SAAsとは? わかりやすく解説

SaaS

フルスペル:Software as a Service
読み方エスエーエーエスサーズ
別名:サービスとしてのソフトウェア

SaaSとは、ネットワーク通じて顧客アプリケーションソフト機能必要に応じて提供する仕組みのことである。

SaaSを利用すれば顧客ハードウェアアプリケーションソフトインストールされていなくても、ネットワーク通じて随時ソフトウェア利用することができる。パッケージ化されていない状態で、機能単位提供されるため、用途ごとに必要最小限サービス利用することができる。

また、SaaSは顧客ごとに別のサーバー用意するではなく、ひとつのハードウェア複数顧客対応することができる。その上で顧客ごとに個別設定を行うことが可能である。SaaSは通信費用の低下Webサービス機能向上といった利用環境の向上によって実現したサービスであり、従来のASP(Application Service Providerシステムとは区別されている。

SaaSのモデル基づいたシステムとしては、セールスフォース・ドットコム顧客管理CRMシステムSalesforce」などが知られている。また、IBM提供しているオンラインディレクトリ「Software as a Service Showcase」では、SaaSを提供しているベンダー検索することができる。


SaaS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/31 15:11 UTC 版)

SaaS(読みはサース または サーズ[1]Software as a Serviceの略語)は、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のこと[1]。一般にはインターネット経由で必要な機能を利用する仕組みで、シングルシステム・マルチテナント方式になっているものを指す[2]。以下、特に断りのない限り、上記定義でのSaaSについて記述する。

概要

従来のソフトウェア販売の中心は、ソフトウェアをパッケージ製品としてユーザーにライセンス販売する形態であり、ユーザーは自分の持つコンピュータでそのソフトウェアを稼働させ、利用する形態であった。 一方、SaaSでは、ソフトウェアを提供者(プロバイダ)側のコンピュータで稼働させ、ユーザーはそのソフトウェア機能をインターネットなどのネットワーク経由でサービスとして使用し、サービス料を支払う形態(ビジネスモデル)が主流となっている。

SaaSの利点として、ユーザー側としては、使用した期間・量だけのサービス料で済む、ユーザー側のコンピュータ導入・構築・管理などが不要(または最小限)になる、このため短期間での利用開始や、ユーザー数や処理量の急な増減にも対応しやすい、常に最新のソフトウェア機能を使用できる、などがある。 またプロバイダ側としては、新規ユーザーの獲得が容易、ソフトウェアのみの販売よりも売上の向上・平準化になる、コンピュータ運用はスケールメリットと自社要員が生かせる、各ユーザー固有の導入や保守のサポートが軽減できる、などがある。

デメリットには、プロバイダ側や通信回線、ネットワークの障害時には使用できない、セキュリティ上の懸念、ユーザー固有の仕様変更や運用変更は困難、長期利用の場合に割高となる可能性、などがある。 また、クラウドコンピューティング上のSaaSの場合は、クラウドが示す「向こう側」がどこなのかが不明確なため、海外のIDCで運用されていた場合やデータの損失などが発生した場合、国内法が適用されないというリスクもある。

SaaSは、ネットワーク経由という面ではネットワーク・コンピューティングの一形態であり、従量制課金の場合はユーティリティコンピューティングの一形態であり、またSaaSプロバイダはASPと同義語である。また、比較的広い意味での「クラウドコンピューティング」における、IaaSPaaS等に並ぶ一種ともされる[3]

なお、SaaSに類似した形態としては、各種のホスティングサービスアウトソーシングサービスなどがある。これはプロバイダ側にハードウェアとソフトウェアがあり、ユーザーはネットワーク経由で使用しサービス料を支払う点ではSaaSと同じだが、ホスティングではハードウェアとソフトウェア、アウトソーシングでは契約によってはソフトウェアなどを、ユーザーが購入する必要がある。例にはIBMのApplications on Demand (AOD) [4]などがある。

発音

SaaSの発音は、「サース」とする場合が多い。「サーズ」と濁って発音することはあったが、一般的にも専門的にもSARSとの混同を避けるために「サース」と発音しているとされる。日本経済新聞の用語解説でも「サース」の発音を採用している[5]

