周りに「ゲームのキャラクターの衣装に身を包み、無表情で歩いている小中高生が百人前後いた」ことについて、ショックを受け日本の将来について危機感を覚えたと述べている。なお、これはごく一般的なコスプレであり、コミックマーケットや東京ゲームショウのように、コスプレ専用のスペースが設けられるイベントもあるため、まったく珍しいものではない。 こういった主張がマスコミの報道や講演を通して広く認知されたことにより、「テレビゲームやITは犯罪の温床となる」または「学力を低下させる原因」という認識を持つ層が現れた。ゲームやITが絶対悪であることを望む保護者や教育関係者らに支持され、小学校などの教育現場で児童・生徒にゲーム脳の影響を教育したり、ゲームの規制を呼びかける際の論拠としてしばしば引き合いにされたりすることがある。また、自分または自分達と思想・主張が異なったり対立したりしている者を「あいつはゲーム脳だから」などと非難する際に用いられることもある。 その一方で、科学的正当性や根拠、客観性などについての反証や批判的な見解も少なくない。その他の批判や反証については、後の節で述べる。 また、暴力的な表現を含むゲームの子供への影響については、ハーバード大学の2人の心理学者による2004年から5年間にわたる研究により、「影響は武道アクション映画の視聴後と同程度であり、ストレス発散に過ぎない」、en:Oxford Internet Instituteの2019年の研究は、心理的欲求不満により心理社会的機能を損なう経過という点において、制御不能なゲーム行動という経路は重要では無く欲求不満の兆候の1つであると示唆する。、アメリカ心理学会の2020年の知見として怒鳴ったり押したりするような攻撃性との間に小さな関係性は認められるがより暴力的な問題にもそれを適用する事は困難であるという研究結果が存在する。詳しくは残虐ゲームの項目を参照。
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