侵攻後の「ホワイトウォッシングとウクライナ政府に関する警告」
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「ウクライナにおける「ネオナチ問題」」の記事における「侵攻後の「ホワイトウォッシングとウクライナ政府に関する警告」」の解説
フォワード紙はウクライナ侵攻におけるゼレンスキーの演説になどに対するメディアの報道や扱われ方は、偶像化や英雄化に向けられすぎているとした。イギリスの大手新聞「ガーディアン」のArwa Mahdawiは、「政治家を尊重することと、政治家をセクシャライズするまたは崇拝することには違いがある」と述べ、そのような反応には、ウクライナの状況を軽視し、状況について過度に単純化した物語を助長するリスクが孕んでいると述べている。 フォーワード紙では、調査報道で知られるベリングキャットのスタッフでライターのマイケル・コルボーンが以下の発言をしている。 (2022年2月24日からのロシアのウクライナ侵攻後)ウクライナの極右(ネオナチ)はたいした問題ではないと数えきれないくらいに言われてきました。 「すべてクレムリン(ロシア政府)のプロパガンダですよ。その話をすることは、プーチンをアシストすることです。他の国にも極右の問題があるじゃないですか。なぜウクライナだけをとりあげるのですか?」 私はそう言われてきました。 しかしウクライナには極右の問題があり、それはクレムリンのプロパガンダではありません。 2022年2月24日からのロシアのウクライナ侵攻後、報道機関によるウクライナ政府とネオナチの現状に関するホワイトウォッシュ問題を寄稿したルポライターの清義明は、「この論考がプーチンの侵略戦争を支持したり、正当化する目的で書かれていないことを明記しておく。」とした上で以下と記述した。 ウクライナの極右(ネオナチ)の問題が、単にロシアのプロパガンダとみなされてしまっている。 しかし、これが他の国の極右やネオナチの事情とかなり違ったクリティカルな状況だということは、強調しておくべき話なのだ。 これを先に概略として記しておくと、次のようになる。 ・ウクライナでは極右・ネオナチと呼ばれる勢力が政権や行政や司法に関与していること。 ・その極右勢力が軍事化したのみならず、国軍勢力の中核におり、「世界で唯一ネオナチの民兵が正式に軍隊になった」国であること。 ・その様々なセクトが一般人への軍事訓練などを続けながら勢力をウクライナの政治から文化まで拡大しつつあったこと。 ・彼らは民主主義的な価値観を肯定しておらず、さらに政権のコントロールを必ずしも受け入れておらず、将来的に民主主義への敵対勢力となる可能性があること。 ・世界の極右やネオナチのハブ的存在になっており、ISのように世界的にネットワークを広げて、コントロール不能になることすら考えられること。 ・またウクライナの過去のナチス協力をめぐる「歴史修正主義」がウクライナを席巻しており、すでにイスラエルをはじめ、関係する国々から強く批判されていたこと。 もちろん、今はそれを「部屋に象がいる」と、見て見ぬふりをしておくべき時なのかもしれない。このウクライナ戦争がどのような結果になるかは今はわからないからだ。 だが、ウクライナが、欧米の国々のように単にネオナチ思想をもつものが軍隊にいるとか、極右政党が議会に勢力を確保しているというようなレベルではなく、黄色信号を超えた危険水域に達していることを今のうち理解しておくのは悪いことではないはずだ。 同年3月14日、米紙ワシントン・ポストは「プーチンを支援する目的ではない」とした上で以下とした。 世界の過激派を追跡する諜報機関SITEでは、ウクライナ戦争に関連して、白人民族主義者やネオナチによるオンライン活動の急増に気づいています。 ここ数週間でアゾフ連隊に参加する意思を表明した何百人もの人物の中には、ネオナチとして知られる人物が複数人含まれています。 たとえば、アゾフの募集チャットグループのアメリカ人メンバーである「MD」は、同胞をウクライナの大隊に参加させようと何度も試みていました。 「行きたいアメリカ人はいる?向こうへ行くグループを募集できるんだ」と彼は語っていました。 私たちは、「MD」がTelegram上の最もサディスティックな極右過激派チャットのメンバーでもあり、そこで彼は米国にネオナチ民兵を設立することを提案していることを突き止めました。 同年の3月16日、イラク戦争でのジョージ・W・ブッシュ政権やトランプ政権等の政治問題映画を発表してきた、米映画監督マイケル・ムーアはインターネットのポッドキャスト(音声番組)でウクライナをめぐるマスコミ報道に対し以下の批判と、大衆プロパガンダに関する警告を発信した。 今日、私があなた方にお願いしたいことは抵抗だ。