PKRとアミロイドβ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 16:25 UTC 版)
「プロテインキナーゼR」の記事における「PKRとアミロイドβ」の解説
AD患者においてPKRの活性化は、β-セクレターゼ1 (BACE1) の抑制解除によってアミロイドベータペプチドの蓄積を引き起こす。通常、BACE1の5'UTRはBACE1遺伝子の発現を阻害している。しかし、eIF2αのリン酸化によってBACE1の5'UTRの阻害効果は逆転し、BACE1の発現が活性化される。eIF2αのリン酸化はPKRによって開始される。単純ヘルペスウイルスなどのウイルス感染や酸化ストレスは、PKR-eIF2α経路を活性化することでBACE1の発現を増加させる。 さらに、AD患者においてBACE1の活性の増加は、アミロイドβ前駆体タンパク質がβ位で切断されたC末端断片 (APP-βCTF) によって誘導されるエンドソームの異常を引き起こす。エンドソームはアミロイドβ前駆体タンパク質 (APP) のプロセシングが極めて活発に行われる部位であり、エンドソームの異常は初期エンドソームの調節因子であるRab5の発現上昇と関連している。これらは、ADに特異的な神経細胞反応として知られている中で最も初期に起こるものである。APP-βCTFレベルの上昇はRab5の過剰な活性化を引き起こす。APP-βCTFはRab5陽性エンドソームにAPPL1(英語版)を呼び寄せ、活性型であるGTP結合型Rab5を安定化し、その結果、病態と関連して加速されたエンドサイトーシス、エンドソームの膨張、Rab5陽性エンドソームの軸索輸送の選択的阻害が引き起こされる。
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