突然変異 突然変異の概要

突然変異

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:26 UTC 版)

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核・葉緑体において、DNA、あるいはRNA上の塩基配列に物理的変化が生じることを遺伝子突然変異という。染色体の数や構造に変化が生じることを染色体突然変異という。

細胞や個体のレベルでは、突然変異により表現型が変化する場合があるが、必ずしも常に表現型に変化が現れるわけではない。また、多細胞生物の場合、突然変異は生殖細胞で発生しなければ、次世代には遺伝しない。

表現型に変異が生じた細胞または個体は突然変異体(ミュータント[注釈 1])と呼ばれ、変異を起こす物理的・化学的な要因は変異原ミュータゲン[注釈 2])という。個体レベルでは、発癌や機能不全などの原因となる場合がある。しかし集団レベルでみれば、突然変異によって新しい機能をもった個体が生み出されるので、進化の原動力ともいえる。

英語やドイツ語ではそれぞれミューテーション[注釈 3]ムタチオン[注釈 4]、と呼び、この語は「変化」を意味するラテン語に由来する。

遺伝子突然変異

遺伝子突然変異は、DNA複製の際のミスや化学物質によるDNAの損傷および複製ミス・放射線照射によるDNAあるいは染色体の損傷、トランスポゾンの転移による遺伝子の破壊などによって引き起こされる。突然変異には、一つのヌクレオチドが別の塩基に変わる点変異や、一つから複数のヌクレオチドが挿入または欠失するものもある。

点変異はコドンの1番目のコードに変異が起きる場合と2・3番目のコードに起きる場合がある。前者と後者の変異がコードの場所に関係なく一律に起きるならば、2・3番目のコードに変異が起きて翻訳しても対応するアミノ酸が変化しないサイレント変異が、1番目のコードの変異より多く子孫に引き継がれていく。第1コードに変異があり、アミノ酸が変化したタンパク質は変異前の機能を保持できないことが多く、このような変異体は生存に不利になることが多いと考えられる一方で、このような変異が生存に有利となる場合もあり、そのような変異は進化の要因となりうる。

遺伝子をコードする領域以外(イントロン)の変異や、遺伝子内でもアミノ酸配列や転写量を変化させない場合はサイレント変異となる。

機能に影響がある点変異は、別のアミノ酸にコドンが変化する非同義変異、アミノ酸のコドンが終止コドンに変わるナンセンス変異、終止コドンがアミノ酸のコドンに変わる読み過ごし変異がある。三つのヌクレオチドで一つのアミノ酸をコードするため、挿入・欠失したヌクレオチドが3の倍数だとアミノ酸の挿入・欠失が起こり、そうでないときはコドンの読み枠がずれアミノ酸配列が大きく変わるフレームシフトなどが起こる。

分類

中立的突然変異[注釈 5]
自然選択自然淘汰)に有利でも不利でもなく、中立的な突然変異( →「中立進化説」「分子時計」各項を参照)。
非表現突然変異[注釈 6]
遺伝的レベルでは変異が起きているが、表現型ではわからない変異。
復帰突然変異[注釈 7]
突然変異遺伝子が再び変異を起こして、元の遺伝子に戻る変異。
サプレッサ突然変異[注釈 8]
抑圧遺伝子変異とも。tRNAのアンチコドンを変化させ終止コドンを認識できるようになり、アミノ酸鎖の合成が終了されなくなってしまう変異。
適応的突然変異[注釈 9]
ランダムに突然変異が起きるのではなく、周りの環境に適応して起こすと考えられた突然変異。現在では否定されている。

遺伝子突然変異

点突然変異[注釈 10]
1個のヌクレオチドの置換または欠損または挿入の変異。
ミスセンス突然変異[注釈 11]
コドン内の塩基の変化または置換により、本来入るべきものとは別のアミノ酸が合成されたポリペプチド中に入り、異常タンパク質が作られる突然変異。
ナンセンス突然変異[注釈 12]
アミノ酸のコドンを終止コドンにする変異。
フレームシフト突然変異[注釈 13]
塩基の挿入、欠失によってオープンリーディングフレームがずれてしまう突然変異。

注釈

  1. ^ : mutant
  2. ^ : mutagen
  3. ^ : mutation
  4. ^ : Mutation
  5. ^ : neutral mutation
  6. ^ silent mutation
  7. ^ : back mutation
  8. ^ : suppressor mutation
  9. ^ : adaptive mutation
  10. ^ : point mutation
  11. ^ : missense mutation
  12. ^ : nonsense mutation
  13. ^ : frameshift mutation

出典

  1. ^ 河口豊, 土井良宏, 伴野豊, 藤井博「卵浸漬法によるN-メチル-N-ニトロソウレアのカイコの発生に及ぼす影響と突然変異誘発」『日本蚕糸学雑誌』第54巻第3号、日本蚕糸学会、1985年、 213-221頁、 doi:10.11416/kontyushigen1930.54.213
  2. ^ 田中淳「イオンビームによる植物の突然変異誘発」『RADIOISOTOPES』第52巻第4号、日本アイソトープ協会、2003年、 186-194頁、 doi:10.3769/radioisotopes.52.186ISSN 0033-8303NAID 130004127588
  3. ^ 鈴木雅雄「4. ライサイエンスへの利用 4.3炭素およびネオンイオンビームによって誘発された細胞死と突然変異」『Radioisotopes』第44巻第11号、日本アイソト-プ協会、1995年11月、 818-823頁、 doi:10.3769/radioisotopes.44.11_818ISSN 00338303NAID 10003718968
  4. ^ 野口弥吉「水稲における燐欠乏による突然変異の誘起」『育種学雑誌』第8巻第3号、日本育種学会、1958年、 137-141頁、 doi:10.1270/jsbbs1951.8.137ISSN 0536-3683NAID 130003479486


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