プロフェッショナル スポーツのプロフェッショナル

プロフェッショナル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/01 04:04 UTC 版)

スポーツのプロフェッショナル

(「プロフェッショナル」や「プロ」の大まかな意味は、おおむね辞書的な意味に沿っており、おおまかな方向性は辞書的定義と一致しているのだが) 具体的にどのような人を「プロフェッショナル」(プロ)と呼ぶのか、と言うと、スポーツのひとつひとつの種類(種目)ごとに異なっている。よって下の節で、個々のスポーツ種目ひとつひとつのプロフェッショナル(プロ)について説明してゆく。

プロフェッショナルな選手は短縮形の「プロ」を用いて、「プロ選手」や(単に)「プロ」と呼ばれる。

なお、プロ選手が参加することで成り立っているスポーツ(やスポーツの特定の試合群)をプロフェッショナルスポーツと言う。

歴史

19世紀のイギリスでは、「スポーツは上流階級の人々同士で行うもの」というのが、当時の(上流階級の)社会通念であった。その後次第に労働者の社会的地位が向上し、労働者にもスポーツに参加する道が開かれるようになって、スポーツは大衆化へと進んでいった。アメリカ合衆国では、1868年にアマチュア競技会への参加規定が決められたが、その趣旨はイギリスのものとは大きく異なり、アメリカではプロ野球の創設・発展、多額の賞金や賭博行為の増加・横行などによって腐敗が進み、プロフェッショナル競技者とアマチュア競技者の区別を明確化する必要に迫られたから、アマチュア競技会の参加規程が明確化されたのである。アメリカでは(イギリスのようには)労働者階級を排除する内容はなかった。

スポーツの歴史の中では近代オリンピックアマチュアリズムが称揚され、その精神的な純粋さが重視されて発展し、人々はアマチュアリズムに喜びを見出していた歴史があるのだが、その後、次第にスポーツ大会が国家の宣伝に使われるようになり、社会主義諸国も資本主義諸国もオリンピックを国家の宣伝の道具のように利用するようになり、アマチュア規定をすり抜けるようにして、社会主義国では国家が「まるがかえ」で選手を援助し、住まいや食事や練習場やコーチを用意して選手を養成するようになったり、資本主義諸国では、例えば米国では(しばしば国家が直接、あるいは学校と連携して)「奨学金」などという形でスポーツをしている学生にお金を渡しておいて「アマチュア」としてオリンピックに参加させるという方法でアマチュア規定をすり抜けさせる、というやり方が横行するようになったり、(資本主義諸国では、金銭欲に駆られている人も多く、商業主義(=金のためなら、どんな不正行為でもやらかしてしまうこと)が横行しがちなわけだが)米国に加えて欧州などの資本主義諸国でもスポーツ関連企業とアスリートが契約を結んでコマーシャルに出演させ、その代わりに道具やコーチや住居や食事を提供されるなどということが行われるようになった。つまり、アマチュア規定は その裏をかかれるようにしてすり抜けられることが(西側でも東側でも)世界中で起きるようになり、大会で上位に入賞するようなアスリートでは大半が、名目としては「アマチュア」なのに、実態としては(有形/無形の)報酬を得ていて、実態としては純粋な「アマチュア」と言うのは不適切な選手がかなりの割合になってしまったのである。また、実際には現金の授受が行われていたのに、アマチュア規定に違反していたことが発覚して参加資格を停止されることを防ごうと、ただ金銭を提供する側と受け取る側が口裏を合わせて隠していただけ、という悪質な場合もあった[注 5]。スポーツ界の汚染は進み、オリンピックや他の大きな大会で上位に入賞するような選手に関しては、もはや純粋な「アマチュア」を見出すことはほとんど困難な状態にまでなってしまい、規定をすり抜ける手法もますます巧妙化し、『「アマチュア」と「プロフェッショナル」をどうやったら線引きできるのか? (昔はともかく)今ではもう無理なのでは?』と 大会の主催者側の人々も頭をかかえこんでしまうような事態になっていってしまったわけである。結局 スポーツ界はアマチュア規定緩和の方向へと進むことになり、1962年にはクリケットがアマチュア規定を廃止し、1968年にはテニスのウィンブルドン大会がプロフェッショナルにも開放された。そして1974年にはオリンピックのアマチュア条項からも「アマチュア」という言葉が削除された。その結果、その後は徐々に ほとんどの競技でアマチュアとプロフェッショナルは区別なく参加できるようになり、混合状態になった[3]。(その結果、アマチュア規定をすり抜けるためだけの、汚くて陰湿な攻防は減り) 近年では多くのスポーツ競技種目でプロ・アマが混合で競技し、「アマチュア」と呼ばれる人でも まるで「小企業」のように様々な形で収入を得ている[4]

オリンピックにおけるプロプレーヤの参加解禁

オリンピック等ではアマチュア規定に基づき、長い間プロの参加は認められていなかった。ただし無報酬でスポーツを行い、オリンピックなどの大きな大会に出場できるのは、それなりの社会階級に属しているものに限られる。また日本のスポーツでは、勝つことによる名誉のみを求め、無報酬でスポーツを行うことの精神的美しさが強調された面もある。

大陸間での国際トーナメントを行うテニスや、毎週末試合を行うサッカー、毎日試合を行う野球等では早くからアマチュアだけでやっていくのは困難になった。そこでこれらの競技では20世紀初頭から選手のプロ化が始まった。最近になって国際的な認知度がようやく高まった野球を別として、アマチュア至上主義をとっていた国際オリンピック委員会 (IOC)とテニス、サッカーの競技団体は非常に折り合いが悪かった。(プロを解禁した現在ではIOCよりこれらの競技団体が優位に立っている)


注釈

  1. ^ 初心者でも行えるような「ただの作業」や「ただのjob」をするような仕事ではない、とことにもなる。
  2. ^ 「公言する、標榜する」が語源である。
  3. ^ specialistの対義語は : generalist ゼネラリスト
  4. ^ 例えばMicrosoft Windows XPに一般向けの「Home Edition」および、高機能版の「professional」が提供・販売された。
  5. ^ 皮肉なことに、近代オリンピックの大会が成功すればするほど人々の注目を集め、人の注目を集めれば集めるほど、アスリートたちは国家の宣伝の道具としても利用(悪用)され、スポーツ用品関連企業からも宣伝の道具として利用(悪用)されるようになり、直接的に動く金銭も、また裏でこっそりと渡される金銭の額も、さらに入賞者(メダリスト)たちが大会後に副次的に得る金銭的な見返りも増えていったのである。皮肉なことに、スポーツ大会は成功すればするほど、スポーツの世界を「政治的な思惑」や「金儲けの欲得」などの不純な要素で汚染させてしまい、腐敗させていってしまったのである。また、まるで禁酒法のように、禁止規定が強ければ強いほど、皮肉なことに、一部の悪事を行う者ばかりが より一層の利得を得る結果を招いてしまった。)

出典

  1. ^ a b c d e f Oxford Dictionaries Lexico "professional"
  2. ^ Oxford Dictionaries Lexico "profession"
  3. ^ Harald Fischer:スポーツとビジネス
  4. ^ ArndKrüger :スモールビジネスのオーナーとしての競技選手。


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