コーチング・チームマネージメント哲学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 08:40 UTC 版)
「エディー・ジョーンズ (ラグビー指導者)」の記事における「コーチング・チームマネージメント哲学」の解説
サントリー時代、従順で真面目だが失敗を極端に避けようと躊躇する日本の学生部員ら見て違和感を感じ、大人気ドラマだった「スクール☆ウォーズ」全エピソードを視聴して高校における運動部活動を分析。本人によるドラマの感想は「Just stupid」 ジョーンズは日本代表のスケジュールを、怪我人の発生や天候不順による練習や試合の中止などを考慮して、常に変化するものと割り切っていた。それをジョーンズは「まず考えるべきは、スケジュールではなく、チームをどこに連れて行きたいか。つまり目的地だ」と表現。その上でジョーンズは、2か月ごとの目標を立てて定期的にレビューを行うことで、達成したい目標を明確化している。 ジョーンズは体格やフィジカルを言い訳とすることを決して許さず、それらを問題にしたことも1度もない。ジョーンズはバレーボールでは男子よりも女子の方が成績で優れていることに注目しており、バレーボール男子はパワー勝負中心なのに対し、女子はスキルで勝てる要素も比較的大きいという点に着目しているのだろう、というのは関連書籍のライターによる分析である。 2015年の時点では、日本社会にある特長がラグビーとリンクしていない、つまり日本には独自のラグビー文化と呼べるものが無いと指摘。同時に「ゲームの進め方まで礼儀正しく序列を重んじるばかりでは、その先の道を閉ざしてしまうことにもなる」と言い切っている。また「『ノーサイドの精神』だけでは足りないんだ。ラグビーをしている限り勝たなければいけないのだから」とも述べている。ジョーンズはそれらを踏まえた上で「"できない理由"を探すよりも、"何ができるのか"を考えるべきだよ」と話している。 人の名前を覚えるのが苦手、妻の誕生日を忘れるなど、ジョーンズの記憶力は一概に高いとは言い切れない。しかしジョーンズは会話の中で具体的な数値を用いて説明することが多く、手元に資料がなくてもそうした説明を行うことができる。そんなジョーンズは「データの活用法は、チームによって変わる」と前置きした上で「チェックする項目は3つに絞る」としている。 「練習というものは、逆算して計画されるべきもの。チームをどうやって勝たせるかを決めたら、そのための最善の方法、環境を事前に計画していく」という考えの持ち主。オーストラリア代表の監督を務め、ニュージーランド代表に手痛い負け方をした時、その翌日物凄く過酷な練習が始まるように匂わせておきながら、選手達を連れて行った先はゴーカート場。もしここでハードな練習をさせていたら敗戦で落ち込んでいた選手たちの気分をさらに落ち込ませていたかも知れなかった。気分転換させたことによって選手達はその翌日しっかりと練習し、翌週の南アフリカ戦はいい試合をしてくれた。 1991年のワールドカップでオーストラリアを優勝させたヘッドコーチ、ボブ・ドゥワイヤーの影響を受けている。試合を分析し、ゲームの中でプレイが継続する時間を割り出す作業を行い、そこで割り出された時間に基づいて、30秒を5回、45秒を6回という具合に有酸素運動のトレーニングを組み立てる方式をジョーンズはそのまま取り入れている。実戦から逆算して練習を計画するジョーンズからすれば、ランパスや1分以上継続したアタック練習は「実戦的でない」と批判的に見られるものである。 データを見る前に自分の目でビデオをチェックし、その後にデータが上がってきたら自分が見たことがデータ化されているかどうかを確認するのがジョーンズの仕事の1つである。 雨中の試合対策としてボディソープをボールに塗ってわざと滑りやすくしたり、ボールを大切に扱えるようにと生卵でパスを交換し合う練習を行ったり、ジムの室温を30度まで上げた上で選手達のジャージの下にゴミ袋を着せてハードトレーニングを行わせたりすることがあるが、これには心理的なアドバンテージを得る狙いもある。 練習では監督である自身が最も重要な人物となって選手に影響を与えるという考えを持っているが、試合では自身が最も重要でない人物となるべきと考えている。そのため、前者の場合では最後にグラウンドに入り、後者の場合では最初にグラウンドに入る。 トップリーグチームを指揮する際はシーズンレビューを作成するが、改善点は最大でも3つに絞る。その理由は「人は3つまでしか覚えられないからだ」というものから。 「選手の習慣やリズムに変化があったら、コーチは気にかけなければいけない」と言う考えの持ち主であり、ジョーンズはその考えの下で自身の高い観察能力を発揮してきた。2009年にサントリーのGMに就任したジョーンズは選手達を観察している間に選手間のコミュニケーションが希薄であることに気付き、コミュニケーションの増加のために食堂内での携帯電話の使用を禁止した。 選手とコーチの間、あるいはアシスタントコーチとヘッドコーチの間などで、率直な話し合いに基づいて議論を重ね、一貫性のあるコーチングを行うことを重視する考えの持ち主。ジョーンズは「日本では、会議の後に、裏の会議がもう一つ開かれると聞いた時代もあった。向き合って、正直に話し合うべきだ」とこのことに就いて言葉を残している。 「チームにとって特別な存在であり、他の選手にはできないパフォーマンスをする選手であれば、その選手には特別な措置をすべきだ」と考えている。実際、アンドリュー・ウォーカーというブランビーズの選手に対しては「家族を置いて、長期遠征には行けない」といウォーカーの希望を飲んで遠征に妻を帯同させることを許し、他にも通常は遠征中ジャンクフードの摂取が認められない中でマクドナルドでの食事を認めた。2014年10月にオーストラリア代表のカートリー・ビールがチームスタッフへ暴言を吐いた問題に関しては「彼はアボリジニだが、所属先のワラタスでは、何の問題もなく過ごしていた。ヘッドコーチのマイケル・チェカが、しっかり面倒をみていたからだ。一方ワラビーズ(オーストラリア代表チームの愛称)では、全くケアをされていなかったのだろう」とビールを擁護する立場をとった。山田章仁がアメリカンフットボールとラグビーの「二刀流」を行えたのも、ジョーンズの理解と考えによるという。 プロコーチは1年で勝てなければ次の契約はないという、ある意味では自分に厳しい考えを持つ。 学生ラグビーで、試合前にロッカールームで大泣きしたり、試合中に「気持ち!気持ち!」という掛け声を上げたりして気持ちを高ぶらせることに関しては「ナンセンス。その"気持ち"なるものが試合でどのぐらい保てるか。5分か10分程度だろう」と切り捨てている。ジョーンズ曰く、精神状態の一貫性を保つには、ゲームですべきこと明確にしておく必要もあるという。
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