BPO
「BPO」とは・「BPO」の意味
「BPO」とは「放送倫理・番組向上機構(Broadcasting Ethics & Program Improvement Organization)」の略称であり、主にテレビ用語として使われてきた。BPOは各テレビ局と加盟会員各社によって構成されている。その中でも、理事会、評議員会、事務局、放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)、放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)に分かれているのが特徴だ。BPOは放送倫理の向上を目的として、2003年に設立された。もしも倫理的に望ましくない内容のテレビ番組が放映されたとき、BPOは調査を行う。そして、問題があると判断された場合には、BPOからテレビ局への勧告がなされる。その場合、テレビ局は放送内容について改善の努力をしなければならない。なお、勧告ではなく、見解にとどまることも多い。
BPOが問題にするのは、差別や猥褻、暴力や事実誤認などさまざまである。一般的にBPOの存在が知られるようになったきっかけとしては、2003年9月放送の「ビートたけしのTVタックル」が挙げられる。放送中に、編集のミスで国会議員が問題発言を行っていたかのように見える箇所があった。BPOはこれを「人権侵害」と認定し、テレビ局への勧告を行っている。そのほかにも、情報番組内で、個人の犯罪や問題行為を断定的に扱うことに対し、BPOは厳しく審理してきた。
2014年3月の「アッコにおまかせ!」では佐村河内守氏の報道について、やはりBPOは人権侵害との勧告を行っている。当時、佐村河内氏はゴーストライター疑惑や、視覚障害の詐称疑惑が持たれていた。同番組は佐村河内氏の視覚障害が詐病であると断定的に放送した結果、BPOが問題視している。さらに、BPOはバラエティ番組における不適切な描写もたびたび勧告してきた。
これまで「はねるのトびら」「ざっくりハイタッチ」「今夜もハッスル」などのバラエティ番組が、放送内容について改善の要請を受けたり、不適切との見解を示されたりしてきている。その中でも2014年、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!(ガキ使)」の特別番組である「絶対に笑ってはいけない地球防衛軍24時」にBPOが見解を示したのは話題となった。同番組ではロケット花火を人体に打ち込んだり、成人男性が赤ちゃんに扮しながらオムツを換えられたりするシーンがあった。当時の「笑ってはいけない」シリーズは大みそかの恒例番組だったので、一般視聴者にもBPOの見解は波紋を呼んだ。
BPOがたびたびバラエティ番組を審理対象にしていることから、「お笑い番組」への差別ではないかという指摘もなされている。「水曜日のダウンタウン」内で松本人志はBPOへの皮肉を口にしてきた。同番組では、コンプライアンスそのものをテーマにした挑発的な企画も再三放送されている。芸人がコンプライアンスのために罰ゲームの講習を受けるというドッキリ企画は、BPOへの風刺だという感想も寄せられた。BPOのせいで、「バラエティ番組が面白くなくなっている」と考えている視聴者も多い。
さらに、BPOに反発する層にはアニメや特撮など、いわゆる「オタク文化」の消費者も含まれている。これらの消費者は、非日常的で過激な表現をあくまでもフィクションとして受け入れてきた。BPOはアニメ作品も繰り返し審理の対象にしてきたので、「表現の自由を侵害されている」と考えているファンもいる。実際に、BPOからの勧告、要請を受けて、テレビ局が具体的な行動に至ったケースもある。サンテレビは夕方のアニメ枠を廃止し、テレビ朝日は「仮面ライダーディケイド」の演出方法について謝罪した。こうした流れは、ファンからBPOへの怒りを招く要因となった。
一方で、BPOがテレビ局に勧告してきた問題の中には、小児性愛や人種差別、偏向報道なども含まれている。これらの問題は社会的な悪影響をもたらすもので、テレビ番組で大々的に放送されるのは望ましくない。BPOの重要性を説く意見もあり、その業務内容については常に賛否の両方がある。