歴史

ソフトウェアをネットワーク経由でサービスとして提供する事自体は、ASPとして、従来より行われている。ASPとSaaSを区別することなく使われていることが多い。有料の電子メールサービス、グループウェア、各種の検索サービス、オンラインゲームなどである。史上初のSaaSアプリケーションは1995年にリリースされたViawebとMYOBライトと言われている。

2006年にはクラウドコンピューティングという言葉が普及し、クラウドコンピューティング上で提供されるソフトウェアがSaaSと呼ばれるようになった。

2007年後半に日本でクラウドコンピューティング上で提供されるSaaSの定義が各プロバイダより発信され始め、リーマンショック後コスト削減サービスとして急速な普及が始まった。各ASP事業者(ベンダー)は2009年頃から、アプリケーションレイヤー上の提供名称を、ASPからSaaSへと変え始めた。この頃、Sansan(2007年設立)、プレイド(2011年設立)、freee(2012年設立)、マネーフォワード(2012年設立)、アンドパッド(2012年設立)などの日本SaaSスタートアップ企業が生まれた。

動向

業界の動き

日本国内ではSaaS専業ベンダーや、基幹システム関連でのSaaS提供はそれ以外の業態や形態と比べると少数だが、2009年から2010年にかけてSaaSを標榜するサービスが増えてきており、少しずつ市場が広がり始めている[6]。2022年12月時点でのARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は、Sansan、ラクス、サイボウズ、freee、マネーフォワードが上位を占めている[7]

また、キャリア各社もSaaS提供インフラの構築に積極的である。KDDIは、2007年6月に米マイクロソフト社との包括提携を行った。また、NTTコミュニケーションズは、SaaSをNGNの展開における重要なサービスと位置づけている。

グローバル市場では、2010年頃からSaaS専業で売上首位セールスフォース・ドットコムに追随して、オンプレミス中心だったアドビマイクロソフトSAPオラクルなどの大手ソフトウェアベンダーのSaaSシフトが進んだ。2020年7月時点では売上高シェアはマイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、SAP、オラクルの順位となっている。[8]

インターネット広告の分野では、田中弦が2005年に創業したFringe81が有名。同社は創業僅か12年でマザーズ上場を果たすなど、日本の代表的な企業として知られる。

政府の動き

2008年1月、経済産業省は「SaaS向けSLAガイドライン」を定め、サービス利用者が安心して利用するために、利用者とSaaSベンダー間で認識すべきサービスレベル項目や確認事項等について明示した。また2008年2月、総務省は「ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン」を定め、組織・運用と、物理的・技術的側面からSaaS提供のための指針を示した。例えば、組織内での情報管理責任者を定め、その利用範囲を明確にし、文書化することや、物理的な措置として、利用者の利用状況や例外処理、情報セキュリティ事象のログ保存期間などを明示している。

2008年7月、経済産業省は「中小企業向けSaaS活用基盤整備事業」を開始した。これは、アプリケーションソフトウェアをSaaSとして提供することで、情報技術を活用するための経営基盤が必ずしも充実していない中小企業・小規模企業の競争力を強化すること目的としている。2009年3月31日、財務・会計などのASP/SaaS事業者がJ-SaaSでの提供が開始された。

業界団体

業界団体として、「特定非営利活動法人 ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム」(略称:ASPIC)がある。ASPICは1999年11月に任意団体として設立された後、2002年にNPO法人の認証を取得し、活動している、ASP・SaaSを推進する団体で会員企業が約170社(2008年5月現在)ある。ASPICでは「ASP白書2003」においてASPの定義を「特定及び不特定ユーザが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいは、そうしたサービスを提供するビジネスモデル」としており、ASPとSaaSを同意語として扱っている。 またSaaSの普及を目指し、ASP・SaaS安全・信頼性情報開示認定機関として、サービスの安全性や提供事業者を審査し利用者が安心してSaaSを利用できる基準を設けている。

批判

SaaSを"Service as a Softwere Substitute[注釈 1]"(SaaSS)として参照する者である、自由ソフトウェア財団リチャード・ストールマンから、SaaSのひとつの注目すべき批判が出ている。[9]彼はSaaSSを使うことは自由ソフトウェアの根本方針の侵害に当たると考える。[10]ストールマンによれば:

