PKO協力法と再度の解釈改憲
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「日本の集団的自衛権」の記事における「PKO協力法と再度の解釈改憲」の解説
「孤立主義#新孤立主義」も参照 冷戦終結直後の1990年に勃発したクウェート侵攻において、日本も人道的介入を行うべきか、という議論が生起した。国会で「国連平和協力法案」が審議されたが、世論の圧倒的な反対に加え、憲法学者からも「集団的自衛権に該当し、違憲の恐れあり」との意見が多く出され、廃案に追い込まれた。結果、日本は自衛隊を派遣せず、翌1991年の湾岸戦争に際しては代わりに「集団的自衛権でない形での協力」として135億ドルの資金援助を行ったが、ほとんどの関係国から感謝されなかった。国際社会の風当たりの強さを実感した世論は自衛隊のPKO参加に賛成するようになり、1992年、「国連平和協力法」(PKO協力法)が成立した。 更に、日米同盟の運用方針について、米国側から新たな負担の要請が出されるようになり、「周辺事態安全確保法」(1999年)や「テロ対策特別措置法」(2001年)などが相次いで成立した。特に後者は、米国軍艦への給油など、国際法上の集団的自衛権を含むものが含まれていたが、これらはいずれも「集団的自衛権に該当しない活動」であるとされた。以降も、国際社会の環境変化に伴って特措法が乱発するようになる。米国は、「集団的自衛の禁止は同盟の障害である」と見解するようになった。 2014年7月1日、第2次安倍内閣において、集団的自衛権を限定的に行使することができるという、憲法解釈を変更する閣議決定がなされた。変更の必要性は、日本を取り巻く安全保障環境が変化したという事実認識から説明される。 閣議決定によると、日本における集団的自衛権の行使の要件として、日本に対する武力攻撃、又は日本と密接な関係にある国に対して武力攻撃がなされ、かつ、それによって「日本国民」に明白な危険があり、集団的自衛権行使以外に方法がなく、必要最小限度の実力行使に留まる必要があるとしている。これを自衛の措置としての武力の行使の「新三要件」という。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}また、あくまで集団的自衛権の趣旨は日本国民を守るものであるため、密接な関係にあったとしても、他国民の保護のための行使はできない。また、専守防衛は堅持していくとし、先制攻撃は許されていない。海外派兵についても許されていない[要出典]。 さしあたり解釈変更の動機として、安倍晋三内閣総理大臣は「紛争中の外国から避難する邦人を乗せた米輸送艦を自衛隊が守れるようにする」としている。また、菅義偉内閣官房長官は「新三要件を満たせば、中東ペルシア湾のホルムズ海峡で機雷除去が可能だ」としており、「原油を輸送する重要な航路に機雷がまかれれば、国民生活にとって死活的な問題になる」としている。さらに2014年7月14日の国会答弁において、「世界的な石油の供給不足が生じて国民生活に死活的な影響が生じ、わが国の存立が脅かされる事態は生じ得る」と語っている。 しかしながら内閣官房の概要によれば、「石油なしで国民生活は成り立たないが、代替エネルギー利用を進め、外交や国際協調に全力を尽くしており、憲法上許されるのは、国民の命と平和な暮らしを守るための自衛措置のみであるから、石油のために集団的自衛権の行使を行う事はできない」としている[要出典]。一方で、新エネルギーは石油エネルギーに代替するまでの影響力を行使することが現時点で困難であるため、本質的なリスク回避となるまでには至らないという認識が一般的であるため、国民生活の基盤を確保する目的においては、やはりホルムズ海峡などの重要拠点を堅守する体制が重要であるという議論も根強い。 現実問題として海上自衛隊は、機雷除去については、集団的自衛権があるか否かに関わらず、停戦後であれば、「警察権の行使」として危険物を除去していると解釈することで行う事ができるとしている[要出典]。一方で掃海はダイバーが行う困難な作業で、海上自衛隊が持つ特殊な技術であり、過去に掃海部隊が派遣されて任務にあたっているため、「停戦前は危険」という議論は的外れであるという指摘もある。自衛権発動の新3要件にある「他国に対する武力攻撃」について、武力攻撃事態法が定める「武力攻撃予測事態」も含むのかという質問に対して、安倍晋三首相は「まず武力攻撃がなければ駄目だ。予測事態は入らない」と述べ、実際の武力攻撃が発生しなければ集団的自衛権は行使できないとの認識を示した。 集団的自衛権を行使するために必要な法案(防衛省設置法・自衛隊法・武力攻撃事態法・国民保護法・周辺事態法・PKO協力法・海賊対処法・船舶検査活動法・米軍行動円滑化法・国家安全保障会議(NSC)創設関連法)は、2015年1月召集の通常国会に提出されるものとみられる[要検証 – ノート]。豊下楢彦・前関西学院大学教授は、「集団的自衛権を行使するということは、軍隊として戦争することに他ならない。」とした上で、集団的自衛権を行使するためには、日本国憲法の改正と自衛隊の正式軍隊化、「開戦規定」や「交戦規定」を整え、「軍法会議」を設置することが必要であると述べている。 集団的自衛権は、2014年の新語・流行語大賞年間大賞に選出された。 集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の無効を求める裁判が起こされたが、2015年7月29日、最高裁判所は訴えを却下した。 行使を容認する政府解釈は、内閣法制局で1日審議された後に通過した。 木村草太は日本を攻撃するA国へ弾薬提供や給油支援するB国は武力行使と一体化しているので従来は、個別的自衛権で自衛隊は反撃できたが、自衛隊の任務に集団的自衛権を容認する安保法制で自衛隊が米国等へ弾薬提供や給油支援が後方支援で武力行使と一体でないとしたために、弾薬提供や給油支援するB国を自衛隊は反撃できない主旨を参議院の審議で中谷元防衛大臣は答弁したと言っている。長谷部恭男は日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増しているのなら、(少子高齢化で人口と税収の)限られた防衛予算を世界中に展開して、米軍の手伝いをするのは愚の骨頂だと述べている。
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