新孤立主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 02:19 UTC 版)
ところが、イラク戦争の失敗やアメリカの財政逼迫などの影響で、ネオコンが退潮し、再びアメリカ合衆国議会で孤立主義が復活する動きが出ているという指摘が2013年から出始めている。 2013年、シリア軍の化学兵器使用疑惑を受けて、バラク・オバマ米大統領はシリア内戦への軍事介入を示唆したが、イラク戦争を積極的に推進した共和党の議員の多数が反対。オバマ自身も、本心は軍事介入に消極的だったという指摘もあり、結局アメリカ軍の介入は当面見合わせることとなった。 しかし、この決断は軍事同盟国に波紋が広がっており、緊密な同盟国であるイスラエルは「いかなる脅威からも自己防衛できるよう力を強化しなければならない」(ベンヤミン・ネタニヤフ首相)とし、イランの核開発問題などで、もうアメリカを頼りにしない姿勢を打ち出した。もう一つの主要同盟国である日本にもこの「新孤立主義」の影響は及び、民主党(現在は自民党)の長島昭久は、「米国が間髪入れず反撃する前提が崩れるなら抑止力低下で深刻」などと述べた。 日本のメディア「産経新聞」は、日米同盟を重視する立場から、オバマ政権下のアメリカを「内向き」「指導力不足」などと批判的に評することが多くなった。すなわち、産経新聞は中華人民共和国やロシア連邦の脅威に対抗するには、日米がタッグを組んで強い姿勢を見せることが必要だとしている。しかし裏を返せば、現状ではアメリカ軍なしで自衛隊だけでは(中露といった核保有国が複数存在する)日本周辺の脅威に何も出来ないという事であり、日本の今後の防衛政策について議論されている。 2016年のアメリカ大統領選の結果、孤立主義傾向が強いと看做される実業家のドナルド・トランプ(共和党)の支持が選挙戦を通して急速に広がり、出馬当初は泡沫候補と見做されていたが、大統領の座を現実に射止めたことについても、関係国に懸念が広がっている。特に日本については、アメリカが無条件で日本や大韓民国を守るのは不公平という主張を彼は繰り返しており、仮にトランプが大統領になった場合、それまでアメリカの核の傘で国防を委託して経済活動に専念してきた日本にも甚大な影響を与える可能性が、かねてからマスメディアなどで示唆されていた。 この、あまり予想していなかった事態を受けて、日本国政府は大統領選後、急ピッチで新政権との人脈構築、日米同盟の維持に向けた作業を行っている。
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