SaaSSのせいで、その利用者は彼らの計算を行う実行ファイルをまさしく持つことができない:利用者がそれを見たり触れたりできないところの、誰かのサーバーにそれは在る。従ってそれについてそれが本当に何をしているのかを確認することは不可能であり、それを変更することも不可能である。

脚注

注釈

  1. ^ 「ソフトウェアの代わりのサービス」の意味。

出典

  1. ^ a b 用語集|SaaS”. 株式会社IDCフロンティア. 2019年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  2. ^ http://www.meti.go.jp/press/20080121004/20080121004.html 経済産業省「SaaS向けSLAガイドライン」
  3. ^ 知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い”. クラウドエース株式会社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  4. ^ “日本IBM、新形態のITアウトソーシング「AoD」-第1弾はSAPのERPソフトが対象”. Enterprise Watch. (2007年5月30日). https://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/software/2007/05/30/10395.html 
  5. ^ SaaS(サース)とは”. 株式会社日本経済新聞社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  6. ^ “「クラウドコンピューティングEXPO【春】」、きょう開幕”. クラウド Watch. (2011年5月11日). https://cloud.watch.impress.co.jp/docs/event/444598.html 
  7. ^ SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). “SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ)”. SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). 2023年5月6日閲覧。
  8. ^ 日経クロステック(xTECH). “IT大手16社のQ2決算 コロナ禍でクラウド以外は減収”. 日経クロステック(xTECH). 2020年8月17日閲覧。
  9. ^ Stallman, Richard. “Who does that server really serve?”. GNU.org. The Free Software Foundation. 2015年3月24日閲覧。
  10. ^ Stallman, Richard (2010年3月18日). “Who Does That Server Really Serve?”. Boston Review. 2013年7月6日閲覧。

参考文献

  • 日経BP社出版局編『クラウド大全 The Complete Cloud Computing <サービス詳細から基盤技術まで>』(日経BP社、2009年) ISBN 978-4-8222-8388-9
  • 『SaaSの科学 SaaSビジネスにおけるデータ分析: Kindle版』(ぽこしー著、2023年)

関連項目

外部リンク


Software as a Service

(SAAs から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/12 05:14 UTC 版)

Software as a Service(略称はSaaSで、読みは「サース」または「サーズ」[1])は、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態のこと[1]。一般にはインターネット経由で必要な機能を利用する仕組みで、シングルシステム・マルチテナント方式になっているものを指す[2]。以下、特に断りのない限り、上記定義でのSaaSについて記述する。

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が2011年に公表したクラウドコンピューティングの定義では、SaaSはIaaS・PaaSと並ぶ3つのサービスモデルの1つに位置づけられている[3]。2010年代以降は業務アプリケーションのほか、ソフトウェアの開発・運用に用いるツールをSaaSとして提供する例もみられ、日本の政府情報システムでは2018年以降、クラウドサービスの利用が第一候補とされている。

概要

従来のソフトウェア販売の中心は、ソフトウェアをパッケージ製品としてユーザーにライセンス販売する形態であり、ユーザーは自分の持つコンピュータでそのソフトウェアを稼働させ、利用する形態であった。 一方、SaaSでは、ソフトウェアを提供者(プロバイダ)側のコンピュータで稼働させ、ユーザーはそのソフトウェア機能をインターネットなどのネットワーク経由でサービスとして使用し、サービス料を支払う形態(ビジネスモデル)が主流となっている。

SaaSの利点として、ユーザー側としては、使用した期間・量だけのサービス料で済む、ユーザー側のコンピュータ導入・構築・管理などが不要(または最小限)になる、このため短期間での利用開始や、ユーザー数や処理量の急な増減にも対応しやすい、常に最新のソフトウェア機能を使用できる、などがある。 またプロバイダ側としては、新規ユーザーの獲得が容易、ソフトウェアのみの販売よりも売上の向上・平準化になる、コンピュータ運用はスケールメリットと自社要員が生かせる、各ユーザー固有の導入や保守のサポートが軽減できる、などがある。