BPOの別の意味として、「ビジネス・プロセス・アウトソーシング(business process outsourcing)」が挙げられる。ビジネス・プロセス・アウトソーシングとは、自社に不足しているリソース、スキルを、業務委託によってまかなう手法だ。医療や広告、itなど、さまざまな分野でビジネス・プロセス・アウトソーシングは行われてきた。ビジネス・プロセス・アウトソーシングは、低コストで自社の欠点を克服できるというメリットがある。自社の従業員を、コア業務に集中させられるのもビジネス・プロセス・アウトソーシングを行う意義である。ただし、BPOの示す意味としては、放送用語の方が有名だ。
BPOを専門的に行っている企業には、株式会社キャスター 、アデコ株式会社、トランスコスモス株式会社などがある。そのほかにも、さまざまな規模のBPO企業は増えており、ビジネスシーンで重要な役割を果たしてきた。
「BPO」の熟語・言い回し
BPO業界とは
「BPO業界」には2つの意味がある。まずは、ビジネス・プロセス・アウトソーシングに関わる業界のことだ。この意味でのBPO業界は、21世紀に入ってから発展を続けてきたとされる。2020年の新型コロナウイルス感染拡大以降も、その影響が少なかった業界である。その大きな理由は、BPO業界にはit関係の企業が多かったことだ。クラウドコンピュータや仮想サーバーなどの技術を提供するBPO企業は、クライアントの現地にいなくても業務を行える。また、もともとリモートワークの導入にも積極的だった。コロナによる外出自粛が起こった際も、it関係のBPO企業の多くは変わらずに営業できていたといえる。
さらに、BPO企業が従来のアウトソーシングと、ビジネスモデルが違っていたのもコロナの影響を抑えられた要因だろう。かつての会おうとソーシングは、短期集中的にクライアントから依頼されるケースが大半だった。クライアントは繁忙期だけアウトソーシングを頼り、契約が満了すれば通常業務に戻っていく。しかし、BPO企業の場合は、クライアントから業務を継続的に引き継いでしまう。クライアントからBPO企業への依存度は高く、コロナという予期せぬトラブルがあったところで、契約形態を変えることは難しくなっていた。
継続的にクライアントからの利益を確保でき、さまざまな分野に進出できるBPOは、2020年代以降も成長を続ける業界である。そのうえ、BPO企業が増加したことにより、価格勝負の段階に入ってきた。クライアントは手ごろな料金でBPO企業と契約しやすくなっており、業界への注目度は高まっている。it業界以外でも、サブスクリプションというビジネスモデルが浸透したことで、BPOに進出する企業は増えてきた。
BPO業界のもうひとつの意味には、「放送倫理・番組向上機構をとりまく業界」が挙げられる。こちらの意味でのBPOでは理事、委員が審理の場で大きな決定力を持っており、「業界」と表現することも可能だ。BPOの理事や委員は、脚本家や放送作家、学者や映画監督、企業経営者など、さまざまな分野から集められてきている。理事や委員の中でも決して、思想や価値観が統一されているわけではない。そのため、どのような顔ぶれが理事や委員を担っているのかは、審理の行方に大きく影響する。
ちなみに、BPO業界には政治関係の人材が少ない。これは、BPOが日本政府から干渉されない、独立した組織を目指しているからである。本来なら日本の放送事業は総務省が所管しているものの、BPOはあえてつながりを持っていない。こうした人選により、BPOは日本政府の方針に感化されることなく、放送倫理と向き合えるようになっている。
ビー‐ピー‐オー【BPO】
読み方:びーぴーおー
《British Post Office》英国郵便公社。郵政事業は2001年民営化され、現在は政府全額出資の株式会社ロイヤルメールグループ(郵便局業務はポストオフィス、配達業務はロイヤルメール)がおこなっている。
ビー‐ピー‐オー【BPO】
読み方:びーぴーおー
《business process outsourcing》企業が、経理・総務など事務処理部門の業務を、そっくり外部の企業や子会社に委託すること。特にIT・情報システム部門の業務委託はITOとよばれる。ビジネスプロセスアウトソーシング。
ビー‐ピー‐オー【BPO】
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