病原因子
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化膿レンサ球菌の病原因子として、以下のものが知られている。 細胞に局在する病原因子 莢膜 一部の菌株に見られ、ヒアルロン酸から構成される。白血球による貪食を逃れる役割(抗食菌作用)を持つ。 リポタイコ酸 細胞壁に結合した多糖類。粘膜への付着によって感染部位への定着を容易にする(定着因子) Mタンパク質 表面タンパク質の一種。角質細胞と接着し、皮膚への定着に関与する定着因子。また補体活性化因子やフィブリノーゲンと結合することで、抗食菌作用も持つ。またヒト心筋のタンパク質(ミオシンやトロポミオシン)と共通の抗原性を持っており、宿主への分子擬態に関与するとともに、これに対する抗体が自己反応性抗体として作用することで、リウマチ熱などの自己免疫疾患の発症に関わると言われている。Mタンパク質の菌株ごとの抗原性の違いが、化膿レンサ球菌の血清型別に関与する。 C5aペプチダーゼ 表面のタンパク質の一種で、補体成分のC5aを分解して補体による排除機構から逃れる役割を持つ。 分泌される毒素、酵素 ストレプトリジン(ストレプトリシン) 溶血素、すなわち赤血球などの細胞膜を破壊することで細胞や組織に対する毒性を示す菌体外酵素。組織破壊による感染巣の拡大や、免疫細胞による排除に対する抵抗性に関与する。ストレプトリジンOとストレプトリジンSの二種類があり、大部分の菌株がこの両者を産生する。前者は分子量69,000のタンパク質で、抗原性があり、GAS感染症の回復期患者では、血中の抗ストレプトリジンO抗体価(Anti-streptolysin O:ASLO)が上昇するため、診断に有用である。後者は分子量8,000のペプチドで抗原性はない。 ストレプトキナーゼ プラスミノーゲンに結合し、これを活性化する役割を持つタンパク質。菌の侵襲性に関与すると言われ、壊死性筋膜炎との関連が指摘されている。 発熱毒素群 スーパー抗原としての活性を持つタンパク質群。免疫担当細胞の過剰な亢進を引き起こし、発熱、炎症、全身性ショックの原因になる。猩紅熱に見られる全身性の発赤(発赤毒素)や毒素性ショック症候群などの毒素性疾患の主因であり、また壊死性筋膜炎との関連も指摘されている。 この他、ヒアルロニダーゼやDNaseなどの分解酵素を菌体外に分泌しており、これらも組織破壊による感染巣拡大に関与すると考えられている。
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病原因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 05:22 UTC 版)
黄色ブドウ球菌の病原性に関わる因子には以下のものが知られている。 細胞に局在する病原因子プロテインA - 細胞壁に存在するタンパク質で、黄色ブドウ球菌のほとんどが有する特徴的な成分の一つ。抗体(免疫グロブリン)のFc領域に結合する性質を持ち、これによって抗体の持つ生物活性を抑制することで、菌が免疫系によって排除されることを防ぐ働きを持つ。 フィブロネクチン結合因子 - 細胞壁に存在するタンパク質で、フィブロネクチンと結合して体内に定着する働きを持つ(定着因子) タイコ酸 - 細胞壁に存在する分子で宿主細胞との結合を高める(定着因子) 外毒素(細胞外に放出される毒素)エンテロトキシン群 - 食中毒の原因となる黄色ブドウ球菌が産生する。下痢や腹痛などの直接の原因になるほか、嘔吐中枢にも作用して嘔吐の原因にもなる。スーパー抗原としての活性を持つ。 TSST-1(毒素性ショック症候群毒素-1) - 毒素性ショック症候群(後述)の原因となる毒素。強いスーパー抗原活性を持ち、発熱や悪心、ショック症状を引き起こす。免疫系をかく乱する役割を果たす。高吸収性の月経用、鼻腔用タンポンの使用によって、本毒素の産生が著しく増大することが知られている。 表皮剥脱毒素 - スーパー抗原の一種。 溶血素(ヘモリジン)- 赤血球を破壊する溶血活性を持つ毒素群であり、特にα毒素が重要な病原因子。免疫細胞を破壊することで菌の排除を防ぐ働きを持つ。また組織破壊によって病巣部から周辺組織に侵入する際にも働く。 ロイコシジン - 白血球を殺す毒素であり、免疫細胞の破壊によって菌の排除に対抗している。 酵素(病原性に関わる酵素群)コアグラーゼ、クランピング因子 - 血漿を凝固させ、フィブリン形成を起こす。これによって菌の増殖の場となる凝集塊を作り出し、白血球や血漿中の抗体による排除を防ぐ働きがあると考えられている。 スタフィロキナーゼ - 析出したフィブリンを溶解させる働きを持つ。菌が凝集塊の中で増殖した後、その凝集塊を分解して周囲に感染を広げる際に働くと考えられている。 プロテアーゼ、DNase、リパーゼ - タンパク質、核酸、脂質を分解し、周辺組織を分解して感染の拡大に関わる。
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病原因子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/08 11:00 UTC 版)
「ヘリコバクター・ピロリ」の記事における「病原因子」の解説
ヘリコバクター・ピロリには多くの病原因子が存在する。特にウレアーゼは本菌の胃内定着に必須であるとともに、走化性や粘膜傷害にも大きく関与する。これ以外にも、本菌に特異的な外毒素(菌体外に分泌される毒素)である細胞空胞化毒素 (VacA; Vacuolating toxin A) や、ムチナーゼやプロテアーゼなどの分泌酵素群が、粘膜および胃上皮細胞の傷害に直接関与すると考えられている。またグラム陰性菌の最外殻に存在するリポ多糖などによって起きる、好中球などの遊走によっても炎症が引き起こされる。また本菌は線毛に類似したIV型分泌装置と呼ばれる構造を有しており、これによって宿主細胞に直接注入されるエフェクター分子(CagAなど)は宿主細胞のIL-8産生を誘導して炎症反応を惹起するほか、アクチン再構築や細胞増殖の亢進、アポトーシスの阻害など多様な反応を引き起こし、これが癌の発生に繋がるとも考えられている。このほか、鞭毛は本菌が感染部位となる胃粘膜に遊泳して到達するために、また外膜タンパク質の一種は本菌が上皮細胞に接着するために必要であることが知られている。 これらの病原因子はすべて本菌による感染や胃粘膜傷害に関与するが、このうち本菌に特異的なVacAやCagAについて研究が進んでいる。その結果、同じヘリコバクター・ピロリでも、VacAやCagAを持つ菌株と持たない菌株が存在することが明らかになった。これらを持つ菌株は毒性が強く、これらの強毒株こそが慢性胃炎や消化器潰瘍、胃がんの本当の病原体で、弱毒株の方はあまり害のない一種の常在菌なのでないか、という仮説も提唱されている。
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