デメリットには、プロバイダ側や通信回線、ネットワークの障害時には使用できない、セキュリティ上の懸念、ユーザー固有の仕様変更や運用変更は困難、長期利用の場合に割高となる可能性、などがある。 また、クラウドコンピューティング上のSaaSの場合は、クラウドが示す「向こう側」がどこなのかが不明確なため、国外のIDCで運用されていた場合やデータの損失などが発生した場合、国内法が適用されないというリスクもある。

SaaSは、ネットワーク経由という面ではネットワーク・コンピューティングの一形態であり、従量制課金の場合はユーティリティコンピューティングの一形態であり、またSaaSプロバイダはASPと同義語である。また、比較的広い意味での「クラウドコンピューティング」における、IaaSPaaS等に並ぶ一種ともされる[4]

なお、SaaSに類似した形態としては、各種のホスティングサービスアウトソーシングサービスなどがある。これはプロバイダ側にハードウェアとソフトウェアがあり、ユーザーはネットワーク経由で使用しサービス料を支払う点ではSaaSと同じだが、ホスティングではハードウェアとソフトウェア、アウトソーシングでは契約によってはソフトウェアなどを、ユーザーが購入する必要がある。例にはIBMのApplications on Demand (AOD) [5]などがある。

NISTは2011年9月に公表した「The NIST Definition of Cloud Computing」(SP 800-145)で、クラウドコンピューティングを5つの基本的特徴、3つのサービスモデル、4つの配置モデルによって整理し、SaaSを、利用者に提供される機能が「クラウドのインフラストラクチャ上で稼動しているプロバイダ由来のアプリケーション」であるサービスモデルと定義した[3][6]。この定義では、利用者はウェブブラウザのようなシンクライアント型のインターフェイス、またはプログラムインターフェイスを通じてアプリケーションにアクセスし、ネットワーク・サーバー・オペレーティングシステム・ストレージといった基盤のインフラストラクチャを管理・制御しない(利用者固有のアプリケーション構成の設定は例外となり得る)とされる[3][6]。この定義の日本語訳は情報処理推進機構(IPA)が2011年に公表した[6]

発音

SaaSの発音は、「サース」とする場合が多い。「サーズ」と濁って発音することはあったが、一般的にも専門的にもSARSとの混同を避けるために「サース」と発音しているとされる。日本経済新聞の用語解説でも「サース」の発音を採用している[7]

歴史

ソフトウェアをネットワーク経由でサービスとして提供する事自体は、ASPとして、従来より行われている。ASPとSaaSを区別することなく使われていることが多い。有料の電子メールサービス、グループウェア、各種の検索サービス、オンラインゲームなどである。史上初のSaaSアプリケーションは1995年にリリースされたViawebとMYOBライトと言われている。

2006年にはクラウドコンピューティングという言葉が普及し、クラウドコンピューティング上で提供されるソフトウェアがSaaSと呼ばれるようになった。

2007年後半に日本でクラウドコンピューティング上で提供されるSaaSの定義が各プロバイダより発信され始め、リーマンショック後コスト削減サービスとして急速な普及が始まった。各ASP事業者(ベンダー)は2009年頃から、アプリケーションレイヤー上の提供名称を、ASPからSaaSへと変え始めた。この頃、Sansan(2007年設立)、プレイド(2011年設立)、freee(2012年設立)、マネーフォワード(2012年設立)、アンドパッド(2012年設立)などの日本SaaSスタートアップ企業が生まれた。

「Software as a Service」の語は、米国の業界団体Software & Information Industry Association(SIIA)が2001年2月に公表した白書「Software as a Service: Strategic Backgrounder」で用いられている。同白書は、SaaSを一般にASPモデルと呼ばれているものとしたうえで、ASPやアプリケーションインフラストラクチャプロバイダなど呼称が乱立していた状況を踏まえ、集中化されたデータセンターからネットワーク経由でアプリケーションを配備し、継続的な料金で利用させるモデルを総称してsoftware as a serviceと呼ぶとした[8]。同白書によれば、ASPの語はもともと調査会社のIDCが造ったものである[8]。日本では2006年前後からSaaSが新たなIT用語として広まり始め、従来のASPとの異同が業界内で論じられた[9]