それはプーチンに対してではない。政治家とマスメディアと戦争産業集団が仕組んだ大衆プロパガンダに対してだ。 アメリカ人をウクライナに入れたりロシアと空中戦をして、第三次世界大戦を起こしてはならない。 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアとの停戦」をいう一方で、「アメリカはロシアと戦争するべきだ」と主張している。 私たちアメリカ人は、たとえウクライナのためであっても、戦争に参加してはいけない。私たちは世界中を破滅させる戦争をしてはいけないのだ。 これは非常に悲しいことだが、私はこの戦争で死んだすべての人を思っている。アメリカ人であろうとなかろうと、さらに破滅的な道を進むわけにはいかない。 同年5月31日、ソ連の崩壊、英国のEU離脱や米国におけるトランプ政権の誕生などを予言した人物でもある、フランスの歴史学者エマニュエル・トッドは、日経ビジネスの単独インタビューにて以下と答えている。 第1次、第2次世界大戦は何年も続いた戦争でした。なぜかというと、それが相手が死ぬまで続けるという戦争だったからです。つまりそれぞれが完全勝利を目指す戦争でした。 交渉を実現するために最初にすべき努力というのは、敵国が怪物であるというような表象をやめることです。 西洋人はロシア人を怪物だと言い、ロシア側も同じように西洋人をそう言いますが、それをやめるというのが最初にすべき努力であり、それは精神的、道徳的、また倫理的な努力なのです。 日本の読者の皆さんによく理解してほしいのは、ポーランドやリトアニア、ベラルーシ、ウクライナなどこの辺りの地域は、世界大戦中に最もひどい出来事が起きた地域です。 Bloodlands(流血地帯)と米国人が呼んだ場所です。ソ連軍とドイツ軍が衝突したり、ユダヤ人たちが多く虐殺されたりしたのもこの地域でした。 この地域は18世紀からそうなのです。ですから、この地域圏というのはとてもリスクが高く、非常に危ないことが多く起きる地域です。 なので、日本はここに入り込んできてはいけないと私は思うわけです。 なぜ、日本が血なまぐさいこのような地域に関わらないといけないのでしょうか。ぜひここからは遠のいてほしいと思います。 同年の同日に、米国大統領のバイデンは米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に寄稿し、ウクライナへの侵攻を続けるロシアのプーチン大統領について「米国は彼(プーチン)の追放を模索したりはしない」と強調。「この戦争は最終的に外交的解決しか道はない」とも述べた。ウクライナとロシアの和平実現に向け、プーチンにも一定の配慮を示した。 同年6月14日、CNNはローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、ウクライナでの戦争について「おそらく何らかの方法で誘発されたか、あるいは阻止されなかった」との認識を示したと報じた。 教皇は、ロシアのプーチン大統領を「支持」するわけではないとしつつ、以下と述べた。 我々が今目の当たりにしているのは残虐かつ凶暴な行為に他ならない。こうした戦争を遂行している部隊は大半が傭兵であり、ロシア軍がこれを活用している。 しかし危険なことに我々は、この点にしか目を向けていない。確かに恐ろしい話ではあるが、それだけでは全体像が見えず、戦争の裏で何が起きているのかが分からない。 おそらくこの戦争は何らかの形で誘発されたか、あるいは阻止されなかったのだろう。兵器のテストや売却に関心が向いている印象も受ける。 とても悲しいが、基本的に今重要視されているのはこうしたことだ。 複雑な問題を善悪の区別に単純化しようとするのは断じて反対だ。根源的な要因や利害関係について考えることが不可欠で、それらは非常に入り組んでいる。 我々はロシア軍の凶暴さや残虐さを目の当たりにしてはいるが、解決を目指すべき問題があることを忘れてはならない。 このほか、教皇はロシアのウクライナ侵攻前に、「ある国家元首」と会談したと明かした。その元首は「NATO(北大西洋条約機構)の動きについて大変な懸念を抱いていた」と語っていたとしている。 彼に理由を尋ねるとこう答えた。『彼らはロシアの門戸に向かって吠えている。ロシア人が強大で、いかなる外国勢力も寄せ付けない存在であることが分かっていない』。ただここで状況を一段と複雑にしているのは、ある『超大国』による直接的な介入だ。自国の意思を押し付けようとするその行動は、民族自決の原則に反する。 さらに名前を伏せたこの「国家元首」は教皇に対し、「状況が戦争に発展する可能性もある」と告げたと教皇は語った。
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