規格化の歴史
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世界で最も一般的な貨物コンテナは、大きさなどの規格がISOによって国際的に統一されている「国際海上貨物用コンテナ」(Shipping containers または、Isotainers)と呼ばれるものである。このISOによるコンテナの標準規格を将来にわたって円滑に進める専門の組織として、1961年6月にヘルシンキで開催されたISO理事会にて「国際標準化機構貨物コンテナ専門委員会(ISO / TC104)」が設立されている。このISO / TC104組織により、同年9月に初めて第1回ISO / TC104総会がニューヨークで開催され、後の各種規格制定の下準備として各国間での調整と議論が始まった。 これらの議論の末に最初に登場した規格は、1964年7月にハンブルクで開かれた第3回総会によって、現在の国際海上貨物用コンテナの基礎となる数値が決定された後、1968年に「ISO 668」の初代規制値として確立する。国際海上貨物用コンテナでは、複数の長さがあるが主に長さが20 ft (6,058 mm)、40 ft (12,192 mm) の2種類が用いられており、コンテナの取扱量を示す単位TEUは、20 ftコンテナ1個分を1TEUとしている。なお、制定当時のコンテナ横幅及び高さでは、この2種類を含む全ての長さのタイプで、横幅8 ft (2,438 mm)、高さ8 ftと正方形となっていた。 その後の世界的な物流事情の変化に伴う「重量の軽い貨物をもう少し積み込めるようにしたい」との要望により、少し背高となる8 ft 6 in (2,591 mm)タイプのコンテナを、新たにISO 668の基準値へ盛り込む要望が出てきた。しかし、既にコンテナを陸送するための専用のシャーシーは、世界で共通して円滑に輸送できるとの趣旨で、日本を含む地上高が低く抑えられている国々でも、コンテナを積載した状態での地上高が3.8 mと決定されていた。これを元に最初のコンテナの高さが8 ftと決定されていたこと、当時のコンテナ積載用のシャーシはトラクターとの連結部分と、最後尾部位までが一直線状体の水平シャーシとなっていたので、既に限界までに低床化されていた。これらの現状での規制値内で、牽引するトラクター本体のさらなる低車高化は構造的に無理があり、また牽引トラクターと40 ftコンテナを合わせた全長は、当時の世界共通的に通用する最長値が現代のように長大ではなかった。 このために、20 ftタイプのシャーシでは連結部位より後側の全体を少し下げて、8 ft 6 in型を輸送することは可能であったが、40 ftのコンテナ用シャーシーでは、連結部位の構造上の理由と前記のように連結時での最長値の制限により、さらにトレーラーシャーシ全長を均等に低床にすることが出来ない状態となっていた。そこで考案されたのが、元々コンテナの底部位(いわゆる、コンテナの床下)には、保管時で地面に置いた時に雨天時の床下の水はけ事情等を考慮する必要があり、タンクコンテナなどの一部を除くほとんどのコンテナにはフォークポケットの有無には関係なく、十数センチ程の空間がコンテナの構造上、存在している。この床下空間を利用して、シャーシーの連結部分とはめ合う6インチ (153 mm)の深さの『グースネックトンネル』と呼ばれるくぼみを、積み込み口とは反対側の床下に設けることで、連結部位より後のほとんどの部位となるシャーシー床面全体を6インチ分下げることができた。道路運送上の要請から40 inコンテナにはグースネックトンネルと呼ばれるくぼみが設けられている。 これらの経緯をへて、1969年10月にニューヨークで開かれた第6回総会にて、まずは40 ftタイプに新しく高さ8 ft 6 inタイプが、ISOコンテナに認定された。その後、遅れる事5年後の1974年10月に東京で開催された第8回総会にて、30 ftタイプに新しく、高さ8 ft 6 inタイプが【区分 1BB】コンテナとして、更に20 ftタイプに新しく、高さ8 ft 6 inタイプが【区分 1CC】コンテナとして、それぞれISOコンテナに認定された。続く1976年5月にワシントンで開かれた第9回総会にて、旧シーランド社が独自規格として使用し続けていた35 ftタイプは、コンテナ船のセル構造や20または、40 ftコンテナとの積み併せや、保管時に組み合わせの悪さから発生する無駄なスペース等の汎用性がない事などを理由として、申請されていたISO規格への承認を認めなかった。またこの件とは別に、ヨーロッパでのUIC (国際鉄道連合)からの申請されていた、20 ftタイプの中で【区分 1C】及び【区分 1CC】タイプに対して、コンテナ本体を含む最大総重量を24 tまで認めることとなった。 これらの各種規制緩和やある意味、苦肉の策で編み出した8 ft 6 inタイプのコンテナを積載しても、改善前と変わらぬ世界共通の地上高が3.8 mを維持する事となり、40 ftコンテナはグースネックトンネルを備えた8 ft 6 inタイプと、また40 ftコンテナ積載用のシャーシーは6インチ段差のあるタイプーへと全世界へ一気に広り、近代のコンテナの土台となる各種の規格が完成した。 また、航空機での運搬用には、海上輸送用のコンテナとは別規格で国際的に統一されている『航空貨物用コンテナ(「航空コンテナ」も参照。)』がある。国際的に使用されるコンテナは、その発祥時点で海上用、航空用ともヤード・ポンド法を尺度とするアメリカ合衆国で実用化された経緯から、ヤード・ポンド法に基づくフィート単位で規格化されたものが主流を占める。 なお、従来から日本国内で使われているのは、旧、日本国有鉄道時代から鉄道貨物の輸送用に10 - 12 ft形の『鉄道用コンテナ』として採用され、「戸口から戸口へ」のキャッチフレーズで宣伝していた鉄道貨物用コンテナであるが、これはトラックやコンテナ貨車等のいわゆる鉄道コンテナ積載車両とコンテナを接続固定する緊締装置を含めて、日本の独自規格である。 ウィキメディア・コモンズには、海上コンテナの細部特徴に関するメディアがあります。
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