2000年代後半の日本では、「所有から利用へ」の流れの中で、国内のITベンダーが自社製品のSaaS化や、ソフトウェアベンダーがSaaSを開発・運用するための基盤の提供に動いた。IT Leadersは2009年、米国のセールスフォース・ドットコムを「国内のSaaS需要を掘り起こした先駆者」と評し、NECが2008年10月にSaaS基盤サービス「RIACUBE/SP」を開始したことなどを報じている[10]。2018年6月には政府が、政府情報システムにおいてクラウドサービスの利用を第一候補として検討するクラウド・バイ・デフォルト原則を決定した[11](詳細は#政府の動きを参照)。2020年には新型コロナウイルス感染症の流行下でテレワークが増加し、テレビ会議などのコミュニケーションツールの利用が拡大した。総務省の令和3年版情報通信白書は、Web会議サービス「Zoom」が2020年4月3日からの19日間で1億人のアクティブユーザーを増やしたことを挙げている[12]

動向

業界の動き

日本国内ではSaaS専業ベンダーや、基幹システム関連でのSaaS提供はそれ以外の業態や形態と比べると少数だが、2009年から2010年にかけてSaaSを標榜するサービスが増えてきており、少しずつ市場が広がり始めている[13]。2022年12月時点でのARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)は、Sansan、ラクス、サイボウズ、freee、マネーフォワードが上位を占めている[14]

また、キャリア各社もSaaS提供インフラの構築に積極的である。KDDIは、2007年6月にマイクロソフトとの包括提携を行った。また、NTTコミュニケーションズは、SaaSをNGNの展開における重要なサービスと位置づけている。

グローバル市場では、2010年頃からSaaS専業で売上首位セールスフォース・ドットコム(現・セールスフォース)に追随して、オンプレミス中心だったアドビ、マイクロソフト、SAPオラクルなどの大手ソフトウェアベンダーのSaaSシフトが進んだ。2020年7月時点では売上高シェアはマイクロソフト、セールスフォース・ドットコム、SAP、オラクルの順位となっている[15]

IDC Japanの2025年2月の発表では、2024年の国内パブリッククラウドサービス市場(SaaSを含むパブリッククラウド全体・売上額ベース)は前年比26.1%増の4兆1423億円であり、2029年には8兆8164億円に達すると予測されている[16][17]。世界市場では、調査会社のガートナーが2024年11月時点で、2025年のSaaS(クラウドアプリケーションサービス)への支出を前年比19.2%増の約2990億ドルと予測している[18]。利用の広がりについては、総務省の令和7年通信利用動向調査で、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は83.5%、全社的に利用している企業の割合は60.0%となり、利用したサービスの内容は「ファイル保管・データ共有」(73.3%)、「社内情報共有・ポータル」(61.4%)、「電子メール」(57.4%)が上位であった[19]

適用領域は業務アプリケーションに限られず、ソフトウェアの開発・運用に用いるツールがSaaSとして提供される例もある。ソースコードのリポジトリサービス「GitLab」は、リポジトリサーバーソフトウェアとしての提供に加え、これをホスティングしたクラウドサービスの形態でも提供されている[20]。システム監視・オブザーバビリティ(可観測性)の分野では、DatadogがSaaS型クラウドサービスとして、New RelicがSaaS型オブザーバビリティプラットフォームとして提供されている[21][22]

国内では、ITベンダーが自社パッケージのクラウド(SaaS)版を提供するとともに、海外のSaaS製品の販売を担う例がある[23][22][10]日立ソリューションズは、パッケージ版として提供してきた就業管理システム「リシテア/就業管理」の機能をクラウドサービスとして提供する「リシテア/就業管理 クラウドサービス」を2019年6月に提供開始し[24][25]、顧客管理・契約管理・課金請求を扱うサブスクリプションビジネス向けクラウドサービス「BSSsymphony」も提供している[26]。同社は2020年9月からクラウド型の人事業務アプリケーション「Workday」の販売を開始しており、同社のラインアップには他社製品のSalesforceやServiceNowなども含まれる[23][27]富士通は2026年3月、生成AIを用いてレガシーシステムのソースコードから設計書を自動生成するサービスをSaaSとして提供開始した[28]。NECは2024年2月、New Relicとパートナー契約を締結し、同製品のライセンス販売を開始した[22]。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)も2019年12月にDatadogの取り扱いを開始している[21]

