テルスター1号
分類:人工衛星
名称:テルスター1号/Telstar 1
小分類:通信放送衛星
開発機関・会社:AT&Tベル研究所
運用機関・会社:AT&T
打上げ年月日:1962年7月10日(1号)
運用停止年月日:1963年2月21日
打上げ国名・機関:アメリカ/アメリカ航空宇宙局(NASA)
打上げロケット:ソー/デルタ
打上げ場所:ケープカナベラル空軍基地
国際標識番号:1962029A解説:人工衛星を通信に用いるというアイデアは、V-2号による遠距離ミサイル攻撃が実現するのと、ほぼ同時に、しかも、何人かの人間によって別々に提案されました。
その中でももっと早く発表したのが、SF作家としても知られる宇宙開発運動家アーサー・C・クラークと、アメリカのAT&T社ベル研究所のJ・R・ピアースでした。テルスター計画(1号/2号)は、そのピアースによって進められた、純然たる民間の宇宙計画でした。
基礎研究の後の1960年、地上からの電波を受信、増幅して再送信するアクティブ(能動)型衛星からなるテルスター開発計画は正式に開始されました。
当初のもくろみでは、1000kmの高度の極軌道に40基、赤道上空を周回する軌道に15基の、比較的シンプルな構造の衛星を乗せて、ほぼ地球全域をおおう中継システムを作りあげようというもので、この考え方は、現在のGPS測地衛星やイリジウム計画と似た考え方にもとづく、壮大な計画でした。
同じ1960年に、アイゼンハワー大統領が宇宙の民間利用の推進をうたったことと、また、AT&T社がアメリカ全土をカバーする独占企業だったためにゴー・サインが出た計画でしたが、当時としてはあまりにも時代を先取りしすぎていたともいえます。
テルスター1号は、1962年7月10日にNASAの施設で、NASAのロケットにより打ち上げられました。ただし、NASAがこの時点で公認していたのは、リレー衛星(1962年12月13日に1号が、1963年1月21日に2号が打上げ)の方でした。
AT&T社はメイン州に自前の地上局を建造、テルスターを中継点として、フランスとイギリスの受信局との間での通信に成功しました。
テルスターはエコー衛星のような単純に電波を反射するパッシヴ(受動)型ではなく、受信した信号を増幅して送り返すアクティヴ(能動)型の通信衛星でした。しかし、こうした機能や軌道などにも、通信衛星としての新しい部分はあまりありませんでした。ただ、世界のマスコミに与えた衝撃は絶大でした。
なにしろ、打上げから2週間後には、テレビ宇宙中継により、大西洋をこえてテレビ電話で会話する光景を、大西洋の両側の数百万人の人々に生中継したのです。
しかも、この成功は一度では終わりませんでした。テルスター1号は、そののち半年にわたって、1日につき1時間半の通信可能な時間帯を使って、宇宙中継放送をつづけたのです。
しかし、この最初のテルスター計画は、その栄光とほとんど同時に消滅への運命をたどることになります。
世界がテルスター1号によるテレビ中継にわいていた、打上げから1カ月後、かねてからAT&T社による通信事業の独占に反対していたケネディー大統領の呼びかけのもとで、西側資本主義陣営における民間用宇宙通信事業をになう国際機関インテルサットが結成されました。アメリカ国内での商業衛星通信の地上局側の運用は、このために作られた会社、コムサットが担当することになったのです。
AT&T社とピアースの壮大な夢が現実に立ち入るすきは、もうありませんでした。
結局、1963年5月7日に打ち上げられたテルスター2号をもって、この最初のテルスター・シリーズはあえなく終了となりました。
テルスター1号をよく知るためのアラカルト
どんな形をして、どんな性能を持っているの?
どんな目的に使用されるの?
宇宙でどんなことをし、今はどうなっているの?
このほかに、同じシリーズでどんな機種があるの?
どのように地球を回るの?
分類:人工衛星テルスター1号をよく知るためのアラカルト
どんな形をして、どんな性能を持っているの?
どんな目的に使用されるの?
宇宙でどんなことをし、今はどうなっているの?
このほかに、同じシリーズでどんな機種があるの?
どのように地球を回るの?1.どんな形をして、どんな性能を持っているの?
直径86cm、約80キログラムのほぼ球形の多面体。太陽電池による出力は15ワット。姿勢制御には回転(スピン)安定方式がとられていました。
送受信アンテナは本体の赤道にあたる部分に帯状におかれ、地上からの受信(アップリンク)には6390メガヘルツの、地上への送信(ダウンリンク)には4170メガヘルツの波長が使われました。
2.どんな目的に使用されるの?
アクティブ(能動)型通信衛星による音声、映像などの信号中継と、その地球規模での継続的な運用が目的です。
3.宇宙でどんなことをし、今はどうなっているの?
約半年間にわたる、大西洋横断テレビ中継や国際電話などに使われました。1962年11月23日に地上からの制御用チャンネルの応答が一時なくなりましたが、12月20日には復旧するも、1963年2月21日、ついに機能停止となりました。
大気圏突入による消滅時期は不明です。4.このほかに、同じシリーズでどんな機種があるの?
最初のテルスター計画には、6個の衛星が製造されましたが、実際に軌道に打ち上げられたのは2基だけでした。計画最後の衛星となったテルスター2号は、1963年5月7日に打ち上げられ、1965年5月に運用を停止しました。
ただし、最初のテレビ生中継を実現したテルスターの名前は、その後、AT&Tスカイネット(現在のはローラル・スカイネット社)が運用するテルスター300シリーズ以降の通信衛星へと受けつがれることになりました。
5.どのように地球を回るの?
近地点高度952km、遠地点高度5654kmの楕円軌道で、軌道傾斜は44.8度、公転周期は157.8分でした。
テルスター1号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/01 19:37 UTC 版)
テルスター1号は3,600セルの太陽電池から供給される14ワットの電力で動作し、打ち上げの13日後には米-欧間でのテレビ放送の生中継が行われた。 西ドイツも放送試験に参加し、同国西部のデュイスブルクにある高炉で働く労働者が映された。映像の画質は、現在からすると極めて劣悪であった。 ニューヨーク市街とゴールデンゲートブリッジの映像も同じように画質が悪かったが、当時の人々にとってはまるで地球の裏側の出来事を見ているかのような印象を与えた。一方で、テルスター1号は当時の技術的限界から低軌道に投入されたため、衛星が地上局からの可視範囲に入って送受信が行えるのはわずか30分に留まり、長時間の連続中継はできなかった。また、送信機の出力はわずか2.25ワットに過ぎず、地上局に直径30メートル以上のパラボラアンテナを置いて、衛星からの信号を100億倍にまで増幅しなければならなかった。とはいえ、現在までに数千機もの通信衛星が軍事、科学、通信、放送の各分野で利用されており、テルスター1号がその礎となったことは間違いない。 テルスター1号は、1962年7月9日に行われた高高度核実験、ドミニク作戦スターフィッシュ・プライム実験(英語版)で放射された強烈な電磁パルスの影響で、1962年11月から不規則な動作をするようになり、たびたび衛星の電源を入れ直して対応していた。1962年11月23日にはコマンド系が応答しなくなったが、12月20日に正常に再起動することに成功し、その後しばらくは断続的ながらデータを受信することができた。最終的には1963年2月21日に送信機が故障して運用を終了した。
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