政府の動き

2008年1月、経済産業省は「SaaS向けSLAガイドライン」を定め、サービス利用者が安心して利用するために、利用者とSaaSベンダー間で認識すべきサービスレベル項目や確認事項等について明示した。また2008年2月、総務省は「ASP・SaaSにおける情報セキュリティ対策ガイドライン」を定め、組織・運用と、物理的・技術的側面からSaaS提供のための指針を示した。例えば、組織内での情報管理責任者を定め、その利用範囲を明確にし、文書化することや、物理的な措置として、利用者の利用状況や例外処理、情報セキュリティ事象のログ保存期間などを明示している。

2008年7月、経済産業省は「中小企業向けSaaS活用基盤整備事業」を開始した。これは、アプリケーションソフトウェアをSaaSとして提供することで、情報技術を活用するための経営基盤が必ずしも充実していない中小企業・小規模企業の競争力を強化すること目的としている。2009年3月31日、財務・会計などのASP/SaaS事業者がJ-SaaSでの提供が開始された。

2018年6月、政府は「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」を決定し、政府情報システムではクラウドサービスの利用を第一候補としてその検討を行うというクラウド第一原則(クラウド・バイ・デフォルト原則)を示した[11]デジタル庁が公開している2025年5月27日決定の現行方針「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」もこの原則を引き継ぎ、クラウドサービスの利用はガバメントクラウドを原則とすること、SaaSについては開発量削減の観点から幅広く優先的にその利用を検討することを定めている[11]。政府はまた、クラウドサービスのセキュリティ対策を監査機関が評価し登録する制度として「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」(ISMAP)を設け、2020年6月30日にその利用に関する方針を決定した[11][29]。政府機関は原則としてISMAPに登録されたサービスから選定することとされ、2022年6月1日時点で25社34サービスが登録されており、同年9月にはSaaSのみを対象とする簡易版の「ISMAP-LIU」が開始された[29][11]。中小企業向けには、中小企業・小規模事業者のITツール導入費用の一部を補助する「デジタル化・AI導入補助金」(旧・IT導入補助金)[30]があり、2026年時点でクラウドサービス利用料も補助対象に含まれている[31]

業界団体

業界団体として、「特定非営利活動法人 ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム」(略称:ASPIC)がある。ASPICは1999年11月に任意団体として設立された後、2002年にNPO法人の認証を取得し、活動している、ASP・SaaSを推進する団体で会員企業が約170社(2008年5月現在)ある。ASPICでは「ASP白書2003」においてASPの定義を「特定及び不特定ユーザが必要とするシステム機能を、ネットワークを通じて提供するサービス、あるいは、そうしたサービスを提供するビジネスモデル」としており、ASPとSaaSを同意語として扱っている。 またSaaSの普及を目指し、ASP・SaaS安全・信頼性情報開示認定機関として、サービスの安全性や提供事業者を審査し利用者が安心してSaaSを利用できる基準を設けている。

ASPICはその後も活動を続け、2026年時点では「一般社団法人日本クラウド産業協会」(略称:ASPIC)の名称で、「ASP・SaaS・クラウドの普及促進と市場拡大」と「安心安全なクラウドサービスの推進」を2つの目標に掲げている[32]。上記の情報開示認定は2026年時点では「クラウドサービスの安全・信頼性に係る情報開示認定制度」の名称で運営され、同年8月時点で累計338サービスを認定している[33]

批判

SaaSを "Service as a Softwere Substitute[注釈 1]" (SaaSS) として参照する者である、自由ソフトウェア財団リチャード・ストールマンから、SaaSのひとつの注目すべき批判が出ている[34]。彼はSaaSSを使うことは自由ソフトウェアの根本方針の侵害に当たると考える[35]。ストールマンによれば:

SaaSSのせいで、その利用者は彼らの計算を行う実行ファイルをまさしく持つことができない:利用者がそれを見たり触れたりできないところの、誰かのサーバにそれは在る。従ってそれについてそれが本当に何をしているのかを確認することは不可能であり、それを変更することも不可能である。

脚注

注釈

  1. 「ソフトウェアの代わりのサービス」の意味。

出典

  1. 1 2 用語集|SaaS”. 株式会社IDCフロンティア. 2019年4月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  2. http://www.meti.go.jp/press/20080121004/20080121004.html 経済産業省「SaaS向けSLAガイドライン」
  3. 1 2 3 The NIST Definition of Cloud Computing (SP 800-145) (PDF) (Report). National Institute of Standards and Technology. 2011年9月. 2026年9月11日閲覧.
  4. 知っておきたいIaaS、PaaS、SaaSの違い”. クラウドエース株式会社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  5. “日本IBM、新形態のITアウトソーシング「AoD」-第1弾はSAPのERPソフトが対象”. Enterprise Watch. 2007年5月30日.
  6. 1 2 3 NIST によるクラウドコンピューティングの定義 (PDF) (Report). 情報処理推進機構. 2011年9月. 2014年4月1日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2026年9月11日閲覧.
  7. SaaS(サース)とは”. 株式会社日本経済新聞社. 2019年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年8月3日閲覧。
  8. 1 2 Software as a Service: Strategic Backgrounder (PDF) (Report). Software & Information Industry Association. 2001年2月. 2009年3月4日時点のオリジナル (PDF)よりアーカイブ. 2026年9月11日閲覧.
  9. SaaS・ASPが日本にとって重要である理由--SaaS・ASPの現状”. ZDNET Japan. 朝日インタラクティブ (2007年9月14日). 2026年9月11日閲覧。
  10. 1 2 SaaSは一過性のブームに非ず、ベンダーは利用モデルに舵切る─新市場巡る主要ベンダーの動き”. IT Leaders. インプレス (2009年3月9日). 2026年9月11日閲覧。
  11. 1 2 3 4 5 政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針(デジタル社会推進標準ガイドライン DS-310) (PDF) (Report). デジタル庁(デジタル社会推進会議幹事会決定). 2025年5月27日. 2026年9月11日閲覧.
  12. 令和3年版 情報通信白書|第3節 コロナ禍における企業活動の変化|仕事の進め方の変化(コミュニケーションツールの利用拡大)”. 総務省 (2021年7月). 2026年9月11日閲覧。
  13. “「クラウドコンピューティングEXPO【春】」、きょう開幕”. クラウド Watch. 2011年5月11日.
  14. SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ)”. SaaSメトリクスダッシュボード(上場SaaS企業データ). 2023年5月6日閲覧。
  15. 日経クロステック(xTECH). IT大手16社のQ2決算 コロナ禍でクラウド以外は減収”. 日経クロステック(xTECH). 2020年8月17日閲覧。
  16. 生成AIの進展に伴い、国内パブリッククラウド市場は前年比26.1%増─IDC”. IT Leaders. インプレス (2025年2月21日). 2026年9月11日閲覧。
  17. 令和7年版 情報通信白書 第II部 第1章 第8節 データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向 (PDF) (Report). 総務省. 2025年7月. 2026年9月11日閲覧.
  18. “Gartner Forecasts Worldwide Public Cloud End-User Spending to Total $723 Billion in 2025” (Press release). Gartner. 2024年11月19日. 2026年9月11日閲覧.
  19. 令和7年通信利用動向調査の結果 (PDF) (Report). 総務省. 2026年5月29日. p. 22. 2026年9月11日閲覧.
  20. バージョン管理システムのGitLabが日本法人を設立、国内事業を強化”. IT Leaders. インプレス (2020年4月28日). 2026年9月11日閲覧。
  21. 1 2 CTC、システム監視サービス「Datadog」の取り扱いを開始、マルチクラウドの監視設定を容易に”. IT Leaders. インプレス (2019年12月11日). 2026年9月11日閲覧。
  22. 1 2 3 NEC、オブザーバビリティプラットフォーム「New Relic」のライセンス販売を開始”. クラウド Watch. インプレス (2024年2月15日). 2026年9月11日閲覧。
  23. 1 2 日立ソリューションズ、クラウド型の人事アプリケーション「Workday」を販売開始”. IT Leaders. インプレス (2020年8月25日). 2026年9月11日閲覧。
  24. 多様な勤務形態に対応する「リシテア/就業管理 クラウドサービス」 法改正や社内規則にも柔軟に対応――日立ソリューションズが提供開始”. ITmedia エンタープライズ. アイティメディア (2019年5月30日). 2026年9月11日閲覧。
  25. 1,200社超の実績を有する「リシテア/就業管理」をクラウドサービスで販売開始』(プレスリリース)日立ソリューションズ、2019年5月28日2026年9月11日閲覧
  26. 日立ソリューションズ、AIでKPI変化の予兆把握 サブスク分析機能を強化、意思決定を支援”. 電波新聞デジタル. 電波新聞社 (2026年4月14日). 2026年9月11日閲覧。
  27. ラインアップ|株式会社日立ソリューションズ”. 日立ソリューションズ. 2026年9月11日閲覧。
  28. 富士通、COBOLなどのレガシーソースコードから設計書を自動生成するSaaSを提供、作業時間を30分の1に”. IT Leaders. インプレス (2026年3月31日). 2026年9月11日閲覧。
  29. 1 2 ISMAP簡易版「ISMAP-LIU」開始--政府がクラウドリストを提示する背景”. ZDNET Japan. 朝日インタラクティブ (2022年8月8日). 2026年9月11日閲覧。
  30. トップページ | デジタル化・AI導入補助金2026”. 中小企業基盤整備機構. 2026年9月12日閲覧。
  31. デジタル化・AI導入補助金制度概要”. 中小企業基盤整備機構. 2026年9月11日閲覧。
  32. 会長挨拶 | ASPIC(一般社団法人日本クラウド産業協会)”. 一般社団法人日本クラウド産業協会. 2026年9月11日閲覧。
  33. (報道発表)【初認定】ASPIC、「生成AI利用クラウドサービス認定」の第1号を認定!新規2サービスを加え累計338サービスへ』(プレスリリース)一般社団法人日本クラウド産業協会、2026年8月3日2026年9月11日閲覧
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  35. Stallman, Richard (2010年3月18日). Who Does That Server Really Serve?”. Boston Review. 2013年7月6日閲覧。

参考文献

  • 日経BP社出版局編『クラウド大全 The Complete Cloud Computing <サービス詳細から基盤技術まで>』(日経BP社、2009年) ISBN 978-4-8222-8388-9
  • 『SaaSの科学 SaaSビジネスにおけるデータ分析: Kindle版』(ぽこしー著、2023年)

関連項目

外部リンク


サーズ

(SAAs から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/07 17:50 UTC 版)

サーズサース (SARS)

関連項目


SaaS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/07 02:59 UTC 版)

SAPジャパン」の記事における「SaaS」の解説

また、近年ではオンプレミス製品依存からの脱却クラウドサービスの展開を図っており、2014年4月には国内2ヶ所にデータセンター開設した。 独SAPが買収したSaaS型クラウドサービスである人事管理の「SAP SuccessFactors」(サクセスファクターズ)、調達ソリューションの「SAP Ariba」(アリバ)、経費精算の「Concur」(コンカー)労務管理の「SAP Fieldglass」(フィールドグラス)などの日本市場での展開も行っている。 更に、2017年3月からはスポーツ・エンターテインメント業界向けクラウドソリューション「SAP Sports One」(スポーツ・ワン)、コネクテッドカー向け分析クラウドソリューション「SAP Vehicle Insights」(ヴィエクル・インサイツ)も国内データセンターから提供開始した2021年2月にはドイツにて利用実績のある新型コロナウイルスワクチン予防接種支援サービス「ワクチン・コラボレーション・ハブ」を日本国内自治体向けにカスタマイズし、製造流通管理リアルタイムでの可視化サプライチェーン計画支援するほか、LINE協業自治体住民向けにカスタマイズした接種予約管理システムを提供開始した

※この「SaaS」の解説は、「SAPジャパン」の解説の一部です。
「SaaS」を含む「SAPジャパン」の記事については、「SAPジャパン」の概要を参照ください。

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